遊戯王Incarnation   作:レルクス

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第三十四話

「あー。データが多いな」

 

 格言研究会の主な活動は、インタビュー用紙、及び、録音機をもって街頭インタビューである。

 そして、インタビュー用紙をあとでそれを全てデータ入力して、集計日を含めたタグをつけて、あとで引っ張りだせるように整理していく。

 

 例を挙げるならば。

 

『ガチ勢の鉄則はゴキの飼育』

 

 であれば、『ガチ勢』『増殖するG』『手札誘発』などのタグを付ける。

 ということである。

 そしてこれがまた膨大である。

 

「……研究会も大変なんだな」

「綾羽ちゃんが遊月の保護下に入ったからな。かなり安全になったから、悪霊討伐して報酬金をもらって経費にしたりとか、街頭インタビューとかいろいろやってる。その結果、なんだかデータが多くなったんだよな。まあ、ネタに困らないってことだからうれしい悲鳴だぜ」

「まあ、やることに関しては全部まじめにやってるのは分かっているが、体を壊したらそれまでだからほどほどにな」

「おう」

 

 英明も自分の限度くらいは分かっているだろう。

 

「私が聞いた情報だと、『デュエルモンスターズ格言研究会』は『綾羽ちゃん親衛隊(ファンクラブ)』らしいけど、実は本部が学校外にあると聞いたわよ」

「ん?ああ、そうだな。綾羽ちゃん。学校の外でも結構人気だぜ」

「へぇ……」

「……まあ、原因が……あんな恰好でジョギングするからなんだけど」

「あの子。あの格好で外で走ってるのかしら」

 

 例の、スポーツブラにホットパンツにスポーツシューズという、英明に取って目のやり場に困る恰好のことである。

 

「……時雨さん。人のこと言えるの?」

「私のドレスは普段着よ。話が違うわ」

((そうなのだろうか))

 

 遊月と英明は同時に疑問に思った。

 

『僕はどっちもエロいので尊いと思います』

『我が主の周辺に住んでいる一般市民に対する問題があるような……』

 

 ブルームの場合は普通に自分の願望だが、ドーハスーラの押しも弱い。

 

「んああああ!終わった!」

 

 パソコンを閉じて伸びをする英明。

 

「で、遊月がこれから行くところがあるから付いていくってだけ聞いたんだけど」

 

 英明を誘う予定だった遊月と時雨。

 

「そうよ。最近、アムネシアでこざかしいことを考えている企業が入ってきてるのよね。しかもその企業、裏をとったら直哉の墓を荒らしていた奴につながったのよ」

「遊月の初代相棒の墓……あいつらか」

「そういうこと。まあ、さすがに私と遊月がいれば大体どうにでもなるけど、英明もついて来るといいわ。人数って言うのはね。急用じゃない限り、多い方がいいのよ」

 

 ★

 

 というわけで。

 

 遊月と英明はDホイールに乗り、時雨は遊月のDホイールのサイドカーに乗るという状態で、遊月たちは移動していた。

 なお、先行するのが遊月の方である。

 

「で、遊月、その企業って一体何なんだ?」

「『ミライギア』っていう企業だ」

 

 遊月が答えるが、彼は運転中なので、時雨がタブレットを操作して英明のヘルメットのバイザーテロップ機能に表示させる。

 アムネシアの運営にかかわる遊月の相棒として速読力は必須の上に、時雨の無駄のない文章と画像を見て、英明は事情を把握した。

 

「……武装型デュエルディスクの機能開発か」

 

 武装など、デュエルディスクをデュエルモンスターズ以外の目的で携帯している者は一定数いる。そう言ったもの達に対する特殊なカスタマイズが施されたデュエルディスクを製造し、販売している会社だ。

 そして、要人にも警護は当然必須だが、そのSPにもデュエルの腕は求められる。

 そのようなデュエリストのためのデュエルディスクを作っているということだ。

 

「荒事も多いからってかなりの耐久テストをクリアしたデュエルディスクを作ってるところじゃねえか。ここが隠れ蓑になってるってことか?」

「最近隠れ蓑になった。と言う方が適切ね。実際、遊月が許可してアムネシアで発注することもある企業よ。高品質に加えて、それを完全技術化したライン作業に寄る大量製造で高水準の評価を得ているくらいだから……まあ、ここまで言えばわかるわね」

 

 英明もそこまで言われれば理解する。

 そして、なぜ『人数稼ぎ』で自分が呼ばれたのかもわかった。

 武装型デュエルディスクを作っている。というと簡単だが、市場に流れ出ると暴走族やマフィアに流れてしまうため、周辺セキュリティも万全だ。

 そのような場所を制圧し、情報工作レベルも高いとなれば、油断出来る相手ではない。

 

「……相当の相手だな。まあ、大体わかってたけどよ」

 

 英明はまるで経験したことがあるかのように苦い顔をした。

 実際、遊月と時雨が組んで鎮圧に当たることは、珍しいことだがないわけではない。

 英明は、それに巻き込まれたことがあるのだ。

 その時の経験から、いやそうな顔をしているというだけの話である。

 

「よし、そろそろだな。あ、そうだ。英明」

「ん?」

「独断で『全力』を出してもかまわない」

「……心臓に悪いこと言うなよ」

 

 やはり英明は、苦い顔をするのだった。

 

 ★

 

 地下の開発が進むアムネシアでは、地上がビルになっており、地下が製造工場になっていると言うケースが多い。

 『ミライギア』のアムネシア支部の建物も、超高層ビルだった。

 

「上か、下か……どっちだ?」

「下は無視してもいいわ。上で一択よ」

 

 英明の質問に対して即答する時雨。

 その左目は金色に輝いており、何かしらの力を行使しているのは一目瞭然。

 

「上か……」

「しかも、アムネシアから手渡されてるマニュアル通りの万全耐性を普段から敷いてるわ。一応奇襲だけど、油断は禁物よ」

「……俺、時雨さんの方が怖いと思う」

「英明、それは言わない約束だ」

「だよな」

 

 全員がDホイールから降りて並んだ。

 

「で、正面突破か?」

「私が持っているパスを使っていくつかショートカットはする。ただ、アムネシア中枢部ではないから、限度はあるがな」

「いつも通りか」

「そういうことだ」

 

 というわけで、高層ビルの正面ではなく、裏手に回った。

 いくつか窓はあるものの、非常階段にすら近づいていない。

 

「で、どうやって乗りこむんだ?」

「すぐに分かる」

 

 遊月がそう答えた瞬間、ビルの大体三分の一くらいの高さにある窓が音もなく割れた。

 中から猛スピードで『根っこのような触手』が飛び出てきて、遊月たち三人のそばに降りてくる。

 

「さすがブルーム。時間も場所も完璧だ」

「……こう言う細かい作業は上二人を超えるからなぁ……」

 

 英明だけはげんなりしている様子だ。

 とはいえ、掴まない理由はない。

 三人が掴むと急激に引っ張り上げられて、そのまま窓間で回収された。

 

「ふう、人を三人引っ張り上げるとちょっと重いね」

「そんなこと微塵も思ってないだろ。ブルーム」

 

 遊月たち三人を出迎えたのは、まるで荒い布で作ったような緑色のシャツと、茶色の短パンを吐いたとても笑顔の少年であった。

 茶髪には花で作ったような髪飾りが付いている。

 もちろん、遊月が言うように、ブルームであることに間違いはない。

 だが、『グローアップ・ブルーム』でもないのだ。

 

「ブルームの強化体か」

「そうだよ。本気じゃないけどね」

 

 笑うブルーム。

 本人らしい表情だが、『そうさせている何か別の要因』を感じさせるものだ。

 時雨はタブレットをとりだして、ブルームをカメラにおさめる。

 

 

 屍界の道化師スマイル・ブルーム

 LINK1 闇属性 アンデット族 ATK1000

【リンクマーカー:下】

 通常召喚されたレベル1アンデット族モンスター一体

 このカード名の②の効果は一ターンに一度しか発動出来ない。

 ①:このモンスターのリンク召喚に成功したターン中、自分の「グローアップ・ブルーム」の墓地から除外して発動される効果は、「自分フィールドにグローアップ・ブランチ・トークン(植物族・闇・星8・攻/守2000)5体を特殊召喚する」として適用する。

 ②:このカードが墓地に存在する場合、除外されている「グローアップ・ブルーム」一体を対象にして発動できる。対象にしたカードを手札に加え、このカードをエクストラデッキに戻す。

 

 

「相変わらずね」

「でしょ?」

 

 微笑むブルーム。

 

「……ていうか、その姿を使っていいんだったら、俺要らない気が……」

「そんなことはないさ。君が思ってるより制限時間は長くないしね」

「今はおいて置け。行くぞ」

 

 遊月がそう言うと走りだしたので、時雨、英明、ブルームもついていくことに。

 

「うおっ!」

 

 急に、遊月のすぐ横からスタン弾が飛んできた。

 それを回避する。

 

「うわっ!」

 

 英明が足元にあったスイッチをギリギリで回避。

 

「ほいっ!」

 

 ブルームのところにもスタン弾が飛んできたが、手のひらから出した枝にあたってそのままとまった。

 

「んっ♡」

 

 時雨の脇腹にスタン弾が直撃する。

 

「「「わざとうけるな変態」」」

 

 三人に突っ込まれる時雨。

 

「だ、だって、最近ひどいことされてないから……アムネシアって常識人が多いのよね」

「混沌を望むな」

 

 いまいち空気が乗らない四人。

 だが、進行速度を落とすことはない。

 遊月と英明は鍛えており、ブルームは精霊力で動くゆえにほとんど生身での運動神経は関係なく、時雨は超速再生と言っていい回復能力を持っているので、実質的に肉体の疲労が存在しない。

 そのため、速度を落とさず走ることが出来る。

 

 ただし……時雨はドレス姿で走っているのに、遊月と英明に追いついている。ということを考えれば、巣の身体能力がどれほど高いかわかるだろう。

 

「お、なんか大型の扉が見えてきたな」

「あの扉をぶち破るぞ」

「OK」

 

 物騒である。

 が、せっかく襲撃しているのだから容赦はない。

 

 遊月がドアを蹴り破った。

 大型の広間についた。

 

 そして……大勢の武装集団が集まっていた。

 

「ほー。遊月が作った対応マニュアル通りに本当に配備してら」

「マスターが作ったマニュアルは経験値がすごいからねぇ……」

 

 かなり余裕の表情の英明とブルーム。

 訓練の風景に交じることもあるので、マニュアル通りにされているのなら、今どうなっているのか非常にわかりやすいからだろう。

 

「……見た限り、ミライギアを狙って襲撃してきたわけじゃなさそうだねぇ」

 

 大勢の武装集団の後ろから、白衣を着た男性が来た。

 その後ろから、トレンチコートを着た男性が続く。

 

「……なあ、あんたらってコンビでやってるときはその組み合わせって決まってんの?」

 

 英明がそう言った。

 

「どういうことだ?」

「ああ、こういえばいいか?智洋と悟って知らないか?」

「ああ、あいつらか、降格されたって聞いたけど、原因がこいつらなわけだ」

 

 白衣のほうの男がトレンチコートのほうを見る。

 

征二(せいじ)。どうやら、なかなかの顔ぶれのようだ」

意岐部(おきべ)がそういうんならそうなんだろうね。で、誰?」

「アムネシアのフィクサーと、その存在が所有する序列三位の精霊、そしてその相棒……」

「……」

 

 紹介が止まった。

 

「あのきれいな人は?」

「私のデータにはない」

「意岐部のデータにない?それはまた面倒だなぁ」

 

 征二はめんどくさそうという評所を隠そうともせず、こちらのほうを向いた。

 

「しゃーない。ここは撤退するよ」

「そうだな」

 

 さきほどから、トレンチコートを着ているほうは情報を出すだけで、支持をしない。

 そういうルールなのだろうか。

 

「させるか」

「させてもらうさ」

 

 征二が指を鳴らすと、武装していたデュエリストたちがデュエルディスクを起動する。

 征二と意岐部の二人は、奥の扉から消えていった。

 

「ふむ、マスター。時雨さん。二人で追ってくれ。ここは僕と英明でやるよ」

 

 ブルームはそういうと、枝を触手のように伸ばして、頑丈な『道』を作った。

 遊月と時雨は、その道の上を走っていく。

 まだパスが有効だったようで、そのままドアのロックを解除して奥まで走って行った。

 

「……さて、やろっか。あ、英明。全力出していいって言われてる?」

「ああ。独断でいいってさ」

「そりゃよかった。それなら、最初からやるべきだよ。英明ならわかってると思うけど、かなりやばい奴らがそろってるからね」

「……仕方がないか」

 

 英明はデュエルディスクにカードを入れて、そのまま自分が付けているベルトの金具に固定する。

 

「まさか、こんなに早く使うとは思ってなかったぜ」

「結構向こうも本気を出してきてるってことさ。この企業だってセキュリティはもともと甘くないよ」

「そうだな」

 

 英明は皐月のデュエルコアをとりだして、『ミラクル・フュージョン』のカードを入れてデュエルディスクに付ける。

 そして、普段は使わないポケットに手を入れて、一枚のカードをとりだした。

 

「変身!」

『ミラクル・フュージョン インフィニティ!』

 

 光が巻き起こる。

 

 四つのエレメントが呼び起こす光だ。

 交じり合い、白となって、英明を包んでいく。

 

 そして……。

 

「さあ、はじめようぜ」

 

 英明は変身を完了した。

 M・HEROたちが持つ機動力重視の衣装とは少々異なり、マントを羽織ったダイヤモンドの装飾があるものとなっている。

 

 

 M・HERO インフィニティ

 融合・効果モンスター

 星10 光属性 戦士族 攻3500 守4500

炎・水・風・地の「M・HERO」モンスターをそれぞれ一体ずつ

このカードはルール上「E・HERO」モンスターとしても扱う。

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカード名の②③④の効果は一ターンに一度しか発動できず、相手ターンでも使用できる。

このカードの②の効果はスペルスピード3として扱う。

①:このモンスターは戦闘・効果では破壊されず、リリースすることはできず、相手の効果の対象にならない。

②:フィールド上の表側表示のカード一枚を対象にして発動できる。その効果を無効にする。そのカードがモンスターカードだった場合、そのモンスターの攻撃力は0になる。

③:手札の「マスク・チェンジ」一枚を捨てて発動できる。このモンスターを守備表示に変更した後、ターン終了時まで守備力は倍になる。

④:相手ターンのエンドフェイズに発動する。墓地の「マスク・チェンジ」一枚を手札に加える。

 

 

「ちっ、そんなもんにびびってられっか!」

 

 武装集団がデュエルディスクを向けてくる。

 だが、英明は落ち着いたままだ。

 スタン弾が飛んでくるが、装甲にあたってそのまま落ちる。

 完全に無傷だ。

 

「チッ!」

 

 大勢が特殊警棒を構えて襲ってきた。

 それに対して、英明は構える。

 殴る。ということはしないが、すべての訓練された襲撃者を手刀と蹴りで無力化していく。

 

「ほっほー。英明、それなりに鍛えてるなぁ」

「てめえも死ね!」

 

 ブルームの後ろから警棒を振り下ろしてくるものがいるが、ブルームが指をぱちんと鳴らすと、枝がコンクリートの床から生えて止める。

 そして、別の方向から枝が飛んできてそのまま襲撃者をブッ飛ばした。

 

「……ブルームも相変わらずだな」

「当然でしょ♪」

 

 ニコニコ笑っているブルーム。

 正直、無害そうな顔で容赦がない。

 

「な、なんなんだこいつら……」

「おい、逃げるぞ。あんな奴戦ってられるか!」

 

 大勢の襲撃者が逃げていく。

 

「やっぱり手ごたえがないな……ん?」

 

 英明の視界に、アタッシュケースを大事そうに抱えている者がうつった。

 

「あいつ……」

「ま、追ったほうがいいよね」

 

 ブルームも気が付いたようだ。

 扉の奥に消えていった者を追う。

 

 すぐに開けた場所にでた。

 

「……なあブルーム」

「どうした?英明」

「あの、Dホイール。飛んでね?」

「というよりは、浮いたまま加速してるって感じかなぁ」

 

 英明とブルームは驚いた。

 なんと……先ほどの男が、飛んでいるDホイールに乗って逃げているのである。

 

「まあ、普通に浮いてる精霊も多いし、それを利用した技術かな」

「……まあ、その技術について考えるのは後だ。どうやって追うんだ?」

「僕が枝で道を作るから、英明はそのあとから追いかけてきて。君もその状態なら可能でしょ?」

「まあ、可能だな」

 

 英明の装甲が一瞬光った。

 次の瞬間、まるで瞬間移動してきたかのように、ダイヤカラーのDホイールが英明のそばに出現する。

 

「うおっ、そんなこともできるのか」

「まあな」

「これはいい誤算だ。それじゃあ、僕は枝をアイツに向かって向けることを優先するから、がんばってね」

 

 ブルームは精霊力の粒子になって消えていく。

 そして、ビルの側面から、巨大な枝を伸ばして道を作っていく。

 英明はDホイールに乗り込むと、そのまま発進した。

 

「思ったより頑丈な道だ」

「頑丈な道であることを確認する前に飛び出せる英明のこと、僕結構好きだぜ。というわけで、もっとスピードあげてもいいよ」

「わかった」

 

 英明はDホイールを加速させて、そのまま逃亡者を追いかえていく。

 近づいてくると、何かの異変に気が付いたのか、逃亡者が振り向いた。

 

「んな、なんだありゃ!?」

「飛んでるDホイールに乗ってるお前が驚くんじゃない」

 

 反論するブルームだが、まあいろいろ無理があるだろう。

 

「枝がしゃべった!?」

「……こいつ、よく枝から声が出たってわかったな」

「そうだよね。普通なら英明の声だと思うはずだけど……」

 

 重要なデータを抱えている以上、優秀なのだろうか。

 とはいえ、そんなことは関係ない。

 

「さあ、お前が抱えているデータを渡してもらおうか。そんな最新のものを使って逃げてるんだ。よほど重要なデータを抱えてるんだろう」

「チッ。なら、デュエルでつぶしてやる!」

 

 逃亡者はデッキからカードを五枚引く。

 英明も、デッキからカードを五枚引いた。

 

「「デュエル!」」

 

 英明 LP8000

 寛治(かんじ) LP8000

 

「俺の先行!」

 

 相手からの先攻だ。

 

「俺は手札から、『迷える仔羊』を発動。トークンを二体特殊召喚だ!」

 

 仔羊トークン DFE0 ☆1

 仔羊トークン DFE0 ☆1

 

「そして、トークン二体をリリースしてアドバンスセット。さらに、カードを一枚セットして、ターンエンドだ」

「ずいぶんと懐かしい動き方をするもんだな。まあいい。俺のターン。ドロー!」

 

 ドローしたカードを見る英明。

 初手五枚を合わせてみても、悪くはない。

 

「俺は手札から、魔法カード『融合』を発動!手札の『E・HERO エアーマン』二体を融合して、現れろ。レベル8。『V・HERO アドレイション』!」

 

 V・HERO アドレイション ATK2800 ☆8

 

「アドレイション?だが、俺のモンスターはセット状態だ。意味なんてねえぜ!」

「まあそう急ぐなよ。それに、アドレイションは俺のデッキでは優秀な中継地点だ。こっからやるんだって。手札から『融合解除』を発動して、アドレイションを戻してエアーマンを二体、墓地から特殊召喚する!」

 

 E・HERO エアーマン ATK1800 ☆4

 E・HERO エアーマン ATK1800 ☆4

 

「そして、エアーマンの効果にターン一の制限は存在しない。俺はエアーマン二体の効果を使って、デッキから『E・HERO シャドー・ミスト』と『E・HERO ソリッドマン』を手札に加える」

「何だその鬼畜コンボ!?」

「俺に言うな。エアーマンをデザインした奴に言え」

 

 というわけで。

 

「俺は手札から『E・HERO ソリッドマン』を通常召喚して、その効果で手札の『E・HERO シャドー・ミスト』を特殊召喚!」

 

 E・HERO ソリッドマン   ATK1300 ☆4

 E・HERO シャドー・ミスト ATK1000 ☆4

 

「シャドー・ミストの効果で『マスク・チェンジ』を手札に加える。そして、あらわれろ!英雄たちが集うサーキット!」

 

 サーキットが出現。

 

「アローヘッド確認!召喚条件はHERO二体。俺はエアーマンを、リンクマーカーにセット。英雄は今混じりて、驚異の爆走者となる。リンク召喚!リンク2『X・HERO ワンダー・ドライバー』!」

 

 X・HERO ワンダー・ドライバー ATK1900 LINK2

 

「さあ!ヒーローショウの時間だぜ!俺は手札から、『マスク・チェンジ』を発動!対象は地属性のソリッドマンだ」

 

 ソリッドマンが自分が付けている仮面に振れる。

 すると、地属性の光が溢れだした。

 

「変身召喚!レベル8『M・HERO ダイアン』!」

 

 M・HERO ダイアン ATK2800 ☆8

 

 ダイアンがバイクに乗って、英明の前を走る。

 

「ワンダー・ドライバーの効果がチェーン1で、魔法の効果で墓地に送られたソリッドマンの効果がチェーン2だ。墓地からHEROを特殊召喚できる。俺はエアーマンを特殊召喚!」

 

 E・HERO エアーマン DFE400 ☆4

 

「そして、墓地に存在する『融合』をセットする!」

「チッ、エアーマンの効果はターン一がないんだったな。またサーチするつもりか」

「ハッ!そんなもん必要ねえよ!」

 

 盛大に煽る英明。

 だが、ブルームは枝を伸ばしながら呆れていた。

 

(そもそもの話、強制効果で確実に割り込んでくるワンダー・ドライバーに対して、ソリッドマンの効果はこの状況なら確実にチェーン2での発動になる。エアーマンは時の任意効果だからタイミングを逃すんだよなぁ。相手の無知を利用した舐めプでの煽りとは……誰に似たんだか)

 

「そして、あらわれろ!英雄たちが集うサーキット!」

 

 あらわれるアローヘッド。

 

「アローヘッド確認!召喚条件はHERO二体以上。俺はリンク2のワンダー・ドライバーとエアーマンを、リンクマーカーにセット!英雄たちが集う場所でその力を束ね、恐怖を打破するものとして生まれ変われ!リンク召喚!リンク3『X・HERO ドレッドバスター』!」

 

 X・HERO ドレッドバスター ATK2500 LINK3

 

「来たか、大型リンクモンスター」

「ドレッドバスターの効果により、ドレッドバスターとリンク先のHEROは、俺の墓地のHEROの種類×100ポイント。攻撃力が上昇する!」

 

 X・HERO ドレッドバスター ATK2500→2800

 M・HERO ダイアン     ATK2800→3100

 E・HERO シャドー・ミスト ATK1000→1300

 

「バトルだ!俺はM・HERO ダイアンで、セットモンスターを攻撃!」

 

 ダイアンが右手にエネルギーをためると、それをセットモンスターに向けて放つ。

 

「セットモンスターは……『機怪神エクスクローラー』!?」

 

 守備力は3000だ。

 破壊することは可能だが……。

 

「チッ、仕方がない。ダイアンの効果で相手モンスターを戦闘で破壊したことで、デッキからレベル4以下のHEROを特殊召喚だ」

「こちらは『機怪神エクスクローラー』が戦闘で破壊されたことで、デッキから『雷撃壊獣サンダー・ザ・キング』を手札に加える」

「そっちも鬼畜なシナジーを投入してきたもんだ。だが、こっちはダイアンの効果で三体目の『E・HERO エアーマン』を特殊召喚だ。そしてエアーマンの効果発動。デッキから『V・HERO ヴァイオン』を手札に加える」

 

 E・HERO エアーマン ATK1800→2100 ☆4

 

「何回出てくるんだソイツ」

「俺も知らん。俺はエアーマンとドレッドバスターで、ダイレクトアタック!」

「『攻撃の無力化』を発動。止めてもらおうか」

「止めてくるタイミングが個性的だなぁ。メインフェイズ2だ。俺は伏せておいた『融合』を発動。フィールドのシャドー・ミストとエアーマンで融合。『V・HERO アドレイション』!」

 

 V・HERO アドレイション ATK2800 ☆8

 

「俺はこれで、ターンエンドだ」

「俺のターン。ドロー!」

 

 寛治は英明のフィールドを見る。

 サンダー・ザ・キングで誰を狙うか、と言う話だ。

 かなり重要である。

 そしてそこまで考えた後で……何も問題はないと判断した。

 

「俺は『M・HERO ダイアン』をリリースすることで、『雷撃壊獣サンダー・ザ・キング』を特殊召喚!」

 

 雷撃壊獣サンダー・ザ・キング ATK3300 ☆9

 

「ダイアンを?」

「こう言うことだ。俺は『所有者の刻印』を使い、サンダー・ザ・キングを俺のフィールドに移動させる」

 

 コントロールが移動する。

 

「そして……『星遺物の胎導』を発動」

 

 発動されたカードを見て、英明は驚愕する。

 

(本人と完全に適合してる化身カードだと!?)

 

 正直、そんなものが出てくるとは思っていなかった。

 

「これにより、俺はデッキから『星遺物の守護竜メロダーク』と二枚目の『機怪神エクスクローラー』を特殊召喚」

 

 星遺物の守護竜メロダーク DFE3000 ☆9

 機怪神エクスクローラー  DFE3000 ☆9

 

「そして現れろ。セカイへ繋ぐ未来回路」

 

 サーキットが出現。

 

「召喚条件は、レベル5以上のモンスター三体。サンダー・ザ・キング、メロダーク、エクスクローラーの三体をリンクマーカーにセット。禍々しき創造主よ、今、星の歯車を回し、禁じられた天界より全てを統べよ。リンク召喚!リンク3『星神器デミウルギア』!」

 

 星神器デミウルギア ATK3500 LINK3

 

「な……なんだこれは……」

 

 英明が驚いているのは、デミウルギアというモンスターが初見だからではない。

 そのモンスターが持つ格。

 それが、想定以上のものなのである。

 

「……」

 

 ただし、状況に対するブルームの答えは沈黙だった。

 

「デミウルギアの効果発動。このカード以外の、フィールドの全てのカードを破壊する」

「な……うおあああああ!」

 

 二体のモンスターとセットカードが割られた。

 

「そしてバトルフェイズ。デミウルギアでダイレクトアタック!」

 

 英明 LP8000→4500

 

 デミウルギアから放たれた閃光が英明を襲う。

 

 その瞬間、英明の三枚あった手札の中の一枚のカードが、腕に付けているハンドホルダーから抜けて飛んでいく。

 

「なっ、カードが……」

「うーん。この状態で手札一枚損失って……」

 

 対戦相手が鼻で笑ってきた。

 

「フン。運のない奴だ。ターンエンド」

「俺のターン。ドロー!よし、良いカードだ」

 

 巻き返された英明だが、すぐに動き始める。

 

「手札から『V・HERO ヴァイオン』を通常召喚!」

 

 V・HERO ヴァイオン ATK1000 ☆4

 

「効果発動。デッキから『D-HERO ディアボリックガイ』を墓地に送る。そして、このディアボリックガイを墓地から除外することで、二体目をデッキから特殊召喚!」

 

 D-HERO ディアボリックガイ ATK800 ☆6

 

「リンク召喚か」

「それが違うんだよなぁ。俺はヴァイオンの効果発動。墓地のエアーマンを一枚除外して、『融合』をデッキから手札に加える。そして、『ダーク・バースト』を発動。墓地からシャドー・ミストを手札に加える」

「何を狙って……」

「手札から『融合』を発動。ヴァイオン、ディアボリックガイ、シャドー・ミストの三体で、融合召喚!レベル8。『V・HERO トリニティー』!」

 

 V・HERO トリニティー ATK2500→5000 ☆8

 

「このタイミングでトリニティーだと!?」

「この瞬間、墓地に送られたシャドー・ミストの効果発動!」

「だがこちらも、お前のエクストラデッキからモンスターが特殊召喚されたことで、デミウルギアの効果発動。デッキから『星遺物-『星鎧』』を特殊召喚!」

 

 星遺物-『星鎧』 DFE2500 ☆7

 

「俺がシャドー・ミストの効果で手札に加えるのは、『E・HERO オネスティ・ネオス』だ」

「やはりそれか。星鎧の効果発動。このカードが召喚、特殊召喚された場合、デッキから星遺物を手札に加える」

「星槍が目的だな。そうはさせねえさ!手札から『灰流うらら』の効果発動。サーチ効果を無効にする!」

 

 デミウルギアは効果を受け付けないので無効効果が効かないが、星鎧には通用する。

 

「チッ……」

「さあ、バトルフェイズだ!」

「だが、オネスティ・ネオスの効果を使い、攻撃を通せたとしても、俺が4000ポイントのダメージを受けるだけだ。お前の手札は0。次のターンで……」

 

 寛治は状況を整理し始める。

 だが、英明は笑った。

 

「ハハハ!俺の手札が0?違う違う、1枚あっただろ?」

「1枚……」

「あと、4000で済むと思ったら大間違いだぜ」

「何!?」

 

 英明は、先ほど飛んで行った自分の手札を見る。

 ブルームが出した枝にすら引っかかっていないが、ミライギアのビルの壁に張り付いていた。

 

 英明は、Dホイールのディスク部分の下にあるカバーを開けて、赤いスイッチを押した。

 次の瞬間、Dホイールが特殊な加速を開始する。

 

「さあ、行くぜ!」

 

 英明はDホイールに乗ったまま空中に飛び出た。

 そのまま、まるで飛んでいるかのように、カードに向かって加速していく。

 

「チッ……デミウルギア!」

 

 寛治の命令を受けたデミウルギアが、英明に向かってレーザーを放つ。

 だが、一発の英明には当たらない。

 

「カードのほうを狙え!」

 

 デミウルギアは即座に狙いを変える。

 カードのほうに照準を合わせて、レーザーを発射。

 

「遅い!」

 

 レーザーが当たる寸前、英明はカードをとった。

 そのまま急ターンをしている。

 

「俺は『アクションマジック-フルターン』を発動。このターン。モンスター同士で発生する戦闘ダメージは倍になる!さあ行くぜ!トリニティでデミウルギアを攻撃。その攻撃宣言時、手札からオネスティ・ネオスの効果発動!攻撃力を2500ポイントアップする!」

 

 V・HERO トリニティー ATK5000→7500

 

「デミウルギアの攻撃力は3500だ。その差は4000。そして、フルターンの効果で、戦闘ダメージは倍になる!」

「こ、こんなバカな……」

 

 トリニティがデミウルギアを殴り倒す。

 

「うおおおおおお!」

 

 寛治 LP8000→0

 

「よっし!俺の勝ちだ!」

 

 英明がそういったとき、寛治のDホイールの金具が外れたのか、アタッシュケースが落ちてくる。

 

「うおっ!危ない!」

 

 さらにDホイールを空中で加速させて、アタッシュケースを回収。

 そのまま、ブルームが出した枝に戻ってきた。

 

「ふう、お疲れさん」

「ああ。ひっさしぶりに本気出したぜ……ん?あいつは?」

「あれ?どこに行ったんだろう」

 

 いつの間にか、寛治はいなくなっていた。

 そこまで速度が出せる設計だったのだろうか。

 不思議なものだが、ここで考えても仕方がない。

 

 一応、ビルまで戻ることにする二人だった。

 

 ★

 

「隊長、どうでしたか?」

 

 アムネシアには高い建物が一定数ある。

 その中の一つに、Dホイールで降りた。

 

「俺はもう本部役員だぞ。すでにお前の隊長じゃないんだ。何度言えばわかるんだ。レイエス」

 

 そういいながら、胸ポケットにカードを入れて、氏名欄に『関寛治(せきかんじ)』と書かれたミライギアでの会員証をビリビリに破く男。

 

「……柏木(かしわぎ)さんって呼ぶべきなんですかね?」

「何度もそう言っているはずだ。で、あの英明ってやつがどうだったかって話か……さすが後輩だなって思うよ。四代目の相棒(・・・・・・)として見る限りは……まあ別に可も不可もねえな。俺のデミウルギアも同意見だ」

 

 柏木はポケットからタバコを取り出すと、そのままライターで火をつけて吸い始める。

 

「……それと、お前の『ラーの翼神竜』は相変わらず、俺のことが嫌いだな」

 

 煙をはーっと吐いて、自分をにらむラーの翼神竜を見る柏木。

 だが、彼のデミウルギアが闘志を漏らすと、そのまま引っ込んでいった。

 

「私と柏木さんはいろいろありましたからね」

「だな。さてと、渡しておきたいものは渡した。まあ、遊月も俺のことに気が付くだろうが、今はそれでいいだろう。ていうかブルームがいたんだから隠せると思ってねえし」

 

 携帯灰皿の中にタバコを入れる柏木。

 そのままDホイールに乗り込んだ。

 

「そんじゃ、俺は帰るよ」

「あ、はい」

「お前、普段はプライド高えのに、俺の前だと素直だな」

「慣れですね」

「そうかよ。んじゃまたな」

「はい。柏木さん、風邪ひかないようにしてくださいね。体、そんなに強くないんですから」

「余計なお世話だ」

 

 吐き捨てるようにそういうと、柏木はそのままDホイールを発進させた。

 残されたレイエスは、柏木の姿が見えなくなるまで見送ると、屋上を後にするのだった。

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