遊戯王Incarnation   作:レルクス

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第三十三話

 デュエルスクール・アムネシアは学校なので、定期テストがある。

 実技試験は確かに重要だが、筆記試験も無視はできない。

 人間、苦手分野は見なくなるもので、それによって騙されることだってあるのだ。

 デュエルでは、相手の手を正確に読めないことにつながる。

 そういったことを防ぐため、きちんと問題を解いていく必要があるのだ。

 

 遊月もである。

 

(『もともとの種族が機械族ではないモンスター五体を融合素材にして、『極戦機王ヴァルバロイド』を融合召喚してください。なお、カード名のコピーは認めません』か……『ダークジェロイド』『E・HERO ネクロイド・シャーマン』『ダークジェロイド』と、『マジカル・シルクハット』で『ビークロイド・コネクション・ゾーン』二枚を出して、『砂漠の光』で全部表にして、『DNA改造手術』で機械族に変更。『超融合』で融合召喚する)

 

 遊月は考えてそんなことを書いた。

 すでに、基本的な問題は終えて応用編である。

 このような鬼畜な問題も出てくるわけだが、正解することも可能である。

 ちなみに、この問題は彼らの担任教師が授業でちらっと言っていたことだ。

 あまりにも問題が鬼畜すぎるので、一応言ったようである。

 

(『「チェンジ」速攻魔法を五種書きなさい』か。楽勝だな。『マスク・チェンジ』『マスク・チェンジ・セカンド』『フォーム・チェンジ』『ギアギアチェンジ』『スター・チェンジャー』の五種類だ)

 

 英明は納得した様子でそう書いた。

 ちなみにこの問題は、『マスク・チャージ』に対応するカードの話である。

 まあ、普通に【M・HERO】で使うほうがいいのだが、そのような使い方もある。ということだ。

 

(えーと……『ユベルの第三形態の名前を正確に記しなさい』……できるかあああああああ!)

 

 内心で絶叫する綾羽。

 ちなみに正式名称は

『ユベル-Das Extremer Traurig Drachen』

 である。

 まあ無理である。

 ちなみに配点を見ると『0点。ただし、正解すれば大幅に加点』という謎の裁定が存在する。

 

 ……なお、応用編の問題はすべての学年で変更はない。

 

(ええと確か……英語表記が『Yubel - The Ultimate Nightmare』だったはず。そっちを書いておけばいいですかね?)

 

 香苗は変な知識を身に着けていたようだ。

 ちなみに綴りも間違えていない。

 ……まあ、完全正答とは言えないが、部分点くらいは普通にもらえそうな答えである。

 そもそも問題文には、『何を持って正確とするのか』が記載されていないからだ。

 

 だが、アムネシアではこれでも完全正答になる。

 なぜか。

 遊月もその方法で逃げているからである。

 だって、『究極の悪夢』だぞ。簡単すぎる。

 というわけで、アムネシアの頂点に立つフィクサーの遊月すらもこの答えに逃げているので、同じように答えたものは完全正解だ。

 

 どないせいっちゅうねん。

 ちなみに時雨はフリガナ付きで全部書いていた。化け物である。

 

 

 

 

 

 実技試験。

 あまりにも人数が多く、生徒同士のデュエルだと先攻ワンキルを誰かがやった場合、もう片方の生徒の評価ができなくなるので、CPUが相手になる。

 

「『死霊王 ドーハスーラ』でダイレクトアタック」

「『M・HERO 光牙』に『オネスト』を加えて、攻撃だ!」

「『破滅の女神ルイン』で、二回攻撃!」

「『超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ』に『リミッター解除』を使って、攻撃です!」

 

 まあひどいものである。

 特に最後。

 あの出しやすさで攻撃力12000がポンッ!と出てくるのはアカン。

 なんで『二枚いーよ!』状態にしたんだろうか。コンマイの脳の中は謎である。

 

 なお、基本科目に関しては課題をこなして提出すればいいのがアムネシアスタイル。

 試験は終わりである。

 

 ★

 

 アムネシアは、高さ六百メートルの『アイディアル・タワー』をはじめとして、地上の発展度が高いが、遊月がいついかなる時であっても便利に過ごせるように、ということで地下がかなり発展している。

 特に、遊月が直接所有する精霊たちは特別場空間が与えられており、その範囲も広い。

 

 そして、その遊月が所有する精霊の中でも上位のもの達となれば、その得点は格段に大きくなり、結果的に過ごすことができる施設の質も増していく。

 

『にゅおおおおおおおおお!アムネ安に加速してしまったああああ!チキショオオオオオオ!』

 

 遊月の自宅から地下に降りたところタブレットのそばで吠えるブルーム。

 

『……どうしたんだ?ブルーム』

 

 気になったレイジングがブルームに聞いた。

 

『あー……レイジングって異世界の存在知ってる?』

『その異世界からきたデュエリストが信じられない攻撃力を叩きだしたのは知ってるぞ』

『なるほど、まあそれくらいの認識でよろしい。で、その異世界での日本円の価値と、アムネシアで使われてる日本円の価値って違うわけさ』

『ふむ、通貨が異なり、価値が違い、そしてそれが変動する。というわけか』

『そゆこと』

『つまりは【為替で儲けること】が可能になるというわけか』

『レイジングって意外と理解が早いね』

『いや、これくらいなら誰にでもわかるぞ。ただ最後までブルームの説明を聞かずに自分で言いだしただけだ』

『んなことはいいんだよ!で、アムネ安が加速したんだよねぇ!』

 

 アムネ安。

 言いかえるなら『アムネシア安』であり、要するに、アムネシアの通貨の価値が下がった。ということになる。

 もともと悪霊瘴気を集めており、治安維持費がかなり多いのが現状。

 経済が安定しているかどうかとなると首をかしげるものはそこそこいることは事実だろう。

 

『取引相手はどこなんだ?』

『某喫茶店の本店があるところさ!めちゃくちゃ平和なんだよね。あの異世界。そりゃ価値は安定してるってもんだよ』

『なるほど。というか、どのようなレートなのだ?』

『こっちが100で向こうが79だね』

 

 言いかえるならば、『アムネシアで100円で売られているものを買おうとした時、メルトの通貨を使うならば79円で買える』ということだ。もちろん両替する必要はあるが。

 ほぼ二割引きである。なかなかの差だ。

 

『で、大損したと』

『そう言うわけです』

 

 アムネシア安が加速したことで大損したということは、あらかじめ持っていたアムネシアの日本円をメルトの日本円に変えておけば、アムネシア安が加速した後で戻せば大儲けできたということだ。

 遊月が所有する精霊で序列三位のブルームは、元の資産が多いので尚更だろう。

 ……なお、『変態紳士と変態淑女の会』の方では、持っていたアムネシア円をメルト円に交換しておいたので儲けを得たらしい。

 なんで会の方針に乗らなかったのだろうか。

 

『そういえば、今日はアムネシアは定期試験だったようだな』

『あ、そういえばそんな話してたね。問題も見たよ』

『ブルームは何点だった?』

『満点だったよ』

『マジで!?』

『マジ』

 

 実は本当である。

 

『……ブルームって賢いんだな。俺なんて17点だったぜ』

『それはそれで問題があるとおもうけど……』

 

 レイジング。かなりバカだった。

 

『で、ほかに何かある?』

『レッドアイズが呼んでたぞ』

『?……わかった』

 

 思い当たる節はいくつかあるブルーム。

 ただし、レッドアイズは意外と見逃す時もある方だ。

 呼び出すということは、大体面倒なことを押し付けてくるということである。

 

『レッドアイズに頼まれると断れないんだよね』

『ほう、何か恩があるのか?』

『恩と借金』

『……』

 

 レイジングは『恩アンド借金』なのか『恩イコール借金』なのかよくわからなかったが、聞かない方がいいと思って黙っておくことにした。

 正解である。

 

 ★

 

『で、レッドアイズ。どうしたの?』

『保育園で何かあったらしい。園長から連絡がきた』

『ほー……『精霊保育園』だよね』

『もちろんだ』

 

 精霊保育園。

 デュエルモンスターズの精霊の中には、産まれたての時はほとんど力のない赤ん坊がいる。

 これは人間にも言えることだ。

 二足歩行になったことで骨盤が小さくなり、結果的に、赤ん坊の頭が大きくなりすぎると出せないため、『赤ん坊が母体で育ちきる前』に出産する。

 四足歩行の哺乳類の赤ん坊が、生まれてすぐに立ち上がったりするのに対して、人間のこれは遅い。

 ちなみに、雛もそれと同じであり、産まれたての場合はほとんど何もできないのがほとんどだ。

 

 精霊の中にも、具体的な事情は異なるが、産まれたての赤ん坊にほとんど力がないというパターンは多いのである。

 

 そのため、精霊の赤ん坊や子供のための保育園が存在するのだ。

 精霊に対してかなりの予算を投じているアムネシアらしい施設である。

 

『僕らの子供も通ってるしね。何かあったのなら行った方がいいか』

 

 というわけで、ブルームはレッドアイズの背に乗って、二人で保育園に行くことに。

 

 保育園があるのは『アイディアル・タワー』の近くだ。

 何かあった時にアイディアル・タワーから専門家を呼べるという最大の利点を活かすための配置である。

 

『うわー……空からみてもすごいくらいごちゃっとしてるね』

『みんな自由だからな……』

 

 元気で、自由で、精霊ゆえに勉強が必要ない。

 まあ将来的には、お化けと違って仕事はあるわけだが、アムネシアから離れるとそれもなくなるわけだ。

 

「あ、ブルームおじさん!」

 

 保育園の屋上にいた『エルフの剣士』の子供が、空を見上げてそう叫んだ。

 すると、周辺にいたいろいろなモンスターの赤ん坊たちがそれに反応して空を見上げる。

 

「あ、ブルームさんだ!」

「ブルームおじさん!お久しぶりです!」

「ブルームさん!お菓子!」

『なんでこいつら私の名前を呼ばんのだ!』

 

 あんまりな扱いにレッドアイズが吠えた。

 なかなか珍しい光景である。

 

『普段の行いの差じゃない?』

『お前の方が悪いだろ!』

『それは失礼だって。まあ冗談だよ。普段からここにきてるからね。僕』

『関わりあいゆえの明確な差か……そこまで言われると否定できんな』

『まあとりあえず、着陸してくれ』

『そうだな』

 

 地面に降りた。

 すると、赤ん坊たちがワラワラとレッドアイズを取り囲む。

 

『ほーれ!お菓子いっぱい持ってきたぞー!』

 

 ブルームが大量の袋を取り出すと、赤ん坊たちは歓喜した。

 

(気のせいか?ほとんどのお菓子の製造元が『水卜製菓(みうらせいか)』となっている気がするんだが……)

 

 こいつ、異世界から発注してきやがったな。と思うレッドアイズ。

 ただし、実際に配られているお菓子で赤ん坊が喜んでいるので問題はない。

 

「あ、そうだ!ブルームおじさん!大変なことになってるんだよ!」

『大変なこと?』

 

 レッドアイズに行ったこととつながっているのだろうか。

 だが、緊迫感はそこまでないようだ。

 

「うん!モアイ君がいなくなっちゃったんだよ!」

((いや、保育園からいなくなるってめっちゃやばいやんけ!ていうかモアイ君って誰!?))

 

 ブルームとレッドアイズを謎の混乱が襲った。

 

『いなくなったモンスターの正式名称は?』

「えーとね。なんだったっけなぁ」

「園長先生が言ってたよ!『イースター島のモアイ』だって!」

『……帰巣本能で帰ったのか?』

 

 というかなんでアムネシアにいるんだ!

 アムネシアにいるんだったら『アムネシアのモアイ』になるだろ!

 ……私は何を言っているんだ!閑話休題!(混乱)

 

 で、確認してみると、実際にいたそうです。

 すでに保護が完了しているようだ。

 園長先生の権力ではつなげられなくとも、ブルームやレッドアイズならば電話一本である。

 イースター島支部の皆さんはご協力ありがとうございます。

 

『みんな。大丈夫だよ。みつかったからね!』

「よかったー」

 

 みんなほっとしているようだ。

 フレイバーテキストによれば口から丸いレーザーを出すらしいが、思ったより人気者でよかった。

 ちなみにテキストとかはこんな感じ。

 

イースター島のモアイ

通常モンスター

星4/地属性/岩石族/攻1100/守1400

イースター島に存在する石像。

口から丸いレーザーをはく。

          遊戯王カードWikiより引用。

 

『あ、なんか、【磁石の戦士】あたりで使えそう』

『低いステータスのバニラで、星4の地属性、岩石族か。優秀だね』

 

 将来は磁石の戦士デッキに投入され、イースター島から援護射撃をするのだろうか。

 謎である。

 

『まあ、これで問題ないね。さあ、お菓子パーティーだ!』

「「「おおおおおおおお!」」」

 

 変な空気になっても、すぐに楽しい方向に持っていけるのがブルームである。

 

(どうやって帰ったんだろう)

 

 レッドアイズはその疑問を抱いて、ついに解決されることなく、モヤモヤしたまま過ごすのだった。

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