遊戯王Incarnation   作:レルクス

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第三十二話

 トレーニングする際の格好というものは大体決まっているものだ。

 香苗の場合は市販で売っていそうなスポーツウェアである。

 体格の割に胸が大きい香苗の場合、見守る場合はそれで十分だ。

 

 綾羽の場合、あまり外で運動するわけではない。

 そもそも、遊月の家の地下にはそれ専用の設備がそろっているので、そちらを選ぶのは当然だ。

 基本的に、スポーツブラにハーフパンツと、スポーツシューズである。

 

 ……正直、外でやらない人でよかったと周りが思う服装である。ちなみに、実際にジムに行く場合、公共の場所なので周りへの配慮が必要である。

 みられるのが嫌なら上からちょっときればいいのだ。どのみち男はちょっと隠れていたらそれはそれでソソる。

 真面目にやるのなら同じだが。

 

 ちなみに、遊月の家のセキュリティはすさまじいので、外部の人間はほぼ入れないのため、盗撮云々は問題ないだろう。

 

 要するに何が言いたいのかというと、ブルームにとってはいい目の保養になるのである。

 ……たぶん。

 

『ムフフ。いろいろなアスレチックにあんな格好で挑んでる綾羽ちゃんはやっぱりいいなぁ』

 

 ブルームはビデオを回しながらそんなことをつぶやく。

 

「よっこいしょ!」

 

 クライミングで一番上まで登った後で、うーん!とのけぞっている。

 当然、スポーツブラでそんなことをすれば大きな胸が強調される。

 

『尊いねぇ……ん?』

 

 ブルームは足音が聞こえたのでそちらを向くと、スポーツウェアとレギンスを身に着けて、ゴムひもで髪をアップにした時雨が歩いてきていた。

 

『……あれ?時雨さん』

「フフフ。どうしたの?私がここにきていたらおかしいかしら」

『時雨さんって必要だったっけ(・・・・・・・)?』

「それは聞かないお約束よ」

『自分で聞いておいてその返しはきつい……』

 

 ブルームが呆れていると、時雨が壁の上から降りてきた綾羽に話しかけていた。

 

「あ、時雨さん」

「綾羽ちゃん。がんばってるみたいね」

 

 そういってほほ笑む時雨。

 そんな時雨に対して、綾羽はウットリとした表情で見ていた。

 やはり誰が何と言おうと綺麗な体をしている時雨。

 ブルームから見て綾羽もいい体をしているのだが、まあそこは何も言わないのがお約束である。

 

「まあとりあえず、一緒に運動しましょうか」

「あ、はい!」

 

 何も言わずとも、雰囲気で相手を自分のペースに持っていく時雨。

 そんな時雨の提案に乗って、綾羽はうなずくのだった。

 

 

 

 で、運動後。

 

「ところで、何か困っていることはあるのかしら。ちょっと緊張してるみたいよ?」

 

 運動も終わって、制服に着替えた二人。

 これから学校なのだ、朝から運動するタイプになったのである。

 元気なものだ。

 

「アムネシアで悪霊に遭遇するとリアルファイトで戦うことが多くて、ルインと一緒に戦ってるんですけど、なかなか新しい手段とか、切り札とかがなくて……」

「なるほど。最終手段みたいなものがほしいってわけね」

「遊月君も、英明君もあるって聞いたし、香苗ちゃんも一応用意はしてるっていってたから、私にも何かあったほうがいいかなって思って……」

 

 もちろん、単純な強さというものは重要なので、切り札というものが『絶対に必要か』となると賛否両論あるだろうが、あったほうが本人の心のゆとりにつながる。

 切り札がないことが原因で『極度の緊張』を感じるというものはそれ相応にいるので、ある程度の緊張感に調節する際に必要だと考えるものが多いのは、アムネシアの上層部の中では事実である。

 

『まあ、精霊たちにもいろいろあるくらいだしなぁ……』

「ブルーム君にもあるの?」

『もちろん。ただ切り札にもいろいろあるけど、大体は二種類かな』

「二種類?」

『こんな感じ』

 

 ブルームはタイピングをして、画面を見せる。

 

【①:今自分が使っているカードを軸にして、そこから強化先のカードを目指す】

【②:そもそも存在しない『ぼくがかんがえたさいきょうのすがた』を目指す】

 

 という内容になっている。

 

「①のほうは簡単に言えば英明ね。普段は『M・HERO』を使っているけど、その強化として『C・HERO カオス』がある」

『基本的にこっちはいいんだよね。だって進化先が見えてるもん』

「あ。そっか」

「綾羽ちゃんだと、ルインには進化先があるから、それを目指すってことになるわね。これはこれで分かりやすいと思うわ」

 

 『破滅の女神ルイン』の先には、『破滅の美神ルイン』がいる。

 それを目指すという案だが、悪いというものではないだろう。

 目的がわかりやすく、それを目指せる。

 

「ただ、ギリギリまでは今のルインのほうがいいわね」

『そうだね。今のままでぎりぎりまで鍛えて、『破滅の女神ルイン』の格を上げて進化させたほうがいいよ』

「そういうものかな」

『すぐに進化を望んでも仕方がないっていう部分はある。マスターが近くにいるし、何かあった時は頼ればいいからね。あと……綾羽ちゃん。今のままで『破滅の美神ルイン』に進化できるとして、マスターの『ロード・オブ・ザ・レッド』に勝てる?』

「……無理だと思う」

「そういう差が生まれるということよ。だから、ギリギリまで鍛えるほうがいいわ」

 

 そして、次だ。

 

『で、②のほうだけど、これはもうわかりやすいよね。『真紅眼の死霊竜王ネクロ・バロール・ザ・ワールド』のことだよ』

「あれって正直、意味が分からないくらい強いんだけど……」

『でも、あれくらい強いと『すごい』ってわかるでしょ?だから、最終的には目指すべきなんだよね。まあ、あれはちょっとやりすぎだからなぁ……』

 

 ブルームは再びタイピングする。

 

『とりあえず、②のイメージとしては……』

 

【②Ⅰ:女神と美神の間、レベルでいうと9を想定する】

【②Ⅱ:美神の上、レベルでいうと11や12を想像する】

 

『わかりやすいルートを考えるとこんな感じかな』

「まあ、そんなところね」

「わかりました……そういえば、時雨さんってどうやって戦ってるんですか?」

「私はそんじょそこらの悪霊なら、手のひらに精霊力を固めてビンタでワンキルできるから参考にならないわよ」

「あ、確かに参考にはなりませんね」

 

 ひどく理不尽な何かであった。

 

「今のままで頑張ってみます……それと、疑問があるんですけど……」

「何かしら」

「あの、香苗ちゃんが『精霊力制御疾患』だから、大量の精霊力を常に持っている。というのは分かるんですけど……遊月君が常に持っている量と比べると、どっちが多いんですか?」

『マスターの方が多いね。桁の数が違うと思うよ。』

「ということは……遊月君がやれば、過去最大の攻撃力を叩きだせるんですか?」

 

 綾羽はそういった。

 疑問に思っていたことだ。

 遊月は『精霊力は均等を保ちたがる』と言った。

 均等と言うことは、二人でやっているのならば、香苗の半分の精霊力で数値を叩きだしたことになる。

 では、その際に使用された精霊力の倍以上の精霊力を持っている遊月の場合はどうなのか、という話だ。

 

『まあ無理だね』

「そうね」

「えっと……それにも理由はあるんですよね」

「もちろん。精霊力にもね。種類と言うか、個別な親和性と言うか、ともかく『区別』ができるのよ」

『マスターの精霊力はライフの回復とは相性が悪いんだよ』

 

 ブルームの説明を聞いてもよく分からない綾羽。

 

「そういえば、私も詳しく聞いたことはないわね」

『詳しくは知らんのかい……』

「あなたは知ってるの?」

『もちろん』

 

 というわけで、ブルームの説明が始まった。

 

『デュエルモンスターズに存在するモンスターには、モチーフがある場合がある。僕で言うと、『グローアップ・ブルーム』は、『グローアップ・バルブ』がアンデット化した。って言うのが分かりやすいかな?』

「そうだね」

 

 ただ、現在話しているブルームに限れば、変化前はグローアップ・バルブではないのだが、それは置いておくとして。

 

『僕が簡単にネットで調べた結果出した結論だけど、ドーハスーラの元ネタである『バロール・ドーハスーラ』っていうのは、ケルト神話に登場する魔神のことなんだ』

「へぇ……」

『このバロール・ドーハスーラって言う魔神は、ダーナ神族に対して重税をかけていたらしい』

「そんなの強かったのかしら?」

『もともとドーハスーラは『視線だけで相手を殺せる』という力を持っていて、左目か第三の眼かは諸説あるけど、その目はずっと閉じられてるんだ。まあ、他にもいろいろすごいことができるんだけど』

 

 強すぎである。

 あと中二病すぎる。

 まあ、大体の中二病患者のバイブルは神話なのだから当然だが。

 

『とにかく、ダーナ神族を従属させていて苦しめていたんだ。で、そのダーナ神族の内の一人が、『治療の神 ディアン・ケト』のモデルになった『ディアン・ケヒト』なんだよ』

「その因果関係が原因と言うこと?」

『もちろんこれだけが原因じゃないよ?まあ、バロールとディアン・ケヒトの関係って結構すごいけどね』

「関係がすごい?」

『ドーハスーラを殺したのは、自分とディアン・ケヒトの孫である『太陽神ルー』だからね』

「「え、えぇ?」」

 

 まるで意味が分からんぞ。

 

「た、太陽神って……ラーじゃないの?」

『僕が話しているのはケルト神話であってエジプト神話ではありません!』

「あ、ごめんなさい」

『とまぁ、そんな感じで、かなり関係が悪い』

「他にもいろいろあるの?」

『ドーハスーラ関係はまだある。このルーがドーハスーラを殺した武器が、実はブリューナクと呼ばれているんだ』

「え、あのブリューナクが?」

「というか……ブリューナクってケルト神話だったんだ」

 

 若干ずれた感想を抱く綾羽。

 

『そこからか……とまあそんな感じで、マスターが所有しているドーハスーラは、『氷結界の龍 ブリューナク』が使うバウンス効果に対して、たとえブリューナクがアンデット族になっていたとしてもチェーンすることができないんだ』

「え?チェーンできない?」

「なるほどね。綾羽ちゃん。遊月のモンスターを『死者蘇生』で特殊召喚しようとしたことがあるかしら?」

「え……あ、はい。確かできなかったような……」

『それと同じ現象が起こる。まあ、厳密には単なる『デュエルディスクの不備』みたいな感じで処理されるんだけどね』

 

 なかなか理不尽な話だ。

 

『あと、ブリューナクが『投石機』だっていう話もあるね。というより、そもそもブリューナクって名前がないとか聞いたことがあるけど、まあその関係で、実は若干【岩石族】とも相性が悪いんだ。ブリューナクほどじゃないけど』

「……意外と弱点があるんだ」

「こればかりは、精霊として高位の格式を得たことで、そのモチーフに近づこうとした結果ね」

「どういうことですか?」

『これはドーハスーラの切り札にもかかわる話だけど、ドーハスーラは『存在しないカード』を軸にしているんだ。で、その元になった姿が、さっきから話してる【バロール・ドーハスーラ】ってわけ。モチーフになった存在に近づくことで、自分の中に眠る削られた力を全て取り戻す。というのがドーハスーラのやり方だったんだ。だから、その負の面にも近づくことになったわけだね』

 

 ブルームはタイピングし始める。

 

『まとめるとこんな感じ』

 

 見せてきた。

 このような内容である。

 

【ドーハスーラの元ネタは、ケルト神話の魔神、バロール・ドーハスーラ】

【チート能力などいろいろあって、『ダーナ神族』を従属。重税をかけていた】

【その際の因果関係が原因で、『ライフ回復』『ブリューナク』『岩石族』と相性が悪く、特にブリューナクは致命的に相性が悪い】

 

『とまあ、こんな感じかな。モチーフに沿って強くなろうとする人いるけど、『どんな強さを持っているのか』だけを調べて、『どのように相性の悪さがあるのか』を調べない人って多いんだよね。綾羽ちゃんも、何かすごいものを見つけたときは、特に気を付けた方がいいよ』

「わかった」

「フフフ。ちゃんと聞いておいた方がいいわよ。ブルームが全力を出したら、私でも止められないくらい強いからね」

「え……そんなに?」

『そうだよ』

 

 正直、驚いた。

 ブルームは見る限り、かなり小さな体である。

 モンスターのステータスとしても、確かに効果は強いが『攻守ゼロ』で『レベル1』だ。

 そう言う部分もあって、あまり強くは見えないのである。

 失礼な表現だが。

 

「……思ったけど、ブルーム君って結構もの知りだし強いんだね」

『こう見えて序列三位だからね。強さでは抜かれたけど、年齢と知識量はまだまだ二人には負けないよ』

 

 とのこと。

 

「……体は小さいけど秘密は多いんだね」

『君たち二人の秘密を足しても僕からすれば日常みたいなものさ!』

 

 ドーハスーラがいれば、それは言いすぎだと突っ込んでいたかもしれないが、生憎不在である。

 

「そっか……そういえば、私、みんなのことあんまり知らないかも」

「そういうものよ。これから知っていけばいいわ」

『それがいいよ。あと、マスターだって一人で強くなったわけじゃないし、頼れる人にはどんどん頼っていけばいいのさ』

 

 遠慮のないアドバイスに顔をしかめる綾羽。

 

『おや?遠慮してる部分があるのかな?いいんだよ細かいことは。いずれ頼るんじゃなくて、頼られる時が来るんだ。そのとき、自分が誰かを頼っているとけっこう楽だよ』

 

 ブルームのその意見に対しては、綾羽は納得したようである。

 

 ★

 

「ドーハスーラが力を使ったか」

 

 遊月は報告されてきた情報からそう判断して、少し唸った。

 デュエリストによって、自分の中にいる精霊の状態を把握できるものとできないものがいるが、遊月くらいになると、中にいる精霊のすべての状態がわかる。

 ドーハスーラの状態から察するに、相当のエネルギーを使ったのは間違いない。

 

 実際のところ、力を使うとしてももう少し抑えて使うことは可能である。

 

「ふーむ。電話しておくか」

 

 遊月は普段使っているスマホではなく、黒いガラケーを取り出す。

 そして、一つの電話にかけた。

 コールは一回でつながる。

 ……まあ、アムネシアの数ある『上層部』の中で、黒いガラケーを無視できるものはほぼいないのだが。

 

『はい。こちら、黒沢です』

「私だ。黒沢、とりあえず最近の悪霊の発生データを閲覧できるファイルを開け」

『はい……開きました』

「速いな。で、ドーハスーラからは聞いているな。そっちとしてはどう思う?」

『何か不審な点といいますと……基本的に、悪霊の発生件数がアムネシア全体で多くなっています。時期としてみますと、収集装置の襲撃からでしょうか』

「私もそう考えている。が、英明がデュエルをした相手が『ボスから認められたエリート』との話だったが、どう思う?」

 

 少し、間があった。

 

『正直なところ、セキュリティ本部長である私からすれば、英明様が勝った相手が向こうの中でエリートだとするならば、強いとは言えません。しかし、問題は技術です。運命力に直結する部分の多い悪霊のカードを使えるとなれば厄介です。高位の悪霊は、モンスターとしてのスペックは強く、そしてそのスペックの高いモンスターを出しやすい運命力を持っていますから』

 

 運命力。というものが高いことのわかりやすい利点を挙げるとするならば、それは『自分がいいカードを引きやすい』という部分もあるが、それ以上に『敵に妨害カードを引かれない』という部分がある。

 悪霊によって傷害事件は数多く発生するのだが、『相手に運命力で負けている』ということは、言い換えるなら『相手を妨害するカードを引けない』ということになる。

 

 厄介なモンスターはいろいろいるが、そのほとんどは壊獣で処理できる。といえばいいだろうか。

 

「今のところ、処理に問題はないな」

『はい。警戒レベルは通常よりあげていますが、通常のレベルで問題ないという声は上がっています』

「……一応、今の警戒レベルで維持しておけ」

『はい』

 

 通話終了。

 

「ふああ……守りたいものが多いときは、守れるやつを増やしたほうがいいな」

 

 そんなことを呟きながら、遊月はアムネシアの校舎に入っていった。

 

 ★

 

「今回は『カテゴリ』を見ていくぞ」

 

 『デュエルモンスターズ分類学』の授業である。

 名前は斉藤当夜(さいとうとうや)。ちょっとだるそうな顔つきで、茶髪黒目の新任教師だ。

 新任の先生なのだが、いつも通りの授業を高等部一年一組で行える唯一の先生である。

 左手の薬指に指輪があるので既婚だと思われるが、だからと言って時雨の虜にならない材料にはならない。

 本当の意味で妻一筋なのだろう。なんだかすごい。

 ちなみに、一年一組の担任教師でもある。

 新任で遊月が所属しているクラスに配属されると言う部分を考えれば、強者なのだということは理解できる。

 

「ここでいう『カテゴリ』っていうのは、名称指定にかかわる話だ。だから、『ステータス』によって判断される『帝』とか『列車』は、シリーズカードっていう扱いで、カテゴリとして扱ってないから、気を付けるように」

 

 要するに『遊戯王カードWiki』と同じである。

 

「で、このカテゴリの分類方法なんだが、大きく分けて二種類だ。『そのカテゴリのモンスターを回すことに特化している』もの、あとは『カテゴリのモンスターが共通の効果を持っている』という二パターンだ」

 

 先生が黒板に

『そのカテゴリのモンスターを回すことに特化している』

『カテゴリのモンスターが共通の効果を持っている』

 と書いた。

 

「一つ目のほうだが、まあ、主に『カテゴリデッキ』を使う場合にみんなが使ってるのはこっちだ。カテゴリを指定し、サーチ、墓地肥やし、リクルートを行って、結果的に大型モンスターを終着点にして制圧する。言い換えれば『初動』が重視されるテーマだ。有名どころは『HERO』とか『シンクロン』とかだな」

 

 それぞれ例を書いていく先生。

 

「で、二つ目のほうだが、これは『ライトロード』とか、『インフェルニティ』とかが代表だな。ライトロードは、そのほとんどが墓地にカードを強制的に叩き込むし、インフェルニティは手札がゼロの時に効果を発揮する。特にインフェルニティに関して言えば、準備さえ整えばいつまでも回るほどのポテンシャルを持ってる」

 

 先生はそれぞれメリットを書いていった。

 

「だが、どっちも弱点がもちろんある。一つ目のほうなんて、言い換えれば『灰流うらら』で止まるからな。初動をどうにかすることができればいいんだが、ここを止めれないと悲惨だ。まあ、初動を止めても、お化けみたいな手数を持ってる【海皇水精鱗】は本当に止まってくれねえんだけどな」

 

 次。

 

「で、二つ目の方だが、『ほぼ全部が同じ効果を持っていても、根幹となるカードが一部含まれている』ってパターンがある。例を挙げると、【方界】でいうヴィジャムとかだな。こいつらが止められたり、リソースが尽きる前に決めきれないとどうしようもないことが多いんだこれが」

 

 実際に見たんだろうな。という感情が含まれる口調である。

 

「どっちにも言えることだが……『マクロコスモス』で大体止まる」

 

 それを言っちゃうと身もふたもない。

 

「マクロコスモスの効果知ってるか?『原始太陽ヘリオス』を特殊召喚できるカードだ……まあ冗談じゃねえけど、お互いの墓地に行くカードがすべて除外されるっていう永続罠だ。こいつは何があっても『サイクロン』で割れ。絶対に相手はマクロがデメリットにならないデッキだからな」

 

 当然である。

 

「いずれにせよ、どっちを選ぶにしてもメリットもデメリットもあるわけだ。というわけで、カテゴリデッキを使うメリットを言おうか」

 

 五木は黒板に『ステータスが変更されてもある程度保てる』と書いた。

 

「何かしようとしたとき、カテゴリデッキを組んでると名前を指定する。だからこそ、『種族変更』をされたとしても問題なく蘇生することができる。で、自分から種族を変更する場合、利用方法によっては十分強い。『DNA変更フォートレス』とか有名だろ?あの『そしてだれもいなくなった』コンボ。先生も食らったことがある。こっちのモンスター六体を奪われて、しかも相手の場に余分なモンスターがいたから八千でぶん殴ってきやがった」

 

 デュエルをよくやめなかったものである。

 

「とまあ、こんな感じで、カテゴリデッキを使う場合に気を付けることを述べたわけだが、一つの名前で二つ以上のカテゴリに分類されるモンスターもいる。『HERO』とか『ナンバーズ』とかな。相手のデッキのサポートカードを予想する際は、しっかりとみておくことだ」

 

 先生の言葉にはすごく実感がこもっている。

 本当に……何があったのだろうか。

 

「君たちも気を付けるようにな。ん?それなりに時間使ったな。じゃあ次に入るか」

 

 

 

 

 とまあ、こんな感じで授業は進んだ。

 

 ★

 

 授業後。

 

「なんか、当夜先生って、言っていることに感情が入るよな。結構だらしない雰囲気してるけど」

「アムネシアは先生も生徒も事情を抱えているパターンがあるからな」

「あ、さいですか」

 

 英明は何となく気になったようだが、アムネシアは基本的にそんな感じである。

 

「でも、遊月がいるクラスの担任ってことは、デュエルは強いのか?」

「英明より強いだろうな」

「え!?」

 

 さすがに驚いた英明である。

 遊月の相棒として日々鍛えている英明だが、それでも、やはり届かない部分というものはいろいろあるようだ。

 

 まあそもそも……学生のうちから遊月の相棒として認定されたのは、歴代の相棒の中でも英明が最初なので仕方のないことではあるが。

 がんばれ、英明。

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