おれはドスヘラクレス 作:へらくれすりゅうぞう
おう、熱いぜ。
おれは今日も元気だぜ。
一寸の虫にも五分の魂。そんな言葉が、最近のお気に入り。ドスヘラクレスだ。
おれは虫だ。
フィールドの端で、ひっそりと暮らす虫。
空を自由に飛び回る飛竜とか、海を気ままに泳ぐ海竜とか。はたまた悠久の時間を生きる古龍だとか、そんな大層なものじゃない。
おれはただの虫だ。
ちょびっとばかし強いだけの、虫なんだ。
けれど、たかが虫だってなめちゃあいけない。
おれはドスヘラクレス。
世界一強いと言われている虫だ。
一寸の虫にも五分の魂って言葉通り、こんな小さいおれだけど、すげぇ力があるんだぜ。
アルセルタスだろうが、ゲネル・セルタスだろうが。
ネルスキュラだろうが、あのよく分からないカマキリであろうが。
おれにとっては、どいつもこいつも敵じゃない。あんな奴ら、例え束になってかかってこようとも、まるで相手にならないぜ。
……だけど、だけどな。
こんなおれにも、一つだけ弱点があるんだ。
「……お、虫取りスポット発見」
不意に、そんな声が響いた。
モンスター特有の、とにかく吠えるような声じゃない。人間特有の、言葉を音として露わした独特の響きだった。
「……マボロシチョウ、マボロシチョウはいないかね!」
おれには、彼らが何て言っているかはまるで理解できないのだが。
それでも、どうしても敵わないのだ。こうなってしまうと、おれはどうしても勝つことができないのだ。
ハンターに?
いやいやいや。あんな人間、角一振りで粉々にできるぜ。
問題は、あれだ。
あいつが構える、あの網だ。
虫あみ。しかも最高級の、虫あみグレート。
あれの寝心地の良さは、半端じゃない。アレに掬い取られると、まるで天にも昇るような気持ちになってしまう。あの柔らかさと弾力性を伴った極上の感触を前に、ついつい吸い込まれてしまうのだ。
こんなに柔らかくて、寝心地がよくて、まるで極楽のような感覚。とてもじゃないが引き千切るなんてことできそうにない。
もちろんな?
もちろんおれは、世界一強いと言われている虫だぜ。
どんな奴だって敵いっこない、地上最強の存在だぜ。
……しかしな。
こんなおれだって、甘ったれたい時もあるんだ。
そんな時は、ついついこんな魅力的なところに飛び込んじまってなぁ。
照れるぜ。
「……お、何かかかったぞ」
飛びついた網。
おれを抱き止めてくれる優しい感触。
ふかふかで、もちもちで。温かくて、涼しくて。
なんかもう快適過ぎて、とろけてしまいそうだ。
本当に、これにだけは抗えない。悔しいが、完敗だ。
「……っち、なんだよドスヘラクレスかよ……。こいつ取れてもどうしようもないんだよなぁ……」
「――――残念だな旦那。マボロシチョウ、手に入ってないんだろ? それじゃ防具は作れないぜ」
「そりゃないぜ、一日中虫取りに費やしたんだぜ……」
ギザミXシリーズを作ってもらいたい。
そんな思いの下、とあるハンターが加工屋に訪れていた。
しかし加工屋の主は、彼を適当にあしらっている。曰く、素材が足りないのだとか。
「なぁ、こいつで代用できないのか」
「あん?」
「ドスヘラクレスだ! 世界一強いと言われてる虫なんだぜ!?」
「馬鹿かぁ! こんなんが世界一強かったら、加工屋業界がとっくに全滅しとるわ!」
「うぐっ……いやいやいや! こいつの実力はきっと閣蟷螂だって一捻り――――」
「冗談はその身なりだけにしとけ! 妄想も大概になぁ!」
世界一強いと言われている。
世界一強い――と、言われている。
――――世界一強いとは、言っていない。
「なぁなぁ、腰のワンポイントに使うんだろ? ほらこいつの甲殻、これならどんな衝撃も――」
「帰れェ! そんな汚らしい甲殻使って、なぁにがワンポイントじゃ!」
「アンタが言い出したことやろがい!」
「あぁん!? やんのか双剣厨が!」
「わしゃガンナーじゃボケェ!!」
◆ ◆ ◆
おう、寒いぜ。
でもおれは元気だぜ。
この雪の光を浴びて輝く体。
寒さに負けずに聳え立つ大樹のような角。
どきどきするほど、決まってるぜ。
こうしてドスヘラクレスくんは立派な貫通珠【1】になれたのだとさ。
めでたしめでたし。
このような謎作品を閲覧してくださって有り難うございます。
コンスタントにと言いながら最終話の更新が遅れてしまって申し訳ありません。
この作品への文句その他もろもろは、モンハン飯とかいうアホみたいな作品書いてる奴が聞くんで、そいつに、どうぞ。
マジで最近迷走してるなって改めて感じさせてくれる作品でした。
それでは。