オペレーターとして、ギガンティスにて勤務する日々の中で久々に羽を伸ばしたいと、アメリカ本土に旅行にやってきたのが今日の昼下がりの事。
かつて共に戦ったイレギュラーハンターの面々とも会いたいと思い、利用した国際空港やハンターベースとも立地的に近く、正面にはセントラルパークの見える一等地の高級ホテルを奮発した。
そして長旅の始まりと、意中の『あの人』と会える期待にその大きな胸を膨らませるは、桃色に白の毛先がアクセントなショートヘアの女性レプリロイド『ナナ』だった。
楽しい滞在期間を期待してやってきた、ここ『ホテルバンドー』であるが――――
「ギョヒョヒョヒョヒョヒョッ!! 妙な真似をしたら、ワタクシのリサイタルが開催される事になりますよ皆さん!?」
そのイレギュラーハンターと一緒に戦った相手である、以前ギガンティスにて反乱を起こした組織『リベリオン』の元幹部、ボロックによって占拠されていた!
<今すぐに武器を捨てて投降しろ!! お前は完全に包囲されている!!>
「ムヒョヒョヒョヒョッ!! それはこちらの台詞ですなぁ! 妙な真似をすると人質全員をメタクソに痛めつけて差し上げますよ?」
「(ど、どうしてこんな事に……!?)」
外には通報を受けてやってきたイレギュラーハンターの隊員達が敷地を取り囲み、ボロックに投降を促しているが、人質を握っている強みからボロックは一向に怯まない。
そんな中でナナは、ボロックのすぐ側にて身体を縛られて寝かしつけられていた。 そしてボロックの周囲にいる従業員や客らしき人々も、怯えた目でボロックを見て、あるいは震え上がって絨毯敷きの床にうずくまる者もいた。
ナナ自身を含め、このホテルにいる全員がボロックの人質だった。 事件が起きたのはほんの1時間前……シャワーを浴びて浴室を出た所、部屋に何者かが侵入している痕跡を見つけ、通報する前に犯人捜しに部屋を見回し、隠れていたボロックを見つけこれでもかと悲鳴を上げた。
するとボロックは逆上し、タオル姿のままのナナを強引に捕らえ、流れるようにそのままロビーへと躍り出て、ホテルの占拠を宣言したのだ。
勿論ホテルの警備員がすぐさま彼を止めようとはしたが、十八番とも言える耳障りな歌声でこれを一蹴、更にナナが職業柄かつい持ち歩いてしまうオペレート用のマイクを奪われてしまった。 あれは周囲の機材と無線で同期可能な為、既に施設中のスピーカーに連結している為、その気になれば全員を一斉に攻撃する事が出来る。
ナナは横たわりながら、火花を上げて隣に倒れている警備員を見た。
「ギギギ……暴力ハ、暴力ハイケマセン。 暴力、暴力暴力……」
片言で同じ言葉を呟く、緑の装甲に覆われたカメレオン型のレプリロイド。 彼は警備の役職ながら、ホテルマンのスタッフ共々ここに来たばかりのナナを、ぎこちない動きながら親切にしてくれたが、ボロック襲撃の際に真っ先に動いたものの返り討ちにされてしまった。
元ハンターのイレギュラーだったらしいが、話によると『例の青い人』の更生プログラムによって、別人のように善良な性格になったらしい。 折角社会復帰できたのに、このような仕打ちは余りにもむごいと哀れみを向けると、ボロックが不意に振り返ってはこう吐き捨てた。
「ヒョヒョヒョ……かの『ショーツマスター』のカメリーオさんも、こうなってしまっては形無しですなぁ」
「ボウリョボウリョボボボーボボーボボッ!! ピーガガガガガッ――――いっそ殺せ――――ガガガガガッ!! 暴力ハイケマセン」
「まま、哀れなくたばりぞこないはさておいて……」
ボロックはナナの肩を掴んで無理矢理身を起こさせた。 宜しくない手合いに身体に触られる不快感にナナ顔をしかめるも、ボロックはお構いなしにナナの背中を押す。
「妙な考えは起こさないで下さいよ? ……さ、ワタクシと一緒に来て貰いましょうかね?」
「……!!(触らないでよ!)」
そして要求されるままに玄関の方へ足を進めていった。 玄関のガラス扉越しに見える、周辺を取り囲む青と赤、そして強い白の光が取り囲む中庭に向かって。
「(ああなんて事!? こんな格好で人前に連れ出されるなんて……私に乱暴する気なの? ジャパニーズヘンタイエロ同人みたいに!)」
不安に身を震わせながら一歩一歩前に進み、遂に自動扉が開かれた。 イレギュラーハンター達の銃口と熱い眼差しがナナの身体に一斉に突き刺さる――――
ハンターベースを出発して20分足らず、既に事件現場へと近づきつつあった輸送用バン。 アクセルとエックスは、バンの後部席で他の隊員共々現場への到着を待ちわびていた。
「ボロック……今度こそ僕の手でハントしてやる……あいててて!」
最低限の処置は残したがやはり傷口は痛む。 アクセルは思わずアクセルバレットを取り落とし、苦虫を噛みしめたような顔で響く右腕を押さえた。
「グビグビグビッ、ほら……やっぱり無理があったんじゃないか。 グビグビグビッグビセルはグビをしているんだから、病院でグビんでるのがグビグビッ良いんじゃないか? グビグビグビッ」
怪我をおして出てきたアクセルが心配なのか、エックスがエネルギー補給に伝統と実績のあるロボット用サプリメント『E缶』を飲みながら話しかける。
短い時間で急いでエネルギーを補給しようとしているのだろう。 喉を鳴らす音の聞こえる程に勢いよく、液体を身体の中に流し込んでいく様子に、アクセルは圧倒されたのか若干引き気味に視線を送った。
「……エックス……心配してくれるのはいいんだけど、その、何て言うか……もうちょっとゆっくり飲んだほうがいいんじゃない?」
「グビグビグビッ、すまない。 だが今日グビ日、何もグビにして無くって。 時間もグビしてて移動し持ってグビグビグビッ」
「無理に飲みながら話さなくても……」
アクセルの言葉に他の隊員も頷いた。 彼だけではない、隊員達も驚きの色が籠もった目でエックスを見ている。
多忙で時間も圧す中、出動の合間にエネルギーを補給するのは良くある事だ。 E缶の開けたプルタブに口元を押し当て天井を仰ぐエックスの姿自体は、決して珍しいものでは無いのだが……。
「それにね、僕が気にしてるのはE缶を飲む事自体の話じゃなくって……」
アクセルは、エックスが口をつけるE缶を指さして尋ねた。
「そんなに飲んで身体大丈夫なの!? 胴体のサイズ並みにあるけどずっと飲んでるよ!?」
「大丈夫グビ。 問題グビ」
「(オイオイオイ、死ぬわエックス)」
そう、エックスの胴体程の……言うなればドラム缶並みの大きさはあるE缶を!
容量にして200LのE缶の中身を、当然のように得意げに親指を立てて喉に送り込むエックスの体は、一向に腹回りが膨れる気配がない。
アクセルはただただ飲み過ぎを心配するどころか、何故その量が収まるのか物理的に不自然な現象が気になって仕方がない。
「(出発時からずっと飲んでる……激務でエネルギー切れかけてたらしいけど、そう言う問題じゃないよね……一体どこに中身消えてんの?)」
ちょっとずつ間を開けて補給するのでなく、一気に送り込んだ質量そのものが消え失せているエックスの飲みっぷりに、アクセル達は終始圧倒されっぱなしであった。 そうしてエックスの動向に気を取られている内に、輸送車は停止する。
電子音声が車内に響く。 どうやら現場に到着したらしい。
アクセルは気を取り直し、開かれる後部ハッチからの光景に目をやった。 現場となったホテルの敷地内は、剣呑としたムードに包まれた熱帯夜だった。
<今すぐに武器を捨てて投降しろ!! お前は完全に包囲されている!!>
「ムヒョヒョヒョヒョッ!! それはこちらの台詞ですなぁ! 妙な真似をすると人質全員をメタクソに痛めつけて差し上げますよ?」
取り囲む警察車両とハンター達の姿の向こう側から、物騒な言葉のやりとりが響き渡る。殺気を漂わせて拡声器を通して脅しをかけ犯人に投降を促すも、犯人……ボロックと思わしき声も、館内のスピーカーを通して人質との存在をちらつかせ、ふんぞり返っているようだった。
<アクセル。 エックスの言った通り、貴方は無理をしないでサポートに回ってね>
「分かってるよ……」
無線越しのエイリアからの忠告を、アクセルはうんざりしたように返す。 本当はさっさと奇襲の一つでもかけて鎮圧したい所だが、怪我で激しい動きが出来ない事は自分も分かっている。 渋々ながらエイリアの言う通りに従い、一先ずは状況確認に現場と向き合う隊員の一人を捕まえた。
「状況はどうなってるの?」
「っ! ああアクセルかい、よく来てくれた!」
「ボロックの奴、逃げたと思ったら今度は何しでかすつもりなんやら……一体どうしてこんな事に?」
アクセルの質問に、隊員が腕を組んで答えた。
「それが……隙を見て逃げ出した客曰く、覗きらしい」
「えっ?」
アクセルは間抜けな声を上げた。
「女性客のいる室内に侵入して見つかった勢いで、その客を人質にロビーまでなだれ込んでホテル全域をついでに占拠しちまったんだ」
「ごめん、ちょっと流れが分かんない」
混乱するアクセルに、隊員もため息をついた。
「俺もさ。 ……で、犯人は人質に取った女性客の持ってたマイクに目をつけて、ホテル全域に自分の音痴な歌を放送すると脅しをかけてるんだ。 おかげでこちらは手も出せない状況だ」
<……つまらない覗きでこんな大事を起こすなんて……バカね>
話を無線越しに横で聞いていたエイリアの呆れたような発言、犯人の歌で脅すと言う言葉に二の足を踏む警察。 まるで茶番劇のようなやりとりに思えるが、しかし歌で人質については実際に敵として対峙した事のあるアクセル達にとって、ボロックの音痴っぷりは文字通り壊滅的である事は身をもって知っている。 動機はさておいて状況が芳しくないのは確かだ。
……それにしても、女性客が館内のスピーカー全てに、無線で連結できるような高性能マイクを持っているとは……?
「あ、犯人が出てきたぞ!!」
隊員が玄関を指さした。 ガラスの自動扉が開かれ、中から出てくるはふてぶてしく笑うボロックと……スタイルの良い身体を包み込む身の着の物はタオル一丁、恐らく入浴直後を狙われたであろう、桃色の髪に白毛の前髪が混じった……顔見知りの姿だった!
アクセルは驚きの声を上げると同時に合点がいった。
<? アクセル、彼女を知っているの?>
「昔ギガンティスの潜入任務で協力した現地の仲間なんだよ! 優秀なオペレーターだからクセでマイクをいつも持ち歩いてるんだ!」
<! そう言うことね?>
成る程、ボロックがホテル全域に脅しをかけられたのは、彼女の持つ機材を奪ったからだ。 マイクの性能と、彼女自身の高度な演算能力がもたらす適切なオペレートが、アクセル達にとって大きな助けになった事は今でも記憶している。
「ムヒョヒョヒョヒョヒョヒョッ!! そんなチャチなおもちゃを突きつけた所でムダですよ? 人質を傷つけられたくなければ、大人しくワタクシの要求を呑んで下さいな!」
<ッ!! 何が望みだ!>
ボロックは隊員達からの問いに、急に真顔になって答えた。
思いがけない言葉を口にしたボロックに、一同沈黙した。 ホテルを占拠までして何を言い出すかと思えば、パンツとな? 人質のナナは勿論、周囲を取り囲むアクセル含む隊員全てが唖然とした。 ボロックは沈黙を破るように、咳払いをして言葉を続ける。
「正確には、以前ギガンティスの元レジズタンス連中が、あなた方イレギュラーハンター宛に送った荷物の一部ですね。 アレを頂戴したいのですよ!」
<……そのパンツとかの為にこんな大それた事したのか!? バカじゃないのか!?>
「大マジメです!! アレにはワタクシの大事な物が紛れ込んでいたんでしてね!」
呆れたような隊員のかけ声にも、ボロックは堂々とした姿勢を崩さない。 有り体に言えばその様子は変態そのものだった。
<やっぱバカなのね……でも人ごとに聞こえないのが悲しいわ……誰とは言わないけど>
「一応聞くけどエイリア。 レジスタンスが送った荷物って何のこと?」
<……ああ、アレの事ね?>
ため息交じりにエイリアが説明してくれた。
イレギュラーハンターは証拠能力のないものや、受取人の現れない遺失物を整理する目的で、国が抵当に入れて差し押さえた品物と共に、定期的に格安で販売した後に売上金を社会福祉等の資金として還元する、言わばチャリティーセールを定期的に行っている。
その品物のラインナップを拡充する為、つい1週間前程にギガンティスが元レジスタンスの面々が、使われずじまいで行き場を失っていた物資を提供してくれたというのだ。
おかげで品物は3日前から今日の夕方にかけて全て売り切れお礼と相成り、付記し事業に充てる資金が潤ったとの事。
付け加えるとその送られた物資の中には女性用の下着類も含まれていたが、ゼロにばれたりすると堂々とガメたりする可能性もあったので、エイリアの一存でハンター組には内緒にしていたらしい。
ボロックは変態だが、どうしてそんな情報を握っているのか。 何故こんな騒動を起こしてまで回収を目論んでいるのかは謎だが、そこはもうエックスと協力してボロックを倒して理由を問い詰め、何より人質のナナを救出しなくては――――
「……ん? ナナが人質……エックス……!?」
アクセルは人質となっているナナについて、ふと重大な問題があるのを思い出した。
そう言えばエックスは今どうしている? 我先に車両から降りて離れたが、エックスが外に出て来た所をまだ見ていない。 ひょっとしてあのドラムサイズのE缶をまだ飲んでいるのだろうか? 乗ってきた車両の方を振り返ると、未だエネルギーを補給しながら他の隊員にせっつかされて、車を降ろされるエックスの姿があった。
「急いで下さい隊長! 一体どれだけあるんですかそのE缶!?」
「待ってくれグビッ! まだ半分残ってるグビッ!」
「犯人の目の前ですよ――――」
隊員達と彼らによって急かされるエックスに対し、アクセルは慌ててそれを制止した。
「いい!? 僕が良いって言うまで外に出ないで!! 補給したかったらゆっくり飲んでて良いから!!」
<アクセル!?>
「な、なんだグビセル! そんな急に言われてグビッ!」
「とにかくダメだって!! 絶対にダメ!! さ、戻って!!」
アクセルは駆け寄って隊員達を掻き分け、エックスをE缶ごと後部ハッチの中に押し戻し始めた。
<アクセルなにしてるの!? 早くエックスを車両から降ろしなさい!!>
「エイリアさんの言うとおりだ! エックス隊長が渋るからやっとこさ車から――――」
「エックスがいるって事言ったらダメ!!」
エイリアからも隊員からも咎められる中、つい大声でエックスの名を口にすると、アクセルは気づいたようにとっさに自分の口を塞いだ!
しまった。 そう言わんばかりにアクセルは青ざめ、恐る恐る事件現場を振り返り……そして目が合ってしまった。 犯人のボロックに人質のナナと、エックスと一緒に居るアクセルの目線が。 ナナは僅かに視線をずらしてはその次なる送り先として、E缶を抱えて気の抜けた表情のエックスへと向けた。
「ナナ? 彼女が人質だったのか――――」
「やっばッ!!」
アクセルが身をこわばらせるのも束の間、エックスを視界に捉えたナナはとんでもない行動に出た!
アクセルの目はその瞬間をしっかり捕らえていた! なんとナナは瞬時に犯人であるボロックの右手を掴むや否や、それを自分の腰元に引き寄せたと思えば、体に巻いたタオルを強引に掴ませて自身の身を逸らしたのだ!
それはもう、ボロックの手を文字通り握りつぶす程の豪腕で!
「やだ!! 変態!! 何するんですか!! 止めてください!!」
「は!? えっ!? ちょっ!? な、ナンダなんだぁ!?」
反対側はナナ自身が掴んでずり落ちないようにはしているが、当然タオルは半分めくれ上がり、隠している裸体がギリギリ衆人環視に晒されそうになる。
「いやぁッ!! 襲われる!! 私に乱暴する気なんですね!? エロ同人みたいに!!」
「な、なに言ってだコイツ!? って言うかイテテテテテテテテテッ!!」
「きゃああああああああああああ!!!! 助けてエックスゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」
突然ナナ自ら招いたエロピンチに隊員達の間にどよめきが走り、人質を取っている側であるボロックは、手を握りつぶされる痛みが遅れてやってきたのもあってむしろたじろいているようだ。
<彼女何をしてるの!? どうして自分からタオルを!?>
「やりやがった……!!」
困惑するエイリアをよそにアクセルは愕然としていた。 ナナと久しく会っていなかったので、すっかり彼女の
「エックスの目の前で脱がされるなんて! く、悔しい!!」
<え、えーっと……貴様!! 人前でじょ、女性を辱めるとは……その……アレだ!!>
「わ、ワタクシは何もしていない!! 一体何なんだこの女は!?」
「エックス!! エックスゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」
頻りにエックスの名を叫んでは、わざとらしく自らピンチを演じてみせるナナの姿に、無理から空気を読もうとする隊員達と、全くリアクションについて行けずにたじろくボロックという、全くもって説明しづらい状況に陥ってしまった。
<……エ、エックス!? 彼女貴方の名前叫んでるわよ! その、早く助けに行ってあげたら!?>
「だ、だめだよエイリア! それは――――」
とりあえずエックスに助けに行かせようとするエイリアをアクセル止めようとすると、エックスは飲むのを止めていたE缶を、再び口に押し当てて一気飲みを再開!
「グビグビグビッ!!!! ああなんてことだグビッ!! エネルギーが切れかけてグビッ、E缶を手放せない!! だから助けに行く事が出来ないグビッ!」
<はあぁ!?>
「グビグビグビグビグビッ!!」
頑なに目を逸らそうとするエックスに、エイリアからお叱りの声が飛んだ。
<コラエックス!! なんで助けに行こうとしないのよ!! その、収拾がつかないわ!?>
「きゃあああああああああああ!!!! やぁめぇてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「グビグビグビグビグビッ!!」
<話を聞いてエックス!! 飲んでる暇なんかないのよ!?>
「グビグビグビグビグビッ!!」
ナナの悲鳴とエイリアの抗議、そのダブルパンチを受けてもエックスは我関せずを貫こうとしている。 痺れを切らしたエイリアはアクセルに問いかけた。
<アクセル! エックスはどうしたの!? あのナナって子を見捨てるつもりなの!?>
「……やっぱりこうなるんだね。 いやねエイリア。 実はね……」
捲し立てるエイリアに、アクセルは諦念の混じった声色でじっくりと説明し始めた。
彼女……ナナの事であるが、実はギガンティスの任務にてエックスに好意を抱いたらしいのだが、その愛情表現に大いに問題があった。
初めて出会った時のエピソードだが、エックス曰く彼女はさる施設に囚われていたので助けには行ったものの、実際には施設を占拠していた『シルバーホーンド』なる敵を逆に鞭で打ちのめして足蹴りにする始末だった(その間シルバーホーンドは悦んでいた)。
しかし現場にエックスが到着した事に気づいた途端、突如として服を全部脱ぎだして自らエロピンチを演じ、さながら
実は平和だった頃からギガンティス内にて、オペレーターとしての優秀さは伝わっていたものの、その一方で隙あらばエッチな話をねじ込む様子から、同僚達からは男女を問わず『淫乱ピンク』なるあだ名をつけられていたのだ。
実際彼女を救出した後も真っ当にオペレート業をこなす傍ら、事あるごとに清純そうな素振りでエックスを性的に誘惑しては、エックスも今みたくわざとらしいリアクションでスルーしたり、時にはやむなく締め落として気絶させたりする事さえあった。
ご丁寧にアクセルが全てを打ち明けると、エイリアは無線越しにも分かる程に震え声で返答した。
<……ゼロが女になったようなものかしら>
「ああ、因みにゼロはそんなナナにちょっかいだそうとして、毎回徒手空拳で倒されたり凄まれたりしてたね」
アクセルはふとナナの方に目をやって、アイセンサーを通し現状をエイリアに見せつけようとした。
そこには、ボロックの胸ぐらを掴んで激しい剣幕で迫るナナの姿が!
「何やってるんですか!! 貴方まで驚いてちゃ全然ピンチに見えないじゃないですか!! そんなだからエックスにスルーされちゃうんですよ!!」
「知るかそんなもん!! お前の勝手な都合だ――――」
ナナはボロックの首根っこを掴む手に力を入れ、引き寄せる。
「いいですか!? 裸の女の子を救出してそのままお持ち帰り願う為には、劇的なピンチに陥って吊り橋効果を狙ってこそなんですよ!」
「いや、だから!! お前の身の上なんか知った事か――――あべし!!」
ボロックの頬に、ナナのビンタが飛んだ。
「いいから言う事聞くんです!! もっと乱暴にタオルヒン剥くつもりでやってください!! ……あ、だからって裸を見たら容赦なく幸せ料取りますからね?」
「何なんだお前はああああああああああああッ!!!!」
腕を鳴らし
「こ ん な 風 に」
<……貴方、向こうでも苦労してた?>
「随分ね……ハハッ」
やる気無く現状を見せつけるアクセルに対し、エイリアもまた脱力したように返した。 この収拾のつく糸口が見えない混沌の坩堝と化した状況に、彼らが解決に向けて出来る事は全くない。
シルバーホーンド「首もプライドもプチプチと折られた」