遊戯王Incarnation   作:レルクス

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第十話

「というわけで、米倉さんはあっさりと降格処分されました」

 

 次の日の朝。

 遊月は大束と江藤と話していた。

 

「で、江藤は再審査が行われて、いろいろあった罰は全部無効になって、昇格が決まった。簡単に言えば、スカウトがあればいつでも部隊に所属することができるくらいまで上がったみたいだな」

「よかったね。香苗ちゃん」

「はい!ありがとうございます!」

「一番重要な部分は英明がやってたからね。後で礼を言っておくといい。もしくは私から伝えよう」

「でも、遊月君の腹黒さがなかったら、ここまでうまく進んでないんでしょ?」

「そうだな。作戦の企画はすべて私だ」

 

 いろいろ布石は考えながらやっていた。

 

「ただ、録音されている部屋に連れ込まれることは必要だったから、ストレートに切りかかっただけだよ。で、あとはそれを指摘すればいい」

「でも、もしこっちが録音されていることがばれたら、どうするんですか?」

「その時は録音機器を予備の予備の予備くらいまで用意してたからどのみち問題ないんだなこれが」

 

 まずそもそも、人間は自分がやった作戦を他人がやらないと思っている人間だ。

 そして、相手の作戦を見破ったとき、充実感と優越感に満たされて、それ以上は思考が及ばないのである。

 

「じゃあ、なんで私たちには説明してくれなかったの?」

「二人とも駆け引き弱そうだから」

 

 否定できない大束と江藤。

 

「敵を欺くにはまず味方からとか、そういう感じじゃないの?」

「実はそういう感じですらない。とはいえ、あの時点で私たちをボディチェックする権利はあいつらになかったからね」

 

 ルールというものは、知っているものが得をする。

 そして、武器にも防具にも道具にもなるのだ。

 重要なのは、『自らが行使しようとする権利を妨害できる別の項目の権利を把握しておくこと』である。

 もちろん、連鎖的に覚えることは増えるのだが、その作戦に確実性が増すのだ。

 あとはメモしておけばそれを応用できる。

 それの積み重ねが『マニュアル』というものである。

 

 ちなみに、『十分な声質をとった録音機器を、本部で一番中立性の高い部署に届ける』ということが、今回の作戦において重要なわけだが、これを達成するまでに遊月が考えていたルートの数は三ケタくらいある。

 

「とりあえず、今回の件に関して言えば、これで終わりだ」

 

 うまくいってよかった。と思う反面。もうちょっと搾り取ることもできたのだが、そこまでやると江藤だけの問題ではなくなるのでやめておいた。

 内心はちょっと不完全燃焼だが、それはいいとしよう。

 

「でも、その米倉さんは除隊されると思ってたけど、まだ残ってるんだね」

「あ、私も気になりました」

「あの人はあの組織の中でそれ相応に人脈を築いていたからな。今は米倉本人の権力が揺らいだからグラグラだけど、いきなり追放したら非情だって思われるからな」

 

 本部のほうが、長期間米倉を置いておくのかどうかはまだ遊月にもわからないが、一つ言えることはある。

 

 『失態』→『除隊』

 

 『失態』→『降格』→『除隊』

 

 いずれにせよ米倉はこのどちらかにならざるを得ないのだが、上だと周りからいろいろ言われるのである。

 そして、下の場合は、米倉本人がもう言い訳できなくなっているといっても過言ではない。

 というわけで、米倉はもう長くはいられません。

 

「でも、コネだけで生き残ってるっていうのがなんか納得いかないっていうか……」

「つながりが深いってことは、それだけ重要なんだよ。表に裏に、金を使いまくってるってことだからな。誰か一人が倒れたら全員が倒れる。負債を抱えまくった銀行が続いてる理由と同じだ」

「そうなのですか?」

「そうなんだよ」

 

 世の中というのは複雑だ。

 そして複雑だからこそ死角が生じる。

 そんな時に限って視野の狭い人間が管理職になって、不平等な信賞必罰が横行する。

 『上流』が『元上流』になる典型例である。

 

「まあでも、香苗ちゃんが問題ないってことは間違いないんだね」

「その通りだ。この件に関しては何も問題はない。じゃなければ昇格なんてできない」

「本当に良かったです……」

 

 ほっとしている江藤。

 

「さて、そろそろ授業だ。そろそろ教室に行くとしよう」

 

 というわけで、お開きである。

 

 ★

 

 遊月は自炊する派である。

 要するに、買い物くらいはする。

 すでに買い物は終わった。

 エコバックを持ってきたので、そちらに詰めているところである。

 

「あ、グルコサミン買うの忘れてた」

 

 何歳だお前は。

 

「……まあいいか、まだ家にあるし」

 

 ならなんで『買うの忘れた』なんていうのだ。

 備蓄か?グルコサミンを備蓄しているのか?

 

「さてと……ん?」

 

 視界の端に銀髪が映った。

 見ると、江藤がカートをこちらに運んできた。

 

「……」

 

 別に遊月は珍しいと思う程度で、わざわざ話しかけようとは思わない。

 買い物に来るのは誰でも同じなのだから。

 

「あ、遊月さん」

 

 なので、自分からは話しかけないが、相手から呼ばれたときはちゃんと反応する。

 

「江藤は……量からして買い溜めか?」

「そんな感じですね」

 

 頷く江藤。

 そこからは黙々とエコバックにいれていく。

 

「にしてもアレだな。この店、いろいろな意味でマーケティングやりすぎだといいたい」

「どういうことですか?」

「購買意欲と言うか、無駄なものを買わせるというか、そんな感じ」

「へぇ……」

「焼き肉コーナーにある『余り安くはない焼き肉のタレ』とか、『流行を装っている山積みの商品』だとか、この店はそう言うのがいろいろあるんだよ。で、江藤。なんでそんな苦虫を噛み潰したような顔になってるんだ?」

 

 聞く前に『そう言うことなんだな』と分かっていたので、あえてそれ以上は何も言わない遊月。

 

「あ、遊月さん。そのパック……」

 

 江藤は遊月のバックの中のデュエルモンスターズのパックを見る。

 表紙に『サマンティック・パック』と書かれていた。

 

「結構雑多なカードが入ってるパックだな。一部では『在庫処分』とまで言われるほどだ」

「そ、そうなんですか?」

「たまにめっちゃ古いフォーマットのカードも入ってるから、最近コレクターになり始めた。みたいな人には売れる時もあるけどな」

 

 ちなみに、福引でうららを当てることができずに撃沈した英明が、レアカードのクリッターを当てたのはこのパックである。意外とバカにできない。

 

「試しに開けてみるか」

 

 一パックだけ買ったのだ。

 別にもったいぶる必要は無いだろう。

 

 ビリッとパックを破いた。

 

『ブロークン・ブローカー』

『サボウ・クローザー』

『シンクロ・ストライク』

『サイバー・ダイナソー』

『突風』

 

「……うーん……ううううぅぅぅぅん」

 

 遊月は唸った。

 それ以外に何をしたらいいのかわからなかったからだ。

 

「なんといいますか……意味不明ですね」

「『サマンティック』だからな」

「私、『シンクロ・ストライク』以外は始めてみました」

「あ、そうなの?」

「はい」

 

 カードを江藤に見せる遊月。

 

「……私のデッキに入らないですね」

「私も同じだ。うまく使えばスパイスになりそうなものはあるが、だからと言って狙うか?と言う話に発展する可能性が非常に高い」

 

 まあ、もともとこんなわけが分からない方が面白いので、それはそれでいいのだが。

 ちなみに、本来は何かしらの催し物での参加賞とか、特殊ルールを自作して使うときもある。

 その時、出入り口で誰かが叫んでいるのが聞こえた。

 

「本日の特別企画!プロデュエリストをお呼びしています!制限時間は二時間!一組一回の挑戦で、勝利した方々には、様々なクーポンデータが入ったスペシャルデータをプレゼントします!プロデュエリストと戦えるチャンスです!タッグデュエルで受け付けていますので、気軽に参加してください!」

 

 呼び込みの人だったようだ。

 

「あんなことやってるんですね……」

「『この店はプロデュエリストを呼ぶことが出来ます』っていうアピールは定期的にしておいて損はないからな」

 

 デュエル界ではそう言うものは重要だ。

 下手なコンパニオンを置いておくより意味がある。

 

「なんなら、私と江藤で出てみるか?」

「え?……でも……」

「安心しろ。君のデッキは大体わかっている。邪魔しないようにするから問題ない」

 

 そう言いながら、右手で江藤の頭を撫でる遊月。

 彼の外見年齢を考えると少々マズいかもしれないが、案外違和感がない。

 客が周りにいるのだが、遊月を軽蔑の視線で見るものはいない。

 

「~~♪」

 

 そして、撫でられている江藤もされるがまま。

 遊月が慣れているのか、江藤に耐性がないのか。

 

「というわけで、行くぞ」

「あ……」

 

 パッと手を放して歩き始める遊月。

 名残惜しそうに頭を触った後、江藤は遊月を追った。

 ちゃんと買い物かごをカートに入れて。

 

 ★

 

 確率と言うものは人を裏切るものだが、偶然と言うものは時に粋なことをする。

 

「久しぶりだな。遊月」

「まさか、こんなところで会うとは……」

 

 銀丈真尋。安江浩太。

 いずれも、遊月が戦ったことがあるプロデュエリストだ。

 

 銀丈真尋は、プロデュエリスト、スミス・サーバーと一緒に大束を狙っていたデュエリストだ。

 そして、安江浩太は、レンタルだと思っていたヴァルハラを使って、パーシアスデッキを使っていたデュエリストである。

 

「あの、遊月さん。知り合いなんですか?」

「まあ、知らない顔じゃないな……手加減してくれないかもしれない……」

 

 いずれも、ちょっと容赦なく叩き潰した記憶がある。

 はっきり言って、『手を抜いてください』なんていったら鼻で笑われるだろう。

 

「まあいずれにせよ。やることはデュエルだ」

「ああ。そうだな。はっきり言ってお前には感謝してるけど、手加減はしねえぜ」

「俺も同じだ。もう、あんな惨めな思いはしたくねえからな」

 

 プロデュエリスト二人がデュエルディスクを構える。

 

「さて、やるか。死後の世界の広さを教えてやる」

「なんだかよく分かりませんが、私も頑張ります」

 

 遊月と江藤もデュエルディスクを構えた。

 

「「「「デュエル!」」」」

 

 遊月&香苗 LP8000

 真尋&浩太 LP8000

 

 先攻は……浩太だ。

 

「ん?俺の先攻か」

 

 ちなみに、現在のデュエルでは『先攻だからと言って必ずしも有利ではない』という風潮のため、チャレンジャーだからと言って先攻。と言うものではない。

 

「俺は手札から『豊穣のアルテミス』を召喚!」

 

 豊穣のアルテミス ATK1600

 

「さらに、ペンデュラムゾーンに『解放のアリアドネ』をセット。カードを一枚セットして、ターンエンドだ」

 

 悪くはない。

 悪くはないが、『同胞の絆』くらいは引いておきたかったんだろうな。と言うのがよく分かる盤面だ。

 どうやら『パーシアス』らしい風味はあるが、『パーミッション軸』になっているようだ。

 『輪廻のパーシアス』という意味不明なカードがあるのだから気持ちは分かる。

 

「私のターンです。ドロー!」

 

 勢いよくカードを引く江藤。

 そんな様子を見て、思わずプロデュエリスト二人もほっこり。

 

「私は手札からフィールド魔法『転回操車』を発動します」

 

 そして顔面蒼白になった。

 ……気持ちは分かる。

 

「お嬢さん。それはダメだぜ。カウンター罠『輪廻のパーシアス』を発動。手札の『神の宣告』を見せることで、無効にして破壊する!」

「むむ……」

「そして、エクストラデッキから『天空神騎士ロードパーシアス』を特殊召喚する!アルテミスの効果で一枚ドローだ」

 

 天空神騎士ロードパーシアス ATK2400 LINK3

 

 そして現れるパーシアス。

 とはいえ、【列車】の切り札とも言えるあの速攻魔法の存在もあるので、むやみにモンスターを増やしたくないという気持ちもあるとは思うが、それは気にしても仕方がない。

 

「私は手札から、二枚目の『転回操車』を発動します!」

「んなっ。二枚目!?」

 

 浩太の表情がゆがんだ。

 さすがにこれは……『ヤバい』というより『嫌』である。

 

「手札から『深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト』を妥協召喚します」

 

 深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト ATK0 ☆10

 

「この瞬間、『転回操車』の効果発動。デッキから『無頼特急バトレイン』を、レベル10にして特殊召喚します」

 

 無頼特急バトレイン ATK1800 ☆10

 

「さらに、『重機貨列車デリックレーン』の効果を発動。このモンスターを特殊召喚します」

 

 重機貨列車デリックレーン ATK1400 ☆10

 

「そして、『弾丸特急バレット・ライナー』を特殊召喚します!」

 

 出現する精霊カード。

 

 弾丸特急バレット・ライナー ATK3000 ☆10

 

 並び立つレベル10モンスター。

 展開操車のデメリットで、このターンの戦闘ダメージが0になってしまうが、戦闘破壊もバーンダメージも可能だ。

 

「出てきてください。重機を呼び起こすサーキット!」

 

 現れるアローヘッド。

 

「召喚条件は、機械族二体。私はバトレインとバレット・ライナーを、リンクマーカーにセット!新たな設計図で、いざ連結!リンク召喚!リンク2『機関重連アンガー・ナックル』!」

 

 機関重連アンガー・ナックル ATK1500 LINK2

 

「そして、デリックレーンとナイト・エクスプレス・ナイトでオーバーレイ!全てを砕く大砲を装着し、いざ発進!ランク10『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』」

 

 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ATK3000 ★10

 

 現れる列車のエースカード。

 こいつがいるせいで、レベル10を並べることが出来るデッキを相手にする際はデッドラインが2000になるというわけの分からないカードである。

 

「グスタク・マックスの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使うことで、相手に2000ポイントのダメージを与えます!」

 

 グスタフ・マックスが大砲を展開して、ぶちかました。

 

 真尋&浩太 LP8000→6000

 

「相変わらず恐ろしい効果だ……」

「さらに、オーバーレイユニットだったデリックレーンの効果によって、豊穣のアルテミスを破壊します」

 

 デリックレーンがアルテミスに突撃していく。

 あっけなく散った。

 

「そしてバトルフェイズ。私はグスタフ・マックスで、ロードパーシアスを攻撃!」

 

 再度展開される大砲。

 容赦なくロードパーシアスを粉砕する。

 

「ぐうぅ。これだから【列車】ってマゾイ」

「私はターンエンドです。このタイミングで、バレット・ライナーの効果でナイト・エクスプレス・ナイトを、バトレインの効果で、デリックレーンをそれぞれ手札に加えて、ターンエンドです」

「なら、俺のターンだ。ドロー!」

 

 次は真尋のターンだ。

 前にデュエルした時は【ギャラクシー】だったが……。

 

「俺は、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいて、自分フィールドにモンスターが存在しないことで、『光波双顎機』を特殊召喚!」

 

 光波双顎機 ATK1600 ☆4

 

「さ……【サイファー】!?」

「俺はもともとこっちだ。そして効果発動。手札を一枚捨てることで、デッキから『光波翼機』を特殊召喚!」

 

 光波翼機 ATK1400 ☆4

 

「そして、墓地に送られた『光波異邦臣』の効果。デッキから『RUM-光波昇華』を手札に加える」

 

 なかなか理想的な動きである。

 

「さらに、手札から『光波鏡騎士』を通常召喚!」

 

 光波鏡騎士 ATK0 ☆4

 

「行くぞ。俺は『光波翼機』の効果に寄り、リリースすることで、レベルをそれぞれ4上げる」

 

 光波双顎機 ☆4→8

 光波鏡騎士 ☆4→8

 

「俺はレベル8の光波双顎機と光波鏡騎士で、オーバーレイ!満ち溢れる暗号たちの力を束ね、銀河の瞳で神秘を示せ、エクシーズ召喚!ランク8『銀河眼の光波竜』!」

 

 銀河眼の光波竜 ATK3000 ★8

 

「さらに手札から『RUM-光波昇華』を発動。光波竜一体でオーバーレイ!解き明かされた暗号たちよ。銀河の瞳の野望に呼応し、さらなる世界を開け!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!ランク9『超銀河眼の光波龍』」

 

 超銀河眼の光波龍 ATK4500 ★9

 

「効果発動。オーバーレイユニットを一つ使い。グスタフ・マックスを、効果を無効にしてそのコントロールを得る。さらに、攻撃力を4500にして、『超銀河眼の光波龍』として扱う!」

 

 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ATK3000

  ↓

 超銀河眼の光波龍 ATK4500

 

「な……」

「バトルフェイズだ。超銀河眼の光波龍として扱っているグスタフ・マックスで、アンガー・ナックルを攻撃!」

 

 遊月&香苗 LP8000→5000

 

「さらに、超銀河眼の光波龍で、ダイレクトアタック!」

 

 放たれるブレス。

 まあ当然。防ぐ手段はない。

 

 遊月&香苗 LP5000→500

 

 崖っぷちにもほどがある。

 

「俺はカードを一枚セット。これでターンエンドだ」

「ふう、一瞬ひやひやしたぞ。私のターンだ。ドロー」

 

 冷や汗を書きながらカードを引く遊月。

 

「本来なら、お前が先攻をとるのがよかったかもな」

「どういう意味だ?」

「お前のエースカードを考えれば当然だろう」

 

 なるほど、毎ターン、スタンバイフェイズに自己蘇生できるドーハスーラのことを言っているようだ。

 

「言いたいことは分かった。だが……まだ私のドローフェイズは終わっていない。速攻魔法『手札断殺』を発動。お互いに二枚墓地に送り、二枚ドローする」

「……まさかな」

 

 真尋は冷や汗をかきながら手札を交換する。

 

「そしてスタンバイフェイズだ」

 

 遊月の墓地から闇が溢れだす。

 

「終わりも始まりもない蛇の王(ウロボロス)よ。怨霊渦巻く大地に降り立ち、死の魔眼を開け!『死霊王 ドーハスーラ』!」

 

 死霊王 ドーハスーラ DFE2000 ☆8

 

 蛇のような体で∞を描きながら出現するドーハスーラ。

 

『我が(あるじ)よ』

(……なんだ?)

『我を活躍させてくれ』

 

 何言ってんだコイツ。

 

(何かあったのか?)

『我のイメージアップのためだ』

(お前何か悪いことしたことあるの?)

『正確には我ではないがな』

 

 ちょっとドーハスーラが言っていることが分からない遊月。

 いろいろと裁量権を与えているので、勝手に行動している時があるのだ。

 ちなみに、それでもし発見されそうになった場合はどうするのかと言う話だが、『信じられないほどデフォルメして出現する』というものである。絶対こいつの頭はおかしい。

 

(なるほどな)

『頼むぞ。我が主よ』

(また今度な)

『なぬぅ!?』

 

 悲鳴を上げるドーハスーラ。

 これでも死霊たちの王である。世間とは案外格式が高くはないものだ。

 

(私の手札を覗いてみれば分かるが、ちょっと出しゃばりたいと考えている奴がいるみたいなんだ。そっちに譲ってやれ)

『……なるほど、まあこれなら仕方があるまい』

 

 遊月の手札を覗きこんで納得するドーハスーラ。

 

「さてと、まあこんなふうに、元々墓地にいなかったとしても、使えないわけじゃないってことだ。『複数の効果を持つモンスター』というのは、『一体で完結している』か、もしくは『他のカードと混ぜ合わせるか』で、そのポテンシャルをフルに発揮すること出来るかどうかが決まる」

 

 最近出てきた『転生炎獣ガゼル』のようなカードの場合。一体で完結しているといえるだろう。

 自信を特殊召喚できる効果と、特殊召喚成功時の効果を持っているのだ。

 ドーハスーラの効果の場合、確かにスタンバイフェイズにしか蘇生効果は発動出来ないのだが、速攻魔法を活用することで、このような展開が可能となる。

 ちなみに、もう一枚が『屍界のバンシー』の場合なら、なお盤面は万全と言えるだろう。

 

「さらに言えば、先攻はドロー出来ないが、ドローフェイズは存在する。よって、このテクニックを使うことは可能なんだ。説明終了。『アドバンスドロー』を使って、ドーハスーラをリリースして二枚ドロー」

『……手札見た時から想定はしていたが、鬼畜の所業だな』

 

 やかましい。

 

「さらに、手札から『竜の霊廟』を発動。デッキから『真紅眼の黒竜』と『真紅眼の黒炎竜』を墓地に送る」

「な……『レッドアイズ』だと!?」

 

 思えば、この二人とのデュエルでは見せていなかったな。

 

「そして、『思い出のブランコ』を使って、墓地から『真紅眼の黒炎竜』を特殊召喚」

 

 真紅眼の黒炎竜 ATK2400 ☆7

 

「さらに、『生者の書-禁断の呪術-』を発動。私の墓地から『真紅眼の不死竜』を特殊召喚し、お前たちの墓地から、『光波翼機』を除外」

 

 真紅眼の不死竜 ATK2400 ☆7

 

「これは……」

「私はレベル7の黒炎竜と不死竜で、オーバーレイ!紅き瞳の竜よ。黒炎の中に潜む鋼の炎の力を示せ。エクシーズ召喚!ランク7『真紅眼の鋼炎竜』!」

 

 真紅眼の鋼炎竜 ATK2800 ★7

 

「フレアメタル……だが、そいつ一体だと、俺達が戦闘破壊して終わりだ」

「もちろん、コイツ一体じゃないさ。私は鋼炎竜の効果発動。オーバーレイユニットを一つ使い、墓地から『真紅眼の黒竜』を特殊召喚」

 

 真紅眼の黒竜 ATK2400 ☆7

 

「このタイミングで、普通のレッドアイズ?」

 

 遊月の手札は三枚。

 一枚くらいは『黒炎弾』なのかもしれないが、それではまだたらない。

 使うとしても三枚すべてがそうでなければ、ライフを削りきることができない。

 

「別に『黒炎弾』何て握っていないさ。私は手札から、『相克の魔術師』をペンデュラムゾーンにセットする」

「は、魔術師!?」

「別に魔術師パーツを複数積んでいるわけじゃない。入れてるのは相克の魔術師だけだ。私はペンデュラム効果を発動。このターン。鋼炎竜は、レベル7のモンスターとしてエクシーズ召喚が可能になった」

 

 遊月は手を掲げる。

 

「私は、レベル7の『真紅眼の黒竜』と、ランク7の『真紅眼の鋼炎竜』で、オーバーレイ!」

 

 二体の真紅眼が、渦の中で交わり、雄叫びを上げる。

 

「紅き瞳の黒竜よ。憤激する魂の爆炎を纏い、二色のまなこを煌めかせ、爆誕せよ」

 

 爆炎を巻き上げながら、その竜は現れる。

 

「エクシーズ召喚。ランク7『覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン』!」

 

 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ATK3000 ★7

 

『グルル……』

(ん?『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の精霊をエクシーズ素材にして出せって?知りあいに持ってる奴いないんだから仕方がないだろ)

 

 レイジング・ドラゴンからの要求はまるっと無視する遊月。

 いないものはいないのだ。

 

「このタイミングで、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンだと……」

「効果発動。オーバーレイユニットを一つ使い、相手のカードすべてを破壊し、その数×200。攻撃力を加算する」

 

 爆炎を巻き上げると、二枚のカードが破壊される。

 

 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ATK3400

 

「さらに、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンは、一度のバトルフェイズで二回の攻撃ができる。やれ、オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!」

 

 オッドアイズ・レイジング・ドラゴンが、エネルギーを集約していく。

 そして、それをブレスにして一気に放出した。

 

「「うわああああ!」」

 

 真尋&浩太 LP6000→2600→0

 

 決着。

 

「と言うわけで、私たちの勝ちだ。クーポンデータは貰うぞ」

「ああ。それはルールだからな。貰っていけよ」

 

 データが入ったカードを二枚もらって、片方を江藤に渡す。

 その時の遊月を見る江藤の顔だが、何と言うか、頼りになりそうな人を見つめている時の目だった。

 

(……これは、まだ問題を抱えているんじゃなかろうか……)

 

 何かを言ってくるわけではない。

 ただ、訴えているようなその視線に、遊月は何を言えばいいのかわからなかった。

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