遊戯王Incarnation   作:レルクス

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第三十六話

 アムネシア中央病院。

 

 アムネシアが大幅に改革を迎えた『遊月世代』となってから大増改築が行われ、今も運営されている病院である。

 単なる風邪から大きな怪我のどんな範囲のものであろうと対応する幅広い技術力と、アムネシアの『本部』であるアイディアル・タワーから派遣されたデュエルSPが担当する警備力。

 総合的に、少なくともアムネシアの近況では数ある病院の中でも優れているといっていい規模である。

 そして、地下深くには『遊月に関連する大きな秘密』が存在するが、ここでは割愛しよう。

 

 なお、遊月や、遊月にかかわっているものがここに入院する場合、この病院の地下に行くこともある。

 そして、遊月が構築した『地下空間』に直通のエレベーターも存在するため、それだけでこの病院がアムネシアで重要な立ち位置であるかわかるだろう。

 

「むっ!」

 

 そしてそんな地下室の一つ。

 一人の少女が目覚めた。

 

「うーん……ふっかああああああああつ!!!」

 

 ベッドを降りると、両手を突き上げて絶叫する少女。

 

「むう、私はどれくらい寝ていたのかな。まあとりあえず……英明君。待っててね!」

 

 少女はそういうと、ドアに手をかける。

 だが、ガチャガチャと動かしても、ドアが開かない。

 

「む、むむむ!?おーい。開けてくれええええええ!」

 

 すると、数秒後、ドアの鍵が開いて、ナース服を着た女性が入ってきた。

 そして、ナース服を着た女性は、本気で騒いでる様子の少女を見て驚愕する。

 

 さて、ここで難解な問題を一つ提示しよう。

 

 『この少女、漆野皐月が病み上がりであることを証明せよ。ただし、初対面かつ、発見場所が病院以外の場所であるとする』

 

 ★

 

 征二と意岐部を尋問しても、何の情報も得られなかった。

 ちなみに、征二と意岐部を専門の部署に放り込む前、『まあ、時雨が見ても何もわからなかったんだけどな』といったときの職員の目が『いや俺らが見る意味ないやん』と語っていたが、遊月はそういう部分はスルーするタイプである。

 

「……この資料。本当に柏木冬賀(かしわぎとうが)が持っていたのか?」

『うん。間違いないよ』

 

 遊月は紙の資料を眺めて、視線をブルームに移してから聞いた。

 ブルームは頷く。

 

『デミウルギアの精霊を連れていた。しかも、『星遺物の胎導』も、本人に適合したものだったよ』

「となれば、本当に冬賀だな。いったいどこに行ったのかと思っていたが、まさかスパイなんぞやっていたとは……」

『そんなに体が強くなかったのに、『探さないでください』なんて手紙一つでいなくなっちゃったし、仲が良かったレイジングが大騒ぎになるかもね』

「レイジングには言わないのか?」

『それはマスターが決めることさ。僕はアルバム作成で忙しいんだよね』

 

 ブルームは言いたいことが終わったのか、そのまま遊月の部屋を出ていく。

 

「……冬賀。新しい場所で元気にやってるようだな。なら、私からとやかく言うのは野暮というものか」

 

 ブルームは、悪霊討伐などノルマ達成の報告書以外で、書類作成をほぼ行わない。

 だからこそ気が付いていなかったようだが、『遊月が確認した時のため』にいろいろと隠しメッセージを入れている。

 しかも、当時と同じ使い方で。

 だからこそ、冬賀の近況はわかった。

 

「さて、この書類の内容を考慮するに……」

 

 そこまでつぶやいたとき、一通の電話が。

 

「……なんだ?」

 

 遊月は電話に出た。

 

「私だ」

『おお、遊月様。少々、聞いておきたいことがありまして……』

 

 その声は、デュエルスクール・アムネシア理事長、小湊創吾であった。

 

「何かあったのか?」

『いえ、復学の手続きになるのですが……その生徒が少々』

「復学?生徒は誰だ?」

『漆野皐月様です』

「ああ、英明の彼女か。目覚めるのがかなり速いが……とりあえずリハビリ施設の手配を……」

『いえ、とても元気よく動いております』

「……冗談だろ」

『冗談で済ませることができればよかったのですが……』

「いやだって……二年間寝たきりだぞ」

『ですが、ありとあらゆる健康診断の結果、問題はなしと判断されています』

「……まあ、とりあえず、二年間休学状態であることに変わりはないからな。とりあえず実技試験を行って、試験データを正式に手に入れれば、あとはどうにでもなるだろう」

『そうですね。その実技試験ですが……』

 

 少し言葉に詰まる創吾。

 アムネシアでは、実技試験を行える教員は限られている。

 全員が行えるわけではないのだ。

 電話相手の創吾は当然可能だが……。

 

「というか、創吾は今は……」

『私は理事長室にいますよ。自宅よりもクオリティが高いので』

「あっそ……ただなぁ……あ、黒江っている?」

『娘なら今も高速タイピング中でしょうな』

「なるほど、なら、黒江に任せよう」

『黒江にですか?』

「ああ、まあ皐月は気にしないだろうが、一応女性が対応した方がいいだろう。あと……」

『あと?』

「七十を超えたおっさんと元気一杯の女子高生のデュエルって……絵面が……」

『……そうですな』

 

 まあ。遊月はもーーーーーっと年寄りなわけだが、それは置いておこう。

 

 

『それでは、黒江を呼びましょう」

「今日の黒江の仕事は私が片付けておこう」

『いいのですか?』

「ああ、権限的に、黒江なら返答に時間がかかるものでも、私ならメール一つでいいからな」

『そうですな……では、黒江に言っておきましょうか。現在、皐月様は大幅にデッキを入れ替えているようで、少々時間がありますし、その間に引き継ぎを終わらせるように言いましょう』

「デッキを大幅に?」

『はい。医師からの報告では、『HEROパワーは英明君に預けるから』と言っていたそうですが……正直意味が分かりませんな』

「私もわからん。というか、医師が付いてるんだな」

『状況が私としても前代未聞ですから』

「なるほど。まあ、事情は分かった。試験や手続きはそっちに任せる」

『お任せください』

 

 というわけで、通話終了。

 

「……どこのギャグマンガから出てきたんだ。アイツ」

 

 遊月はそんなことをつぶやいたが、それにこたえるものは当然いなかった。

 

 ★

 

「デッキができたぞおおおおおお!」

 

 夜の学校で騒ぐ皐月。

 病院で目覚めた彼女だが、『多分病院にいたままだとほかの患者の迷惑になるから』という理由で、病院から学校に移された。

 なお、医師たちは車に乗ってきたが、皐月は自転車である。

 ちなみに、服は即席で用意されたジャージである。

 

 なんと、二年間寝たきりだったのに、身長もバストサイズも大きくなっているので、それまでの服が全然きれなかったのだ。

 しかも肌はツヤッツヤのテュルンテュルンである。

 教員たちは『I☆MI☆HU☆ME☆I!』だったが、遊月のそばで働いていれば、『理解する前に現実逃避する』という技術が培われるので、どうにかして混乱を回避していた。

 

「できたようですね。試運転は必要ですか?」

「大丈夫ですよ黒江先生!」

 

 満面の笑みで黒江にデッキを掲げる皐月。

 その黒江の表情は青天の霹靂から目覚めた『いいいいやっほおおおおおおおおう!』と言いたそうな顔だった。

 もちろん、黒江が出向かなければ意味のない仕事もあるわけだが、面倒な部分をすべて遊月に丸投げできたので、これ以上に良いことはない。

 ついでに言うと、皐月の復学の書類のための試験を受けさせることをどれほど重要視しているのかという、遊月の皐月に対する評価がドエライくらい気になるが、黒江はきっといい答えを聞けるわけではないと思って放置した。

 

「そうですか。それでは、実技試験の相手は私が勤めますよ」

「え、黒江先生が相手なんですか?」

 

 理事長の娘だが、教壇に立つこともある。

 三十路の既婚者だが、童顔かつ貧相な体格なので(胸はCくらいあるが)、『大学から来たお姉さん』扱いがデフォルトである。

 当然、皐月としてもその意見は変わらない。

 が、相手が誰であろうと、皐月は全力を出すだけだろう。

 

「はい。アムネシアでは、こういった状況での実技試験は教員側にもいろいろ条件がありますからね」

「わかりました!それでは、よろしくお願いします!」

 

 ということで、皐月はデュエルディスクを受け取って、デュエルスペースに移動する。

 

 指定位置に立った二人は、お互いにデュエルディスクを構えた。

 ただ、試験なので外野がいる。

 カメラが設置されているので、人数は最低限だが。

 

「……なあ、なんで僕呼ばれたの?」

 

 一年一組の担任。斎藤当夜も呼ばれていた。

 茶髪をガリガリと書きながら、『とりあえず顔だけは洗ってきたんだな』という表情でデュエルスペースを見る。

 

「彼女が復学するとなれば、あなたのクラスになるからですよ」

「え、僕のクラスに?」

 

 いつの間にか隣にいた医者の伊賀和志(いかわし)が応えた。

 

「……お前って病院勤務じゃなかった?」

 

 同期に話すかのような気軽さで当夜は伊賀和志に聞いた。

 

「その病院からついてきたんですよ。だって……こう……なんか……医学的というか常識的に説明がつかないことが起こってるんですから」

「あー。だな」

「まあその話は置いておくとして、彼女は漆野皐月。君のクラスの英明君の彼女ですよ」

「あ、資料で読んだな」

 

 頷く当夜だが、実は『一人の人間が一つの都市を裏から牛耳っている』という状況を快く思わない若者は多いので、遊月の情報を伏せられている先生はアムネシアに採用されている教員の中にも存在する。

 当夜は価値観的にそのあたりが問題ないとされて説明されているのだ。

 

「まあ、そういう事情ですね。ところで……当夜君はこんな時間まで何を?」

「研究が長引いたから研究室で寝てた」

「あ、そうですか」

 

 大学ではないが、優秀な教員には個室が与えられるのだ。

 それを研究室と呼ぶ者いるものが多いので、研究室という呼び名が一般的になっているが。

 

「事情は分かった。今はデュエルを見ようか」

「そうですね……なんで男二人で見なくちゃいけないんですかね?」

「カメラで理事長も見てるし、別にいいだろ」

 

 当夜は二人を見た。

 

「「デュエル!」」

 

 皐月 LP8000

 黒江 LP8000

 

「皐月ちゃん。先攻と後攻のどっちがいい?」

「むむ……後攻です!」

「なら、私の先攻だね」

 

 黒江のターンでスタート。

 

「ふーむ……どうやら、私のデッキは楽しいことをしたいみたいだね」

「え?」

「私はスケール1の『DD魔導賢者コペルニクス』と、スケール13の『DD魔導賢者ニュートン』で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 並ぶ二体のペンデュラムモンスター。

 

「む!?」

「ペンデュラム召喚!二体の『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』!そして、『DD魔導賢者トーマス』!」

 

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000 ☆8

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000 ☆8

 DD魔導賢者トーマス      DFE2600 ☆8

 

「うそでしょ!?」

「私はトーマスの効果を使い、ペンデュラムゾーンのニュートンを破壊して、デッキから三体目のヘル・アーマゲドンを特殊召喚!」

 

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000 ☆8

 

「そして、私はトーマスとヘル・アーマゲドンでオーバーレイ!黒を統べる組織よ。今偉大なる王と賢者を束ね、権限せよ!エクシーズ召喚!ランク8『DDD超死偉王ダークネス・ヘル・アーマゲドン』!」

 

 DDD超死偉王ダークネス・ヘル・アーマゲドン ATK3500 ★8

 

「さあ、私はこれでターンエンドだよ。ダークネス・ヘル・アーマゲドンが存在するとき、私のペンデュラムモンスターは破壊されないから気を付けてね」

「わかりました。私のターン。ドロー!」

 

 ちらっとドローしたカードを見る皐月。

 

「私は手札から、『光天使セプター』を召喚!」

 

 光天使セプター ATK1800 ☆4

 

「おっ、光天使だね!」

「その通り!召喚に成功したセプターの効果発動!それにチェーンして、手札から『光天使スローネ』の効果を発動!」

「うわあ……そのセットを握ってたんだ」

「スローネの効果で、自身を召喚して、一枚ドロー!そして、セプターの効果で、二枚目のスローネを手札に加える」

 

 光天使スローネ DFE2000 ☆4

 

「そして、今加えたスローネの効果!特殊召喚して、一枚ドロー!」

 

 光天使スローネ DFE2000 ☆4

 

「本当に頭がおかしい……」

 

 みんなそう思ってるだろう。

 ただ問題は、ここから何を出すかである。

 

「私は、レベル4のセプターと、二体のスローネでオーバーレイ!光輪の意思に答える天枢の星々よ。聖なる法衣をまとい。権限せよ!エクシーズ召喚!『No.102 光天使グローリアス・ヘイロー』!」

 

 No.102 光天使グローリアス・ヘイロー ATK2500 ★4

 

「ぐ……グローリアス・ヘイローが入ってるんだ」

「その通り!私はセプターを素材にしたグローリアス・ヘイローの効果発動!ペンデュラムゾーンのコペルニクスを破壊する!」

「うわっ!」

 

 モンスターたちに破壊効果は効かない。

 正しい選択である。

 

「そして、一枚ドロー!」

「やるねぇ。皐月ちゃん」

「さらに!私はグローリアス・ヘイローの効果発動。エクシーズ素材を一つ使って、ダークネス・ヘル・アーマゲドン一体の効果を無効にして、攻撃力を半分にする!」

 

 DDD超死偉王ダークネス・ヘル・アーマゲドン ATK3500→1750

 

「バトルフェイズ!グローリアス・ヘイローで、ダークネス・ヘル・アーマゲドンを攻撃!」

 

 グローリアス・ヘイローが投げた槍が、ダークネス・ヘル・アーマゲドンを貫く。

 

 黒江 LP8000→7250

 

「メインフェイズ2に入って、私はカードを二枚セット、これでターンエンド!」

「私のターン。ドロー!」

 

 黒江のターンだ。

 

「フフフ、まずは二体のヘル・アーマゲドンを、リンクマーカーにセット!リンク召喚!『DDD深淵王ビルガメス』!」

 

 DDD深淵王ビルガメス ATK1800 LINK2

 

「ビルガメスの効果発動!デッキから、スケール1の『DDD運命王ゼロ・ラプラス』と、スケール10の『DD魔導賢者ニュートン』で、ペンデュラムスケールをセッティング!そして1000のダメージを受けるよ」

 

 黒江 LP7250→6250

 

「うへっ!?またっ!?」

「ゼロ・ラプラスのペンデュラム効果で、エクストラデッキのコペルニクスを回収。ペンデュラム召喚!エクストラデッキから、ヘル・アーマゲドン二体!」

 

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000 ☆8

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000 ☆8

 

「そして私は、手札に加えたコペルニクスを通常召喚!効果で『DDスワラル・スライム』を墓地に送る。そのまま除外して効果発動。『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』を手札から特殊召喚!これにより、墓地からヘル・アーマゲドンを特殊召喚!」

 

 DD魔道賢者コペルニクス    ATK 0 ☆4

 DDD壊薙王アビス・ラグナロク ATK2200 ☆8

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000 ☆8

 

「アビス・ラグナロクの効果で、コペルニクスをリリースして、グローリアス・ヘイローを除外!」

「グローリアス・ヘイローが!」

 

 これで、皐月の場にモンスターはいない。

 

「試しに殴ってみようか。バトルフェイズ!」

「罠カード発動!『威嚇する咆哮』!相手は攻撃宣言できなくなるよ!スウゥ……ヒャッハアアアアアアア!」

 

 君が威嚇する必要はないのだが……。

 というか威嚇なのだろうか……。

 ついでに言うと、威嚇された側である黒江は『かわいい子やなぁ』と和んでいた。

 どうやら皐月の威嚇に緊迫感はないらしい。

 

「私はこれでターンエンドだよ。さあ、かかってらっしゃい」

 

 今度はダークネス・ヘル・アーマゲドンを出さない様子の黒江。

 ただ、そもそもヘル・アーマゲドンにもある程度の耐性は備わっているし、そもそも実技試験の教官は、『試験用デッキ』の場合はデッキのレベルが調節されるので、現段階では『ダークネス・ヘル・アーマゲドンは二枚目を使わない』というレベルに設定してデュエルしているだけである。

 セプスロで攻めてくるならば。『対象に取られない耐性』を与えるホワイテストくらいは欲しいところだが、あえて出さないのはそういう理由だ。

 

「私のターン。ドロー!」

 

 ただし、そういう『教官としてのレベルの調整』を頭の中でカチカチとくみ上げている黒江の内心など、皐月には関係ない。

 手札を見て、何をするのかを決める。

 

「私は手札から、『魔界発現世行きデスガイド』を通常召喚!効果で『クリッター』を特殊召喚!」

 

 魔界発現世行きデスガイド ATK1000 ☆3

 クリッター        ATK1000 ☆3

 

「お、突然の闇属性出張パーツ」

「私はこの二体でリンク召喚!リンク2『見習い魔嬢』!」

 

 見習い魔嬢 ATK1400→1900 LINK2

 

「光天使に見習い魔嬢!?」

 

 黒江は驚いた。

 さすがにこのような構築は知らない。

 

「あ、あの、私のDDたちの攻撃力は上がるよ?」

 

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000→3500

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000→3500

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000→3500

 DDD深淵王ビルガメス     ATK1800→2300

 DDD壊薙王アビス・ラグナロク ATK2200→2700

 

「何も問題はないよ。とりあえずクリッターの効果で『灰流うらら』を手札に加える。続けて、私は『戦線復帰』を使って、『光天使セプター』を墓地から特殊召喚!」

 

 光天使セプター DFE400→0 ☆4

 

「そしてこのセプターは、見習い魔嬢の効果によって、攻撃力が400下がって、1400までダウンしてるよ!私はこのセプターを対象に、『地獄の暴走召喚』を発動!」

「その手があったか!私はアビス・ラグナロクを守備表示で特殊召喚するよ」

「私はデッキから、二体のセプターを特殊召喚!」

 

 光天使セプター         ATK1800→1400 ☆4

 光天使セプター         ATK1800→1400 ☆4

 DDD壊薙王アビス・ラグナロク DFE3000→3500 ☆8

 

「セプター二体の効果で、デッキからウィングスとスローネを手札に加える。そして、私はレベル4のセプター三体で、オーバーレイ!」

 

 三体のセプターが渦の中に飛び込む。

 

「もう一度現れろ!エクシーズ召喚!『No.102 光天使グローリアス・ヘイロー』!」

 

 No.102 光天使グローリアス・ヘイロー ATK2500→2100 ★4

 

「セプターの効果は重複する。私は三体の効果によって付与されたグローリアス・ヘイローの効果で、ヘル・アーマゲドン三体を破壊!」

「うわぁ!」

「そして、三枚ドロー!」

「うーん。そこは勘弁してほしいなぁ……」

 

 正直アレだ。

 アドバンテージの稼ぎ方がおかしい。

 

「そして、『二重召喚』を使って召喚権を増やして、手札からウィングスを召喚!」

 

 光天使ウィングス ATK1200→800 ☆4

 

「ウィングスは召喚成功時、手札の光天使を特殊召喚できる効果がある。それにチェーンしてスローネの効果を発動!手札から特殊召喚して、一枚ドロー!ウィングスの効果で、二体目のウィングスを特殊召喚!」

 

 光天使スローネ  DFE2000→1600 ☆4

 光天使ウィングス ATK1200→ 800 ☆4

 

「そして、私は見習い魔嬢とスローネをリンクマーカーにセット!リンク召喚!『デコード・トーカー・エクステンド』!」

 

 デコード・トーカー・エクステンド ATK2300→3800

 

「え、エクステンド……」

「見習い魔嬢がいなくなったことで、モンスターたちの攻撃力は元に戻るよ」

「ま、まずいなぁ……」

「そして、私はウィングス二体でオーバーレイ!」

 

 ウィングスが渦の中に飛び込んでいく。

 

「エクシーズ召喚!『輝光子パラディオス』!」

 

 輝光子パラディオス ATK2000 ☆4

 

「パラディオスの効果で、攻撃表示のアビス・ラグナロクの効果を無効にして、攻撃力を0にする!」

 

 DDD壊薙王アビス・ラグナロク ATK2200→0

 

「さらに手札から魔法カード『量子もつれ』を発動。ビルガメスには一ターン消えてもらうぜ!」

 

 除外されていくビルガメス。

 

「バトルフェイズ!デコード・トーカー・エクステンドで、リンク先の、攻撃力0のアビス・ラグナロクに攻撃!」

「むぎゃ!?」

 

 黒江 LP6750→2950

 

「これで、エクステンドは二回目の攻撃が可能!もう一体のアビス・ラグナロクも抹殺!そして、パラディオスでダイレクトアタック!」

「フギャア!」

 

 黒江 LP2950→950

 

「ラスト!グローリアス・ヘイローで、ダイレクトアタック!」

「ぐほあああああ!」

 

 黒江 LP950→0

 

 勝者、皐月。

 

「よっしゃあああああ!勝ったどおおおおおおお!」

 

 両腕を突き上げる元気な様子の皐月。

 真夜中でしかも病み上がりなのに元気なものである。

 

「いてて、なかなかの爆発力だったね」

「スカッとする効果が多いですからね!」

 

 というかセプターは反則だ。

 光天使スケールが何をもって自分を見出せばいいのかわからなくなるくらい反則だ。

 

「まあこれで、いろいろ書類もちゃんと作れるから、明日から……っていうか、今日の朝から学校に通えるよ」

「はい!ありがとうございます!」

 

 とても元気な様子の皐月。

 英明に会うのが今から楽しみなのだろう。

 

 そばで見守っていた当夜と伊賀和志は、何事もなくデュエルが終わってホッとした。

 二年間寝たきりの少女の行動とは思えないのは事実だが。

 

「ふむ……まあ、とりあえず、今のところは問題ないと判断しましょうか。心配するだけ損のような気が……」

「僕もそう考えていたところだ。というか、彼女に対する授業ってどうするんだろうか……」

 

 二年間寝たきりの人間に対して、周りと同じカリキュラムで信仰させるのはどうなのか、ということである。

 

「あ、その点は大丈夫ですよ。長期間学校から離れていた生徒が復学した時のカリキュラム調整に関してはマニュアルがありますからね」

 

 いつの間にか皐月がいなくなっていた。

 ので、黒江が二人に説明している。

 

「聞いていないぞ」

「難しいことは書かれてないですけど、あまり引っ張り出されないマニュアルですからね……一応内容の更新はしっかり行われているので安心してください」

「アムネシアってマニュアルの更新頻度すごいよな……」

「アイディアル・タワーにはそれを行う専門部署がありますからね」

「「……」」

 

 絶句している二人だが、『これから何をすればいいのか』がわかっていることに変わりはない。

 問題はないはずなのだ。

 問題はないはずだが、どこか納得していない自分がいる。

 

「当夜。私はアムネシアに赴任して短いのですが、ここまで非常識なのですか?」

「さあ?この高校の二代前の生徒会長である僕にも不明だ」

「フフフ、当夜君は大学時代はアムネシアの外に出て学んでいましたからね。ちゃんとアムネシアの常識に慣れてくださいね」

「苦労する……」

「ちゃんとサボる技術を今から身に着けておいた方がいいですよ。私は中学時代からそればっかり考えてますからね。それでは、私は書類整理がありますので、これで」

 

 黒江も試験会場を出て行った。

 

「……なあ、伊賀和志」

「なんですか?」

「彼女のデュエルディスク。音声通信モードのランプがついてたよな」

「ついていましたね」

「指摘した方がよかったか?」

「もう遅いでしょう」

「だな」

 

 黒い部分に飛び込む必要はない。

 勝手に自爆しているのだから、自爆したものはその処理に並走していればいいのだ。

 

 黒江はサボる才能はあるようだが、サボる天才ではないらしい。

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