永石、大束のタッグとデュエルした遊月と英明だが、だからと言ってすることが増えるわけではない。
実はこの実技授業、準備時間とデュエル時間に分かれており、準備時間の方がそれなりに設けられているので、デュエルは一戦だけでいいのだ。
時間が余ればやってもいいのだが、二戦目以降は双方合意が必要である。
そのため、二戦目以降をする必要がなく、一番最初に永石が退室した時点で、何がどうなろうと実技は終了である。
そして、デュエル一回に必要な時間と言うものは、まあ『霊獣』のような効果説明がどう考えても必要になるソリティアデッキとか、『終焉のカウントダウン』のような時間経過の特殊勝利デッキを使わない限り、大した違いはないものである。
誰かのデュエルが終わったとき、ほかの誰かのデュエルも終わっているものなのだ。
よって、爆発現場。と言うものは話題になる。
いや、まだ話題になっていないので、『なってしまうかもしれない』というほうが正しいか。
「『精霊力』が残ってるなぁ。単なる爆発っていうのならいいんだが、こういうことがあると面倒なんだよねぇ」
一人の男子生徒がそんな現場に来ていた。
だらしなく伸びた茶髪はボサボサである。
そしてその瞳は、『面倒なことは嫌いです』と言っているかのようにだらけきっている。
「ま、仕方がないか」
男子生徒は『ミキサーロイド』のカードを取り出した。
それをデュエルディスクのモンスターゾーンに置くと、そのままミキサーロイドが出現する。
「んじゃ。これの始末はよろしく」
ミキサーロイドは頷くと、自分の背中(……といっていいのだろうか)からミキサーを流して、爆発現場の痕跡を上から消していく。
数秒後には元通りになっていた。
乾くのがあまりにも早すぎるが、ミキサーそのものにも精霊力が存在する。
後でミキサーのほうの精霊力は霧散するようになっているので、問題はない。
なお、精霊力って何?という質問には黙秘権を行使する。
「残った精霊力から察するに、おそらくモンスターは『アポクリフォート・キラー』だが……永石の仕業か?だが、ここまでするようなやつとは思えないけどなぁ」
少し考えた後、『もっと異質な精霊力が通った先』を見る。
「……会長への報告はしなくてもいいか」
それ以上は何も言わずにミキサーロイドも引っ込めると、その場を後にした。
★
次の日の放課後。
「英明。私は思うことがある」
「なんだ?」
「ロック系のメタカードだが、突破手段は『割る』か『無視』するかと二種類ということだ」
「……なるほど。あれくらったら嫌だよな」
「ああ」
「正直『マクロコスモス』とか俺嫌いだな」
「【M・HERO】を使っているお前が言うな」
「ダーク・ロウ先生をディスるんじゃない」
「別にディスっているつもりはないがな。ただ、ロック効果が本命じゃないのにロックカードみたいなカードって身近にあるからな」
「そうか?」
「じゃあ聞くが、『マクロコスモス』の第一の効果を言ってみろ」
「第一?」
「マクロの除外効果は第二だ」
「……なんだっけ」
「少しは考えろ」
「マクロコスモス……いや、正直、名前とイラストだけで『除外される』って印象が強すぎて……」
「『原始太陽ヘリオス』って知ってるか?」
「え、あ……ああっ!アイツか!」
お互いの除外されたモンスター一枚につき100ポイントが攻撃力と守備力になるモンスターだ。
ぶっちゃけ、使いやすさでいえばダ・イーザの方が上である。
「そういえばいたな。最近のカードしか集めてないデュエリストの中にはそもそもカードの存在を知らないやつがいるんじゃないのか?」
「ありうるっていうか、中等部一年のガキンチョが『マクロコスモスの効果って知ってる?』って聞いてきたから『原始太陽ヘリオスを特殊召喚できる』って言ったら『違うよ』って言われた」
「アッハッハ!傑作!」
「まあ、もちろん、実は存在する制限効果に気が付いていない場合って言うものも存在するがな」
「それってどういう――」
とここで、ふと英明は思いだした。
「……そう言えば、遊月が使ってる『アンデットワールド』って……」
「ああ。フィールドと墓地のモンスターをアンデット族に変更する効果もあるが、もうひとつ。『アンデット族モンスターしかアドバンス召喚できない』という効果がある」
「……要するに、永石と綾羽ちゃんのタッグとのデュエル。三ターン目に発動されたお前の『アンデットワールド』を割らないと、綾羽ちゃんは『天帝アイテール』をアドバンス召喚することすらできなかったのか」
「そう言うことになる」
ついでに言えば、天使ではなくなるため『マスター・ヒュペリオン』の除去効果も使用不可になる。
要するに綾羽は、『揺れる眼差し』を使い、『エキセントリック・デーモン』を使う。という流れだけで、その時点で見えていた自分のタクティクスを制限するカードを全て排除した。と言うことになる。
「一応、『天帝アイテール』のリクルート先には、アンデット族の帝王である『冥帝エレボス』が存在するが、モーツァルトやフォトン・サンクチュアリのようなカードを採用しているところを見ると入っていないだろう。事故率が上がるだけだしな」
「……そう考えると、あの流れにはそれだけ意味があったのか、何かすげえな」
英明がうんうんと頷いている。
「ああ。それほどのことを考えられるタクティクスの持ち主だ。もしも、『天帝アイテール』の効果でリクルートされたのが『光帝クライス』じゃなくて、二枚目の『天帝アイテール』だったとしたら、英明がドローするカードにもよるが、かなりマズいことになっていた可能性もある」
おそらく大束のデッキは、ほとんどのカードが『光属性・天使族・レベル8』で構成されたヴァルハラデッキだと思われるが、『帝王』ギミックが搭載されたアドバンス召喚が得意なデッキとも考えられる。
レベル8のモンスターが三体並んだが、『神竜騎士フェルグラント』すら出さなかったのはそういう理由があるだろう。『エキセントリック・デーモン』の存在もあり、『真帝王領域』はタッグデュエルゆえに抜いていたかもしれないが、普段は入っているかもしれない。
「めちゃくちゃ考えた戦術だったのか」
「よく永石に誘われているようだが、それなら永石が【クリフォート】を使うことも知っていただろう。そもそも『自己主張しない』というのなら、私なら普通にクリフォートを組む」
「だな。ツールが強いし」
「それでも自分のデッキを選んできたんだ。よほど自信があるんだろうな」
「ほー……」
ここで英明もう一つ思いだした。
「なら、あの場面で決めようとする必要はなかったよな。次の永石は手札六枚スタートだったし」
「いや、おそらくそこはわざとだ」
「え?」
遊月の指摘に英明は驚く。
「ぶん回していたが、私が余裕そうな表情だったから、フリーチェーンで護るカードくらい伏せていると思ったはずだ。ならば、あの場面でクライスを出せば、つかうことくらいは考えた可能性は十分にある。そうしてあのターンを乗り切れば、次のターン、英明が使うHEROデッキは爆発力があるからな」
「それでわざと負けたってことか?」
「あの時、永石はアンティルールを急に入れてきた。全力を出しているような素振りを見せながらも負けるようにする。と考えれば、あのデュエルは考えられたものだった」
「要するに凄えんだな」
英明はあまりわかっていないように見えるが、まあいいとしよう。
「で、ロックカードの処理手段が割るか無視するか。と言った話に戻すが、要するにそう言うことだ。クリフォートのペンデュラム効果だが、あれは自分にしか影響を及ぼさないが、クリフォートデッキを組むことに寄って、視点を変えると『制限を無視している』と言える」
「……なるほど」
ペンデュラムスケールの高いモンスターは、ペンデュラム効果に制約効果が含まれていることがほとんどだ。
そう見ると、クリフォートも確かにその一つであり、これを回避する手段は基本的に【純正クリフォート】を組むか、割るカードを使うくらいだろう。
究極必殺技として『サイキック・ブロッカー』もあるが、ここでは語らないことにしよう。
「カテゴリデッキを使うからデメリットは気にならないっていうけど、あれもある意味、『自分にかかるメタ要素を無視してる』ってことなんだな」
「そうだ」
別にあとで考えてみれば難しい話ではないが、『この話だけで多くを語れる』という時点で、深いことなのだ。
第一、遊月本人も、『アンデット族モンスター以外アドバンス召喚できない』というデメリットを忘れる時がある。
アドバンス召喚と言う概念そのものが薄れてきているということもあるにはある。
しかし、トロイメア・ゴブリンやジェムナイト・セラフィなど、追加の召喚権を簡単に得ることが出来るカードや出張パーツが増えているので、全く考慮しないというのはあまりしない方がいいのだが。
「なるほどなぁ。俺も覚えておくぜ」
「だといいだろうな」
遊月はそろそろ英明が何かを話したがっていると察して会話を止めた。
「あ、遊月。俺はこれからちょっと行くところあるから、また明日でいいか?」
「いいぞ」
「そっか。助かるぜ」
「……誰かと会うのか?」
「俺、お前しかダチがいないわけじゃねえからな?」
「それもそうだな」
英明はコミュニケーション能力がそれなりに高いのだ。
とはいえ、相手にはあまり踏み込まないので薄い関係が続くといった程度である。
例を挙げれば、共通の趣味でつながっていて、どちらかの興味がなくなった時に離れる。という感じだ。
まあそれはそれとして、英明にも友達はいる。
「んじゃ、また明日!」
そういって、英明は走って行った。
「さて、私はデュエルディスクの販売店に行くか」
最近メンテナンスに出していない。
精密機械なので、重要なところでボロが出る可能性はそれなりに高いのだ。
簡易キットでできる程度なら自分でするのだが、本格的な部分は定期的にする必要がある。
★
実際、デュエルディスクは精密機械だ。
一応、量産ラインのようなものがあるにはあるが、多品種少数生産の時代になってきていることを考えると、一つ一つの値段が跳ねあがる。
さらに言えば、大幅なルール変更に寄り、昔に使われていた中古品とかになるとそもそも使えないものもあり、後付けパーツをとりつけることで何とかすることはできるのだが、正直ダサイ。
だがしかし、デュエルモンスターズの影響が強い現代。
親としては、せめて小学生の内か、最低でも中学に入学するころには最新式のデュエルディスクを買ってやりたい。と思うものなのだろう。
実際見ていると分かるのだが、小学校ではデュエルディスク所持率が三割程度なのに、中学ではほぼ百パーセントだ。
そのため、新しく行政機関として『決闘省』が設立。
デュエルモンスターズの普及のため、デュエルディスクの費用の大部分を負担している。
そのせいで、デュエルディスクの大量販売を考えている企業は国に逆らえないと言う状況になっているのだが、それはそれとしよう。
「ここだな」
デュエルディスクの機能と言うのは基本的に違いはない。
ただし、アプリだったりパーツをつけたり、と言ったことをして自分好みにしていくものだ。
なお、遊月のデュエルディスクは光を反射しないマットブラック塗装である。
精錬された黒というものに人は高級感を感じるもので、遊月のデュエルディスクはそれに該当する。
店内に入ってみると、ショーケースにデュエルディスクが並んでいる。
というより、店内はかなり広く、メンテナンスをはじめとして、根本的なシステムに関してはこうした大型店が担当し、デザイン面のディティールなどの部分は小売店が担当する。と言うパターンもある。
ところどころでパンフレットを配っている人がいるところを見ると、小売店とのつながりは不可能だ。
遊月はまっすぐ、メンテナンスコーナーに移動する。
受付のおじさんにデュエルディスクを渡して、変わりのデュエルディスクをもらう。
その際、パンフレットももらった。
……あまり興味はないし、遊月のデュエルディスクを見て、『そういった高級感』が好きであることは分かっているらしく、強く進めてくることはなかったが。
「……どうせだから見ていくか」
しかし、何も興味がないというわけではない。
デュエルディスクは、そのデュエリストのデッキと並ぶ顔のようなものである。
遊月が使っているものは別にいつ使っていても『時代遅れ』と言われないタイプのものだが、だからと言って他を気にしていないと比較ができない。
といっても、好みの問題はあるので通るエリアは大体同じになるわけだが。
(若干高いな)
高級感と言うものは安くない。
当然、そのデザインを生み出すためにそれなりの金額はする。
塗装をどうにかするだけでも、実のところかなりの費用なのだ。
「黒色で高級感を出したいのなら、あと一か月は待つべきだ。質の良い染料が発売されるのがその時期だよ」
遊月が染料のコーナーで見ていた時、自分に話しかけてきたことを理解した遊月は振り向いた。
ボサボサの茶髪と、だらけきった瞳をした少年だ。
見た感じ、年齢は高等部一年生。
遊月と同じである。
「……生徒会の副会長だったか?会長が不在で代弁してたな」
「ほう、よく覚えてるな」
「名前は覚えてないが」
「よくあることだ。僕の名前は
「不死原遊月だ」
「そうか……ん?どこかで聞いたことがあるような……まあいいか。ちなみに、僕が先ほど言った『一か月後に発売される染料』というのは、僕の父さんの会社『イチノセ・テクノロジー』の新発売の物だ。少々高いが、品質は保証しよう」
「考えておく」
「ああ。それじゃ」
そう言うと、栞菜は背を向けた。
次の瞬間、栞菜のポケットから着信音が鳴った。
栞菜が電話に出る。
「……何!?」
驚愕したかのように返答し、そして、遊月の方を向いた。
先ほどはだらしない顔つきだったが、今はかなり真剣である。
「……ああ、分かった」
通話終了。
「……私に何か用があるということか?」
「そう言うことになるな」
遊月は栞菜の目を見る。
敵対、という意思は感じられない。
どちらかと言うと、疑問だ。
具体的に表現するなら、『そういうジャンルがあるのは知っているが、そういうジャンルに目の前の人間が属しているとは考えていなかった』と言うパターンのものである。
「君には聞きたいことができてしまったな」
「試しに何を聞きたいのか言ってみるといい。
「なら、一つ聞いておこうか。君は……『ISD』なのか?」
明らかに略称であるそれ。
遊月は、その意味を正確に理解したうえで、こう返答した。
「そうだ。そして……これ以上は確実に有料だ」
「なるほど」
栞菜は制服の内ポケットからカードをとりだす。
黒色のカードだ。
「イチノセ・テクノロジーの系列店の会員カード。それも上位のものだ。系列店で購入する際、社員割引で買うことが出来る他、いろいろと優遇処置がある」
「……社員割引?」
「定価の三割引きだ」
「そりゃすごい」
遊月は頷いた。
「で、そのカードで吊りあうと思ってるのなら別に構わないぞ」
「……」
遊月は『そのカードを貰うメリットの量だけ答えるよ』という意味を含めて言った。
栞菜はそれを聞くと、カードを一度ポケットにしまって、デュエルディスクを取り出した。
「なるほど、最初からそのつもりだったみたいだな」
遊月もデュエルディスクを取り出す。
「ただ、ここでは無理だろ」
「……そうだな」
というわけで、二人で店の二階のデュエルスペースに移動した。
デュエルモンスターズ専門店だと、こう言ったスペースが大体存在する。
「さて、始めるか」
「ああ……死後の世界の広さを教えてやる」
お互いにカードを五枚引いた。
「「デュエル!」」
遊月 LP8000
栞菜 LP8000
「先攻は譲ろう」
「なるほど、なら私の先攻。手札から『真紅眼融合』を召喚」
「なっ、『真紅眼融合』だと!?」
「私はデッキから、『真紅眼の黒竜』と、『魔晶龍ジルドラス』を墓地に送る。紅き眼の黒竜よ。偶像の魔竜の力を得て、黒き流星となれ!」
デッキから出てきた二体のドラゴンが混じりあう。
「融合召喚。『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!」
流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン ATK3500 ☆8
「流星竜か」
「融合召喚成功時、効果発動。デッキから『真紅眼の不死竜』を墓地に送り、1200ポイントのダメージを受けてもらう」
栞菜 LP8000→6800
「……いきなりやってくれるな」
「そういうものだ。私はカードを一枚セットして、ターンエンド」
「僕のターン。ドロー!」
栞菜はドローしたカードを見て一瞬考えたようだが、すぐにプレイし始める。
「僕はフィールド魔法『メガロイド都市』を発動」
「……【ビークロイド】か」
遊月は、栞菜が発動したフィールド魔法で、ある程度の予想をする。
一応、サーチ範囲が『ロイド』カードと広いのでいろいろ出来るのだが、発動ターン中は融合召喚しかできないことを考えるとそうなるだろう。
「そして、『サブマリンロイド』を通常召喚」
サブマリンロイド ATK 800 ☆4
「バトルフェイズだ。サブマリンロイドは直接攻撃が可能。そして、メガロイド都市は、ロイドモンスターが戦闘を行うダメージ計算時のみ、デッキからロイドを墓地に送って、『元々』の攻守を入れ替える。僕が墓地に送るのは『ドリルロイド』だ」
「その『元々』っていうテキストウザいな」
遊月 LP8000→6200
「そして、サブマリンロイドは守備表示になる」
サブマリンロイド ATK800→DFE1800
「だけど、まだバトルフェイズは終わっていない。『エネミーコントローラー』を発動」
「あ……」
「サブマリンロイドをリリース。流星竜をこちらに移動させる」
流星竜が移動する。
「そして、ダイレクトアタック!」
「うごっ!」
遊月 LP6200→2700
「メインフェイズ2。メガロイド都市の効果で流星竜を破壊して、デッキから『エクスプレスロイド』を手札に加える」
「なら、フィールドから墓地に送られた流星竜の効果で、墓地から『真紅眼の黒竜』を特殊召喚」
真紅眼の黒竜 ATK2400 ☆7
「カードを二枚セットして、ターンエンド」
フィールドからモンスターがいなくなった。
「私のターン。ドロー。『不知火の隠者』を通常召喚」
不知火の隠者 ATK500 ☆4
「そして、隠者をリリース。『ユニゾンビ』を特殊召喚」
ユニゾンビ ATK1300 ☆3
「第二の効果を発動。真紅眼の黒竜のレベルを、デッキから『屍界のバンシー』を墓地に送ることで一つ上げる。そして、バンシーの効果で、デッキから『アンデットワールド』を発動!」
真紅眼の黒竜 ☆7→8
屍界が広がって重苦しくなった。
「この雰囲気は……いや、『ISD』なら当然か」
「……『おろかな埋葬』を発動。『グローアップ・ブルーム』を墓地に送り、効果を使う。墓地に送られたこのカードを除外することで、レベル5以上のアンデット族モンスターをデッキから手札に加える。そして、フィールドに『アンデットワールド』が存在する時、特殊召喚できる」
遊月のデッキから闇が溢れ始める。
「終わりも始まりもない
死霊王 ドーハスーラ ATK2800 ☆8
「精霊カード……ここまで本人と親和性が高いのは初めてだ」
「仲良しっていうよりは主従の関係だがな。バトルフェイズ。ドーハスーラで、ダイレクトアタック!」
「無駄だ。罠カード『和睦の使者』を発動。ダメージはない」
「……メイン2。『アドバンスドロー』を使い、『真紅眼の黒竜』をリリースして二枚ドロー。そして、レベル8のドーハスーラに、レベル3のユニゾンビをチューニング。現世をさまよう怨霊よ、弔われず嘆く骸に宿りて、屍界の底より顕現せよ!」
大地が、屍界が、脈動する。
「シンクロ召喚。レベル11『骸の魔妖-餓者髑髏』!」
骸の魔妖-餓者髑髏 DFE2600 ☆11
「魔妖まで入ってるのか」
「入ってるのは7から上だけだがな。カードを一枚セットして、ターンエンド」
「僕のターン。ドロー」
「スタンバイフェイズ。ドーハスーラを特殊召喚」
死霊王 ドーハスーラ DFE2000 ☆8
「なら、魔法カード『手札抹殺』を発動。君は一枚、僕は二枚捨てて、それぞれドローする」
お互いに手札を交換する。
「そして、『戦線復帰』を発動。『エクスプレスロイド』を墓地から特殊召喚」
エクスプレスロイド DFE1600 ☆4
「効果発動。墓地から『サブマリンロイド』と『ドリルロイド』を手札に加えるが……」
「ドーハスーラの効果を発動。その効果を無効にする!」
正直、名称指定のターン一がついていない効果を無効にしたところであまり意味はないのだが、止めない意味はない。
「なるほど、ならば『ミキサーロイド』を通常召喚」
ミキサーロイド ATK0 ☆4
「ミキサーか……」
ただ、何故だろう。
ミキサーロイドの顔が『なんで俺また働くんだろう』と言っているような気がするのだが……気のせいだろうか。
「ミキサーロイドの効果、自身をリリースすることで、デッキから二体目の『エクスプレスロイド』を特殊召喚」
エクスプレスロイド DFE1600 ☆4
「効果発動。墓地から『ミキサーロイド』と『サブマリンロイド』を手札に加える。魔法カード『融合』を発動。モビルベース。エクスプレスロイド二体、サブマリンロイド、ミキサーロイドで、融合。蛮族の意思を持つ決戦兵器よ。今こそ姿を現せ!」
五つの機械が混じりあう。
「融合召喚。レベル12。『極戦機王ヴァルバロイド』!」
極戦機王ヴァルバロイド ATK4000 ☆12
「ここでヴァルバロイドか……」
「僕はこのまま――」
「無駄だ。メインフェイズ中に『戦線復帰』を発動。墓地のモンスターを守備表示で特殊召喚する」
「ヴァルバロイドに勝てるモンスターは……」
「いないさ。お前が見えている範囲ではな」
遊月の墓地から、圧倒的な量の怨霊が溢れてくる。
「なんだ……」
「正直、俺のデッキがそろそろ、舐めてかかるなって怒りだしているようだ」
「ん?」
墓地のカードを掲げる。
「屍界にさまよう怨霊よ。力を束ね、鯱を描き、神罰を下せ。『地縛神 Chacu Challhua』!」
上空にシャチが描かれる。
そして……。
地縛神 Chacu Challhua DFE2400 ☆10
「このタイミングで、地縛神」
「Chacu Challhuaの永続効果により、守備表示の時、相手はバトルフェイズを行えない」
「……ターン、エンド」
「私のターン。ドロー」
ドローしたカードを見て頷く遊月。
「Chacu Challhuaの効果。このカードの守備力分のダメージを与える。そしてそれにチェーンして、ドーハスーラの効果。ヴァルバロイドを、除外する」
栞菜 LP6800→4400
「ぐ……」
「ドーハスーラと餓者髑髏を攻撃表示に変更し、バトルフェイズ。二体でダイレクトアタック」
栞菜 LP4400→1100→0
尽きたライフ。
それはまぎれもなく、遊月の勝利を意味している。
「すまんな。こんな決着で」
「……いや、構わない」
栞菜はこれが、遊月が好きな勝ち方ではない。と言うことが分かったようだ。
ちなみに立ち上がった栞菜は、元のだらけきった顔に戻っていた。
「そっちもかなり事故っていたようだが?」
デッキの相性もあるだろうが、あまりいいものではなかっただろう。
そもそも、機械族の切り札『リミッター解除』が使えない時点でいろいろ苦労するのだから。
まあ、アンデットワールドを使っている遊月が言うのも何だが。
というより、なんというか、【お互いにめちゃくちゃなデュエルをしていた感】がかなりあって、あまり本音をぶつけた気がしないのである。
「関係ないさ。これは渡しておこう」
黒いカードを投げ渡してくる栞菜。
「そうか……ま、返しても勝手に送りつけて来るだろうし、貰っておく」
「ああ。そうしてくれ」
そう言うと、栞菜は去っていった。
見えなくなった後、遊月は溜息を吐く。
「さすがに、地縛神まで見せる気はなかったんだが……お互いに変な爆発力があるとこうなるってことか」
それに加えて。
「正直、『魔晶龍ジルドラス』の効果を知っているとは思っていなかったな。良い感じに牽制していたのか?」
遊月も、この一戦だけで栞菜を測るのは無理だ。
第一、遊月が考える以上に栞菜は考えてデュエルしていただろう。
メガロイド都市を軸にして、戦闘をしながらターンを稼いで決めにかかる【ビークロイド】と、『ほぼフリーチェーンで対象をとらず除外』するドーハスーラが入った【アンデットワールド】では、相性の差は露骨に出ている。
「まあ、難しいことはいいとしよう。それにしても、アレのことを正確に知っている奴がいるとはなぁ……」
これから、本当に面倒なことになると思いながら、遊月は広場を後にした。
正直、ビークロイドってちょっとまだ分からない……。