ロックマンZAX GAIDEN   作:Easatoshi

17 / 18
第7話

 

 

「……あれ? 私何やって……?」

 

 心地よいまどろみの世界から舞い戻ったアイリスが、起き上がって目をさすりながら辺りを窺うとそこは変わらず公園の丘の上だったが、その上で檻の中に閉じ込められていたようだった。

 

「――――そうだ! 私変な人に襲われたんだった! それで気を失って――――でもなんだろうこの良さげなベッドは?」

 

 そして黒光りする金属製の檻に似つかわしくない、柔らかそうなベッドに寝かしつけられていた事に気づきアイリスは困惑する。 野外で閉じ込めた割には丁重な扱いにそれを行った者への真意を測りかねていた。

 

「とにかくここからでなくっちゃ――――って!?

 

 自分の身が置かれた現状に気をとられていたアイリスだったが、丘の下から激しい爆発と地響きが起きた事に気づいた。 アイリスが音の聞こえた方向を振り向いた先には――――

 

「ゼロ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くたばりやがれえええええええええええええッ!!!!」

 

 VAVAのライドアーマーの両腕から回転する4本の棘が繰り出される――――ゼロは寸前で回避!

 

「当たるかよVAVA!!」

 

 ゼロの回避行動によって、直前まで立っていた場所に攻撃が当たった結果花壇が崩壊する!! VAVAはすかさずライドアーマーから飛び降りて素早く修復! 崩れた花の土を元通りにして再度搭乗!

 

「もらった!!」

 

 隙を見逃さずエックスがバスター発射! しかしVAVAは先読みしていたかライドアーマーのバックパックからポッドを発射! バスターの射線上にバリケードを展開し攻撃を防ぐ!

 

「横からダメなら上から!!」

 

 エックスに変わって飛びだしたアクセルが展開されたバリケードを足がかりに跳躍! 愛用の二丁拳銃でVAVAの真上から奇襲をかける!

 しかしその瞬間アクセルめがけて砲撃が撃ち上げられ、慌てて気づくも間に合わず攻撃が命中する!

 

「わあああああああああああッ!!」

 

 爆風で吹き飛ばされ、煤こけた姿で地面を何度もバウンドする。

 

「アクセル!」

「だ、大丈夫! 見た目程のダメージは無いよ」

 

 激しい爆発だが思いの外ダメージが軽傷で済んだと、膝をついて立ち上がるそぶりを見せるアクセルにエックスは胸をなで下ろす。

 

VAVAVAVAVAッ!!!! お見通しなんだよ坊や!」

 

 攻撃の正体は、先読みからノーモーションで繰り出したVAVA自身のショルダーキャノンだった。 使用済みのバリケードのポッドを回収して背後のリサイクル箱に入れながら余裕綽々にVAVAは笑う。

 

「この俺とチューンされた愛機『ブラウンベアMK-2』のタッグを甘く見るなよ! 今までの武装強化に加え、エンジンも燃費改善によってエコロジーに配慮、収納ボックスも拡張して掃除用具の拡充と分別ボックスも新設! 戦闘中に汚れた戦場を綺麗にする事ができるんだぜ!! 恐れ入ったか!?」

 

 強化されたライドアーマー……ブラウンベアMK-2の性能を自慢げにひけらかすVAVA。 対するエックス達は緊迫した空気にそぐわない生温かな目線を送る。

 

「……律儀に片付けてる時点で悪党向いてないよね」

「VAッ!?」

「イレギュラーハンター居た頃からこうなんだ。 強気の口調なんだけど悪になりきれないって言うか」

「VAVAッ!?」

「甘い甘いと言うが一番甘いのはVAVA自身だ。 全く、やる事なす事こうも半端な癖に面倒は起こしやがって、糞が出そうだぜ」

「そこ反吐が出るって言わない?」

うん、ちがいない」

 

 しまいには好き勝手言うエックス達3人に、ついにVAVAがキレた。

 

「お前ら好き勝手言いやがってッ!! そんなにお望みなら全部ぶっ潰してやるッ!!」

 

 悪党にふさわしくないというエックス達の物言いが余程気に食わなかったのだろう、妙なところで器の小さいVAVAに呆れかえるも束の間、ブラウンベアの装甲が開くと中からは大量のミサイルやガトリングガン、そしてレーザー兵器といった多種多様の重火器が姿を現す。 VAVA自身も身体の武装を全て展開、ただならぬ雰囲気を漂わせる。

 

「お前らゴミどもを掃除するには公園の1つや2つ安いぐらいだ!! 死にやがれえええええええええええええッ!!!!」

「あ、これちょっとやばいかも……」

「皆!! 来るぞッ!!」

 

 流石に煽りすぎたか、逆上して全火力を一気に投入せんとするVAVAに身構える。 しかし次の瞬間!

 

「ダメエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」

 

アイリスの悲鳴に近い叫び声と共に、丘の上の檻で謎の閃光! そして次の瞬間内側から檻が破壊され、中から飛び出すは薄紫のライドアーマーのような巨大兵器!

 

「あれは!?」

「アイリスだ! あいつカーネルのデータを使用してライドアーマーに変化出来るんだ!!」

 

 それはかつてのレプリフォース大戦の際、自身とレプリフォース将校である実兄のカーネルとの板挟みの果てに対立せざるを得なくなり、アイリスは討たれた兄のデータを使用して今のライドアーマーのような姿に変化、ゼロと対峙した事があった。

 彼女自身は戦闘用では無いが、元々カーネルと合わせて一人のレプリロイドとして設計された事もあり、その名残で兄のデータを使用する事で強力な戦闘力を発揮する事が出来る。

 して、その彼女はゼロを庇うべく今正に武器を発射せんと構えていたVAVAのブラウンベアを羽交い締め!

 

「なっ――――貴様ぁ!?

「やめろVAVAぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 驚くVAVAにゼロが慌てて止めに入るも、不意を突いた一瞬の出来事に間に合うはずも無くブラウンベアから大量の弾薬が発射! それは全てそのまま覆い被さるように押し倒したアイリスの身体に爆ぜ――――彼女を巻き込みブラウンベアは爆発炎上!

 さしものお騒がせイレギュラーハンター3人も激しく動揺し言葉を失う。 すると爆風の中から空中に舞い上げられるは煤だらけのアイリス。 存在に気づいたゼロは彼女が宙にたたきつけられる寸前に肩と膝の裏に腕を回してキャッチ!

 苦しそうにか細くうめくアイリスだったが、幸いアーマーを身に纏っていたようで傷は浅く、ただ気を失っているだけだった。

 

「ぐ、ぐおお……!!」

 

 VAVAもまた一歩遅れ、立ち上る爆煙から煤こけた姿でよろめき立ち上がる。 その姿を3人は憎々しげに鋭い目つきを送り、恋人に危害を加えた憎き敵にゼロはかつて無い程に鋭い目つきで睨み付ける。

 

VAVA!! よくもアイリスをやってくれたな!? 人質に手を上げるとは見下げた野郎だ――――」

「だああああああああああああああ!!!! しまった、うっかり人質巻き添えにしちまったぁ!! えらいこっちゃでえええええええええええッ!?」

 

 恨み節をぶつけるゼロだったが、対するVAVAは特にこちらのリアクションに気づく訳でも無くひとりでにパニックを起こす。 どうやらアイリスを巻き添えにするのはVAVAにとっても本意で無かったようで、他ならぬ自分自身が一番激しく混乱しているようだった。

 

「「「(あ、うん。 こいつやっぱ悪役向いてないわ)」」」

 

 ゼロはアイリスをひとまず離れたベンチの上に寝かしつけてやると、素早くエックス達の元へ戻る。 燃えさかるブラウンベアの側で頭を抱えて自責するVAVAは隙だらけ、このつまらない茶番劇をさっさと終わらせるべく3人は互いに無言で首を縦に振ると、何も言わずとも事前に照らし合わせたかのようにエックスとアクセルは武器を展開する。

 

「「ファイナルストラーイクッ!!!!」」

 

 エックスとアクセルのバスターとバレットの波状攻撃!! 無防備のVAVAに極太のレーザーと雨あられのような光弾が無慈悲に炸裂!!

 

「アババーーーーッ!!!!」

 

 激しい爆発に再び巻き込まれ、身体で大の字を描いてアイリスよりに幾分間抜けな姿で空中を舞うVAVA! そしてトリを飾るべく、破砕したブラウンベアの輪状になった破片を拾ったゼロが飛び上がって追撃!

 

「これで終わりだVAVA!! 花壇の肥やしになりやがれッ!!!!」

 

 VAVAよりも高く飛び上がり、彼の頭にかぶせるように輪っかを叩き付け――――そのまま共に花壇へ落下!! VAVAの下半身は咲いている色取り取りのポピーの花を避けつつも花壇の土に埋没!!

 一方でゼロは膝で衝撃を受け止め、そのまま華麗にバック転を決めて膝をついた――――戦闘終了!

 

「フン、汚い奴程よく花が育つもんだな」

 

 花壇を一瞥しゼロは皮肉の言葉を放つ。 土に埋まり首から上を輪っかで縁取るVAVAのシルエットは、汚れた心を栄養に育った一輪の花のようであった。

 

「こ、これで勝ったと思うなよ……? 何度俺の残骸で地を耕そうが……悪の……華を……咲かせて……や……る……はい死んだ!」

 

 力尽き頭を垂れる瞬間、面白くもなんともないリアクションと共にVAVAは他界。 しかしこれまでの事を考えると、ここにいる某復活のハンターの如くいずれまたひょっこり生き返る事は容易に想像がつき、気が滅入るような思いの3人。

 ゼロはある意味で似たもの同士な紫色の悪の華に向け手向けの言葉を贈る。

 

「華なんていくらでも摘んでやるぜ」

 




 次回、短期連載もついにエピローグです。 ここまでお付き合い頂いた皆さん、オチまでもうしばしのお待ちを!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。