ロックマンZAX GAIDEN   作:Easatoshi

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第5話

うーん、これはおもしろい!」

「……っぷはぁ!! やっと解放された……」

 

 映画を終えて出て来たアイリスとゼロ、ゼロは至って元気であったものの一方でアイリスは憔悴のあまり肩を落とす始末だった。

 彼女自身は自分達が主役として出演している事もあってロマンスな場面を期待していた。 そしてそれは確かにあったのだが、今回見に行った映画館はまさかの『応援上映』……つまり映画に関する話題や掛け声OKなのが命取りだった。

 

「まさかクサイバトロンスカトロンの共同戦線とは恐れ入ったぜ! 長年対立していた敵同士が手を組む瞬間をしっかり決めるとは脱糞ものだな!」

「サイバトロンとデストロンでしょ!? 第一だっぷ……じゃなくって脱帽って言うのよそれ!」

うん? ちがったか? まあそれはいいとして、イーグリードに鳥の糞を落とされて椛が鬱になりかけたり、マイマインとマシュラームが幽香にびびって絶叫脱糞決めるシーンも見物だったぜ!」

そんなシーンはない!! ……さっきから一体どうしちゃったのよゼロ

 

 しかし悲しきかな。 顎にいちじく浣腸のせいでお口の括約筋がゆるゆるなゼロがまともな応援をできる筈もなく、逆に純粋に応援の掛け声を上げていた周囲に疫病のごとく言語障害を広める羽目になり、彼の事情を知らないアイリス一人が孤立無援の状態に追い込まれる羽目になった。

 しまいには今彼が言ったように記憶まで捏造されるのか、有るはずのない汚らしいシーンを語り出す有様で、耳から入ってくる情報なのに鼻が曲がりそうな不快感に、デート開始からたった2時間余りで既にブチ切れる寸前。

 かといって激怒して折角のデートをぶち壊すのも気が引けるのが正直な所で、アイリスは早く気分を入れ替えたい気持ちであった。

 

「ふむ、映画を見て小腹が空いたな……うん、ちかくで何か食うか?」

 

 今それを言う!? うんこうんこと連呼されて食事する気分になれないアイリスは思わずゼロの正気を疑うが、しかし振り返った先のゼロの表情に一切の悪意は見て取れない。

 一応、彼の考えを確かめておくべきだとアイリスは尋ねる。

 

「……何を食べる予定なの?」

ダルシムのインドカレー「はいダウトオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 締まりの悪いガバガバなゼロのお口を目にもとまらぬ勢いでアイリスが塞ぐ。 唐突に言葉を遮られたゼロは目を点にしてしばし沈黙し、雑踏と肩で息をするアイリスの呼吸音だけが周囲を支配する。

 

「……変わったお店に行く事は大賛成なの。 でも今だけはダメ! どうしてか意味は分かるよね?」

 

 切羽詰まったかわいい恋人からの質問に、ゼロは首をかしげた。 彼女持ちがどうして急にここまで鈍感になれるのか、しかし一々説明するにも汚い言葉を口にするのに抵抗があるアイリスはため息をつきながらさっさと結論を述べる。

 

「今は私さっぱりするものが欲しい気分なの! もうちょっとこう、冷たい物とか!?」

 

 ゼロはアイリスの意図に気づいたのか両手を打つと、映画館を出た先の道路で冷菓を販売しているワゴン車へと足を進めた。 良かった、いい加減こちらの考えを察してくれたようだ。

 これ以上エスカレートしたらどうしようかと内心焦っていた中で一安心するも束の間、買い物を済ませて踵を返すゼロの両手に握られていた『それ』を目の当たりにした瞬間――――

 

「待たせたな。 あいにく在庫が切れててチョコソフトしかなかった。 だがトッピングにかりんとうをおまけしてくれたぞ。 やったぜ。

「おどれはあああああああああああああああああッ!!!!」

 

アイリスのフン怒の一撃が炸裂した!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっちゃった……」

 

 映画館の中ではぐれたまま出遅れたアクセルとエックスが目の当たりにした光景は、アイリスが怒りの形相でフンだくったチョコソフトをゼロの口へ突っ込む手遅れな状況だった。

 突然の出来事に放心するゼロに対し「フンッ!」と鼻息をついて彼を置いてけぼりにする彼女のやり取りは、どこからどう見ても喧嘩別れしたカップルそのものであり、目頭を押さえるアクセルにエックスは項垂れた頭を両手で抱えたまま言葉を発せられずにいた。

 なんやかんやで熱愛だった二人の間を考えても、端から見ればあまりにデリカシーに欠けるゼロの言葉遣いに対し、一身に受ける彼女のストレスはそれ程までに凄まじかったのだろう。 自身も割を食った側であるだけに想像に難くない。

 アイリスに去られる中、ゼロは口の中のソフトクリームをバキュームカーの如くあっさりと飲み込んだ。

 

うーんこのソフトクリーム最高だな」

「もうその辺にしとけッ!!」

「うんご!!」

 

 エックスが頭を上げるより先に、アクセル渾身のソバットがゼロの後頭部に炸裂!! 

 

ああもう!! 汚物垂れ流してる口でチョコソフト食べるとかまるで排便の逆再生だよッ!!」

「ってててて……誰かと思ったら(クソ)じゃねぇか!! いきなり不意とは何の真似だうんこまんがッ!!

うんこ野郎(まん)はアンタだッ!! さっきから見てたぞ!? 甘いひとときに塗りたくるとか何考えてんだよッ!!」

 

 起き上がるなり口汚い罵り合いを織り交ぜながら取っ組み合いを始めるアクセルとゼロ。 アクセルに押し倒され地面を激しく転がり通行人の迷惑になる中、遅れてエックスが間に割って入る。

 

「止せアクセル! 今ここで喧嘩したってどうにもならない!!」

「だぁもう!! エックス離してよ!! もう顎の一発でもくれてやった方が口調直るんじゃないの!?」

 

 エックスは強引にアクセルを引き剥がすと、隙を見てゼロは不意打ちに弱りながらも何とか立ち上がる。 エックスに羽交い締めされて暴れるアクセルをゼロは憎々しげににらみ返す。

 

「おいお前ら!! さっきから見てたってどういう事だ!? まさか俺の事ケツふいた紙にこびりついたうんこみてぇにネットリついてきて――――」

「人聞きの悪い事言うなッ!! ゼロ、それよりもアイリス怒ってたじゃないか!」

「何べんもウンチ連呼しまくってりゃ怒るのも無理ないよ! 自覚あんの!?」

 

 エックス達からの必死の問いかけに、ゼロは何かに気づいたようだった。

 

何べんもウンチ……軟便だけにか! 一本取られたぜアクセル!

「……分かってたけど自覚症状なしか」

「もう手段に拘ってる場合じゃないみたいだね」

 

 エックスはおもむろに懐からグリースガンを取りだした。 パレット達から預かった、機械用のリチウムグリスが詰まった正真正銘のグリースガンである。

 

「う、うん? このグリースガンでどうしようってんだ!?」

「できればこっそり君を呼び出して応急修理するつもりだったが、デートがご破綻になった以上はもう手段は選んでられない」

「穏便に済ませようとして結局間に合わなかったんじゃ、せめてアンタの顎だけでも何とかしなきゃね。 悪いけどじっとしてて」

 

 二人はたじろくゼロ相手ににじり寄り、緊迫した雰囲気が流れる中――――アクセルが一気に飛びかかる!

 

フンッ!!」

 

 アクセルの動きを見切ったゼロが背後に飛び退く! ゼロをつかみ損なって地面に倒れるアクセルを背に、下手人は一目散に駆け出した!

 

「待てゼロ! 応急手当だけでも受けるんだ!!」

「もう昨日に済ませただろ! 俺は何でかキレちまったアイリスに謝罪のベンをしなくちゃならねぇんだ!!」

「だからその口ぶりが原因だって――――ああもう!!」

 

 アクセルが悪態をつくまもなくゼロは雑踏に紛れ、人混みを縫うようにしてアイリスが去って行った大通りを追いかける。 

 こういう時のゼロの逃げ足の早さよ。 人の話を聞かない赤いイレギュラーに振り回されるアクセル達だったが、エックスはまだ諦めていなかった。

 

「逃がす訳にはいかない!!」

 

 手段は選ばない、その宣言を体現するが如くエックスはまさかのバスターの銃口を逃げるゼロの背中に向けるとすかさずチャージ! 予想外のエネルギー反応を感じ取り、振り返るアクセルの顔色には焦りが浮かんでいる。 

 

「エックス!? 流石に街中でバスターはまずいよ!! 通行人に当たっちゃう!」

 

 アクセルの制止にエックスは我に返る。 銃口を向けた射線上を見れば、誤射の恐怖に戦慄く通行人が身を引いてこちらを窺っていた。

 イレギュラーハンターの名誉のために人命を軽んじてまで引き金を引く必要はあるのか?

 

「コラテラルダメージだ!」

 

 その答えはエックスの渾身のチャージショットによって果たされた!!

 

「「「「「アババーーーーッ!!!!」」」」」

「ちょおおおおおおおおおおおおおッ!!??」

 

 ハンターとして生きるため 仕方なかった。 そう言わんばかりに道行く人々を巻き込んで突っ切る渾身の一撃!

 目的の為なら容赦ない仲間の攻撃に悲鳴を上げるアクセルは完全に失念していた。 彼はイレギュラーハンター(法律)だったと。 

 

「こんなうんこたれな攻撃が当たるか!!」

 

 対するゼロは振り返る事無くあっさり回避! エックスのある意味捨て身の一撃は届くことなく、ゼロを取り逃がしてしまった。

 

「クソッ、逃げられた!! ……皆の犠牲を無駄にする訳にはいかないのに、追いかけるぞアクセル!」

無駄死に以外の何物でも無いわ!! ああもうッ!! どいつもこいつもクソッタレ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの野郎!! ふざけんじゃねぇぞ!!」

 

 そんな彼らから更に離れた後ろのビル影から一台の茶色いライドアーマー! それを駆るは激高するVAVAであった。

 エックスが走り去った後に飛び出した先の大通りは地獄絵図であり、黒焦げになってアフロヘアになった人々の倒れる姿と、それを見て逃げ惑う民衆がごった返しになり混沌の沙汰に陥っている。

 既にパニックになったこの最中でライドアーマーに乗る自分の事など誰も気にとめやしない。

 

「この俺を差し置いて自分らで騒動起こしやがって!! それは俺の専売特許だッ!!」

 

 追跡を開始するVAVAだったが、混乱する人々とけが人がごった返して先に進む事は叶わない。 これでは人を轢いて戦う前に機体に傷がつきそうであり、存在が周知されそうにない事態も相まってVAVAにとっては神経を逆なでされる思いだった。

 

「ぬああああああああああああああああああッ!!!! てめえら怪我ぐらいでゴタゴタ抜かすなぁ!!!!」

 

 VAVAはライドアーマーの操縦席から救急箱を取り出し、手早く倒れている人間の応急手当を目にもとまらぬ早さで済ませてしまった。

 軽症の者は自分でさっさと道を空けるよう要求し、動けない人間は両肩を持って引きずると、日陰の街路樹に放置した。 怪我を治してやったのは自分の足でさっさとどいてもらう為だ、それもできない弱者はこの汚い土の上でおねんねしていろ!

 我ながら邪悪な行いに少しだけ胸のすく思いだったが、しかしそれらを全て享受できるのはエックス達を倒してからの話だ! 

 VAVAはとっとと周囲に道を空けさせると、周りも恐怖に屈したかあっさりと命令に従った。 開かれた道へとライドアーマーのブーストを噴かし、VAVAは一直線に駆った! 全ては獲物を狩る為に!

 

「ありがとー! アンタは救世主だああああああああッ!!!!」

 

気でも触れたか? お前らなど狩る価値もないだけだ!!




 臭い話に捏造しちゃった。 赤バンブルさん許して(迫真)
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