ロックマンZAX GAIDEN   作:Easatoshi

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 相変わらず酷い話は続く……第2話行きます!


第2話

 

 ボロックを取り逃がして7時間、ハンターベース内にある警察病院のベッドの並べられた一室にて、アクセルとゼロは収容されていた。 その窓越しに見える風景はすっかり日が沈み、大通りを行き交う車のヘッドラップとビルの明かりが街を彩っていた。

 2人は事故の衝撃で痛む全身を、レプリロイドの医療用バンテージに包まれベッドに寝かしつけられ、事故の報告を受けて心配しにやってきたエックスを前に、気を失う直前の状況を説明している所だった。

 

「……全然話が見えないんだけどな」

「僕も何が起きたか分かんないんだよ……ハァ

 

 アクセルは事のいきさつをエックスに説明するも理解を得られず、口にした自身さえも事態を把握していないようで、深くため息をつくしかなかった。

 事故を起こした当事者のゼロはこの間、アクセルのすぐ隣のベッドに寝かしつけられているのに会話に参加せず、口を噤んではアクセルやエックスと目線を合わせようとはしない。 その表情はバツが悪そうで、一番話をするべき本人が何も言いたくないと、頑なに意思表示をしているようにも見えた。

 

「ゼロ……別に今更責めたりなんかしないから、アンタもちゃんと会話に参加してよ」

「そうだぞ? なんだってアクセルにさえ何も言わないんだ? 聞けば痛そうに股間を押さえて事故に繋がったって……」

 

それでもアクセルとエックスは食い下がる。 口ぶりや態度からするに、ゼロは自身の変調について心当たりがあるような素振りを見せている。 ならばこうなった原因を自分の口から説明してくれなければ到底納得は行かない。 何度も会話の合間にゼロに問いかけていたが目を逸らすばかりで……不意にゼロはうんざりしたように口を開く。

 

「そんなに聞きたいか……分かったよ」

 

問いかけに応じなかったゼロが、渋々とした様子だがようやく答えてくれる素振りを見せた……のも束の間、ゼロは痛む身体で身を起こすと、掛け布団を取り払った。

 

「だがその前に……だ」

 

 そして何をするかと思えば、腰元を覆う白いパンツ……もといパーツをおもむろに膝下へとずらしたのだ。 余りに唐突に大事な部分を露出する仲間の行動に、エックスとアクセルは唖然と目を見開いた。

 

「な、何やってんのゼロ――――」

「俺の自前のバスターを見てくれ。 こいつをどう思う?」

 

心底嫌そうに親指をそこに突き立てるゼロに視線を誘導され、好き好んでみるものでも無いゼロバスターに目をやった。 そこにあるのは10センチ前後の、平均値からは幾分小柄な部類に入る可愛げのある部類に入るバスターだった。

 

「「すごく……小さいです……」」

 

 二人してつい本音が漏れてしまった。 日頃注意深く見ていたつもりはないものの、ことあるごとに自慢しているバスターにしては、嫌に小さくなった気がしたと感じ取った。 そこにエックスとアクセルは違和感を覚えた。 記憶では、あと一回りや二回りはもう少しサイズが大きかったはず……ゼロは心底辟易したように、その原因を答えてくれた。

 

「随分愛嬌のあるサイズに縮んじまっただろ? ……元々はもっとあったんだぜ、こいつ」

「う、うん……」

 

 そんなの僕に言われても……アクセルは引きつった表情で相づちを打つと、ゼロは下げたパーツを元の位置に戻して話を続けた。

 

「……ケインのじじいにやられたんだ」

「「へっ?」」

 

 思いがけない人物の名が彼の口から語られ、アクセル達は首を傾げた。

 

「バスターの射撃訓練の事でな……ああ、腕の方な?

 

 そんなのは分かってる。 わざわざ言わなくてもと2人して引き気味に感じながらゼロの次の言葉を待った。

 

「腕が鈍らないように久しぶりに射撃場に行ったんだが的を切らしててな。 代わりと言っちゃ何だが、あのじいさんのBONSAIを的代わりに使ったんだ……そしたら見つかってパイルドライバーお見舞いされてな……」

「バカじゃないの?」

 

 自ら墓穴を掘る行いをしれっと語るゼロに呆れるしかないが、そんなアクセル達のリアクションに構わず話し続けた。

 

「そしてペナルティと言わんばかりに、気絶している間にお仕置き回路なるモノを、身体の中に仕込まれちまったんだ」

 

 げんなりとした様子で語るゼロの様子に、アクセルはなんとなく察しがついた。

 

「ひょっとして股間の痛みって言うのは……」

「ああそうだ。 俺がエロい事考えたりやらかしたりする度に、自前のバスターが1ミリずつ縮む装置だ!」

「「ぶっ!!」」

 

 笑うつもりはなかったのだが、余りに間抜けな装置にアクセルとエックスはつい噴き出してしまった。 ゼロはベッドの手すりを叩いて抗議する。

 

「おいてめぇら! 笑い事じゃねぇぞ!!」

「ご、ごめん! でもなんて言うか、その!」

「馬鹿な事してそんなしょうもない装置取り付けられてたら……ぶふぉ!」

 

 堪えようとしても堪えきれず、むしろ強く意識をしてしまう事で余計に笑いのツボを突いてしまった。 自慢のバスターが縮むケイン博士からのお仕置き、それは自他共に助平を謳うゼロのいたずらに対し、ある意味で相応しい報いではなかろうか。

 

「ああクソ! こんな事なら言うんじゃなかったぜ!」

「悪かった! 悪かったゼロ……ぶふっ!」

 

 謝りながらも噴き出してしまうエックスに、ゼロは間違いなく不愉快な気分だろう。 本人としては切実な問題であるにも関わらず、仲間の失笑を買ってしまい不貞腐れてしまう。

 

 しかし彼らは……特にアクセルはこの時ある事を失念していた。 事故に繋がる追跡劇のさなか、ゼロがふとした拍子で股間を痛める以外の不調を引き起こしていた事を。  

 

「気分はどうだったかしら?」

「ああ、久しぶりの良い夜風だったよ」

 

 そしてそれは今し方部屋に戻ってきた、同じ部屋を共にする車椅子に乗ったハンターと、彼の車椅子を押して介助する女性看護師との会話のやりとりによって、否応なく思い返される。

 

「貴方は働き過ぎだったもの。 こうしてゆっくりとした時間を過ごすのも大切よ?」

「全くだ。 (たま)には夜の街を散歩するのも悪くない」

 

 

「 た ま 」

 

 

 たった一言、ゼロの口から呟かれたその言葉は、場を剣呑としたムードに包み込むには十分だった。 呟きを耳にしたエックスとアクセルの双眸には、はっきりとその姿が映し出されていた。

 朗らかに談笑していた看護師達も、瞬時に恐れおののいた目つきをこちらに向ける。

 

 そう、皆一様に視線を注いでいた。 白目を剥いて肌を土気色に染め上げた、生気の無いゼロの姿へと。

 

「……ゼロ?」

「――――はっ!?

 

恐る恐る声をかけたエックスに反応するように、ゼロは我に返ったようだった。 慌てて周囲を振り返り、自身がようやく怯えの色が籠もった目線を向けられている事に気づく。

 

「……また俺何かやっちゃったか?」

「うん、思いっきりなりかけてたよ。 妖怪タマヨコセに」

 

 謙遜風イキリを彷彿とさせるようなゼロの口上に、容赦なく残酷な現実を突きつけるアクセル。 ゼロは「うげぇ!」とよく分からない悲鳴を上げ、頭を抱えて項垂れた。

 

「……そう言えば、追跡中にもなりかけてたっけ……交差点曲がってる最中に仲間からの無線連絡来たと思ったら、急にゼロが操縦ミスしたんだ」

「文脈に『た』と『ま』の連なる言い回しがあったんだろうな……でもどうして?」

 

 二の轍は踏まないように「たま」と繋げて言わないように気をつけながら、何故ゼロが再び妖怪になりかけているのかを考え……それはアクセル共々あっさりと察しがついた。

 

「……ひょっとして、股間縮んでるせいで妖怪に逆戻りしかけてるんじゃ?」

「さっき見た時はかなり小さくなってたな……元からどれぐらい縮んだ?」

 

 エックス達は問いかけると、ゼロは項垂れたまま目線を合わせようともせずに答えた。

 

「元々18㎝以上はあった……だがじじいに回路取り付けられたこの2日間、昼間の事故も入れたらもう8.1㎝は縮んだ。 1/3縮んだ辺りでとにかく下ネタねじ込んだり、時々意識が飛んじまうようになっちまったが……流石に気のせいだと思いたい

「しっかり下ネタ使ってるし意識も飛んでるよ!! 現実から目ぇ逸らすな!!」

「2日間でそんなに縮んで問題出てるんだろ!? 本当に大丈夫なのかいゼロ!?」

 

 股間のアレをなくせばまたゼロは妖怪と化してしまう。 そのことがたまらず不安でアクセルとエックスはゼロに詰め寄るが、当の本人は引きつった笑いを浮かべながら、無理にでも余裕を取り繕おうとする。

 

「……大丈夫だ、多分。 ()()()()()()()()()()()()

 

エックスとアクセルの動きが止まった。

 

()()って……何さ」

 

 ぎこちない表情の動きでオウム返しに尋ねるアクセル。 まだ何か問題あると言わんばかりに聞こえたゼロの返しに、一層不安を煽られて仕方が無い。

そして不安は的中し、しばしの後に彼の口から出た言葉はもっと良くない情報だった。

 

「元のサイズの半分……9㎝に達したら俺のコレ爆発するんだよな

 

 凍り付く室内。 残り半分どころ9ミリ……実質猶予なんて無かった。

 

「フッ、だが安心しろ。 スケベを自称する俺だからこそ、誰彼構わずおっ勃ててセクハラするような愚かな真似はするまいっておいエックスにアクセルどうした2人して一体何のつもり――――」

「「今すぐ隔離だああああああああああッ!!!!」」

 

 仲間の閉じ込めを決意した2人の行動は早かった。

 車椅子のハンターを介助していた女性看護師も交え、3人がかりでゼロを押さえつける。 もがいて抗議するが問答無用で部屋から飛び出すように連れ出し、強引に病棟の奥にある空き部屋の個人病室へとなだれ込む。

 

 そしてエックスは中に入るなり、ゼロのアーマーを問答無用で引っぺがし、ヘルメット以外全裸にヒン剥いたのである!

 

「おいエックス!! 俺のアーマー――――ぬおっ!!

 

 股間に規制のZマークを浮かべながら怒気を露わにするゼロを、更にアクセルと二人がかりで空いているベッドに押さえつけ、鎖で腰元を縛り付けて身動きをとれなくする。

 極めつけにゼロを置いて部屋を出ると、エックスは懐からビックリマンシールを取り出した。

 

南無大慈悲救苦救難広大霊感白衣観世音……封印!!

 

 印を結びながらゼロの十八番とも言える白衣観音経を唱え、鍵の差し込み口に貼り付けた!

 言わば封印のお札代わりだが、貼り付けたのは『スーパーゼウス』……エックスのお経が功を成したのか、シルバーの部分の煌めきが普通のそれより強い気がした。

 室内ではゼロが暴れているが、そんな折部屋を飛び出した際に周囲の人員に呼ぶように頼んだ、警備の任に就くハンター2名が武装した状態でやってきた。

 

「オイコラエックス!! 人の経文勝手にパクってんじゃ――――」

「ここにいるのは恐るべき妖怪だ。 もし部屋を出ようとしたら迷わず()()()()させて欲しい」

「「了解!」」

  

 聞く耳持たず。 エックスはハンター2名に警備を任せると、アクセル共々額の汗を拭った。

 

「……危なかった。 ゼロが言わなかったらとんでもない事になってた」

「2日で8センチ近くも縮めるようじゃすぐだよ……本当に大事な話しれっと流すんだから」

 

アクセルはため息をつく。 ゼロがうっかりで口を漏らす性格なのは知っているが、今回は皮肉にもそれに助けられる事になろうとは。 エックスは扉越しに、中にいるゼロに声をかけた。

 

「有無を言わさず部屋に閉じ込めたのは謝るよ。 でも今の君の状態を考えたら暫く治療に専念するのが一番だ」

「だからって何も個室に閉じ込める事はねぇだろ!」

「そうはいかないんだ……回路の事はケイン博士に掛け合ってみるから、それまでは辛抱していてくれ。 アーマーはそれまでクリーニングして預かっておくから」

「待てエックス! まだ話は終わってねぇぞ!」

   

 捲し立てるゼロを置いて、エックスはアクセルへと振り返った。

 

「ところでアクセル。 協力してもらって今更だけど、怪我の方は大丈夫なのかい?」

「んー、その事なんだけど……」

 

 アクセルも事故でダメージを負ったはずだが、当然のようにエックスと協力してゼロを個室に運び込んでいた。 怪我は痛まないかふと気になってエックスが問いかけると、アクセルは身体に巻かれた包帯をほどき始めると……ススこけて一部アーマー部分のひび割れや機械が露出した箇所もあるが、車が全損した事故に対しては軽症のようだった。

 

「事故が事故だから大事を取って休めって言われたんだ……それにしても軽いとは思うけど、何て言うか……その」

 

アクセルは少し考えた後、苦笑いをしながら答えた。

 

「ギャグマンガ体質……って奴?」

「何だか納得した」

 

 ジョークと言うには現実離れしすぎているが、散々酷い目に遭って時には絶命していながら、当然のように復活するこれまでのやりとりを鑑みれば、2人して不思議と受け入れられてしまえる気分だった。

 

 その時、ハンターベース全域に突如アナウンスが響き渡った!

 

<こちらエイリア! エックス緊急事態よ! 直ちに出動態勢に移って!>

 

 声の主はエイリアだった! 警報と共にエックスに出動命令が発令される!

 

<昼間に逃げおおせたイレギュラー・ボロックが『ホテル・バンドー』で立てこもってるの! 逃げ遅れた客や従業員が人質として囚われてるわ! 急いで!!>

「何だって!?」

「アイツ……!!」

 

 逃げたボロックが次なる犯罪に手を染めた。 その衝撃的な内容にエックスとアクセルは動揺した。 しかしそこは我らがイレギュラーハンター、エックスはエイリア宛てに無線機を開き、直ちに任務に就く旨を連絡した。

 

「こちらエックス! 了解した! 直ぐに出る!」

「待ってエックス! 僕も出動するよ!」

   

 アクセルは身体に巻かれた包帯の一部を剥がし、動きを阻害しないよう最低限の箇所だけ残して同行を申し出た。 当然エックスはアクセルの申し出に驚いた。

 

「怪我をしているんだぞ? 今出て大丈夫なのか!?」

「ちょっとした援護ぐらいなら問題ないよ! ちゃっちゃと片付けた方がゆっくり休めるし……なんてったって、僕とゼロが逃がしちゃったイレギュラーだから、自分の手で落とし前つけたいんだよ!」

「……うーむ」

 

 流石に実戦にまで駆り出すのは不安だとエックスは悩んだ。 しかし少し考えた後に、既にベテランの域に入っているアクセルなら、今自分に出来る範囲はわきまえるだろうと、彼の意思を尊重する事とした。

 

「流石に突入は無理そうだから、フォローに徹してくれるなら」

「……OK!

 

 アクセルもまた、条件付きでエックスの譲歩を受け入れた。 2人は互いに頷くと、出動準備を整えている駐車場に向かって走って行った。

 

「お前ら勝手に盛り上がるなああああああああああああああああ!!!! 俺も連れて行けええええええええええええええええ!!!!」

「暴れるなよ! 暴れるなよッ!!」

 

 全体重をかけて押さえるドアの内側から、執拗に扉を叩いて開け放とうと抵抗するゼロを置き去りにして。  

 




エックス「当時モノがなくて復刻版のシールを貼った。 許して」
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