遊戯王Incarnation   作:レルクス

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第二十九話

 綾羽VS香苗。

 『ヴァルハラルイン』VS『列車』ともいえるデュエルだが、『遊月に後ろから抱きついて寝る権利』のため、それ相応に本気のデュエルが繰り広げられる。

 もちろん、遊月が所有する精霊たちは、『若いなぁ』と思いながらそれを見ているわけだ。

 

 元気で素直でかわいい女の子ががんばっている姿というのは、年寄りの目の保養にいいのである。

 しかも寝間着姿であり、なんだか見ていて癒されるのだ。

 

『ムフフ。いいねぇ。こういうの。お、ありがと』

 

 ブルームが写真をまとめていると、スケープ・ゴーストが湯呑を持ってきた。

 ちなみに、ブルームのイラストを見て『どうやって飲むんだ?』と思う方もいるだろうが、目の下のほうに口がある。という独自設定である。

 はた目からは『全力で目薬を目にぶっかけてる』ように見えるのでなんだか心臓に悪いのだが。

 

『長い間、経験してきたからなぁ』

 

 ブルームは基本的に煩悩全開だが、まじめな写真も結構撮っている。

 

『いろいろ残ってるね』

 

 一枚目、

 『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン&金城直哉と、レッドアイズ&遊月のレースの写真』

 

 二枚目、

 『ウォーター・ドラゴンに乗ってはしゃいでいる水色の長髪の男の娘と、それを呆れながら見ている遊月とドーハスーラ』

 

 三枚目、

 『スクープ・シューターと一緒にカメラの調節をしている赤髪の少年と、それをじっと見ているブルームと、ちんぷんかんぷんな様子の遊月』

 

 まだまだ『こういう写真』はいろいろあるのだが、いずれにせよいい思い出だ。

 ちなみに、ブルームは『見ていて微笑ましい写真』と『エロ路線』はきっちり分けるほうだ。

 綾羽と香苗のデュエル写真は『見ていて微笑ましい写真』に分類される。

 

『精霊たちの中にも、平均と比べて寿命が短い場合もあるし……みんな、僕らを置いていっちゃうんだよなぁ』

 

 格が高くなった精霊の寿命は基本的に長いのだが、遊月の近くにいるからと言って強い精霊になれるかどうかとなればそういうわけではない。

 もちろん、強い精霊になりたいと願う精霊が多かったのは事実だが、現実は残酷で、そうなることができたのは一部の精霊だけ。

 

『みんな。こっちを見てるんだろうなぁ』

 

 あの世からこの世が見えるかどうか。

 遊月曰く『若干見える時がある』とのことだ。

 だからこそブルームは、常に考えている。

 

【みんながボクを見つけた時、ボクの周りが幸せであってほしい】

 

 それは、怒らないとか、泣かないとか、そういうことじゃなくて、楽しいものであるように。ということだ。

 もちろん、元からブルームは馬鹿なのだろう。

 しかし、ブルームはそんな自分が大好きだ。

 

『遠い世界にも、僕みたいな馬鹿な人がいてよかったよ』

 

 もっとバカで楽しいことをするには、同じように、馬鹿で楽しいやつとの交流が必要だ。

 

『さてと、いつかこれを掲げる日が来るだろうか』

 

 ブルームはとある旗と色紙を持ち上げる。

 旗には『制裁上等悪乗り同盟』とかかれている。

 そして色紙にはとある短歌が書かれていた。

 

【赤信号

 みんなで渡れば

 怖くない

 エロのためなら

 俺たちすすむ】

 

 とてもアレな座右の銘である。

 

『……フフッ』

 

 ブルームは微笑んだ後、整理した写真を片付けて眠りについた。

 

 ★

 

「むうう……」

 

 綾羽がアムネシアの図書館で唸っていた。

 最近、香苗とのデュエルの勝率が下がってきているのだ。

 

 正直……『オネストがなかったらどうしようもない』という状況に陥っているのである。

 

 光属性・天使族で構築された綾羽のデッキは、どうしようもなく奇襲性がある。

 逆に、地属性・レベル10で構築された香苗のデッキは、自分のターンも相手ターンも、高い攻撃力を維持できる。

 元のステータスの差となると、列車が相手では分が悪すぎるのだ。

 とりあえずヴァルハラがあれば、手札の最上級モンスターが腐ることはないのだが、だからと言って突破できなければ意味がない。

 

「どうにかして、安定的に打点を確保できないとマズイね」

 

 天使族も、回せば3000打点を超えるくらいのモンスターは出せる。

 が、相手が列車である。3000でどうしろというのだ。という結果になるのだ。

 

「ん!」

 

 とりあえず伸びをする綾羽。

 最近暖かくなってきたので、アムネシアも夏服になってきている。

 そのため、綾羽の胸が強調されていた。

 アムネシアの図書館は優秀な揃え方をしているので利用者が多いのだが、主に男子生徒の視線を集めている。

 ……のだが、あまり気にしていないようだ。

 まあそもそも、地下で特訓するときにいつもスポーツブラとホットパンツで運動しているのだから、ほかの人間よりも若干羞恥心が薄いのは前々からわかっていることだが。

 

「……考えが全く浮かばないね。こういう時は、全く別のことを考えよう」

 

 ここは図書館だ。

 アムネシア側の審査が入った本が多数そろっている。

 それは要するに、『遊月が作った審査基準をもとに集められた本』ということになるのだ。

 綾羽としては、それらを読むのに苦痛はない。

 

「どんな本があるのかな……」

 

 綾羽はいろいろ見て回ることにした。

 そして……。

 

「……『著者が精霊のコーナー』かぁ。そんな本も置いてあるんだね」

 

 なかなか興味をそそられるエリアだ。

 というか、意外とそのエリアが広い。

 

「思ったより、精霊たちも本を書いてるんだなぁ……」

 

 黒い装丁の本が目に入った。

 

『盤面を制圧する我が眼光  著:ドーハスーラ』

 

 綾羽はあえて無視した。

 ……が、五秒後、ちょっと気になったので手に取って開いてみた。

 まえがきをちょっと読んでみる。

 

『我は近年。ドロソのコストとして一定の評価を得ている。しかし!我は盤面にいてこそ強いのだ。本書では、我がマスターのそばで戦い、経験したことを抜粋して紹介しよう』

 

 このような見出しから始まっている。

 ……なんともリアリティがあるというか、そもそも綾羽が知る限り、『印象に残るドーハスーラ』という存在は遊月の精霊である。

 そして、この言葉の選び方が何ともそのドーハスーラらしい。

 

「……あれ?なんか著書のところに番号がついてる。これってなんだろ」

 

 八ケタの番号がついている。

 綾羽は知らないことだが、基本的に、デュエルモンスターズの精霊というのは見分けがつかない。

 もちろん、精霊として格が高いゆえにあふれてくるオーラだとか、性格から出てくる雰囲気だとか、そういった違いはあるのだが、それらは深くかかわっていないとわからないことなので、それぞれ番号登録されているのだ。

 単にマスターに従事するだけなら必要はないが、遊月のように一定の権力を持っていたり、そしてこのドーハスーラのように本を書くとなると、こういう識別は必要となる。

 

「……まあ、識別番号は必要だよね」

 

 とはいえ、その知識がなかったとしても、識別番号のためだということはわかる。

 綾羽はとりあえず本棚に戻した。

 ……興味ないんかい。

 

 そしてさらにちらっと目に入るものが……。

 

『ミリオン・フォース 著:ブルーム』

 

「え、なにこれ」

 

 ブルームというと、綾羽にとっては遊月の精霊が目に浮かぶ。

 どんな内容なのだろう。

 前書きを読む。

 

『最近、とてつもない攻撃力を記録するデュエルが確認されているようだ。公式のデュエルではないのでそのデュエルの映像を見せることはできないが、近年、なんと百万というロマンのような領域に達している攻撃力が確認されている。本書では、『攻撃力』と『ライフポイント』の相互関係を明らかにしたうえで、絶大な攻撃力の世界を解説していく』

 

「……意外と真面目」

 

 失礼な感想である。

 とまあこんな感じで、なんだか遊月がかかわっている精霊が書いたであろう本がいくつかあった。

 

「いろんな本があるんだなぁ……」

 

 そうは思いながらも、その場を後にする綾羽。

 次は天使族の関連コーナーのところだ。

 

「ええと、このあたりかな……」

 

 基本的な運用を目的としたシリーズのうちの一冊が並んでいることがそれなりにある。

 できることなら、打点を確保するタイプのものがいい。

 

「天使族で、打点特化ってどんなものがあるかなぁ」

 

 そんなことをつぶやく綾羽だが、実は先ほど手に取った『ミリオン・フォース』というブルームが書いた本には、『エンシェント・ホーリー・ワイバーン』という『天使族モンスター』を題材にした内容が紹介されているのだが……どうやら綾羽は前書きだけを読んで目次を読まないようだ。

 

「あ、『オネスト運用理論』なんて本があるんだ」

 

 ただ、かなり高いところにある。

 近くに台になりそうなものはない。

 

「フン!」

 

 思いっきり手を伸ばすが、全く届いていない。

 身長が百六十ちょいしかない身長では無理がある高さだった。

 そして、綾羽の後ろに立った誰かが、その『オネスト運用理論』の本をひょいっととった。

 

「あっ!」

「いったい何をしてるんだ。綾羽」

「え、遊月君?」

 

 綾羽の後ろにいたのは遊月だった。

 こちらも半袖の夏服姿である。

 腐った目とドクロのネックレスは相変わらずだが。

 

「遊月君って、図書館に来るんだね」

「私をなんだと思ってるんだ……」

 

 さすがの遊月といえど、図書館には来る。

 ネット社会になったが、中には本を求めている人もいるものだ。

 活字主義というわけではないが、この程度はふつうである。

 

「で、これだろ」

「うん。ありがとう」

「まさか打点に走るとはな。まあ、もともとルインと相性がいいから構わんが……」

「でも、打点あげて殴ったほうが強くて見栄えいいもん」

 

 そういう綾羽だが、そもそもこれは、ルインが戦闘特化の効果を持っているからだろうと思われる。

 精霊を従えているデュエリストにはよくあることだ。

 

「そういえば、遊月君は何をしてたの?」

「どんな本が並んでいるかとか、ざっと確認していただけだ」

「遊月君もそういうことするんだね」

「意外とバカにできないからな。貸出リストはたまにチェックしている」

「へぇ……そういえば、精霊も本って書くんだね」

「……ああ、ブルームとドーハスーラが書いたって言ってたな。ドーハスーラは『主張』に近いが」

「結構不憫だもんね」

 

 最近、チキングとは呼ばれなくなったが、逆にドロソ扱いである。

 

「ブルームも、なんかライフポイントを利用したロマン攻撃力がどうとか言っていたが……」

「あ、前書きだけ見たけどそんなことが書かれてたね」

「いずれにせよ、運命力が必要なのは変わりないからな……」

 

 とんでもないレベルで運命力が必要である。

 まあ、ロマンというのはいつもそんなものだが。

 

 綾羽が座っていた席まで戻ってきた。

 遊月も何冊か本を持っているようで、これから読書タイムなのだろう。

 

「相席いいかしら」

 

 綾羽は、自分に声をかけられたのを認識して振り向いた。

 そしてそのまま、言葉を失った。

 

(……きれいな人)

 

 綾羽の第一印象はそれ。

 

 実際、その人物は、特徴という特徴であふれていた。

 長く伸ばした濡れ羽色の髪と、翡翠の混じった瞳。

 落ち着いた雰囲気だが、赤いヘアピンがあるので可愛らしさがある。

 胸は大きく、腰はくびれ、形のいいおしりと、女性がうらやむスタイルを体現している。

 とまぁ、特徴をあげていけばきりがないが、ぶっちゃけて言えば『めっちゃきれいな女性』である。

 そして、身にまとっている衣装も、普通でない。

 どこかのパーティーにこれから行くのか、と思わず聞きたくなるような、真っ黒のドレスだ。

 デタッチド・ショルダーであり、袖がドレスとは別に分離しており、肩がほとんど見えている。

 胸の下にベルトをまいて大きな胸を強調し、スカートにはスリットが入っており、とても蠱惑的である。

 

「……時雨(しぐれ)か。いつ来たんだ?」

 

 だが、そんな美女に対して、遊月は何の躊躇もなく聞いている。

 旧知の仲なのだろう。

 というより、アムネシアの敷地の中にあまり外部の人間はいない。

 

「あ、あの、遊月君、知り合いなの?」

「ああ。周防時雨(すおうしぐれ)。簡単に言えば……私と同格のバカ女だ」

 

 何とも失礼な紹介である。

 

「フフフ。もうちょっと説明してくれてもいいじゃない」

「知らん」

 

 バッサリ切る遊月。

 取りつく島もないとはこのことである。

 

「ゆ、遊月君と同格って……」

「まあ、デュエルをしてみればわかるわ。可愛がってあげるわよ。フフフ」

 

 余裕そうに、子供を相手にするように綾羽に対して微笑む時雨。

 なんだか……生徒会長の御堂月詠をレベルマックスにしたような女である。

 そして、それなりにしっかりした十六歳の女子という、大人への意識がどうのといわれる時期の綾羽にとっては、あまりいいものではない。

 

「むうう!わかりました。デュエルしましょう!」

「「……(若いなぁ)」」

 

 デュエルディスクを取り出す綾羽に対して、遊月と時雨はそう思った。

 

「あと、なんでドレスなんですか?」

「これは私の普段着よ」

「そ……そうですか」

 

 すでに圧倒されている綾羽であった。

 

 ★

 

 アムネシアには、大量の『デュエルができるスペース』が確保されている。

 それは、図書館の地下であっても例外ではない。

 そして、遊月がいれば、それらの施設は即座に使用可能だ。

 権力の乱用のような気がしなくもないが、そもそもデュエルを邪魔する権利はだれにもないので大体こうなる。

 

『おりょ!時雨さんが来てるの!』

 

 ブルームが喜んでいるようだ。

 ボンッキュッボンッで色っぽいドレスを着ている時雨に対して、彼が反応しないわけがない。

 さっそくカメラを構えてバシャバシャ撮りまくっている。

 それに対して、時雨は堂々としているだけ。

 

「それにしても……なんかすごいですね」

「あなたも、朝に外でスポーツブラでランニングしていると聞いたわよ」

「?……変ですか?」

(え、天然?)

 

 時雨がブルームをちら見する。

 ブルームはうなずいた。

 時雨は理解した。

 

「まあいいわ。かかっていらっしゃい」

「むうう。行くよ!ルイン!」

『大人の魅力に対して反抗しようとするマスターって若いわぁ』

「余計なこと言わない!」

『はいはい』

 

 ルインもあきれた様子だ。

 

『そういえばマスター。時雨さんっていつ来たの?』

「多分ちょっと前だろ。特に用事がなければ来ないタイプだし」

『それもそっか』

 

 デュエルスペースの端っこに設置されているベンチで本を読み始める遊月。

 ブルームはその横でちょこんと座っている。

 

「「デュエル!」」

 

 綾羽 LP8000

 時雨 LP8000

 

「フフフ。綾羽ちゃん。先攻と後攻はどちらがいいかしら」

「む……先攻です」

「いいわよ。綾羽ちゃんからはじめなさいな」

「むうう……私の先攻!」

 

 カードを使用し始める綾羽。

 

((時雨も相変わらずか))

 

 外野の二人はそう思った。

 

「手札から『ヘカテリス』を捨てて、デッキから『神の居城-ヴァルハラ』を手札に、そして発動!」

 

 発動される綾羽の化身カード。

 

(ヴァルハラかぁ……)

 

 時雨は内心で、それを感慨深そうに見ていた。

 

「ヴァルハラの効果を使って、手札から、『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』を手札から特殊召喚!」

 

 幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト ATK2600 ☆8

 

「モーツァルトの効果発動。手札から、光属性、天使族モンスターを特殊召喚できるよ。私は手札から『マスター・ヒュペリオン』を特殊召喚!」

 

 マスター・ヒュペリオン ATK2700 ☆8

 

 もはやおなじみといっていい『星8・光属性・天使族』の展開である。

 

「そして、レベル8のモーツァルトとマスター・ヒュペリオンでオーバーレイ!ランク8『神竜騎士フェルグラント』!」

 

 神竜騎士フェルグラント ATK2800 ★8

 

「カードを一枚セットして、ターンエンド!」

「私のターン。ドロー」

 

 時雨もカードを引く。

 

「私は手札から『極星霊リョースアールヴ』を召喚」

 

 極星霊リョースアールヴ ATK1400 ☆4

 

「きょ……極星?」

「私が入れている極神は一種類だけよ。まあいいわ。開眼せよ。全てを見通す未来回路」

 

 サーキットが出現。

 

「私はリョースアールヴをリンクマーカーにセット、リンク召喚!リンク1『極星天グルヴェイグ』!」

 

 極星天グルヴェイグ ATK800 LINK1

 

「グルヴェイルの効果発動。知っているかしら?三枚まで手札・フィールドからカードを除外して、極星モンスターをその数まで出せるのよ」

「んなっ……フェルグラントの効果を発動!その効果を無効にする!」

「手札から『禁じられた聖杯』を発動。フェルグラントの効果を無効にして、攻撃力を400アップ」

「しまった……」

 

 神竜騎士フェルグラント ATK2800→3200

 

「手札三枚を除外することで、デッキから『極星天ヴァナディース』と『極星獣ガルム』二体を特殊召喚」

 

 極星天ヴァナディース ATK1200 ☆4

 極星獣ガルム     ATK 800 ☆4

 極星獣ガルム     ATK 800 ☆4

 

「そして、ヴァナディースの効果。デッキから『極星天ヴァルキュリア』を墓地に送り、レベルを2に変更」

 

 極星天ヴァナディース ☆4→2

 

「合計で、レベルが10に……」

「私はレベル4のガルム二体に、レベル2のヴァナディースをチューニング、天を統べる勝利の槍。最高神の手に渡りて、神話を紡ぎなさい。シンクロ召喚。レベル10『極神聖帝オーディン』!」

 

 極神聖帝オーディン ATK4000 ☆10

 

「で、出た……」

「オーディンの効果発動。ターン終了時まで、このカードは魔法・罠の効果を受けなくなるわ。バトルフェイズ。オーディンで、フェルグラントを攻撃!」

 

 槍から放たれた雷が、いとも簡単にフェルグラントと貫く。

 

 綾羽 LP8000→7200

 

「私はカードをセット、これでターンエンドよ」

「私のターン。ドロー!」

 

 綾羽は二枚になった手札を見る。

 

「私は、『儀式の下準備』を発動。デッキから『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』と『破滅の女神ルイン』を手札に加える」

「ほう、このタイミングで精霊カードね」

「そして、『戦線復帰』を発動。墓地から『マスター・ヒュペリオン』を特殊召喚」

 

 マスター・ヒュペリオン DFE2100 ☆8

 

「儀式魔法『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』を発動。マスター・ヒュペリオンをリリース!破滅した世界より、希望を手に、自壊する魂を導くべく降臨せよ!儀式召喚!『破滅の女神ルイン』!」

『さて、参りましょう』

 

 破滅の女神ルイン ATK2300 ☆8

 

「そしてバトルフェイズ!ルインで、オーディンを攻撃!そして『オネスト』を手札から発動。オーディンの攻撃力分、ルインの打点をあげる!」

 

 破滅の女神ルイン ATK2300→6300

 

 ルインの背中にオネストの翼が出現する。

 

『おおっ!オネスティ・ルインだ!やっほおおい!』

 

 興奮した様子のブルーム。

 バシャバシャと写真を撮りまくり……。

 

『懲りませんね』

 

 ルインが指パッチンで出した雷が直撃。

 

『ギイヤアアアアアア!』

 

 悲鳴を上げるブルーム。

 カメラもボロボロになっている気がしなくもないが……いや、まあ気のせいだろう。

 

「……行くよ!ルイン!」

『はい』

 

 槍を構えて、オーディンに向かって突撃する。

 

「フフフ。ブルームちゃんも相変わらずね。まあいいわ」

 

 時雨 LP8000→6700

 

「そして、次はグルヴェイグに攻撃!」

「グルヴェイグは破壊されるけど、『ガードブロック』を発動して、ダメージを0にして一枚ドローよ」

 

 時雨は余裕そうな表情でドローする。

 

「私は、これでターンエンド」

 

 破滅の女神ルイン ATK6300→2300

 

 できることはこれ以上はない。

 時雨のターンになる。

 

『……いてて、そういや時雨さん。普段とは『逆』だね』

「……そうだな」

 

 ブルームは復活したようで、根っこで頭をかきながらそんなことを言った。

 遊月もうなずく。

 

「え、逆?」

「ウフフ。これから見せるからすぐにわかるわよ。私のターン。ドロー。私は『呪眼の死徒 サリエル』を召喚。効果により、『セレンの呪眼』を手札に加えて、これを装備する」

「んなっ。呪眼!?」

 

 呪眼の死徒 サリエル ATK1600 ☆4

 

 発動される『セレンの呪眼』

 それを見た綾羽は感じた。

 

「まさか……化身カード?」

「その通りよ。このカードは、私の化身カード。まあ、極星のほうにもまた別にあるけどね」

「一人のデュエリストが、二枚の『専用化身カード』を持つなんて、聞いたことない……」

「あなたにはまだ知らないことがたくさんあるわ。まあそれは後、デュエルを続けるわ。サリエルの効果を発動。ルインを破壊する」

 

 サリエルがセレンの呪眼を開く。

 すると、ルインはそのまま破壊された。

 

「る……ルインが……」

「セレンの呪眼の効果を適用するわ」

 

 時雨 LP6700→6200

 呪眼の死徒 サリエル ATK1600→2100

 

「そして、手札から『呪眼領閾-パレイドリア-』を発動。効果処理として、『呪眼の眷属 バジリウス』を手札に加えるわ。そして、セレンの呪眼の効果を適用」

 

 時雨 LP6200→5700

 呪眼の死徒 サリエル ATK2100→2600

 

「さらに、自分フィールドに『呪眼』モンスターが存在することで、『呪眼の眷属 バジリウス』を特殊召喚。モンスター効果により、デッキから『セレンの呪眼』を墓地に」

 

 呪眼の眷属 バジリウス DFE2000 ☆3

 

「バトルフェイズ。サリエルでダイレクトアタック!」

「ぐっ……」

 

 再びサリエルがセレンの呪眼を開く。

 

 綾羽 LP7200→4600

 

「これでターンエンドよ」

「私のターン。ドロー!」

「サリエルの共通効果により、バジリウスを破壊。さて、どうするかしら?」

「私は……モンスターをセットして、ターンエンド!」

 

 サリエルが破壊できるのは、特殊召喚されたモンスターだけ。

 セットしたモンスターならば、狙われることはない。

 

「なら、私のターン。ドロー。『強欲で貪欲な壺』を使って、上から十枚除外して二枚ドロー。手札から『呪眼の死徒 メドゥサ』を通常召喚」

 

 呪眼の死徒 メドゥサ ATK1400 ☆4

 

「メドゥサの効果により、墓地の呪眼カード『呪眼の眷属 バジリウス』を手札に加える。そして、このまま特殊召喚。効果により、『喚忌の呪眼』を墓地に送るわ。そして……開眼せよ。全てを見通す未来回路」

 

 サーキットが出現。

 

「召喚条件は、呪眼モンスター三体。私はサリエル、メドゥサ、バリジウスの三体をリンクマーカーにセット、欲望の果てに力を得た王よ。絶大な力を秘めるその眼を開き、万物の下せ、リンク召喚!リンク3『呪眼の王 ザラキエル』!」

 

 呪眼の王 ザラキエル ATK2600 LINK3

 

「ザラキエル……」

「私は墓地の『セレンの呪眼』の効果を発動。1000のライフを払い、もう一枚の『セレンの呪眼』を除外することでこのカードをセットする。そして、これをそのままザラキエルに装備」

 

 時雨 LP5700→4700

 

 ザラキエルがセレンの呪眼を見開く。

 

「そして手札から『妬絶の呪眼』を発動。あなたのセットモンスターを手札に戻す」

「そんな……」

 

 時雨 LP4700→4200

 呪眼の王 ザラキエル ATK2600→3100

 

「バトルフェイズ。2600以上の攻撃力を持つモンスターをリンク素材にしたザラキエルは、二回の攻撃ができる。残念だけど、これで終わりよ。お嬢ちゃん」

「うわああああ!」

 

 綾羽 LP4600→1500→0

 

 一気に削られる綾羽のライフ。

 まあ、さすがにあそこまでされてはどうにもなるまい。

 

『あー……なんか。一気に負けちゃったね』

「しかし、ヴァルハラ関係が手札に来すぎるっていうのも問題だな……」

 

 ブルームと遊月としてはそんな感想である。

 

「フフフ。まだまだ強くなれるわよ。これからもがんばりなさいな」

 

 時雨はそういって綾羽の頭をポンポンと叩いた後、そのまま去って行った。

 

「……はぁ、なんか、すごい人だね」

「そりゃ私の初恋の女だ。強いに決まってる」

「へぇ……ん!?えっ!?どういうこと!?」

 

 驚く綾羽。

 当然である。

 

『もうすでに結構冷めてるけどね。時雨さんって、子供が産めない体になった男にあんまり興味ないし』

「な、なるほど……それはそれでどういうことなの!?」

「文字どおりの意味だ」

 

 文字通りの意味だ。

 生きぞこないの遊月に、子供を産む能力など残っていない。

 ただそれだけである。

 

『とはいっても、マスターと完全に離れるつもりは毛頭ないみたいだけどね。まあ、時雨さんはハーレム容認派だし、綾羽ちゃんをからかいには来ていると思うけど、ちょっかい出しに来てはないと思うよ』

「え、そうなの?ていうかそれっていいことなの?」

『時雨さんが本気だしたら、止められるのはマスターくらいだからなぁ』

 

 何かを思い出しているのか、ブルッと震えるブルーム。

 

「それにしても……ハーレム容認派の人っているんだね」

『自分が一番だって確信してるからだよ。だから、ほかの女が寄ってきたとしても余裕なんだよね』

「……」

 

 綾羽は改めて、『遊月君の関係者って頭おかしいんじゃないか?』と思ったが、それ以上は何も言わないことにした。

 

「……あれ?そういえば遊月君は?」

『トイレ』

「………………………………そっか」

 

 さすがに言葉が困る綾羽だった。

 

『そういえば、最後に伏せたセットモンスターってなんなの?』

「『マシュマカロン』だった」

『あ、それはだめだね』

 

 総評。

 まだまだ綾羽は甘い。

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