ロックマンZAX GAIDEN   作:Easatoshi

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 短編ですが実質3ヶ月ぶりの新作……今回も実験的に色々やっていきます!



エレクション・インポッシブル
第1話 ※


「ここが『(めずら)しい(たま)』……略して珍玉(ちんたま)

「のっけから下ネタはやめなよッ!!」

 

 目的地に着いて早々、意味ありげに看板の文字を略すゼロにアクセルは怒りの声を上げる。

 

 正午をもって今日のハンター業務を早々に終えた(実際はデスクワークの大半を上手い事言って押しつけた)ゼロを引き連れ、同様に面倒な仕事を済ませたアクセルは車で街に繰り出し、彼が口にした『珍しい玉』なる店の前に来ていた。

 和のテイストを取り入れた宝石店で、赤い瓦張りに壁面に金があしらわれ、玄関であるガラス張りの自動扉の上に、黒く縁取りされた白いポップ体で『(めずら)しい(たま)』と書かれた木製の看板が堂々と客を見下ろす格好だ。

 して、この微妙に日本と中国を勘違いしたような雰囲気の、しかし良いとこの服装に身を包んだ乗客が、入り口越しに見える宝石店にゼロを連れてきた目的とは?

 

「しかしなあ、アクセル。 いくらアイリスの機嫌取る為だからって、何も行った事もない宝石店に来てもなぁ……」

「ゼロが何度も怒られてるのに、誰彼構わずバスターおっ()ててちょっかい出そうとするからじゃない!」

「そりゃ、俺のバスターは世の女性達の共有財産だからな――――」

懲りねぇな! だからキレられるんだよ! ……いい? こうなったらちょっと良い物で恋人の証でも作っとかなきゃ、()()()()通りまた股間潰されるよ?」

 

 アクセルからの言葉にゼロは胸を張ったまま僅かに肩をふるわせ、少しの間を置いて無言で頷いた。

 

 留まる事の知らないゼロの好色っぷりは、遂にはバスターの使用権そのものをアイリスに握られる事になった……筈だったのだが。

 しかしゼロはそれを理解しても、彼女の目の届かない所で言い寄る女性に対し、自前のバスターの試し撃ちに協力して貰おうとしては、仲間に止められるのを幾度となく繰り返した。

 当然だがそれはアイリスの逆鱗に触れ、次やったら今度こそバスターをもぐと最後通告を受けてしまったので、ご機嫌を取る為に高価な宝石を謝罪と共にお納めいただく運びとなったのだ。

 

 そして今、エイリアから宝石の選び方をレクチャーされたアクセルが同伴する形で、店の中へと足を運ぶ二人。 

 

<イラッシャイマセドスエ>

 

 入店時、電子マイコ音声と共に空調の効いた冷たい空気が出迎える。

 松やさざ波を模った浮世絵の描かれた壁をバックに、正面には花魁の格好をした店員と、宝石の飾られているだろうショーウィンドウ。 この絶妙な()()()()()()ムード漂う店内に軽く脱力するはアクセルただ1人。 思わず周りには聞こえないようにか細い声でぼやかずにはいられない。

 

「……本当に大丈夫なのこの店?」

  

 エイリアに勧められるままに足を運んでみたものの、常識人には否めない胡散臭さはアクセルに疑問を抱かせる。 何よりこの作り、自分達のせいで過去に文字通り大炎上させたあのスパ施設を彷彿とさせる。 嫌な思い出を振り払う傍ら、ゼロは何一つ疑問に感じる素振りを見せず、感心したように店内を見回していた。

 

「成る程、お前の言った通り人気店なのも納得だな。 骨の髄までザ・ジャップって感じだ」

しれっと日本の悪口言うなよ! ……どこが納得なのやら、まあいいや」

 

 聞けばゼロはエックス共々、1ヶ月前に日本中をお騒がせした『IS学園旅客機テロ事件』……その発端となった大阪旅行にて、実に日本を勘違いした外国人……を一周回って馬鹿にしたようなバッタモンばかりを、まさかのお土産として買って帰ろうとしていたらしい。

(幸い)現物は先述のテロ事件と、それに付随する様々な珍騒動で全てオシャカになってしまったようだが、まあ彼らのなんちゃってハンターっぷりを間近で見続けていれば、根っこがズレてりゃセンスもズレるのは致し方がないと、腑に落ちないながらも無理矢理納得させる事とした。

 

 兎に角宝石やそれを使ったアクセサリーを選んで、さっさと用事を済ませて自由になろうとアクセルはショーウィンドウに目を配る。

 そこでアクセルは思わず目を丸くする。 煌びやかで色とりどりな宝石の加工は見る者を惹きつける艶、あるいは透き通るような深みを持ち、土台となる金や銀の細工は複雑ながら和のテイストが取り入れられ、力強さの中に優しげな印象が籠もっているようにも感じられた。

 

「(あれ? 店舗の造りほど胡散臭くない……寧ろ何て言うか、正当な和洋折衷って奴?)」

 

 アクセルに宝石に対する教養や美的感覚など持ち合わせていない。 自他共に認める素人なのは疑いようもないが、そのアクセル自身をしてはっきりと、興味を引かれずにはいられないと実感した見事な細工。 常識人の部類だが偶にズレている一面を持つエイリア、そんな彼女がお勧めしたこの店は、見た目に反して『本物』を扱う一級品だったらしい。

 頷いて素直に疑った事への反省と、エイリアの美的感覚を見直すアクセルだったが……。

 

「(この店舗のガワは一体何なんだろうなぁ……)」

 

やはり店舗のデザインをして乾いた笑いを禁じ得ない。 職人と経営陣との擦り合わせが上手くいっていないのか、あるいは美を知る本物だけが入れるよう意図的にデザインした()()()()()なのか。 憶測の域をでないものの、アクセルは考えずにはいられない。

 

「って、僕1人だけ見て感心してても仕方無いよ! ゼロ!?」

 

 思わず1人ショーウィンドウで考え込んでいたアクセルだが、つい忘れていた本来の目的を思い出しては、その目的の渦中の人物であるゼロの姿を振り返る。

 玄関に置いたままの彼だったが、しかしそこに彼の姿は見当たらず。 少しだけ店内に目配りをすると、当然のように店内の端にある通路に足を進める、見知った金の後ろ髪が。

 反射的に声をかける前に、アクセルは通路の入り口に描かれた表記に目をやる。 通路の通じている先は……従業員の控え室と、男女別に上下で分けられたトイレ!?

 

「ちょ、ちょっとゼロ!? トイレなんて行くロボットはドラえもんぐらいだよ!?」

 

 

 

 

 

 

 不審な気配を感じた。 ゼロはこの店に来た目的をそっちのけに、用もないトイレの方へと足を進めていた。 店内の規模に対して嫌に長い通路にうんざりする思いだが、無論レプリロイドの彼が催した訳ではない。 ゼロは確かに感じ取っていたのだ。 目で見たり、データで捕らえられない何かを。 悠然と突き進む先にそれはあった。 女子トイレの入り口が。

 ……仕方が無いのだ。 男子禁制のこの中(聖域)から、確かに漂う邪悪なイレギュラーの気配が。 我こそはイレギュラーハンター、奴らから罪無き市民を守る剣にして盾。 その使命を果たす為ならハンターとしての矜持にかけて、法や倫理さえも背かねばならない……否!

 

「俺が、イレギュラーハンター(法律)だ!」

 

法を執行する者……つまりは全ては許されて、ゼロは自分の信じる正義を貫く為、迷う事無く女子トイレに一直線に迫り――――

 

「へんたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッ!!!!」

「ギョギョォォォォォォォォォォォッ!!!!」

 

――――女性の悲鳴と同時に、緑のアーマーに身を包んだ太ったレプリロイドが女子トイレから叩き出されたではないか!!

 

「おぅふ!! な、何だ!?」

 

思わず跳び退くゼロ。 叩き出されたレプリロイドを恐る恐る見てみると、顔面に殴られた痕跡があり、鼻血らしき真っ赤なオイルを流して悶絶しているではないか!

 

「む、ムハッ! い、いかん!! 一先ず退却だああああああああ!!!!

 

 そしてレプリロイドは慌てて立ち上がり、一目散に走って逃げようとゼロの隣をすり抜けた。

 

「どこに行きやがる」

「ンギョッ!」

 

 すかさずすれ違いざまに足を引っかけ、レプリロイドを転倒させるゼロ。

 こかした相手を振り返り、眉をひそめた。 ……この男には見覚えがあった。

 

「本土まできて覗きか、ボロック」

 

 ゼロにはこのレプリロイドが、かつてギガンティスなる島で、リベリオンと名乗る反乱組織の幹部を務めていた男だと言う事を記憶していた。

 

「ぬはっ!! お、お前はゼロ……!!」

 

 部下を多数率いる立場ながら組織やボスへの忠誠心に疎く、己の利が為に保身と打算ばかりを考えた卑劣漢……『ボロック』なるレプリロイドだと。

 

「何やってやがった? 今女子トイレから叩き出されたみたいだが?」

「い、いやあ……ちょっとその、何て言うか……男子トイレが使えなくなってたみたいで、その……」

「この人変態です!! 部屋から出ようとした時に下の隙間から覗いてたんです!!」

   

背後を軽く流し見ると、ボロックに覗かれたと思わしき女性が怒声を上げている。

 視線を戻せばボロックが汗を流して引きつった笑顔を浮かべていた。 そもそもが叩き出された場面を目撃しているゼロにとって、奴がいかがわしい真似をやらかしたのは疑いようのない事実だと確信していた。

 

「俺が居合わせたのが運の尽きだったな。 覚悟して貰うぜ」

 

 首を回し、握りこぶしを鳴らして威嚇するように迫ると、ボロックはへたりこんだまま後ずさりする。

 

「み、見逃してくれませんかねぇ?」

「俺の本職を知ってて言ってるのか? ふざけやがって」

 

 一歩一歩にじり寄る度に距離を開け、遂に背を壁にぶつけるボロック。

 逃げ場を塞ぐように立ち塞がっては、投降を促しにかかるゼロ。 首を横に振って何かを考えるような仕草をするボロックだが、不意にある提案をゼロに持ちかけた。

 

「そ、そうだゼロさん! アナタが実はエッチな事に目がないのは知っていますよ!? ワタシを見逃してくれたら、今回のも含めてとっておきの映像を分けてあげる事もやぶさかじゃないですよ!?」

 

 見苦しい提案に、後ろにいた女性が怒気を漂わせて迫ろうとするが、ゼロは腕を横に出してそれを制す。

 

「見苦しいなボロック。 俺がそんなつまらない提案に応じるとでも思ってるのか?」

「ファッ!?」

 

 提案を一蹴し、吐き捨てるように告げるゼロ。 かつて()()()からイレギュラーを逃がしたゼロらしからぬ、卑猥な話に一切の隙を見せる様子はない。

 

「馬鹿も休み休み言え。 とっとと拘束させて貰うぞ」

「そんな! 話が違う!!」

「フン。 呆れて物も言えねぇ」

 

 目を見開き、ゼロは困惑するボロックに畳み掛けた!

 

「そんなもん、お前を捕まえてからじっくり検めればいい話だろ!!

「結 局 見 る ん か い ッ ! !」

「ペサップ!!」

  

 背後にいた女性の鋭いチョップが、ゼロの脳天に突き刺さった!

電子頭脳を揺るがす衝撃に変な声を上げる彼だったが――――

 

「――――ぬはっ!?

 

 突如形容しがたい痛みが、ご自慢のバスターが収まる下腹部を駆け巡った!

 思わず股間を押さえ、悶絶した面構えで地面にうずくまるゼロ。 頭を叩いた女性やボロックもこれには驚きを隠せない……なんで股間!? そう言わんばかりに。

 

「……チャンス!!

「あ、コラ待て!!」

  

 一瞬ゼロに気を取られたボロックだったが、期を逃さずにゼロの脇をすり抜けて逃走を図った! イレギュラーの動きに気づいた女性が追いかけるが、流石は元幹部。 ボロックは女性の反応をもろともせず、さっさと出口に続く曲がり角へと逃げていった。

 

ああもう!! 何でこんなに道が長いんだよ――――」

 

 遅れてやってきたアクセルが曲がり角から姿を現したものの、逃げる体勢の整ったボロックの反応は早い。

 

「ボエェェェェェェェェェェッ!!」

「うへぇ!? な、何このひどい歌――――わぁ!!

 

聞くに堪えないボロックの音痴な歌声に、アクセルが耳を塞ぐも束の間、瞬く間を利用してタックルをかましアクセルを転倒させた!

 

「ムヒョヒョヒョヒョッ!! 逃げるが勝ちさぁ!!」

「ボロック!? ――――一体何がどうなってんのさ!?」

 

 歌を聞いてしまった女性は不快感からか昏倒し、アクセルは何とか起き上がりながらも酷い立ちくらみを起こしていた。

 

「く、クソッタレ……こんな時にまで『アレ』が出やがったか!!」

 

 この間、ゼロは身に覚えがあるように毒づきながら、ずっと股間を押さえていた。

 

「ちょっとゼロ! 何でボロックがここに!? っていうかどうして股間押さえて悶絶してんの!?」

「り、理由は聞くなアクセル……!! とにかく起こしてくれ、そしてボロックを追いかけろ! そこで倒れてる女を盗撮した現行犯だ!

 わ、分かったよ! よっこいしょ!」

   

立ち上がりに難儀するゼロを、アクセルが肩を貸してくれたおかげで何とか立ち上がった。 ついでに幾分股間の痛みは引いていったようで、少し目が眩みそうだが走って追いかける事は出来そうだ。 幸い倒れた女性はアクセルの後から駆けつけた他の従業員に介抱された。 後で応援をよこすと従業員に一声をかけ、ボロックを追った。

 

 して2人は午後からの余暇を返上し、盗撮犯の大捕物へと移る為に店を飛び出した!

 その際先に逃げたボロックが、道行くドライバーからスポーツタイプの背の低い車を強奪し、間髪入れず走り去る瞬間を目撃! すぐさま奴の後を追うべく店舗裏の駐車場に足を向かわせ、停めておいたパトカーに飛び乗り急発進! 通行人を驚かせたのは申し訳ないものの、大通りへと躍り出てボロックを追跡する。

  

「あいつ! 盗撮と自動車強盗の現行犯、もう言い訳のしようはないね!!」

「あ、ああそうだな! ……やっと治まりやがったぜ」

 

運転席に座ってハンドルをさばきながら、ゼロはようやく引いていった股間の痛みに安堵する。 頻りに股座を気にするゼロに、アクセルは疑念を込めた目線を横目に送りながら問いかけた。

 

「やっぱり気になるよ、さっきからどうして股間痛めてんのさ……ボロックに股間でも蹴られたっての? それとも女の人の方にちょっかい出したんじゃ――――」

違うわ! ……まあ、ツッコミがてら脳天にチョップは食らったが」

しばかれてんじゃねーか! ……で、何だっての?」

 

 嫌に食いついてくるアクセルに対しゼロは、少し目線を泳がせこう答えた。   

 

「つまりその……アレだ。 自前のバスターの位置(ポジション)、略して()()()()がズレちまってな」

だから意味ありげに略すなっての!! たったそれにしては随分痛がってたみたいだけど?」

「俺のバスターは位置取りが大事なんだよ。 まあ、そう言うことだな」

 

 あやふやな態度でゼロは返答するが、アクセルは白い目線を送る。 どう見ても信じてくれていなさそうだ。

 

「もうそれでいいや! とにかく今はボロックを追おう! ――――あ、あいつ信号無視して曲がってったよ!」

    

アクセルが指さす正面の十字路、ボロックが盗んだスポーツカーが対向車に構わず、スキール音を鳴らしながら乱暴に車線を割り込んで右折!

 逃がすか! そう言わんばかりに、ゼロも速度を緩める事無く交差点に進入! ボロックの乱暴な割り込みでとっちらかった対向車が道を塞いでいた為、進入自体のリスクはそれほど高くはない。 この際、警察無線から仲間のハンター達の連絡が入る。

 

<犯人と思われる人物はスポーツカーを奪った後交差点に進入し逃走中! 車線に強引に割り込んで交通事故を起こした! 周りの事などお構いなしだ!! 何て奴だ!>

 

 

 

 

「 た ま 」

 

 

 

 

 ゼロは唐突に、白目を剥いて目一杯ハンドルを切った。

 

「ちょっ!? ゼ、ゼロ!? 何やって――――ワアァッ!!

「――――ハッ!? あ、あぶねぇ!!」

 

 切りすぎたハンドルに釣られてリヤタイヤがスリップ! カーブを曲がりきった際に腰砕けになり、テールランプを左右に振って踊りながら、正気に戻ったような様子でゼロはとっさにハンドルを反対方向に当てて姿勢を制御! 何とか車体は直進性を取り戻し、何事もなく追跡を再開した。

 

「や、やばかった……どうしちゃったんだよ! あんな雑な運転して!!

「……い、いや、何でも無い」

「ウソばっかり! 今不吉なリアクションしてたよ!?」

  

 抗議するアクセルにゼロは歯切れの悪い返事しかできない。

 見え見えの嘘なのは分かっている。 意識が飛んで()()()()()()()が噴き出してきた自覚もある。

 

「(まずいぜ……もうちょっとだけ持ってくれ!! 頼むから些細な事で反応しないでくれよ!?)」

 

 そして、その原因についてもゼロははっきりと心当たりがある。

ゼロは祈った。 これ以上()()が肝心な時に悪さをしないでくれとただひたすら願いながら、神妙な面持ちでハンドルを握る両の手に力を込める。

 

「本当に大丈夫なの――――ってアイツ!!

 

 アクセルが先行するボロックの車に指を指す。 そこには足首1つ分の高さの段差を強引に乗り越え、人の行き交う歩道に割って入っていく光景が繰り広げられた!

 人命などお構いなしな暴走自動車の突撃に人々は逃げ惑い、慌てて開かれる歩道をボロックは乱暴に突っ切った。

 

「もう何でもありってこと!?」

「クソッタレ! こうなりゃ付き合ってやるぜ!!」

 

 危険は承知でゼロもボロックに続く。 段差の乗り越えに身体を揺すられながら、逃げるイレギュラーとの根比べに挑む。

 

「ここまでさせやがった落とし前は――――うん!?

 

まさに歩道に突入したその瞬間だった。 ゼロがスカートを穿いた若い女性の側を通り抜けた際、車の巻き起こす風圧にスカートがめくれ上がり、僅かに見えた黒いレースの生地を慌てて隠したのだ。 古き良きジャパニーズ漫画のお色気シーンを彷彿とさせるまさに一瞬の出来事を、戦いの中で研ぎ澄まされたゼロの直感は見逃さなかった。 どこからともなく携帯端末を取り出し、奇跡の瞬間を閃光と共に端末の記憶媒体に焼き付けた。

 決定的な場面を見事収めたゼロは得意げに頬をつり上げ、助手席の相方の怒りを買った。

 

コラァッ!! 言ってる側からまた余計な事して!!」

「余計だと? 馬鹿言え! あんな絶好のシャッターチャンス取り逃す奴がどこにいる――――」

 

 操縦ミスもなんのその、立て続けによそに気を取られ、パンチラをしっかりとカメラに収めるヒーローらしからぬ姿に、アクセルから文句を言われるも束の間。

 

 一度は治まったはずの股間の痛みが再発したのだ。

 

「うっひょおおおおおおおおおおう!?」

「ファッ!?」

 

 ハンドルから手を離し、無我夢中で痛む股間を両手で押さえるゼロ。 運転中に両手を離す仲間のあり得ない行為にアクセルは驚愕を隠せない。

 

「しまったぁぁぁぁぁ……ついいつものノリでやっちまったぁぁぁぁぁぁ」

「ゼロ! ゼロ!? ちょっと!? ハンドル!! ハンドル離したら――――うわぁ!!

 

 パニックを起こしかけるアクセル達の目前に迫るは、逃げ惑う人々の間を割るように現れた見事な街灯の姿だった。

 

「ゼロ前見て!! 街灯! 街灯迫ってる!! ぶつかる!! ぶつかるぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 ゼロ白目を剥いて悶絶し身動きせず。 慌ててアクセルがハンドルに手を伸ばそうとするが、律儀に締めたシートベルトに身体が阻まれ、指先が当たる程度の距離までしか届かない! 減速もままならぬまま迫る街灯! 最早間に合わない――――

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ぶじゃあああああああああああああ!!!!」

「おどおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

  

――――激突!

 

 イレギュラーハンター謹製の高い防弾能力を持ったパトカーであるが、金属製の無駄に頑丈な街灯と衝突し、ひしゃげるフロントバンパーとボンネット。 だけに飽き足らず、薙ぎ倒された街灯はぶつかった反動でパトカー側に倒れ込み、パトランプとフロントガラス共々ルーフパネルを真っ二つにたたき割る。

 ゼロとアクセルはガラス片の洗礼を浴びながら胴体を前後にシェイクされ、それでもなお勢いを殺せぬパトカーは、街灯の直ぐ後ろにある地下鉄の入り口に突入。

 降りる階段の先に見える、入り口に対して斜めを向いた改札口に一直線に階段落ちを披露しながら、異変に気付いて慌てて待避する駅員達の背中を突っつき回すかの如く、受付のある改札口に飛び込んだ!

 機材という機材を完膚なきまで破壊しつくし、受付に突き刺さったパトカーは……エンジンの停止と共にようやく巻き込み事故の連鎖を終わらせた。

 

「な、何でこうなるの……ガクリッ」

 

 アクセルはガラス片の煌めくダッシュボードに突っ伏して気絶した。 それは事故を招いてしまったゼロも同様だった。

 

「クソッタレ……アレさえついてなきゃな……グフッ」

 

 意味深な呟きを残して。

 




 シーズン3完結時に赤バンブル氏(https://syosetu.org/?mode=user&uid=97866)にコラボの話を持ちかけて頂いたので、その方の作品のクロス先にあやかり、トイレに行くドラえもんのシーンをリスペクトしました!<嘘>

 と、言う訳で久しぶりにノリノリで、しょうもないジョークに始まる短編書いてみました。 今回は何と驚きの、作者お手製の挿絵付きです!
 今書いているゲフンゲフンな小説の、第一話を仕上げるのに大分エネルギーを使ってしまいましたので、真面目に考えず半ば勢いでプロットを切っちゃいましたw
 実質1週間ぐらいで作った話じゃなかろうか……そんなガバガバシナリオですが、いつも通り下品でおバカなお話を是非ご堪能下さいな!


 あと、試みとして作者謹製の挿絵をちょくちょく試験的に乗せていこうと思います。
 好評でしたら今後も描いていきたいと思いますので、是非とも褒めてやって下さい何でもしますから!(何でもするとは言ってない)

 それでは、今月もまたよろしくお願いします……でわ!
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