ロックマンZAX GAIDEN   作:Easatoshi

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第4話

 

「ああクソッ!! 野郎のナニなんか見たくねぇ!!」

 

 エックス達が向かった現場の中継を遮る、男性の裸体の彫刻を前面に押し出した美術館のCM。 病室に全裸で放り出された、我らがイレギュラーハンターが核弾頭ことゼロにとって、半分近くまで縮んだ自身のバスターと、映し出された彫刻のご立派様を否応なしに比べられた気分になり、大変不愉快な思いだった。

 

「それにしてもなんだあのニュース番組! ナナの肝心な部分見えねぇようなカメラアングルしやがって!! ボロックの野郎もうらやまけしからん! いっそ俺と代われッ!!」

 

 苛立ちを隠せないゼロ。 事件現場でナナが突然身体に巻かれたタオルを脱ぎだした瞬間、目にもとまらない動きでテレビ画面の前に移動し、現場の様子を食い入るように見ていたのがつい先程。 しかし放送禁止に陥る事態を避けたかったのか、番組はナナの肝心な部分を映し出さぬよう、巧妙にカメラアングルをずらしてしまったのだ。

 必死に見えない部分を、頭の中で補完しながら何とか()()()()はしてみたものの、いよいよという所でコマーシャルが入り、男の証しをガン見する羽目になってしまったのだ。

 

「……出たい」

 

 ゼロは一刻も早く、この狭っ苦しい病室から外に出たいと、切実な思いを呟いていた。 それだけに拘束の原因となった、身体に仕込まれたおしおき回路の存在が煩わしい。 BONSAIにちょっかい出して怒られるのは仕方が無いと分かっているが、しかし自慢のバスターがサイズダウンさせられた挙げ句に、妖怪への変異を恐れられて密室に閉じ込められるのは到底我慢ならない。

 

 ゼロは窓を見た。 連れてこられる時に階段を上り下りした覚えはなく、ここが7階だと言うのは知っている。 いっその事ここの窓から壁伝いに下に降りて脱走してやろうかとも考えたゼロは、窓に近寄って鍵に手をかけてみたものの、堅く締まってレバーが動く気配はなかった。 よく見れば鍵には、身内の技術部が度々使う超強力接着剤が流し込まれて、明らかな細工の痕跡が見られた。

 

「(エックスは俺をベッドに押し込めるので躍起だった……アクセルか!)」

 

 こういった細かい所に気をやるのは、手先も世渡りも器用なアクセルの仕業だろう。

 ゼロは毒づいた。 いっそ窓を割って飛び出してやろうかとも思ったが、窓は補強のラインが入っていて早々割れそうなものでも無く、下手に物音を立てたら外の見張りが入ってきてしまう。 何より外に出た所で裸一貫の自分の場合、お仕置き回路が作動して目も当てられない事になるだろう。

 

<ニュースを引き続きお伝えします>

 

 状況の打破について思考を巡らせている内に、CMの放送を終えニュース番組がたった今再開された。 ……焦った所で仕方が無い。 ゼロはため息をつき、愉しいストリップショーと化した現場の様子を窺うのが先だと、一先ずは問題を先送りにすることとした。  

 そして、持ちきりの話題となっているホテル占拠の場面に切り替わり――――ゼロはまたしても激しい怒りを覚えた!

 

「――――おい無能番組!! なんで修正加えてやがるんだ!!」

 

 そこには、ご丁寧にモザイク処理で全身が覆われたナナの姿があった!

 

ゲヒョヒョヒョヒョヒョッ! いいんですかなぁ? 早くワタクシの要求を呑まなければ、公衆の面前で彼女を辱めて差し上げますよ?>

<イヤー、タ、タスケテー!>

「音声もかよ! 臭い物には蓋する腹づもりかてめぇ!!」

 

 変声処理までされ、徹底して全身をくまなく修正されたナナの身体。 モザイク処理は粗くぼんやりとした像しか目に入らないが、自他共に認める変態紳士のゼロには、彼女がきわどい位置までタオルをずらしているのに気づいていた。 だからこそゼロは、お茶の間が凍り付く事を恐れて美味しい場面をむざむざ撮り逃す、番組の甘さとプロ意識の無さに憤っていた。

 

 せめてものささやかな抵抗に、リモコン片手にせわしなくボタンを押して、他のニュース番組に目をやってみた。 しかしいずれも口裏でも合わせたかのように、音声のぼかしの有無はあれど肝心な部分が全く映っていない有様だった。

 

「ふざけやがって! あいつらは何にも分かっちゃいねぇ!!」

 

 これはテレビ局の焦らしプレイかと勘ぐりたくなる仕打ちに、ゼロの苛立ちは頂点に達しつつあった。 耳障りなボロックの高笑いも相まって気分は最悪だ。

 いっその事正面切って堂々と、扉を蹴破って逃げ出してやろうかと思ったその時だった。

 

ムヒョヒョヒョヒョッ! それではナナちゃんのムッチムチのたまらんええ尻、愉しませて貰いましょうかねぇ!?>

 

 

「 た ま 」

 

 

 瞬時に妖怪と化したゼロの跳び蹴りが、見張り諸共扉を蹴り倒したのは。

 

「ぺさっぷ!」

「なっ!?」

 

 蹴った扉で見張りを押しつぶす、白目を剥くその表情を土気色に染め上げたゼロ。 扉の前で適当に談笑していたのだろう。 2人いた見張りのもう1人が、驚愕に染まった表情でとっさに妖怪へと銃器を向け――――

 

「タ、タマヨコッ――――」

「 た ま 」

 

 振り向きざまに銃器を蹴り上げ、見張りの手元から弾かれた一瞬後にマズルフラッシュが散った! そして暴発した弾丸が病室の壁面にめり込んだまさに同時。

「アロオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 身を屈め見張りの股間に抜き手を数発、目にもとまらない速度で叩き込んだ! 

 

「ち、ち~ん(笑)」

 

 普通のレプリロイドにたまなど付いていないにも関わらず、強烈な攻撃の痛みによって意識を刈り取られた見張りは、仏壇のお鈴を鳴らしたような音と共にしめやかに卒倒!

 恐るべき(あやかし)は2人の(つわもの)をいとも容易く屠ったのだ。

 

「――――はっ!! あイテテテテテテテテテテテテテッ!!!!

 

 正気に戻るや否や、当然のように作動したお仕置き回路の痛みに股間を押さえて蹲るゼロ。 そんな彼の元に足音が重なる。 発砲音を聞きつけてやってきた、他のイレギュラーハンター達だ!

 

「な、何だこの荒れようは!? ってゼロさん!? なんでアンタ裸なんですか!?」

 あ、いやこれは――――」

 

 泡を吹いて倒れる見張りに、もう1人は地面と蹴破った扉のサンドイッチ。 ヘルメット以外裸のゼロが目線を泳がせ蹲る姿は、どう見ても不審な光景にしか見えないだろう。

 

 捕まる!? そう判断したゼロの、決断と次なる行動は迅速だった!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 雄叫び上げて全力疾走! 叫びにたじろくハンター達の間を掻き分け、強引に突破!

 

「ちょ、ちょっとゼロさん!?」

「話は後だああああああああああああああっ!!!!」

 

呼びとめる隊員達を無視して、ゼロはサイズダウンしたバスターをぶら下げ全裸で病棟を疾走する!

 

「きゃああああああああああああッ!!!!」

「な、なんだアレ!? ゼロさんが裸で走ってるぞッ!?」

「変態だああああああああああああッ!!!!」

 

 すれ違いざまにゼロの肉体美と不釣りあいな豆バスターを拝む羽目になった、哀れな一般職員達の悲鳴が、行く先行く先で施設の廊下に反響する!

 

「ぬぁ!! ぐおぉ!! いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」

  

 次々と悲鳴を上げられる度に、お仕置き回路がその都度動作し、形容しがたい鈍痛がゼロの股間を圧迫する! だが最早止められない! 成り行きとはいえ部屋を飛び出して脱走に及ぶよう突き動かしたとなれば、もう後に引く事は出来ない!

 ならばそれは、己の身体に熱く滾るハンターとしての使命と決意が、法の重みを破ってでも突き動かしたと受け止め、その結果たとえ自らを危険に晒そうとも戦地に赴くべきだと、ゼロは使命を全うする決意を固め――――

 

「ぎゃあああああああああああああ!!!! 貴方何やってるんですかッ!!」

 

 それは出会い頭に驚いた男性隊員の叫び声によって、いとも簡単にへし折られかけた。

 

「はうあっ」

 

 またもゼロの(おとこ)の勲章に激痛が走る……度重なる股間の痛みに、決心もへし折れる勢いでゼロは股間を押さえてへたり込んだ。

呆気にとられる隊員を前に頭を垂れうずくまること数秒間……しばしの沈黙を破るようにゼロは隊員に問いかけた 

 

「すまん、ちょっといいか……?」

 

 隊員は身じろぎしながら、無言で首を縦に振った。

 

「何でもいいから着る物持ってきてくれ」

 

 法の重さは乗り越えようとも、たましいの重さまではどうにもならなかった。

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああああああ!!!! 離して!! 私に乱暴しないでえええええええええええ!!!!」

 

 脱げ賭けのタオル一丁で、地面に座り込んで下げ美声を上げるナナ。 そんな彼女と地震の様子を見て、行動を決めかねているイレギュラーハンター達。 ナナに脅される形で話を合わせる羽目になったボロックだが、内心血液もといオイルが沸騰寸前であった。

 

 正直な所、ボロック自身にとって彼女の裸も女性のパンツの存在も、実はどうでも良かった。 彼が変態と罵られても覗きを繰り返した理由が、そもそもがレジスタンスがイレギュラーハンター宛てに送った下着目当てで、その下着にしてもそれ自体は目的ではなく、厳密には荷物の中に紛れ込んだ、おいそれと公表できないボロックの大事な代物が、それも複数に分割した形で紛れ込んでいた為であった。

 今回ナナの部屋に入ったのも、実はその一部が何故か彼女の手荷物に紛れ込んでいたのを偶然目撃したからであり、それをこっそり取り返そうとして人を呼ばれ、引くに引けなくなったボロックが流れるようにホテルを占拠。 エックス達イレギュラーハンターの顔見知りでもある事から、この際彼女を人質にとって目的の代物をかき集める手助けをして貰う……はずだった。  

 

 計算もクソもなく、行き当たりばったりなのは百も承知だ。 身の代金代わりに女性の下着を要求するのも、完全に好色を通り越した変態中の変態だと自覚もある。 

 なのにこれは……何故この女は自ら痴態を演じると言うのか。

 

「襲われるうううううううううう!!!! エックス! 私はここです!! 早く助けに来て下さい!!」

「グビグビグビグビグビッ!!」

「いつまで飲んでるんだよ!! 収拾がつかないから早く行けッ!!」

 

 そして何故エックスはこの現場を目の当たりにして、一向に動く気配を見せないというのだろうか? 頑なにE缶を手放さない彼の動向からして、こちらの様子を窺うようには到底見えない。 このままでは、こちらはただいたずらに時間だけが過ぎていくばかりか、(信じる奴はいないだろうが)このナナとか言う痴女に性的な嫌がらせを公然と行うただのド変態倒錯野郎のレッテルを貼られてしまう。

他のイレギュラーハンター共も棒立ちで優柔不断を晒すばかり。 ボロックの溜まりに溜まったフラストレーションは既に限界に達しつつあり……。

 

 そんな中でナナが再び振り返り、ボロックを睨み付けた。

 

「何やってるんですか! そんな中途半端じゃエックスは来てくれません! もっと身も心も変態になりきるんですよ!」

 

 

――――プツンッ!

 

 

 ナナから浴びせられた罵声を引き金に、遂にボロックの中で堪忍袋の緒が切れてしまった。

 自分でも分かっていなかったが、どうやら自身は怒りが限界を超えると、逆に冷静になってしまうタイプだったらしい。 急に真顔になったボロックは無言のまま、ナナから奪ったマイクを口元にたぐり寄せる。

 

 そして喉元を指すって軽く咳払いをすると、息を大きく吸い込んで腹の底から――――流石に怒ったと気づいたナナが、しまったと目を見開くのも束の間。

 

「ホゲエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」

 

 歪んだボロックの歌声が館内のスピーカーを通し、ホテルの敷地を飛び越えてその周囲にまで響き渡った!

 

「きゃあああああああああああああああああッ!!!!」

「うっぎゃあああああああああああああああッ!!!!」

「ゴブブッ!! ぶっはあああああああああああッ!!!!」

「アバアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 総員、耳を押さえて地面に倒れ込む。 エックスだけはそれでもE缶を手放さず、飲み口から口内に含んだ液体を吹き散らした!

 地面に倒れ込んでもがく死屍累々の有様に、ボロックは修羅のごとき憤怒の表情で絶叫する。

 

「ふざけるなあああああああああああああああああああッ!!!! いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

 

 身体の中から弾け出る蓄積された怒りに身を任せ、ボロックはスピーカーを通してその怒りを訴える。 

 

「こんな茶番劇にいつまでも付き合ってられるかッ!!!! お前達全員この場でボッコボコのケチョンケチョンにしてやるッ!!!! ホゲーーーーッ!!!!」

「ヴォエッ!!」

「んほぉっ!!」

「アイエエエエエエエエエエッ!!!!」

 

 耳障りのレベルに達した音痴に倒れ伏すアクセル達に、ボロックは酷い歌声を響かせ更なる追い打ちをかける。 身を起こそうと四つん這いになって耐えるも、全身を不快に揺さぶる歌声は、たとえイヤーセンサーを遮断しても無意味だ!

 

「こんな事が……!! クソッ! E缶さえ飲み終わればグビッ、助けに行く事が出来るのに!! グビグビグビグビッ――――ヴォエッ!!

 苦しみ喘ぎ、時々吐き戻しながらもなおE缶を手放さないエックスには感服するが、この場においてエネルギー補給にこだわる彼は、はっきり言ってバカとしか言い様がない。

 

「チクショウ……あんな奴のいいようにされるなんて……く、悔しい!」

 

 機能不全を起こし、今にも意識が飛びそうな中でアクセルは歯軋りする。 何とか腕を持ち上げて銃を突きつけているようだがが、如何せん攻撃性を持つ己の歌声が響き渡る中、その銃口は震え照準が定まっているようには見えず、引き金も引けずにそのまま倒れるだろうと脅威を見なさずにする事とした。

 

「このまま全員シャットダウンに追い込んでやるッ!!!! ムヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョッ!!!!

 

 弾ける鬱憤と勝利を確信する喜びから、ボロックは高らかに笑い最後のトドメを刺そうと息を吸い込み――――

 

 

 

 

 それは突如として敷地に飛び込んできた、一台の車によってかき消された!!

 

「俺を忘れるなよボロックゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」

 

 生け垣を突き破り、アスファルトにバウンドしてもなお一直線に突進してくるは、1950年式のピンクキャデラックッ!! フロントガラス越しに見えるその姿は、鋭角に縁取られた赤いヘルメットに長い金髪をたなびかせる、一人の(おとこ)の姿!

 

「なにッ!? お、お前はッ!!」

 

 そいつは自身の周りをブロックする警察車両を押しのけ、こちらにめがけて体当たりを仕掛けてきた! タイヤが段差を蹴り上げ、飛びかかる様は鉄の獣!

 

「挨拶代わりだ!! 受け取りやがれッ!!!!」

 

 瞬時に危険と判断したボロックは、漢がキャデラックから飛び降りて横っ転びに待避すると同時に、己もまた側方に回避! 車は勢いを保ったまま、ボロックの背後をすり抜け玄関のガラス扉をぶち破ってロビーに突入! 一瞬遅れて激突し爆発炎上!

 背中に熱気と人質達の悲鳴が突き刺さり、身を起こすと同時にお構いなしに不意打ちを仕掛けてきた手合いの顔を睨み付けた。

 

 そう、首から下に黒いコートを羽織う遅れてやってきたヒーローの姿を。

 

 

「ゼ……ゼロッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクセルは開いた口が塞がらない気分だった。 部屋に押し込めて置いたゼロが出てきた事は勿論、ボロックに不意打ちを仕掛けるのはまだしも、当然のように車がホテル内に突撃して惨事を招いたにも関わらず、得意げに腕を組んで立っている神経の図太さに呆気にとられていた。

 しかも彼はエックスにアーマーをクリーニングに出されていたはずだが、なんなんだあの首から下を包み込むコート姿は!?

 アクセルがそんなゼロの姿を眺めていると、ゼロは振り返って親指を立て言い放った。

 

「……待たせたなアクセル。 随分ボロック相手に手間取ってたようだが、ここからは俺に任せておけ!」

「いや、お呼びじゃねぇよッ!! 何病室から出てきてんのさ!!」

 

 辛辣だとは分かっていても、妖怪と化してしまうリスクを抱えた今のゼロには、寧ろ大人しくして欲しかった。 なのに当たり前のようにここにやってきた赤いアイツにアクセルはキツい言葉を浴びせるも、ゼロは悪びれた様子もなかった。

 

「フッ、俺の中で熱く滾る()()しいが、闘志をいきり()たせたもんでな……成り行きでハンターベースを飛び出しちまった」

「あの車は何だよ!! パトカーは!?」

「全部出払っちまってたから拝借した。 ()()()()()()()だってな」

 

 ……なんとなく、似た理由で車を拝借した過去の出来事が、不意にアクセルの頭をよぎった。 あの時も確かピンクキャデラックだったような気がする。

 

「……そのコートは?」

 

 もう一つ気になっていた、ゼロの首から下の服装。 アクセルはいよいよ問いかけると、ゼロはこれもまた余裕の笑みを崩さずに答えた。

 

「見て分からんか? レインコートだ! 残念ながら股間が痛くてアーマーを回収する余裕はなかったが、とりあえずこれだけはハンターベース内で余ってたから拝借してきたぜ!」

 

 ……()()()()() 今ゼロの口にした言葉を頭の中で反芻するアクセルだが、ふと嫌な予感がした。

 

「じゃ、じゃあゼロ……そのコートだけが余ってたって事は、まさかその下ッ!!」

「俺の肉体美が収まっているに決まってるだろう!!!!」

ただの変態じゃねぇかッ!!!! それでなくともアンタにはもう猶予がないってのにッ!?」

 

 まさかの裸レインコート。 お仕置き回路という股間に爆弾を抱えている状況で、もしコートの一枚でも剥げたりしたらどうなるかは考えるまでもない。 アクセルにしてみれば心強い味方どころか、破滅までリーチがかかった気分だった。  

 

「アクセル、お前にとって俺のお仕置き回路が気になるのは分かる。 だが心配無用だ。 俺はそんなヘマ――――」

<ホゲーーーーーーッ!!!!>

 

 突如として、ボロックの破壊的な歌声がゼロに向けて発せられた! 瞬時に危機を察知したゼロは跳躍!

 

「やべっ!!」

 

 めくれ上がりそうなコートを抑えながら、危なげに着地する。 その額には冷や汗が流れていた。

 

「何をグダグダと話をしてる!? お前もスクラップに変えてやろうか!?」

 

長いアクセルとのやりとりの間に動いたのだろう。 ボロックは地に伏せるハンター達から拡声器を奪っており、それをゼロに向けて歌声を発したようだ。 あまりの音量に衝撃を伴い、ゼロのいた場所を通り過ぎた後も歌声が反響している。

 

「俺とした事が……おしゃべりが過ぎちまったようだな」

「今、メチャクチャ危なげに避けてたね……やっぱまともに戦えそうにないんじゃ……!!」

 

 再び耳をつんざいたボロックの歌声に今にも倒れそうになりながら、アクセルは息も絶え絶えにゼロが戦える状況でないことを指摘する。 しかしゼロは、やはり不敵に笑いながらアクセルへ切り返した。

 

「安心しろ、()()()()()()()猶予さえあれば、俺は背水の陣に立ってでもボロックを必ず倒してみせっておいどうしたアクセル何でお前気を失って――――」

 

アクセルは、目の前が真っ暗になった。




流れるように車奪われる某誠くん。
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