ロックマンZAX GAIDEN   作:Easatoshi

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エピローグ ※

 事件解決から12時間後……ハンターベースの取調室において、辛うじて生きていたボロックは拘留の後、尋問に素直に応じる姿勢を見せ、自ら全てを打ち明けた。

 

 結論から言えば彼の本当の目当ては、レプリロイドの強化素材とされる『フォースメタル』、その中でもとりわけ高度に精製されかつ強力な効力を持つ『超フォースメタル』だった。

 

 彼の所属する『リベリオン』は長年ギガンティスの政府と対立していたが、近年は対立姿勢の軟化により両組織間のわだかまりは解消されつつあり、2週間前には遂に和平協定が締結。 更に紛争終結の証として、リベリオン側が所有していた件の超フォースメタルを、イプシロン以下『フェラム』、『スカーフェイス』、そしてボロックら3幹部の満場一致の下で、ギガンティス政府側に譲渡する流れだった。

 この時既にボロックは、仲間達を出し抜いて超フォースメタルを我が物にする隙を窺っており、譲渡に向けて厳重に保管されていた例の物が、倉庫から運び出された際にこっそりと横取りした。

 

 しかしコトがスカーフェイス達にバレそうになり、追求を恐れて逃げた先はギガンティスが貨物の配送センター。 その貨物の中……下着の山から何枚かを抜き出し、あらかじめ分割しておいた超フォースメタルを、とっさの判断で一緒に入っていた粘着式のパッチを下着の生地の目立たない所に貼って隠し、無事に追ってきたスカーフェイスらの目を欺くことには成功した。

 

 だが予定外の行動に穴はつきもので、彼らが去った後でブツを回収しようとした際には、貨物の中からこぼれ落ちたと勘違いした政府側の職員によってしまい込まれ、そのまま配送……よりによってイレギュラーハンター宛てに貨物を輸送されてしまったのだ。

 そしてボロックは休暇を取ると言ってハンターベースにやって来た物の……荷ほどきは既に行われ、下着類の大半も売れてしまって市場に流れた後だったという。

 

「……それから彼が変態と罵られても、女性の下着を求めて覗きに盗みな3日間が始まったのですって」

「悪い事なんてするものじゃないな」

「同感」

 

 ここはオペレータールーム。 長々と続いたエイリアからの説明に、彼女同様エックスとアクセルは呆れの混じったため息をついた。 グロッキーとなっていたエックス達に代わって、無線越しで比較的軽傷だったエイリアが、ボロックへの尋問に立ち会うことになっていた。 そこで見聞きした彼女から告げられた事件の背景は、あまりにみっともない横流しに端を発していたのだ。

 

「……悪い事と言えば」

 

 エイリアは続けて、エックスとアクセルの後ろに立つ『彼女』に険しい視線を送った。

 そう、ここに着くなりエイリアから叱られてしょげているナナに。

 

「あまり多くは言わないわ……貴女も()()()()()()()()()()()()()()かもしれないから、ね?」

「うう、反省してます……」

 

 無論本気でそうは思ってはおらず、エイリアは皮肉交じりにナナを窘める。 思い描いたラブロマンスの為に、ボロックに強気だったナナに反論する気力は失われ、今や見る影も無く気落ちしていた。

 彼女もボロックの確保時に、人質の保護という名目でハンターベースに連れられたものの、到着するなり待っていたのは厳重注意だった。 言ってみればナナは、マスメディアが列挙している状況で露出に走ったり、犯人であるボロックを煽ったり等、逸る気持ちから自体を混乱させてしまったと同時に、一部の変態紳士を大喜びさせてしまったのだから。

(因みにこの時のニュース番組は軒並み高視聴率だったが、自主規制後抗議が殺到し、BPO(放送倫理機構)が動く騒ぎにまで発展した)

 

「でも気をつけなさいね? 女の体は安売りする物じゃないんだから……そう言う事はエックスの前だけでやりなさい

「はい、気をつけます……」

「エイリア……!!」

 

 叱る傍らでエックスにはしても良いと言ってのけるエイリアに、当のエックス本人は脱力したような声を上げ、その背後で密かにアクセルが軽く吹き出した。

 そんなアクセルに気付いたエックスが振り返っては、抗議の目線を送る。

 

「アクセルまで……」

「い、いやごめんね! 人目を気にする分には別に迷惑じゃ……ああそうだ! それよりどうしてボロックはナナのホテルの部屋に侵入したの? ギガンティスから来たナナには関係ないんじゃ――――ってナナ?

 

 慌てて話を逸らしたアクセルの発言に黙って答えるように、ナナはおもむろに懐から生地を取りだし……それは例によって女物の下着だった。 アクセルはかつてのトラウマからか、下着を見るなり軽く身を引いた。

 

「はぁ……買った後で何となく違和感に気づいてたんですけど、今のエイリアさんの話を聞いて確信しました」

 

 ナナは取り出した下着の生地をひっくり返すと、股座のあたりの生地に何やらパッチのような物が貼ってあった。 エックスとエイリアはそれを見ると、何かに気付いたように互いに顔を見合わせた。 ナナは貼り付いたパッチを剥がすと、中から輝きを持つ小さな金属片が零れ、すかさず彼女がそれを手でキャッチする。

 

 ナナ以外の、出てきた代物を目の当たりにした全員が息を呑んだ。 紛れもなくそれは超フォースメタルの欠片だった。

 

「……着替えの入った荷物が空港の手違いで、一日遅れで到着するって聞かされたんです。 だから安物で良いからその日の分だけ用意しようと、ホテル近くのセントラルパークで行われてたチャリティーセールで買った物なんです……」

「! 偶然ナナが手に入れてたんだ……だから奴は」

 

 ナナは無言で頷いた。 運がないというべきか、それとも不思議な巡り合わせと言うべきか……そう言えばかの元イレギュラーも、セントラルパーク近くにしてナナの宿泊先のホテルで働いていたような。

 あの公園には曰く付きの下着を引き寄せる力でもあるのか……そう言いたげな約1名にとっては忌ま忌ましいセントラルパークに、また1つ嫌な因縁が出来てしまった。

 

「なんだか、どっと疲れたよ」

「色んな事があったからな……結局ゼロの股間は爆発するし」

「全くよ。 正直事後処理の方が大変だったわね……でも頑張った甲斐あって、この事件に関する大きな案件は残り一つって所ね」

「……()()()ですか?」

 

 改めて事件を振り返りながら、ナナの問いかけに首を縦に振るエックス達。 この丸1日夜を徹して行われた、事件の後始末に追われ彼らの疲労はピークに達しており、そしてまだ大きな出来事が片付いていないという。

 そしてそれを処理する機会は、部屋の時計が朝の10時になったあたりで訪れた。

    

おお、いたいたお前ら! ……あ、アンタがナナさんかい?」

 

 オペレータールームの扉を開けて入ってきたのは、緑のアーマーに赤いゴーグルをかけた、我らがハンターベース技術部が主任のダグラスだった。

 彼は少し駆け足で、本来は部外者であるナナも含めてエックスを呼びにやって来たようだ。

 

「準備は終わったか? そろそろ式が始まるからな? 総監にレイヤーやパレットはもう先に着いてるぜ?」

「……随分早いわね?」

「そりゃ、何たってうちのエースに関わる重大なイベントだからな! ほらエックスにアクセル、お前らなんか特に同じ釜の飯食った仲間だろ? ちゃっちゃと急げ!」

「ああ分かった。 もう準備は出来てるから」

「いつでも行けるよ」

 

 急かすダグラスに従い、エックス達もまたあらかじめ準備しておいた品々を片手に、彼と共に全員で向かうこととした。

 

 

 

 

 

 

 

  

そう、ゼロの葬式へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予定調和と言うべき程に見事に股間が爆発したゼロは、すぐさま妖怪に変化してしまうとエックス達が身構えるも束の間、満足げな笑みを浮かべて後ろに倒れ込んだ。

 まさかの昇天か? 生死を確かめるべくその場において、入念に股間へと電気ショックを与えたところ、無事どうりょくろの停止を確認。 死因は『蘇生行為』だった。

 

 やがて葬式の準備と死亡手続きを行い……そして今、ゼロの葬儀はイレギュラーハンターやレプリフォースの殉職者を埋葬する、アーリントン広場が墓地の一角にてしめやかに行われている最中だった。

 

「南無大慈悲救苦救難広大霊感白衣観世音……」

 

 ボロクソに言う割には微妙に日本かぶれだった彼の意を汲み、THE・アメリカ流の葬儀ながらボンズを招いて慰霊の為にお経を唱えて貰っていた。 

 

「グスッ……ゼロ……今だけはダメージが かんぜんに かいふくするまで みを 隠していてちょうだい……どうせ3日後には、ううっ復活するんだから……!!」

 

 墓を前にして嗚咽混じりに弔辞を述べるは、昨日の今日にはゼロと仲直りを果たしているはずだったアイリス。 その周囲にはイレギュラーハンターの面々は勿論、アイリスやカーネルを初めとするレプリフォースの隊員も葬儀に参加し、全員が黒い喪服に身を包んで涙ぐみ、沈黙に耐えきれずに吹き出すのを堪えている者もいた。

 

 お経とアイリスの弔辞に耳を傾けながら、エックスはゼロとの熱い友情の日々を思い返す。 押収品がスケベな代物なら事あるごとに『徴収』したり、紛らわしい言動で大人のおもちゃをエックスに代理購入させようと勘違いさせたこと、直ぐブルマ呼ばわりすること、そのくせ超法規的な行動には阿吽の呼吸で取り組めたこと。 それらが全て懐かしく輝かしい思い出だった。

 

 やがて弔辞はボンズのお経と共に終わりに近づき、葬式自体も締めくくりに近づいてきた。

 

「私達はこれから行きつけのバーで飲み会に行くから、生き返ったらまた連絡頂戴ね……うわああああああああああんッ!!!!

「我飯屋零無能鉄屑発条仕掛腹黒使役怒張主砲…………」

 

 

 そして全ての経文を唱え終わると、ボンズは長い黙祷の後に葬式の終わりを告げる。

 

「終わり! 閉廷! 以上! 皆解散!」

 

大手を振って参列者に伝えると、周囲もそれに従って式場を後にする。

 

「やーっと終わったかぁ」

「よっしゃ、後はバーで一杯やるか!」

「お堅いレプリフォースじゃ、こう言う口実でもねぇと中々酒が飲めんからな! ゼロ様々だ!」

「違いない!」

「フォッフォッフォッ! 今日はワシのおごりじゃあ!」

「ゴチになります!」

 

波が引くように一斉に式場を去って行く参列者達。 ただ一人、エックスを除いて。 参列者の中でアクセルが振り返り、エックスに問いかける。

 

「あれ? エックスは来ないの? これから宴会だよ?」

「ああ、先に行っていてくれないか? 少し感傷に浸りたい気分なんだ。 後で追いつくから」

 

 アクセルは少し考えるような仕草をした後、にこやかに笑って「OK」と答えた。 そしてエイリアからの呼びかけに駆け足で彼女の後を追っていった。

 

 彼らを見送り、ゼロの墓へと振り返るエックス。 股間の縮む痛みに耐えて職務に殉じたゼロ……そんな彼に哀悼の意を表する為に、墓にはエックスの希望の下で趣向を凝らして貰った。

 

 そう、その辺の草を植えた盛り土に、線香と折ったジャパニーズチョップスティック(割り箸一本)……事あるごとに死亡し、毎度葬式から埋葬までのコスト面を踏まえても、この上なく彼にふさわしい墓に仕立て上げたつもりだった。

  

騒々しい毎日の中において、残念な形とはいえ久しぶりに訪れた静かなる一時。 エックスはそよぐ風の流れを感じながら、しばし佇んでいた。

 

エックス……エックス……

 

 不意に、死んだ筈のゼロの声が聞こえた気がした。 見送りに来たエックスに別れを告げに来たのだろうか? だとしたら、これから天へと昇って逝く彼に……改めて弔いの言葉をかけるべきだと、エックスは優しげに笑みを浮かべながら青々とした空を見上げ、おぼろげに浮かび上がる親友の姿へと心の中で言葉を返した。

 

 

 

エックス……せめてその割り箸……フランクフルトでもぶっ刺してくれ❤

 

 

【挿絵表示】

 

 

 やだよ❤

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、ゼロは3日後「我は救世主(メシア)なり!」と叫んで墓場から復活、墓地に訪れた人の間で一悶着を起こしたそうな。

 

TO BE CONTINUED

 




 と、言う訳で……流れるように仲間にとどめを刺す畜生ぶりを発揮した所で、今回のエピソードは完結とさせて頂きます! 短編とはいえ、ここまでご愛読頂いた皆様方には感謝の気持ちでいっぱいです!

勢いで書ききったプロットの上、オチについてはかなりテキトーかつ読者置いてけぼりにするのを覚悟で、とことんやりたい放題書きました……と言っても、本当に自分が書きたかった部分と言えば、まず全裸で全力疾走するゼロのシーンなんですがw あれはこち亀が海パン刑事の丸パクリというか……ゼロにもやらせてみたいと言う欲求ありきなのが今回のシナリオですw
 あ、今回の挿絵……自分で描いたのは描いたんですが、なんと塗りは同人作家の兄弟が塗ってくれましたw おかげで構図がバッチリ決まって感謝です!

↓自分で塗った挿絵の白黒Verはこれ↓

【挿絵表示】

 
 ちなみにボロックのその後ですが……取り調べの後、リベリオンの幹部が大慌てで一斉にハンターベースを訪れ、彼の身柄を引き取ることになりました。 その際スカーフェイスはイレギュラーハンター側が恐縮する勢いで必死に頭を下げ、フェラムはボロックを恥曝しだと折檻し、連れられていった後にイプシロンによって再開発(意味深)されました。
 ボロックが仲間割れに走った背景がそこにあるとか思ってはいけない。(戒め)

 さて今回はこれにて終了としますが、今年一杯は恐らくGAIDENをメインに短編をちょくちょく投稿していく流れとなります。 あくまで筆休めのつもりと言うのもありますので。 こんな短い茶番劇ですが、今後も温かい目で見守って頂けると幸いです。

 それではまた、いつの日かお会いしましょう! でわ!


挿絵は小説の演出に一役買ったか?

  • どんどん描いてくれ!
  • 悪魔(デーモン)の所業、文だけでいい。
  • 気にしてない。

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