いい話思いついた、ということで書きました。
僕は、彼女が好きだった。
初めて彼女に会ったのは、小学校の入学式の時だった。
たまたま隣の席になった僕に彼女は、友達になろう、と声をかけてくれた。
うれしかった。泣いてしまいそうだった。そんな僕を見て、彼女は笑った。その日から、彼女は僕の『恋人』になった。
学校に行くのが楽しみでしょうがなくなった。土日も祝日も、学校にいけない日は彼女のことばかり考えていた。
彼女に会うために、僕は学校に通っていた。
彼女とは、たまに話をした。遠くから聞こえる彼女の話声に耳を澄ませて、時々会話に入った。たわいもない話だったけど、僕は彼女と関わりを持てるその時間が何よりも好きだったことを覚えている。
同じ土地に生まれて、一緒の学校に通い、僕らは一緒に大人になる。そう思っていた。
卒業を待たずに、彼女は引っ越すことになった。クラスのみんなでお別れ会をした。
彼女はその日中、泣いていた。彼女の横に行って、慰めようとした。でも、どんな言葉をかければいいのかわからなかった。
クラスのみんなに見送られ、無理やり笑顔を作った彼女は、もう二度と通うことのない、僕らの学校を後にした。
入学式で彼女が見せたあの天真爛漫な笑顔を、お別れ会で彼女の作る涙に濡れた微笑みを、僕は一生忘れまいと心に誓った。
『僕は君を忘れない』彼女にそう言えばよかったことに気付いたのは、それからすぐのことだ。
どうしてあの時考えつかなかったのか。そう思うたびに、僕は唇を噛みしめる。悔しさに押し潰されて、涙をこぼす。頭を抱えても、身をよじっても、どうにもならない後悔の念が押し寄せてくる。
どうすればいい。どうすれば……
僕は、彼女を忘れないまま大人になった。
彼女に想いを伝える機会はもうないのだと、半ば諦めていた。
ある日、1本の電話がかかってきた。
「小学校の同窓会のお誘いです」僕は目を見開いた。まだ、チャンスは残っていたんだ。2つ返事でOKして、僕は電話を切った。
告白の言葉。それから僕は、同窓会のその日まで、毎日そのことばかり考えていた。
やがて、その日はやってきた。告白の原稿を握りしめ、僕は会場に向かった。
会場内は賑やかで、数人ずつのグループがあちこちにできていたが、それらの奥に、ひときわ大きなグループがあった。彼女はその中心にいた。僕はその隅で、以前もそうしていたように彼女の話に耳を澄ました。
彼女の話が終わり、彼女を取り巻いていた友人達が離れ始めた。僕は小走りで彼女と距離を詰め、彼女が僕に気づくのを待った。
鞄を開けていた彼女はふっと手を止め、視線を上げた。彼女が一瞬、硬直したように見えた。
「〇〇」僕は彼女の名前を呼ぶ。結局、告白の言葉はシンプルなものになった。
引かれてもいい。今更、と思われてもいい。とにかく、この思いを伝えたい。
これで全部、伝わるはずだ。
「好きです。ずっと好きでした。」