遊戯王Incarnation   作:レルクス

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第二十話

『いてて……なんだか僕ずっとひどい目に合ってない?』

 

 アンデットワールドにて、ブルームがそんなことを呟いた。

 

『いや、それに関してはお前が悪いだろう』

『ブルームはバカだと思う』

 

 ドーハスーラとみずきの視線は冷たい。

 まあ、ドーハスーラに目はないのであくまでも雰囲気だが。

 

『だって……僕はただ写真をとっていただけなんだよ!』

『その内容に問題があるから制裁を受けることになるんだろうに』

『なんだとこのチキング!どうせそんな勇気すらないくせに!』

『なんだとこのゾンビはな!煩悩全開の分際でごちゃごちゃ言うな!』

 

 だんだん精神年齢の低い言い合いになってきた。

 

『……そうだった。ドーハスーラもバカだった』

『いや、ちょっと待って。我ってそのあたりの信用ないのか?』

『ぶっちゃけあんまり……』

 

 杖を持っていない左手で地面にのの字を書き始めるドーハスーラ。

 なかなか哀愁が漂うものである。

 

『そういえば、ノヴァが見えないね』

 

 ブルームが思いだしたように言った。

 レッドアイズと定期的に確認を行うドーハスーラが復活した。

 

『ノヴァなら元マスのところにいったぞ。ちょっと一緒に寝るそうだ』

『あ、なるほどね。それなら仕方ないか』

 

 離れるとしても、元マスのところに行くというだけで納得するブルーム。

 本当に、それが普通という印象なのだろう。

 

『その間の強奪に関してはどうするの?』

『ドラゴネクロが担当するぞ』

『冷や汗流してたよ』

 

 ドーハスーラとブルームはみずきの補足に首をかしげる。

 

 そして、噂をすればなんとやら、ドラゴネクロの姿が見えた。

 

『あ。おーいドラゴネクロ~!適当にだべろうぜ~』

 

 ブルームが叫ぶと、ドラゴネクロが振り向いて、そしてこちらに来た。

 

『何か話題があるのか?』

『ちょうど君の話をしていたんだよ。なんか冷や汗流してたっていうからさ』

『……いやまあ、ちょっとな』

『どうかしたのか?』

『まあ、あれだ……モンスターの攻撃力って意外と上がりやすいんだなと思ってな』

『……何を今更』

 

 デュエルモンスターズでは攻撃力のインフレなどよくあることである。

 

『墓地に特定モンスターをため込むことで攻撃力を上げるモンスターがいるだろう。あれを少し舐めていた』

『何で腕を震わせながらそんなこといってんの?』

『ふむ、墓地に特定のカードか……数枚でいいのなら我が除外すればいいだけのことだ。効果処理時に選べるからまず逃げられないだろうし』

『その手があったか!』

 

 急に希望を掴んだ様子のドラゴネクロ。

 本当に何があったのだろうか。

 ただ、そんなことを考えてあとで、ドラゴネクロはドーハスーラを見ながら思う。

 

(そういやアイツは、活躍させてほしいといえば本当に活躍させてもらえてたのに、こいつは単なるコストなんだよな……)

 

 このまま考えていくと泥沼にはまるので思考の隅に追いやることにした。

 ブルームが頷く。

 

『まあ、何を悩んでいたのかしらないけど、何事もなさそうで何より。ところで、ノヴァがやってたようなことはちゃんとできるの?』

『もちろん。じゃないと、ノヴァが俺を信用しないからな……』

 

 関係は悪くないが技術的な信用が薄いのが一部の精霊たちの現状らしい。

 

『そっか……あんな若気の至りみたいな感じで暴れてたのに、落ち着いたもんだね』

『それは言わないでくれ……』

『?……何か変なことしてたの?』

 

 みずきが首をかしげる。

 ドーハスーラが腕を組んで答える。

 

『ふむ……まあ、悪霊時代にいろいろな』

『ドラゴネクロはね。無理矢理悪霊にされてたんだよ』

『無理矢理?』

『そうだ。とある施設で拘束されて、俺は悪霊にさせられた』

『それを、マスターがデュエルで救ったわけさ。懐かしいねぇ』

 

 本当に懐かしそうに言うブルーム。

 

『我も、あの時のことは忘れられないな』

 

 精霊たちの中にも、様々な事情を抱えたものがいる。

 

 ★

 

 昔の話だ。

 当時、『真紅眼の不屍竜』がまだ進化しておらず、『真紅眼の不死竜』だったくらい前だったとドーハスーラたちは記憶している。

 

「悪霊の目撃件数が増えたな……」

 

 人気のない倉庫街。

 遊月はハイヤーに乗って、窓の外を見ながらそんなことを呟く。

 

「そんなこともあるだろ。まだ許容ラインでとどまってるレベルだぜ?」

 

 ハイヤーを運転しながらそんな返答をするのは、スーツを着崩してサングラスをかけた茶髪の青年。

 活発な印象を持つ青年であり、遊月ともなかなか距離感が近い言葉の使い方である。

 近い距離を例えるならば、遊月と英明に近い感じだろう。

 

「で、この近くにいるって聞いたけど……」

「そのようだな……ドーハスーラ。どうだ?」

『うむ……次の角を右だ』

「了解。次が右だな」

 

 ドーハスーラが遊月の中にある精霊世界から語り掛ける。

 指示を聞いて茶髪の青年が頷く。

 

「で、直哉、何か言いたそうな顔をしているが、なんだ?」

「いや、久しぶりに見るからな。そのカッコ」

 

 金成直哉(きんせいなおや)

 それが青年の名前である。

 そして、彼が久しぶりに見るといった遊月の格好は、やや軍服に似た設計である『DGC』の制服だった。

 

「DGCのガキどもに言われたからな。まあ、これをクリアすれば、最近のミスを立て直せるから、私としてもあとあと面倒な部分が少なくなる。何故か新着をもらったが」

「あのおっさんたち必死だな」

 

 遊月は『ガキども』と呼び、直哉は『おっさんたち』と呼んでいる。

 二人称に年齢の違いが見られるが、遊月の『秘密』をすでに直哉が共有しているようで、何かを訂正する雰囲気はない。

 

「警察組織が乱立し始めてるもんな。結構バラバラだけど、どうにか纏まらんのか?」

「さあな。ただ、一番重要な部分は私の管轄内だ。そういった組織への人材提供として、DGCはある程度発言力があった方がいい」

 

 『成果』というものは『目標』よりも影響が大きく、そして『現実』と言うものは、何にも代えられない粘っこさがある。

 そういうものを作るために、今回遊月はこんな恰好をしている訳だ。

 溜息を吐きながら、胸ポケットからカードをとりだす。

 

「……『更新不要』の『DGCライセンス』か。こんなもんを作ってどうするんだか」

「まっ、いつでも無条件で顔を出せるって言うのはいいじゃねえか。遊月そういうの忘れるけど」

「五月蝿い」

 

 クククと笑う直哉。

 

「しかしまぁ、身長が高くてしっかり背筋が伸びてると、軍服見たいな服は似会うねぇ」

「直哉とは大違いだな」

「うっせ」

 

 身長は別に低いというわけではない直哉。

 しかし、スーツ姿ながら、若干猫背である。

 本人のようすから察するに、指摘されなかったら若干曲がっていることが多いようだ。

 

「……あ、この角だな」

 

 直哉は角を見て、それを右に曲がった。

 すると、『ゴブリンゾンビ』が見えた。

 

「……遊月の精霊にいたよな」

「ああ。ただ……悪霊瘴気が若干薄い。本体と言っていい悪霊が他にいるはずだ」

『その反応はもっと遠くからだ。このまままっすぐ進めば……いや、こちらに向かって来ている!』

 

 次の瞬間、直哉と遊月は気が付いた。

 

「直哉!」

「わかってら!」

 

 ハンドルを勢いよくきって、ハイヤーを急に方向変換させる。

 すると、元の進行場所に、ドラゴンの掌底が振りおろされた。

 その姿を見て、直哉は舌打ちする。

 

「『冥界龍 ドラゴネクロ』か。こりゃ面倒なレベルの悪霊だぜ」

「雑魚は抑えておけ」

 

 言うが早いか、遊月がハイヤーから降りた。

 それと同時に、近くの影から人が出て来る。

 紫色の髪で、ゆがんだ色の瞳をした男性だ。

 

「あの一撃を避けるたぁ勘がいいじゃねえか」

「殺意を漏らしすぎだ。それくらいはわかる」

 

 遊月はデュエルディスクを取り出す。

 

「俺ばっかり警戒していいのか?」

「どういう意味だ」

「俺がお前を抑えている間。小さい悪霊どもに周りを襲わせることも可能だってことだぜ」

 

 それを聞いた遊月は鼻で笑った。

 

「既にしているくせに何を言ってるんだ。第一、雑魚なら私が狩るまでもない」

 

 デュエルディスクを構える遊月。

 青年も舌打ちしながらデュエルディスクを構えた。

 

 ★

 

 そして、その雑魚の駆除を任された直哉だが……。

 

「あーもう、人使いが荒いぜ。まあ、別に珍しいことじゃねえけどよ」

 

 弱い悪霊たちが密集しているところを狙って、直哉は走った。

 十数秒でおいついた。

 遊月がいるあたりからは見えなくなっているが、直哉としては関係ない。

 

「で、俺がやるのはお前らか」

 

 アンデット族モンスターが集まっている。

 直哉が近づくと、一つの立方体が出現し、その中にすべての悪霊たちが入って行く。

 

「へぇ、『デモンズ・キューブ』か」

 

 力の弱い悪霊たちは、弱いデッキしか作れない。

 そのため、シナジーのある者たちが集まり、自動的にデッキを構築する『一時的な共同手段』が存在する。

 それが『デモンズ・キューブ』と呼ばれるものだ。

 

『雑魚呼ばわりしやがって……ぶっ倒してやる!』

「ハッ!やってみろ」

 

 直哉はデュエルディスクを構えて、デモンズ・キューブのそばにカードが五枚出現する。

 

「『デュエル!」』

 

 直哉 LP8000

 DC LP8000

 

「先攻は俺だな」

 

 ターンランプがついたのは直哉。

 

「俺は手札から『レッド・リゾネーター』を通常召喚!そのモンスター効果で、手札から『ダーク・リゾネーター』を特殊召喚!」

 

 レッド・リゾネーター ATK 600 ☆2

 ダーク・リゾネーター ATK1300 ☆3

 

「そして現れろ、荒ぶる魂のサーキット!召喚条件はチューナー一体を含むモンスター二体!リンク召喚!リンク2『水晶機巧-ハリファイバー』!」

 

 水晶機巧-ハリファイバー ATK1500 LINK2

 

「ハリファイバーの効果発動。デッキからレベル3チューナーの『幻影王 ハイド・ライド』を守備表示で特殊召喚!」

 

 幻影王 ハイド・ライド DFE300 ☆3

 

「俺はカードを二枚セット、ターンエンドだぜ」

『僕たちのターン。ドロー』

 

 一枚カードが出現する。

 

『僕たちは手札から、『闇竜の黒騎士』を召喚!』

 

 闇竜の黒騎士 ATK1900 ☆4

 

「なるほどな……俺はハリファイバーの効果発動。こいつを除外して、エクストラデッキから『シューティング・ライザー・ドラゴン』をシンクロ召喚!モンスター効果で、レベル2の『フォース・リゾネーター』を墓地に落とす!」

 

 シューティング・ライザー・ドラゴン ATK2100 ☆7→5

 

「そして、シューティング・ライザーは相手メインフェイズでもシンクロ召喚が可能。ハイド・ライドを自分フィールドでシンクロ素材にする時、チューナー以外のモンスターとして扱える。行くぜ!」

 

 直哉は手を掲げる。

 

「俺はレベル3のハイド・ライドに、レベル5のシューティング・ライザーをチューニング!王者の咆哮。世界に轟き、最高の力を得て、我が身に宿れ!シンクロ召喚!レベル8『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン ATK3000 ☆8

 

 現れるドラゴン。

 荒々しいパワーを秘めて、直哉のフィールドに降り立った。

 

『ぐっ……攻撃力3000か……なら、カードを二枚セットして、ターンエンド』

「俺のターン。ドロー!」

 

 ドローしたカードを見て、直哉は良いカードだとばかりに微笑む。

 

「俺はレッド・デーモンズがいることで『紅蓮魔竜の壺』を発動。デッキから二枚ドローだ」

 

 デメリットが頭おかしいが貴重なドローカードだ。

 ちなみに昔のカードらしくターン1が付いていない。

 

「そして、『クリムゾン・ヘル・セキュア』を発動。魔法・罠を全て破壊する!」

『グッ……『アンデッド・ストラグル』を発動し、攻撃力を1000アップさせる!』

 

 闇竜の黒騎士 ATK1900→2900

 

 だが、残った一枚のセットカードは破壊である。

 ちなみに『次元幽閉』だ。

 

「バトルフェイズ!レッド・デーモンズ・ドラゴンで、闇竜の黒騎士を攻撃!」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴンが掌底を繰り出して、粉砕する。

 

 DC LP8000→7900

 

『チッ……』

「俺はこれでターンエンドだ」

『僕たちのターン。ドロー!来た!『融合』を発動。手札の『ピラミッド・タートル』と『デス・ラクーダ』で、融合召喚!力を貸してください。『冥界龍 ドラゴネクロ』!」

 

 冥界龍 ドラゴネクロ ATK3000 ☆8

 

 現れるドラゴネクロ。

 だが、悪霊としての力がない。

 本体ではないスカカードだろう。

 

『さらに、『デーモンの斧』を装備!』

 

 冥界龍 ドラゴネクロ ATK3000→4000

 

「な……攻撃力4000!?」

 

 これがグッドスタッフに使われる初期カードの力である。

 一枚がほとんど無駄になりにくいのだ。

 

『バトルフェイズ。ドラゴネクロで、レッド・デーモンズ・ドラゴンを攻撃!』

「させるか!速攻魔法『イージー・チューニング』を発動。墓地から『ダーク・リゾネーター』を除外することで、攻撃力を1300ポイントアップする!」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン ATK3000→4300

 

「返り討ちだ!」

 

 ドラゴネクロ粉砕!

 

『……ターンエンド』

 

 そりゃ手札がないのだから仕方がない。

 ちなみに……イージー・チューニングの攻撃力上昇は永続である。

 

「俺のターン。ドロー!手札から『チェーン・リゾネーター』を召喚して、デッキから『フレア・リゾネーター』を特殊召喚!」

 

 チェーン・リゾネーター  ATK100 ☆1

 クリエイト・リゾネーター ATK800 ☆3

 

 なかなかリゾネっている直哉。

 体から炎が巻き上がる。

 

「行くぜ。俺はレベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴンに、レベル1のチェーン・リゾネーターと、レベル3のクリエイト・リゾネーターをダブルチューニング!」

 

 炎のチューニングリングが出現し、レッド・デーモンズ・ドラゴンを包み込む。

 

「王者と悪魔、荒ぶる魂により共鳴し、今交わる!全てを滅する力を得て、降臨せよ!シンクロ召喚『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』!」

 

 スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン ATK3500→6500 ☆12

 

『こ……攻撃力、6500だと!?』

 

 シューティング・ライザーで落としたり、チューナー以外で扱えるハイド・ライドとかを絡めたりとかそういう小ネタを積み重ねると、イージー・チューニングを使った後でもこれである。

 

「さらに、手札一枚を墓地に送って『閃光の双剣-トライス』を装備!捨てたのは『クロック・リゾネーター』だ。攻撃力が500下がるが、同時に500分上がる。そして、二回攻撃が可能になる!」

 

 トライスがスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの両手に出現する。

 スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンが力を流し込むと、爆炎を吹き上げ始めた。

 

「バトル!スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンで、ツイン・ダイレクトアタック!」

 

 左手の剣を真横に振ると、炎の軌跡が残り、右手の剣を垂直に振りおろすと、炎の軌跡が十字になって、キューブに向かって飛んでいく。

 

『う、うあああああああ!』

 

 DC LP7900→1400→0

 

 衝撃と同時に消し飛ぶキューブ。

 

「よっしゃ!最高だぜ!スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!」

 

 ガッツポーズをする直哉。

 

 少し冷静になって、自分が走ってきた方を見る。

 

「さてと……まあ、遊月なら心配いらねえか。戻るぞ。ノヴァ」

『グルル』

 

 スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンがデュエルディスクに引っ込むと、直哉はもと来た道を走っていった。

 

 ★

 

 その頃の遊月はというと。

 

「さて、とりあえずやるか。死後の世界の広さを教えてやる」

「ハッ!勝った気でいるんじゃねえ!」

「「デュエル!」」

 

 遊月 LP8000

 翔太 LP8000

 

 ターンランプがついたのは敵の翔太だ。

 

「俺の先攻。モンスターとカードをセットして、ターンエンドだぜ」

 

 セットモンスター一枚と、セットカード一枚。

 だが、かなり自信があるようだ。

 

「私のターンだ。ドロー。このドローフェイズ。速攻魔法『手札断殺』を発動。私は『屍界のバンシー』と『死霊王 ドーハスーラ』を墓地に送り二枚ドロー」

「俺も手札交換だ……チッ。そのセットってことは……」

「そういうことだ。墓地から『屍界のバンシー』を除外して効果発動。デッキから『アンデットワールド』を発動する」

 

 広がる屍界。

 お互いにデッキはおそらく『アンデット族』だろう。

 しかし、ドーハスーラがいるので、必須だ。

 遊月の墓地から闇が溢れだす。

 

「スタンバイフェイズ。墓地から効果発動だ。終わりも始まりもない蛇の王(ウロボロス)よ。怨霊渦巻く大地に降り立ち、死の魔眼を開け!『死霊王 ドーハスーラ』!」

 

 死霊王 ドーハスーラ DFE2000 ☆8

 

『フハハハハ!さあ、始めようか!』

「私は手札から、『不知火の隠者』を通常召喚」

 

 不知火の隠者 ATK500 ☆4

 

「ハッ!これ以上は許さねえよ。罠発動『不知火流 燕の太刀』!俺のセットモンスター。『ゴブリンゾンビ』をリリースすることで、ドーハスーラと隠者を破壊だ!」

 

 粉砕するドーハスーラと隠者。

 

『我、最近活躍してない気がする』

 

 ギャグパートで頑張れ。

 

「まだ効果は続いてるぜ。デッキから『不知火の武部』を除外。ゴブリンゾンビと武部の効果発動。ゴブリンゾンビの効果で、デッキから『牛頭鬼』を手札に加える。武部の効果で、一枚ドローして牛頭鬼を捨てる。そのまま効果発動だ!墓地の『ピラミッド・タートル』を除外し、手札から『赤鬼』を特殊召喚!」

 

 赤鬼 ATK2800 ☆7

 

(……赤鬼を入れてるアンデットデッキ。初めてみた)

 

 召喚時に手札コストを任意の枚数払って、その分だけバウンス出来る効果を持つモンスターだが、遊月は使ったことが無い。

 召喚制限のないアンデット族モンスターで最高の攻撃力は確かに2800ラインだが、だったら守備力が3000あり、敵の除去カードに反応できる『闇より出でし絶望』の方がいいだろう。

 とはいえ、カードの選択はデュエリストが決めることなので、突っ込んでも仕方がないのだが、

 

「……まあいいか。私は『おろかな埋葬』を発動。デッキから『グローアップ・ブルーム』を墓地に落とす。そして除外することで効果発動。デッキから『真紅眼の不死竜』を特殊召喚!」

『よし、行ってこい!』

『参るか』

 

 真紅眼の不死竜 ATK2400 ☆7

 

「な……不死竜だと?」

「さらに、手札から『黒鋼竜』を、攻撃力600アップの装備カードとして、不死竜に装備させる」

 

 真紅眼の不死竜 ATK2400→3000

 

「バトルフェイズ。真紅眼の不死竜で、赤鬼を攻撃!」

 

 不死竜が腐り切った黒炎弾を放つ。

 赤鬼は爆散した。

 

「ぐうぅ……」

 

 翔太 LP8000→7800

 

「さらに、不死竜がアンデット族モンスターを戦闘で破壊したことで、そのモンスターを特殊召喚だ」

 

 赤鬼 ATK2800 ☆7

 

「そして、赤鬼でダイレクトアタック!」

「ぐおああああ!」

 

 翔太 LP7800→5000

 

 まさに踏んだり蹴ったりなデュエルである。

 

「メインフェイズ2だ。私はレベル7の不死竜と赤鬼でオーバーレイ。紅き瞳の竜よ。黒炎の中に潜む鋼の炎の力を示せ。エクシーズ召喚!ランク7『真紅眼の鋼炎竜』!」

 

 真紅眼の鋼炎竜 ATK2800 ★7

 

「フレアメタルだと……」

「私はカードを二枚セットして、ターンエンドだ」

「なら、俺のターン。ドロー!まずは『サイクロン』を使って、アンデットワールドを破壊する!」

「フレアメタルの効果で、500のダメージだ」

 

 フレアメタルが炎を吐いた。

 

 翔太 LP5000→4500

 

「チッ……だが、これでドーハスーラは復活しねぇ、手札から『融合』を発動だ!」

「フレアメタルの効果で、500のダメージだ」

 

 翔太 LP4500→4000

 

「俺は手札の『ブラッド・サッカー』と『ファラオの化身』を融合。冥界の扉よ。二つの死者の浅ましき歌により開け!融合召喚!レベル8『冥界龍 ドラゴネクロ』!」

 

 冥界龍 ドラゴネクロ ATK3000 ☆8

 

『フハハハハ!矮小な人間風情が、俺様に勝てるとでも思ってるのか!』

 

 高笑いしながら出現するドラゴネクロ。

 のちに『若気の至り』と言われるアレである。

 

「……そいつ。まだ完全に悪霊瘴気に取り込まれているわけじゃないな」

 

 自らを構成する精霊力。

 その中の過半数が悪霊瘴気になると、精霊は悪霊に変わる。

 精霊力は思ったより簡単に悪霊瘴気になるのだが、悪霊瘴気を精霊力に戻す手段は存在しない。

 そのため、完全に悪霊瘴気に取り込まれた場合、デュエルで倒すと悪霊瘴気が分解して消滅するが、まだ精霊力が残っている場合、悪霊瘴気が全て分解すると精霊力が残るので、精霊に戻すことが出来る。

 

「だからどうした。お前が勝てるわけねえんだよ!バトルだ!ドラゴネクロで、フレアメタルを攻撃!」

 

 遊月 LP8000→7800

 

「ドラゴネクロと戦闘を行う相手モンスターは破壊されない。この瞬間、ドラゴネクロの効果発動。相手モンスターの攻撃力を0にする!」

「ダメージはお前にもあるぞ」

 

 翔太 LP4000→3500

 

 ちなみに、ドラゴネクロはトークン精製能力があるが、レベルを持たないエクシーズモンスターやリンクモンスターが相手の場合、攻撃力を下げることはできても、トークンを生成することはできない。

 

「俺はこれで、ターンエンドだ」

「私は『闇の増産工場』を発動。フレアメタルを墓地に送って、一枚ドローする」

 

 即座に手札を交換する遊月。

 これで、エクストラモンスターゾーンは空いた。

 

「私のターンだ。ドロー」

 

 ドローしたカードを見た後、遊月はドラゴネクロを見る。

 悪霊瘴気に囚われた瞳は、確かに狂気に満ちている。

 しかし……まだ、その奥で助けを求めているのは分かった。

 

(さて、やるか)

 

 遊月はそんなことを考えた。

 

「『闇の増産工場』の効果により、手札の『ゾンビキャリア』を墓地に送り一枚ドロー。手札から、『生者の書-禁断の呪術-』を発動。墓地からドーハスーラを特殊召喚し、お前の墓地から、『ブラッド・サッカー』を除外する」

『フハハハハ!我、再臨!』

 

 死霊王 ドーハスーラ ATK2800 ☆8

 

「ドーハスーラか……」

「とはいえ、今回使うのはコイツの『特技』だ。『ユニゾン・チューン』を発動。墓地のゾンビキャリアを除外し、ドーハスーラに、レベル2とチューナーを与える」

 

 死霊王 ドーハスーラ ☆8→2 (チューナー)

 

「お前の場に、他にモンスターはいねぇ。どうするつもりだ」

「罠カード『シンクロ・マテリアル』を発動。対象はドラゴネクロだ」

「何!?」

 

 遊月は手を掲げる。

 

「シンクロ・マテリアルの対象になったモンスターを、私はシンクロ素材にできる。私はレベル8のドラゴネクロに、レベル2のドーハスーラをチューニング」

 

 ドラゴネクロが遊月のフィールドに移動する。

 

『フハハハ!これが我の力だ。思い知るがよい!』

 

 二つのチューニングリングとなったドーハスーラ。

 ドラゴネクロを包むと、リングが高速回転し、ドラゴネクロの中の悪霊瘴気が抜けていく。

 

「冥界に響く咆哮よ。濁流の中で研ぎ澄まされし力を手に、君臨せよ。シンクロ召喚!レベル10『冥界濁龍 ドラゴキュートス』!」

 

 冥界濁龍 ドラゴキュートス ATK4000 ☆10

 

「ど……ドラゴキュートスだと。しかも、俺のモンスターを使って……」

 

 驚いているようだが、まあ無理もないだろう。

 ドラゴキュートスが遊月を見る。

 

『新たなるマスターよ。感謝する』

「構わんよ」

 

 完全に悪霊瘴気に囚われていないのなら、全て救いだすことが出来る。

 遊月にとっては、今回もそうしたというだけの話だ。

 

「シンクロ・マテリアルを使ったターン。私はバトルフェイズを行えない。ターンエンドだ」

「ぐ……俺のターン。ドロー!チッ……糞ガアアアア!」

 

 ドローしたカードは使うことすらできないものだったようだ。

 だが、デュエルと言うものは、何もできないものに対して時間を与えたりはしない。

 数秒後、遊月のターンになる。

 

「残念ながら、私のターンだ。ドロー。ドラゴキュートス。終わらせろ」

『うむ』

 

 ドラゴキュートスが口の中にエネルギーをため込んで、そのまま放射する。

 エネルギーが濁流となって、翔太を包んでいった。

 

「うわああああ!」

 

 翔太 LP3500→0

 

 翔太はそのまま気絶。

 遊月は拘束して、そのまま電話をかけた。

 

「さてと、この功績を利用して、どうにかするか……新品って何か硬いんだよな。着心地が悪い」

 

 肩を回す遊月。

 

「おーい遊月。大丈夫か」

 

 直哉が来た。

 

「ああ。問題はない」

「みたいだな。で、悪霊は?」

「精霊に戻した」

「そうかい……また強いのが来たもんだな」

「だな。さて、DGCの回収班もそろそろ来る頃だろうし、さっさと引き渡して帰るぞ」

「わかった。どこか寄り道するか?」

「そうだな……」

 

 遊月は少し考えた。

 

「『デュエルロイド』を作ってる研究所が近かったはずだ。見に行ってみよう」

「ああ、様々なデュエルデータを蓄積して作るロボットの研究所か」

「確か開発コードネームは『HINATHU』だったような……まあいいか。行ってみよう」

 

 ★

 

 回想終了。

 

『……とまあ、そんな感じで、俺が仲間になったわけだ』

『そうだな。我としても活躍できて満足する一戦だったぞ』

『チューニングする時に無理矢理悪霊瘴気を追いだすなんて聞いたことないけど……』

『出来る精霊はいくらかいるんじゃないかな?でも、簡単にそれをやってのけるのはドーハスーラくらいだろうね』

 

 元々チューナーではないくせに一体いつ練習しているのかと言う話だが、あくまでもチューニングと言う方法はきっかけのようなものであり、悪霊瘴気の操作そのものはドーハスーラができることだ。

 

『いろいろあったのは分かった。ところで、複雑な出会いの精霊って多いの?』

『我ももとは悪霊だったからな。いろいろあったぞ。何度ガチバトルをやったことか……』

『僕はレッドアイズとほぼ同じだけど、多分レッドアイズが語りたがらないだろうから保留だね』

 

 出会いと言うものはいろいろあるし、出会いがあるのならまた別れもある。

 

『魂をたぎらせた結果、短命だったマスターの精霊って言うのは、結構充実してるけどね。ノヴァのマスターは死んじゃったけど、ノヴァとしては悪くないんじゃないかな。しっかり看取ったって聞いたし』

『ふーん。なるほど』

 

 みずきも、なんとなく察したようだ。

 

『さてと、そろそろ写真の整理をしてくるから、僕はこの辺で』

『ああ……ん?ちょっと待て、一体何の写真だ?』

『フフフ。『みずきとうららがマスターに抱き付いて寝ている写真』とか、それの『綾羽ちゃんバージョン』とか『香苗ちゃんバージョン』とかね。全員寝間着姿で可愛らしい感じに……ちょっとウィリアム・テルと槍がバチバチしている音が聞こえるから僕は退散するよ。それじゃ!』

 

 ブルームは『あとはこのカメラを分解し、上手く関税にかからないようにしなければ……でもすでにミンチなんだけど大丈夫だろうか』とかなんとかほざきながら、すぐに見えなくなった。

 

『……平和だな』

『平和なの?』

『まあ、これくらいじゃれ合えるくらいがちょうどいいと思うぜ?』

 

 そんなことを、残った三人は話すのだった。

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