訓練に熱が入るのはいいことだ。
実際、圧倒的な実力を持つ者の近くにいて、そしてその隣に立つことを目指そうとする場合、いつまでも成長し続ける必要がある。
遊月は優秀なトレーナーを電話一本で用意することも可能であり、男女関係なく、レベルを引き上げることが可能だ。
トレーニング中に矯正していると普段の仕草にも出て来るもので、強くなったことと言うのは周りからは分かるのだ。
そして、若いものが成長していく姿というものは、年寄りには眩しいものがある。
「おお、遊月様。いらっしゃいましたか」
「……入学式にすら出ていなかったから、見るのは大体何年ぶりだろ……それにしても、かなり老けたな。
「最後にお会いしたのはそこそこ前ですからな。遊月様とはタイムスケジュールが違うのですよ」
広いグラウンドと街並みを一望することが出来る『アムネシア理事長室』
そこで、遊月は初老の男性と話していた。
男性のオールバックにした黒髪は白髪交じりではあるが、高級なスーツを着て、背筋はしっかりと伸びており、愛嬌のある笑みを浮かべ、まだまだ現役と言う雰囲気を醸し出している。
言いかえれば『良い年の取り方をした人』と言えるだろう。
遊月が在籍している『デュエルスクール・アムネシア』の理事長である。
高級そうなソファにお互い真正面に座っているが、街並みを一望できる窓が正面に見える場所に遊月が座っているところを見ると、格式は遊月が上のようである。
「最近、いろいろ起こっているようですね」
「私がどうにかできる範囲で収まっているから何とかなっているがな」
「アムネシアも、遊月様がいらっしゃる限りは平和なものです。私も安心して後継者の育成ができるというもの。そろそろ育成が終盤でしてね」
「長女が私以上に腐った目をしていたぞ」
「フフフ、追い込みは入念にやっておく方がいいですからな」
そういって、愛嬌のある笑みの中に黒いものが混じる創吾。
遊月はあえて追及しないことにした。
聞けばどういう笑顔なのか。その意味を答えるだろうが、遊月が追及するとしても野暮と言えるジャンルは存在するので。
その時、部屋のドアがノックされた。
「おや、
ノックの音だけですべてが分かるわけではなく、ちゃんとカメラが付いていてそれを確認しただけだが、創吾は笑顔のままそういった。
「お父様。書類の整理が完了しました」
ドアが開いては言ってきたのは、一人の女性だ。
知的な印象があるブルーライトカットの黒縁眼鏡をかけた、長い桃色の髪が特徴。
かっちりした黒のスーツとフルレングスパンツで、胸はCくらい。
やや身長が低く童顔なので、外見的には大学生で通用しそうである。実際は三十路。
タブレットを左手で持っており、なかなか疲れたような雰囲気がある。
小湊家の長女であり、次期アムネシアの理事長になるための英才教育中の人である。
……父親とは年齢差が四十くらいあるが。
理事長室に入って来るのが珍しい遊月の存在に気が付いていないようなので、疲れているのは実際間違っていないだろう。
ちなみに、理事長室ともなればアポイントもしっかり取って訪れるものだが、遊月に関してはそんなものは必要ない。
電話も秘書を通じたものではなく直通である。
「はあ……やっと一段落付きました」
「苦労しているようだな」
「ええ、もう本当に……え?」
黒江は遊月の声を聞いて、驚いたように顔を上げた。
「ゆ、遊月様、いらっしゃっていたのですか?」
「数分前からだ」
最も、今日は創吾に来客はいない日である。
実はそれなりに珍しいのだが、遊月が電話したのでコール一回で会うことにした。と言った状態だ。
書類整理で激務状態だった黒江だが、そんな掟破りなレベルで訪れる遊月のことを気にしていたら頭痛がするのである。まだまだ父親ほどなれていない。
「通りで事務室の雰囲気が若干違うなと思いました」
「私が来ていると反応する人は一定数いるからな」
様々な権限を持っている遊月だが、何も人事権まで完全に掌握しているわけではない。
なので『一定数』と言ったが、それでも、アムネシアエリアで重役は狭き門だ。
中には遊月の『推薦』で嫌々ねじ込まれたものもいるが、遊月はそういう管理者とそれに直結する事務員の選定で人の不満は気にしない
「まだ片づけないと行けない書類がたくさんあるんですよね……」
「ふむ……」
遊月は黒江を見る。
そして、頭の中にある知り合いのスケジュールを思いだして、言った。
「私の家に来るか?」
「え、いいんですか?」
「たまには飴があっても良いだろう。初々しいのが二人いるから寄って行くといい」
「おぉ……ありがとうございます!……その間の私の仕事は……」
「私が仕上げておく」
「良いんですか!?」
「かまわない」
遊月は頷く。
どうやら、飴を与える時はそれはそれなりに徹底するようだ。
ちなみに、遊月が仕上げると言った場合、引き継ぎ作業は必要ない。
どうせ遊月のやりたいようにやるからだ。
それに、全てのシステムを作ったのは遊月であり、システムの変更点があればその都度確認している。
一段落付いた。と言っている以上、本人にも癖はあると思われるが、その癖も遊月は把握しているので問題はない。
タブレットを預けると、そのまま黒江は遊月の家に直行するのだった。
……そして、踊るように黒江が部屋を出て言った後、遊月は思う。
「……あれで三十路か」
「一応、すでに結婚済みなのでいいのですが……なかなかお恥ずかしい限りです」
なんだか見た目通り子供っぽい仕草で部屋から消えていった黒江に対して呟く遊月だったが、創吾の呟きに溜息を吐くのだった。
★
「ふう……香苗ちゃんは今日はDGCは休みなの?」
「私の担当ではないですね」
遊月の家の地下にはフィットネスルームが存在する。
この前使用した傷を全て精霊力の減少に変更する部屋だが、あれは遊月の家に住んでいるからと言って自由に使えるわけではなく、制限がないのはあくまでも同伴の場合である。
もちろん、フィットネスルームも十分に広いし、ランニングコースも確保されている。
しかも、いたるところに自販機のようなものがあり、そこでは様々なスポーツ飲料がそろっている。
補充とゴミの回収は『スケープ・ゴースト』が担当だ。
「うぅーん!今日の分のトレーニングは終わりだね」
「私もです!」
なお、二人の格好だが……。
綾羽の格好はこの前と同じで、スポーツブラとホットパンツとスポーツシューズである。
どうやら、遊月の誘惑のためにしていたわけではなく、学校で指定の運動着を着る時以外はこの格好で運動するようだ。あまり肌の露出に対して抵抗がないようである。まあ、痴女か天然かと聞かれれば後者だろうが。
香苗の格好はTシャツにハーフパンツで、言ってしまえば『運動する子の格好としてものすごく普通』である。
トレーニングは終わりのようで、二人ともシャワーを浴びて、そのままアムネシアの制服に着替えた。
何処かに出かけるのだろうか。
さて、それはそれとして、である。
「……ねえ香苗ちゃん」
「なんですか?」
「あの人。だれ?」
綾羽が指差す先には、なんだかすごくポワポワした表情でこちらを見ている女性だ。
童顔だがかっちりした知的な印象を持つファッションであり、綾羽と香苗をすごく幸せそうな目で見ている。
遊月の家のセキュリティはすさまじいので、家に入ってきているところを考えると部外者ではないようだが、初見であることに変わりはない。
向こうも気が付いたのか、こちらに来た。
「フフフ、私の名前は小湊黒江だよ。よろしくね。綾羽ちゃんと香苗ちゃん」
「小湊って……」
「そう……あのクソジ……理事長の娘だよ!」
一瞬本音が出ていたような気がした綾羽と香苗。
だが突っ込んでも仕方がないと判断してスルー。
「そ、そうですか……」
「久しぶりに遊月様が仕事を代わってくれるうえに、家に上がってもいいとのことだったので、来ちゃいました!とてもかわいい二人がいてお姉さんはうれしいです!」
まあ、もしもここにいるのが綾羽と香苗ではなく、月詠と日夏だったら空気が違うであろうことは間違いない。
「遊月君って、アムネシアの理事長の仕事とかできるんですか?」
「出来るよ。それにしても、遊月様に対して君付け……なるほど、
懐かしむような雰囲気でつぶやく黒江。
なんだかとても哀愁が漂っている。
だが、なんだかとても子供を見るような目で見られていると思ったのか、香苗が口を開いた。
「あの……私たちもそれ相応に成長して来ていると思うんですけど……」
香苗がそんなことを呟く。
だが、黒江は大人っぽい笑みを浮かべる。
……いや、元が童顔なので浮かべきれていないが。
「フフフ。あの人達のしごきを受けている私から言われてもらえば、君たちはまだまだかわいいもんだよ……二人まとめて相手しても、十分なくらいにね」
「「なっ……」」
少し不敵な笑みが混ざる黒江。
それに対して、二人は驚いた。
確かに、二人はまだ成長途中と言っていいだろう。
だが、それでも遊月の背中を追いかけているし、様々な資料が保管されている図書室が遊月の家の地下にはあり、そこにはいれるのでいろいろと知識も蓄えているのだ。
決して、弱いとは言われたくはない。
「フフフ、驚いてるみたいだね。なら、実際にやってみる?」
デュエルディスクを取り出す黒江。
「分かりました。弱くはないところを見せます!」
「私もです!」
というわけで、デュエルコートに移動する三人。
そして中に入ると……。
『あ、来た!』
『ピィ!』
グローアップ・バルブと黒竜の雛がいた。
「あれま。これは珍しいですねぇ」
黒江が笑顔で二匹に近づくと、二人の頭を撫でる。
『えへへ。撫でかたがマスターに似てる~』
『ピィ~』
気持ちよさそうな様子の二人。
「え……あの、二人は一体……」
綾羽にはわからない。
『あ、そうだ』
バルブは近くの通気口のそばに行くと、叫んだ。
『父ちゃーーん!桃色の髪のスーツの人と、綾羽さんと香苗さんがデュエルするみたいだよー!』
そう叫んだ。
すると、数秒後、ブルームが通気口から出てきた。
『よし、参上!お、黒江さん、お久しぶりです』
「お久しぶりですね。ブルームさん」
どうやらお互いに知った仲のようだ。
だが、聞き捨てならないことがあった。
綾羽が質問する。
「ねえ、ブルーム君。さっき、バルブ君が君のことお父さんって……」
『そうだね。あれ、僕とレッドアイズには子供がいたんだけど、知らなかった?』
「初耳です!」
香苗がそう叫ぶと同時に、二人は黒竜の雛の方を見る。
視線を向けられた雛は『ピィ?』と首をかしげた。
「……レッドアイズさんの息子なんですね」
『いや、ヒナは女の子だよ。バルブは男の子だけどね』
『僕は植物だからチ○コはついてないけどね!』
『バルブ。下品なこと言うのやめなさい』
どうやら躾がなっていないようだ。
まあ、親がこれなので期待するだけ無駄だろう。
「変わらず賑やかですね」
『黒江さんも変わらず……童顔ですね』
「それは言わないでくださいよ~」
先ほど大人っぽい不敵な笑みを浮かべていたのに、遊月が関係する精霊に会った瞬間にこれである。
レッドアイズ、ドーハスーラに並んで、精霊として格が高い様子のブルーム。
当然、遊月のそばにいた時間は他の精霊と比べても圧倒的に長く、圧倒的な実力があるのだ。
「ひょっとして、ドーハスーラにも……」
『あいつは童貞』
ブルームが即答した。
『で、今回はどんな感じで……ああ、マスターから飴をもらったんだね』
「そんな感じですね。初々しい二人を見ていると、ちょっとデュエルしたくなって」
『だからめちゃくちゃ下手な挑発してたんだね!』
『ピィ!』
「何故分かった!?」
幼児精霊たちにはバレバレだったようだ。というかいつから見ていたのだろう。
黒江が綾羽と香苗を見ると、二人は白けた目をしていた。
「はうっ!?」
初々しいものが恋しい三十路にこの視線はきつい。
『まあいいや、で、デュエルするんでしょ?僕らは部屋の隅で観戦してるよ』
『お姉ちゃんたち頑張れ~!』
『ピィ~!』
と言うわけで、精霊が部屋の隅まで移動した。
綾羽たちは向かい合うように立って、デュエルディスクを構える。
「さて、かかってきなさい」
「いくよ。香苗ちゃん」
「はい!」
「「「デュエル!」」」
綾羽&香苗 LP8000
黒江 LP8000
「私の先攻です!」
香苗が前に出た。
……ちなみにタッグフォースルールである。
「私は手札から、『テラ・フォーミング』を発動して、デッキから『転回操車』を手札に加えて、発動します!」
デュエルコートが転回操車に変貌する。
「そして、手札から『深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト』を妥協召喚です!」
深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト ATK0 ☆10
「転回操車の効果で、デッキから『無頼特急バトレイン』を、レベル10にして特殊召喚!」
無頼特急バトレイン ATK1800 ☆4→10
「さらに、手札から『弾丸特急バレット・ライナー』と『重機貨列車デリックレーン』を特殊召喚です!」
弾丸特急バレット・ライナー ATK3000 ☆10
重機貨列車デリックレーン ATK1400 ☆10
「出てきてください。重機を呼び起こすサーキット!召喚条件は、機械族二体。私はバトレインとバレット・ライナーを、リンクマーカーにセット!新たな設計図で、いざ連結!リンク召喚!リンク2『機関重連アンガー・ナックル』!」
機関重連アンガー・ナックル ATK1500 LINK2
「さらに、レベル10のナイト・エクスプレス・ナイトとデリックレーンでオーバーレイ!全てを守る盾を手に、いざ、出陣!エクシーズ召喚!ランク10『No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ』!」
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ DFE4000 ★10
『さて、デリックレーンを素材に私を出しましたか、堅実でいいことです』
先攻一ターン目としては悪くない。
まあそもそも、列車デッキは回らない場合、最低でもドーラを立てておくのが普通である。
「私は『アイアンドロー』を発動です。これで……カードを一枚セットして、ターンエンドです。バトレインの効果でデッキのナイト・エクスプレス・ナイトを。バレット・ライナーの効果で、墓地からバトレインを手札に加えます」
「なら、私のターンだね。ドロー!」
黒江がカードをドローする。
綾羽と香苗は、創輝が使っていた精霊カードを思いだす。
それを考えれば……。
「私は手札から、『DD魔導賢者ケプラー』を通常召喚!」
DD魔導賢者ケプラー ATK0 ☆1
考えられる選択肢は、【DD】が筆頭。
「ケプラーの効果で、デッキから『地獄門の契約書』を手札に加えるよ。そして、『地獄門の契約書』を発動!」
「させません!ドーラの効果を使って、デリックレーンを墓地に送るとともに、自身を守ります。そして、デリックレーンの効果で、契約書を破壊します!」
「だよね」
ドーラの主砲が契約書をぶち割った。
「でも、まだだね。私は手札から、『DDスワラル・スライム』の効果発動。このカードと『DDラミア』を墓地に送り、融合召喚、『DDD烈火王テムジン』!」
DDD烈火王テムジン ATK2000 ☆6
「さらに、墓地に存在する『スワラル・スライム』を除外することで、手札から『DD魔導賢者コペルニクス』を特殊召喚!コペルニクスの効果で『DDネクロ・スライム』を墓地に送りながら、テムジンの効果でラミアを特殊召喚だよ」
DD魔導賢者コペルニクス ATK 0 ☆4
DDラミア ATK100 ☆1
「そして、私はテムジンとケプラーでリンク召喚。リンク2『DDD深淵王ビルガメス』!」
DDD深淵王ビルガメス ATK1800 LINK2
「ビルガメスの効果で、デッキからスケール6の『DDケルベロス』とスケール10の『DD魔導賢者ニュートン』でペンデュラムスケールをセッティングして、ダメージを受ける!」
黒江 LP8000→7000
ケルベロスが出てきた。
綾羽と香苗の中では、大体アビス・ラグナロクが出てくると思っていたのだが……。
「でも、このタイミングで、手札から『DDD反骨王レオニダス』の効果が発動。特殊召喚して、受けたダメージ分、ライフが回復するよ」
DDD反骨王レオニダス ATK2600 ☆7
「ケルベロスのペンデュラム効果で、ラミアのレベルを4にして、攻撃力を400ポイントアップさせる」
DDラミア ATK100→500 ☆1→4
「そして、レベル4のコペルニクスとラミアでオーバーレイ!英雄よ。荒れ狂う波の中でその手を掲げ、降臨せよ!ランク4『DDD怒濤王シーザー』!」
DDD怒濤王シーザー ATK2400 ★4
「シーザーが入っているDDデッキ……初めて見ました」
「まあ、最近は制圧系が多いから仕方ないね。私は『RUM-アストラル・フォース』を発動!ランク4のシーザーでオーバーレイネットワークを再構築!荒波で手を掲げし英雄よ。試練を超えし手に入れた力を示せ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!ランク6『DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー』!」
DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー ATK2800 ★6
「エグゼクティブが先に出てきましたか……」
「あれはマズいかもね……」
香苗と綾羽が呟く。
だが、黒江はデュエルを続けた。
「私は墓地のネクロ・スライムの効果を発動し、それにチェーンすることでエグゼクティブ・シーザーの効果を発動。これを無効にして破壊。エグゼクティブ・シーザーとレオニダスを、ターン終了時まで1800ポイント攻撃力アップ!」
DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー ATK2800→4600
DDD反骨王レオニダス ATK2600→4200
「バトルフェイズに――」
「いえ、メインフェイズ時に、アンガー・ナックルの効果を発動。手札のバトレインを墓地に送ることで、墓地の『弾丸特急バレット・ライナー』を守備表示で特殊召喚です!」
弾丸特急バレット・ライナー DFE0 ☆10
「なるほどね、なら、反骨王レオニダスでスペリオル・ドーラを攻撃!」
粉砕された。
「さらに、エグゼクティブ・シーザーでアンガー・ナックルを攻撃!」
綾羽&香苗 LP8000→4900
「ぐ……ドーラがいる状態で、ここまでもらうとは思ってなかったです」
「まあ、そんなもんだよ。メイン2に入るね。私はカードを一枚セットして、ターンエンド!」
「バトレインの効果で、デリックレーンをデッキから手札に加えます」
「だよね。シーザーたちの攻撃力も元に戻るよ」
DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー ATK4600→2800
DDD反骨王レオニダス ATK4200→2600
「私のターン。ドロー!」
綾羽のターンだ。
なお、フィールドにはバレット・ライナーが残されているので、現在はヴァルハラを使えない。
とはいえ、アンガー・ナックルの効果で特殊召喚されたバレット・ライナーの効果は無効化されているので、攻撃宣言時の糞みたいなデメリットは消えている訳だが。
(特殊召喚は、シーザーの効果で無効にされて破壊。一応バレット・ライナーで殴ればいい話か)
現在、黒江の手札はゼロ。
仮にセットカードがあのカードだったとしても、問題はない。
「私は『サイクロン』を発動。セットカードを破壊する!」
「『戦乙女の契約書』だと思ったかな?残念、『連成する振動』だよ!ケルベロスを破壊して一枚ドローだ!」
「ですが、これで問題はなくなりました。バレット・ライナーを攻撃表示に変えてバトルフェイズ!いけえええ!」
バレット・ライナーがエグゼクティブ・シーザーに突っ込んだ。
「ぐぬぬ……シーザーの効果で、『地獄門の契約書』を手札に加えるよ」
黒江 LP8000→7800
「これで、邪魔はない。私は手札から『ヘカテリス』を捨てて、『神の居城-ヴァルハラ』を手札に加える」
「でも、バレット・ライナーがいると特殊召喚できないよ?」
『ごめんね綾羽ちゃん』
ライナーが謝った。
「私は『アドバンスドロー』を発動!」
『君もかい!』
バレット・ライナーが消えていった。
そしてカードを二枚ドロー。
なんというか、『困った時にはアドバンスドロー』という風潮でもあるのだろうか。
……まあ、この三人よりも抜群に強い遊月がそうなのだから、影響を受けても仕方がないのだが。
ちなみに、綾羽は『最上級』が投入されたヴァルハラ、香苗は列車、月詠は時械神、日夏も何枚か最上級天使族が投入されており、何かと『アドバンスドロー』が投入圏内である。
……ちなみに香苗のデッキにも入っている。
「改めて、私はヴァルハラを発動。これにより、手札から『マスター・ヒュペリオン』を特殊召喚!」
マスター・ヒュペリオン ATK2700 ☆8
「効果により、墓地のヘカテリスを除外して、レオニダスを破壊する!」
「むう……仕方ないね」
ただ、もうすでにメインフェイズ2だ。
どうするつもりなのだろうか。
「私はカードを一枚セット、ターンエンドです」
「私のターン。ドロー!」
黒江がカードをドローする。
「ふーむ、なるほどね」
フィールドにはマスター・ヒュペリオンが一体。
そして、二人が伏せたセットカードが一枚ずつある。
『ねえねえ父ちゃん。あのお姉ちゃんたち強いね!』
『ピィ♪』
『まあ、これくらいはやるだろうね……ただ、そろそろギアが入ってきたんじゃないかな?』
ブルームは、そう締めくくった。
「まずは『ナイト・ショット』を使って、香苗ちゃんが伏せたカード……多分『エクシーズ・リボーン』かな?それを破壊するよ」
「え……」
ナイト・ショットがカードを打ち抜く。
それは、確かに『エクシーズ・リボーン』だった。
「ど、どうして……」
「フフフ、私くらいになるとこれくらいはね。『地獄門の契約書』を発動して、アビス・ラグナロクを手札に。そしてセッティング」
ペンデュラム召喚の前に……。
「さらに、墓地からネクロ・スライムの効果を発動。このカードとテムジンを除外して融合召喚。『DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン』!」
DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン ATK2800 ☆8
「ペンデュラム召喚。エクストラデッキからレオニダスを出すよ」
反骨王レオニダス ATK2600 ☆7
「特殊召喚されたことにより、エグゼクティブ・テムジンの効果で、エグゼクティブ・シーザーを墓地から特殊召喚」
エグゼクティブ・シーザー ATK2800 ★6
「地獄門の契約書を墓地に送ることで、ラミアを特殊召喚して、レオニダスにチューニング。『DDD呪血王サイフリート』」
DDD呪血王サイフリート ATK2800 ☆8
「さて、攻撃力は十分。最後は雑に行こうか。『死者への供物』を使って、マスター・ヒュペリオンを破壊する」
「ぐ……」
「その伏せカード、発動する様子が全くないところを見ると『奇跡の光臨』だね?」
「そ……そんな……」
「二体のエグゼクティブでダイレクトアタック」
綾羽&香苗 LP4900→2100→0
簡単に削られるライフ。
いや、アビス・ラグナロクの効果を使っていないので、まだ回すことはできていただろう。
そう考えると、相当手加減されていたようだ。
「フフフ。まあ、私くらいになればこれくらいはできるのさ!」
エッヘン!と子供っぽく胸を張る黒江。
『……三十路のおばさんが何言ってんの?』
「童顔だから大丈夫!」
さようですか。
そして、ブルームの三十路と言う単語を聞いて愕然とする綾羽と香苗。
「ほ、本当に三十歳なんですか?」
見た目は大学生で通りそうなので、そう思っても仕方がない。
「その通りだよ。君たちの倍は生きてるよ」
グッドサインを出している。
が……なんだが、どこかのタイミングで墓穴を掘ってしまっている可能性が非常に高い。
どこか勢いでやっている感がすごくするからだ。
ただ、その空気を完璧に把握しているのはブルームだけであり、話し始める三人に、幼児精霊も交じり始めるのだった。
幼児ゆえに許される特権として胸に抱きついたりしている。
そして、それをパシャリととって保存するブルームも相変わらずである。
子供たちはどんなふうに育つのだろうか……。
正直……【DD】ってできること多すぎて考えるのダルい。