遊戯王Incarnation   作:レルクス

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第五話

「遊月。俺は重要なことを知ってしまった」

「朝っぱらから何だ。というか即座にメールしてくるんじゃなくてわざわざもったいぶって言うあたりそうでもないだろ」

「……驚くなよ」

「スルーするなよ。で、なんだ?」

「綾羽ちゃんは、フルーツを食べる時、皮ごと食べるんだ」

「……リンゴとか?」

「いや、キウイだった」

「……そうか」

 

 正直。驚いた。

 

「まあでも、食べられないわけじゃないけどな。メロンはすごいけど」

()ったことあんの!?」

「ある。メロンの皮の網目みたいなのがあるだろ」

「あるな」

「あれが原因なのかどうかは不明だが、なんか木の皮を食ったみたいな感じになるんだ。罰ゲームで食べたけどなかなか地獄みたいな触感だったぞ」

「うええ……俺は止めておくぜ」

 

 当然、中はおいしい。

 だが皮はダメだ。

 特にメロンはダメだ。

 幼いころから思っている遊月の教訓である。

 

「まあ、なんというか、俺は人には見かけによらない変わった部分があると思った」

「そうだな」

 

 話題をそろそろ変更した方がいいと遊月は感じた。

 

「英明。私は思うことがある」

「なんだ?」

「初手五枚。というものをデュエルするたびに見ていて思うことだが、『手数が多いか少ないか』ということを私は考えたい」

「ほう」

「まず、手数が多いことの利点だが、ある程度カウンター罠で展開を止められたとしても、次の行動に移れるということだ」

「ふーむ……まあ、召喚権をとりあうようなカードばかりが手札に来ると、さすがに止まるよな」

「自分で特殊召喚する効果を持っていたりすれば、最近はリンクモンスターがいるから、能動的に墓地に送るのは難しくない。だが、召喚権をとりあう手札だと、サーチをうららで止められたら悲惨だろう」

「だな。俺も経験がある。盤面が中途半端の時、どうにかしてオネスティ・ネオスを引きこんでおかないと不安で不安で……」

「そう言う類のものだ。ただ、手数が多いデッキというものにも弱点はある」

「そうか?」

「止められた後で着地点を素早く見つけ出すことだ。はっきり言ってソリティアが嫌いな私はうららとか大っ嫌いだ」

「それはお前が悪いんだろうに……というか、それだと制圧系の盤面を相手が組んできたときどうするんだよ」

「まあ。『永続的なロックカード』と『パーミッション効果もちが横並び』するかのどちらかだ。ただ、抜け道がない盤面とか基本ないからな」

「壊獣とかだな」

「処理するのも少々面倒だがそんな感じだ」

 

 ちなみに、『振り出し』というカードを御存知だろうか。

 昔よくある『手札一枚をコストに相手モンスター一体を除去する通常魔法』なのだが、『振り出し』は何と『デッキの一番上』なのだ。

 壊獣がデッキの一番上。これはデュエリストとしては地味に嫌である。

 

「なるほど、手数が多いゆえの話か……俺もソリッドマンとかヴァイオンを止められたら嫌だな」

「アライブがなかったら地獄のようなことになるからな」

 

 お互いに頷く。

 というわけで、良い空気変更になったようだ。

 

「と言うわけで、さらなるリサーチのため、俺は偵察してくる」

「その『と言うわけで』というつなぎ方は正直変だと私は思うが……その偵察した先の終着点は何だ?」

「フフフ……いざという時のために力になるわけさ」

「チキンだなお前」

 

 そこで『交際する』と言わないところを見ると、何とも言えない。

 

「ていうか、他にもかわいいと思える生徒はいると思うんだが……」

「当然、俺はそっちも評価する」

「それはファンクラブとして大丈夫なのか?」

「もちろんだ。掟には『暴走してもいい』となっているからな」

 

 ずいぶんゆるゆるである。

 というより、ほとんどノリで作ったものなのだろう。

 そこから少しずつ暗黙の了解ができたような、そんな感じだ。

 おそらく、他の人間に聞けば『鉄の掟』の内容は違う可能性もある。

 

「だが、俺のリサーチ対象のうち八割は綾羽ちゃんであるということに変わりはない。と言うわけで行ってくるぜ!」

 

 そういうと、元気な様子で英明は走って行った。

 

「……都合の良いルールだなぁ」

 

 残された遊月はそうつぶやいた。

 融通が効くことは評価しよう。

 だが、女子が聞いたらドエライことになりそうだ。

 まあ、男子同士の生々しい話など大体そんなものである。

 

 ★

 

「放課後になっても私の前にあのバカは現れない……ストーカー中なのか?」

 

 久しぶりに放課後に一人になった遊月。

 とはいえ、その腐った目に変化はない。

 

「さて、晩飯でも……ん?」

 

 遊月はカードショップの二階を隠れやすそうなスポットから望遠鏡で覗いている不審者を見かけた。

 まあ、残念なことに友人なわけだが。

 

(英明のやつ。何やってんだ?)

 

 とはいえ、あの理性と性欲の強い(矛盾しているが)友人のことだ。

 目線の先には、本を立ち読みしている大束の姿が。

 

(英明……どう言い繕っても不審者だな)

 

 こんなやつくらいしか友人がいないことを嘆くべきなのか、何をどう考えてもストーカーなのに迷惑をかけていないことを評価するべきなのか迷う遊月。

 少なくとも、自分にはあそこまで熱中することができるものがないことに気が付いて消沈する。

 

(アホらし。もう帰ろう)

 

 遊月は背を向けた。

 近くのコンビニを見る。

 カップラーメンが外から見える位置にある謎配置の店だが、外から見える範囲でも『ピリ辛レッドデーモンズヌードル』が見えたので買うことにした。元ネタは使用については――

 

「……ん?」

 

 物音が聞こえた。

 振り向くと、ちょうど大束が店から出てくるところだった。

 大束は店を出ると遊月がいる方向とは別の方向にまがって、遠くから見ている英明に気が付いた様子もなく、歩き始めている。

 それと同時に、英明も隠れられそうな場所を探すためにきょろきょろしている。

 友達をやめたほうがいいのではないかと二割くらい本気で考える遊月。

 

 しかし、問題はここからだった。

 大束が角を曲がろうとしたとき、ワゴン車が急に走ってきて、大束の前で急停止。

 扉を勢いよくあけた男が大束に手を伸ばした。

 だが、大束はなんとこれを回避。

 はっきり言って遊月も驚く体捌きだった。

 正直、彼女から『灰流うらら』を奪った精霊ハンターの『京吾』を再評価する必要が出てくる可能性があるほど絶対に何かを習っている。

 

「――!」

 

 大束は後ろに下がったのはいいが、男のデュエルディスクから発射されたアンカーが彼女のデュエルディスクに接続された。

 さらに、それが二人。

 銀髪と金髪の男性だが、銀髪のほうは日本人だが、金髪のほうは外国人だろう。

 

(物騒な世の中だな)

 

 チラッと英明を見る。

 さすがにヤバいと思ったのか、トップスピードで走り出した。

 そして、最短距離で走っているとき、一台の全く関係のない車が路上駐車(違反)されている。

 それを飛び越えようとして英明はジャンプ。

 

「おっ」

 

 かっこよく飛び越えようとする英明。

 速度を落とすことなく両足で踏み込んで跳躍し、そのまま両足をそろえて飛び越えようとしているが、思ったより角度が上に足りなかったようだ。

 速度を落とすことなく両足で踏み込んだことで最大加速したまま、ルーフ(屋根)と側面が作り出す角にダブル弁慶で激突。

 地面に墜落して悶絶している。いや、気絶はしていないが。

 

「~~~~っ!!??」

 

 声にならない声。というか、声は出ていないが、その代わり表情に出すぎて地上波が無理そうな感じになっている。

 

(クソダセエ……何て様だ)

 

 この重要な場面で天才的なドジをかます友人に最高と最低の評価が同時に発生する遊月。

 だが、このまま黙っていても仕方がないので遊月が行くことにした。

 

 大束は男たちと話しているようだが、いい雰囲気ではない。当たり前だ。

 

「クックック。嬢ちゃん。おとなしく俺たちとついてきてもらおうか」

「アンタに恨みはねえが、大束家には恨みがあるんだよ!」

「……」

 

 大束は冷や汗を流している。

 遊月から見てもわかるが、それはそれなりにこの二人のレベルは高そうだ。

 

「だったら大束家に直接殴り込めばいいだろ、人質なんて手段をとる時点で、三下確定だ」

 

 遊月はそういいながら大束の隣に立つ。

 

「ふ、不死原君」

 

 驚いた様子の大束。

 とはいえ、別に遊月は気にしない。

 

「あ、なんだテメェ」

「あえて詳しく名乗るのは面倒だ。単なる正義感で動いていると解釈してもらって十分」

 

 いつもと変わらない表情でそういう遊月。

 

「なるほどなぁ。だったらそっちも二人でいいぜ。力のない正義感なんぞ意味がないってことを教えてやる」

 

 男二人がデュエルディスクを構える。

 

「不死原君。駄目だよ。この二人、かなりの実力で……」

「だったら大束だけならなおさら無理だろ。お互いに使用デッキはなんとなくわかってるんだ。邪魔しないようにするからだまっていうことを聞け」

 

 遊月はデュエルディスクを起動する。

 

「……わかった」

 

 大束はあきらめたのか、デュエルディスクを構える。

 

「ならはじめようぜ。俺は銀丈真尋(ぎんじょうまひろ)。元プロデュエリストだ。プロの世界もついでに教えてやるよ」

「俺はスミス・サーバー。同じくプロデュエリストだ。覚悟しろ」

 

 元ではあるがプロデュエリストのようだ。

 

「……不死原君」

「なんだ?」

「負けても文句は言わないでね」

 

 その言葉に、遊月は溜息を吐きながらカードを五枚引く。

 そして、真尋とスミスのほうを見る。

 

「さてと、死後の世界の広さを教えてやるさ。あと、力のない正義に意味がないことを教えてやるといったな。なら私も、力のない悪がどれほど惨めか教えてやろう」

「っ!いったなクソガキが!」

「つぶしてやる!」

 

 全員がカードを五枚引いた。

 

「「「「デュエル!」」」」

 

 遊月&綾羽  LP8000

 真尋&スミス LP8000

 

「俺の先行!」

 

 先行は真尋。

 

「俺は手札から、『フォトン・サンクチュアリ』を発動!」

 

 フォトントークン DFE0 ☆4

 フォトントークン DFE0 ☆4

 

「さらに、手札の『銀河戦士』を捨てることで、二枚目の『銀河戦士』を特殊召喚だ」

 

 銀河戦士 ATK2000 ☆5

 

「【ギャラクシー】か」

「その通り。特殊召喚成功時のモンスター効果により、デッキから『銀河騎士』を手札に加える。そして、フォトントークン二体をリンクマーカーにセット、『銀河眼の煌星竜』をリンク召喚!効果により、墓地の『フォトン』または、『ギャラクシー』を手札に加える。『銀河戦士』を手札に加える」

 

 銀河眼の煌星竜 ATK2000 LINK2

 

「手札の『銀河眼の光子竜』を捨てて、二体目の『銀河戦士』を特殊召喚!」

 

 銀河戦士 ATK2000 ☆5

 

「レベル5機械族の、戦士二体でオーバーレイ。サイバー・ドラゴン・ノヴァ。そしてインフィニティ!」

 

 サイバー・ドラゴン・インフィニティ ATK2100→2700 ★6

 

「まだ俺は通常召喚していない。『銀河騎士』を召喚して『銀河眼の光子竜』を特殊召喚!」

 

 銀河騎士    ATK1800 ☆8

 銀河眼の光子竜 DFE2500 ☆8

 

「そして、レベル8のこの二体でオーバーレイ。エクシーズ召喚!『No.90 銀河眼の光子卿』!」

 

 No.90 銀河眼の光子卿 DFE3000

 

「どうだ。俺はこれでターンエンド」

 

 自信満々になってターンを渡してくるスミス。

 とはいえ、その理由は理解できなくもない。

 ソルフレア。インフィニティ。フォトン・ロード。

 並んだ時の制圧力は圧巻の一言である。

 

「こ、これはマズいね」

 

 手札を見ながら苦々しい表情を作る綾羽。

 ただし、ターンランプが次についているのは遊月だ。

 そして、あまり悲壮感はない。

 

「私のターンだ。ドロー」

「スタンバイフェイズ。フォトン・ロードの効果発動。デッキから『銀河眼の光子竜』を手札に加えるぜ」

 

 新たに手札に加わる光子竜。

 これで、ソルフレアが除去効果を使えるようになった。

 

「……特殊召喚されたモンスターの破壊。モンスター効果無効&破壊。カード効果無効&破壊。これらが一回ずつか」

「そうだ。【ギャラクシー】の先攻における最高の終着点。突破できるものならやってみろ!」

「壊獣があれば楽なんだが入れてないからな……」

 

 とはいえ、遊月は表情を変えるわけではない。

 

「だが、万能と言うわけではない。私は『邪神機-獄炎』をリリースなしで召喚」

 

 邪神機-獄炎 ATK2400 ☆6

 

「な……攻撃力が下がらない妥協召喚モンスターだと!?」

「獄炎はレベル5以上のアンデット族だ。これにより、『アンデット・ネクロナイズ』をインフィニティを対象にして発動。そのコントロールを得る」

「インフィニティの効果発動。エクシーズ素材を使うことで、その発動を無効にする!」

 

 サイバー・ドラゴン・インフィニティ ATK2700→2500

 

「どうだ!まだインフィニティの方が、攻撃力は上だ!」

「バトルフェイズだ。獄炎で、ソルフレアに攻撃」

 

 獄炎のブレスがソルフレアを焼き尽くす。

 

 真尋&スミス LP8000→7600

 

「ぐっ……だが――」

「インフィニティとフォトン・ロードが残っている。か?メインフェイズ2だ。『強制転移』を発動。私が選択するのは獄炎だ。どちらかをもらうぞ」

「……フォトン・ロードだ」

 

 インフィニティの方が無効範囲が広いのでこれは仕方のないことである。

 それに加えて、攻撃表示モンスターをパクる効果は使われると悲惨なので当然そうなるだろう。

 

「そして、『手札抹殺』を発動。お互いに手札交換だ」

「むう……」

 

 真尋と遊月は互いに二枚捨てて二枚ドロー。

 

「私はカードを一枚セット、ターン終了だ。そしてこの瞬間。獄炎の効果が発動。墓地に送り、そのカードをコントロールしていたプレイヤーは、獄炎の元々の攻撃力分のダメージを受ける」

「な……うがああああ!」

 

 獄炎が真尋を巻き込む形で爆発する。

 ……破壊ではなく『墓地に送る』なのだが、突っ込まない方がいいだろうか。

 

 真尋&スミス LP7600→5200

 

「す、すごい。あの盤面を、上手くすり抜けて……」

 

 すごく驚く大束。

 壊獣で無理矢理どかしたわけではない。

 敵視点のマストカウンターをしっかりと把握した上で発動された魔法カードの数々。

 こればかりは、『アンデットデッキに入る魔法・罠は一枚一枚が強力』とも言えなくもないが、それにしたって全体が見えているといえるだろう。

 

「獄炎の効果処理も終わって、ターンエンドだ」

「なら、俺のターンだ。ドロー!」

 

 もう一人、スミスというデュエリスト。一体どんなデッキを使うのだろうか。

 まあまずすることは決まっている。

 

「ドローフェイズ中に、墓地の『屍界のバンシー』の効果発動。デッキから『アンデットワールド』を発動する」

「ぐ……」

 

 スミスの表情が歪んだ。

 その先にいるのは、フォトン・ロードだ。

 インフィニティの効果で無効にしようとしても、それを無効にされることは分かっている。

 それに加えて、『ドローフェイズ中の発動』と言う発言で、すでに察しているのだ。

 

「インフィニティの効果発動。その効果を無効にする」

「当然。フォトン・ロードの効果で無効にする」

 

 破壊されるインフィニティ。

 お互いに無効効果を持っているのなら、フリチェをやったもの勝ちである。

 

 広がり始める屍界。

 それは、本来より重苦しいものだ。

 

「そしてスタンバイフェイズだ」

 

 墓地から闇が溢れだす。

 

「終わりも始まりもない蛇の王(ウロボロス)よ。怨霊渦巻く大地に降り立ち、死の魔眼を開け!『死霊王 ドーハスーラ』!」

 

 死霊王 ドーハスーラ DFE2000 ☆8

 

「やはりそのモンスターか」

「その通り」

 

 スミスは苦虫を噛み潰したような表情だが、すぐにカードを使い始める。

 

「俺は魔法カード『U.A.フラッグシップ・ディール』を発動!」

「【U.A.(ウルトラアスリート)】か……」

 

 攻撃専門と防御専門のモンスターがいたはず。

 

「デッキから『U.A.ファンタジスタ』を、効果を無効にして特殊召喚。1200のライフを失う」

 

 U.A.ファンタジスタ ATK1200 ☆4

 真尋&スミス LP5200→4000

 

「そして、手札から『U.A.スタジアム』を発動!」

 

 遊月たちのそばの風景は『アンデットワールド』のまま、デュエルフィールドを覆うようにスタジアムが出現する。

 

「俺は『U.A.ドレッドノートダンカー』を。フィールドのファンタジスタを手札に戻すことで、特殊召喚!」

 

 U.A.ドレッドノートダンカー ATK2500 ☆7

 

「この瞬間、スタジアムの効果を発動。ドレッドノートダンカーの攻撃力が500アップする」

 

 U.A.ドレッドノートダンカー ATK2500→3000

 

「そして、『U.A.パワードギプス』をドレッドノートダンカーに装備!攻撃力が1000ポイントアップ!」

 

 U.A.ドレッドノートダンカー ATK3000→4000

 

「さあ、バトルフェイズだ。ドレッドノートダンカーで、ドーハスーラに攻撃!」

「うーん。こいつってなんかやばい効果を持っていたような気が……」

「ドレッドノートダンカーは貫通能力を持っている!さらに、パワードギブスの効果により、ダメージは倍!」

「うぇい!?」

 

 遊月&綾羽 LP8000→4000

 

「ドレッドノートダンカーは戦闘ダメージを与えたとき、フィールドのカード一枚を破壊できる。アンデットワールドを破壊!」

「むう……」

 

 アンデットワールドが消えて、スタジアムだけが残った。

 

「さらに、パワードギブスの効果。装備モンスターの攻撃で相手モンスターを破壊したとき、装備モンスターはもう一度だけ攻撃できる。フォトン・ロードを攻撃!」

 

 遊月&綾羽 LP4000→2000

 

「そして、戦闘ダメージを与えたときの破壊効果にターン1制限はない。セットカードを破壊する!」

「速攻魔法『デーモンとの駆け引き』を発動。レベル8のドーハスーラが墓地に送られたことで、デッキから『バーサーク・デッド・ドラゴン』を特殊召喚!」

 

 バーサーク・デッド・ドラゴン ATK3500 ☆8

 

「なるほどな……メインフェイズ2。俺は『U.A.ファンタジスタ』を召喚」

 

 U.A.ファンタジスタ ATK1200 ☆4

 

「この瞬間。スタジアムの効果が発動。デッキから『U.A.パーフェクトエース』を手札に加える。そして、ファンタジスタの効果。ドレッドノートダンカーを手札に戻すことで、パーフェクトエースを特殊召喚する」

 

 U.A.パーフェクトエース DFE2500 ☆5

 

「ドレッドノートダンカーがフィールドを離れたことでパワードギブスが墓地に送られるが、このカードは、装備モンスターが手札に戻っていた場合。手札に加えることができる」

 

 さらに、と続ける。

 

「ファンタジスタを手札に戻し、『U.A.カストディアン』を特殊召喚!」

 

 U.A.カストディアン DFE2800 ☆6

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

 次は大束のターンだ。

 

「パーフェクトエースは手札一枚をコストに効果の発動を無効。カストディアンは一体に対して破壊耐性を付与だったな。少々厄介だが……」

 

 一応。バーサーク・デッド・ドラゴンを出してある。

 ある程度問題は緩和されるだろう。

 

 大束がデッキトップに指を置く。

 その瞬間、聞こえた。

 

 

 

 

 ――力になりたい。

 

 

 

 

「!……私のターン。ドロー!……このカードは」

 

 何かいいカードを引いたようだ。

 

「このままスタンバイフェイズ。スタジアムがあることで、墓地のドーハスーラが効果を発動できる!」

「またそいつか……だが、アンデット族などお前のデッキには入っていないだろう。通してやる」

(ドーハスーラ。出てこい)

 

 大束、というよりは、遊月の声にこたえて、墓地からドーハスーラが特殊召喚される。

 

 死霊王 ドーハスーラ DFE2000 ☆8

 

「そして、『アドバンスドロー』を発動。バーサーク・デッド・ドラゴンをリリースして、二枚ドローする」

「通せないな。パーフェクトエースの効果。手札一枚をコストに、無効にして破壊する!」

 

 だが、バーサーク・デッド・ドラゴンはあくまでも発動コストなので、墓地に送られる。

 

「まだまだ。私は手札の『ヘカテリス』の効果。デッキから『神の居城-ヴァルハラ』を手札に加える効果を発動する。だけど……私はこれにチェーンして、手札の『灰流うらら』の効果を発動!」

「何!?」

 

 デッキの重要なカードをサーチする『ヘカテリス』の効果を無効にする。

 なかなかの選択だ。

 

「そしてこの瞬間、私の『灰流うらら』……アンデット族モンスターの効果が発動したことで、ドーハスーラの効果発動!」

「何!?」

「どうする?選択するのは効果処理時だけど」

「ぐ……カストディアンの効果発動。パーフェクトエースに破壊耐性を与える」

 

 ヴァルハラが投入されるデッキのモンスターの攻撃力では、あまり変わらない可能性があるが……。

 

「ドーハスーラの効果を処理。パーフェクトエースを除外!」

(やれ。ドーハスーラ)

 

 ドーハスーラの暗黒の波動が、パーフェクトエースを除外した。

 

「ヘカテリスの効果は無効になるけど、墓地には送られるよ。そして、永続魔法『アドバンス・フォース』を発動。レベル7以上のモンスターを召喚するとき、レベル5以上のモンスター一体のリリースで出すことができる。私はレベル8のドーハスーラをリリース。『マスター・ヒュペリオン』をアドバンス召喚!」

 

 マスター・ヒュペリオン ATK2700 ☆8

 

「効果発動。墓地のヘカテリスを除外。カストディアンを破壊する!」

 

 マスター・ヒュペリオンが生み出した光球が、カストディアンを粉砕する。

 

「ぐ……だが、まだ1300足りない!」

「これでラスト!私は手札から魔法カード『死者蘇生』を発動!」

 

 お互いの墓地のモンスターの中から一体を対象にして自分フィールドに特殊召喚する魔法カード。

 『D.D.クロウ』など、効果処理時に墓地からモンスターを取り除くようなカードがチェーンされたりしない限り、効果が不発になりにくいカードだ。

 

「私はこれを使って墓地から……え?」

 

 大束は首をかしげる。

 モンスターはお互いの墓地から選択する。

 そしてタッグフォースルールのため、ペアとの墓地は共有である。

 

(なんで……アンデットモンスターが表示されてないの?)

 

 デュエルディスクの液晶。

 そこに、特殊召喚可能なモンスターのリストが存在する。

 ちなみに、『アンデットモンスター』と言ったが、厳密には『灰流うらら』は表示されている。

 だが、『邪神機-獄炎』も『死霊王 ドーハスーラ』もいなかった。

 『バーサーク・デッド・ドラゴン』に関しては、『デーモンとの駆け引き』の効果でのみ特殊召喚が可能なモンスターなのでいないことは納得できるが、この二体が表示されていないことが理解できない。

 

 大束は遊月の表情を見る。

 遊月は、大束の方を向かなかった。

 

「……私は、『銀河眼の光子竜』を特殊召喚!」

 

 銀河眼の光子竜 ATK3000 ☆8

 

「な……俺のモンスターだと!?」

 

 ルール上問題はなくとも、デュエリストとしての感覚と言うか、それを明らかに無視したような選択に、真尋はうろたえる。

 だが、デュエルは続いている。

 

「バトルフェイズ。私は二体のモンスターで、ダイレクトアタック!」

「う、うああああああああ!」

 

 真尋&スミス LP4000→0

 

 敗北して、その衝撃でぐったりしている二人。

 そして、大束のデュエルディスクからアンカーが外れた。

 その時、遠くからサイレンが聞こえてくる。

 

(……英明が先ほどから反応がない。本当に気絶しているのか?)

 

 となれば、最後の力を振り絞ってセキュリティを呼んだということだろう。

 まあ、それだけ聞くとかっこいいが実際の状況を考えるとかっこよさなど絶望的だが。

 ちなみに、真尋とスミスは違法デュエルなどの常習犯だったようだ。

 セキュリティの隊員も見た瞬間にわかったようで、すぐに手錠で拘束されて連れていかれた。

 

「ねえ、一体どういうこと?」

 

 セキュリティの隊員がいなくなった後、大束が遊月に聞く。

 

「さっきの死者蘇生の時の、私のモンスターを蘇生できなかった話か?」

「それ」

「……簡単に言えば、私と君は同類で、君より特殊性が強いというだけのことだ」

「それってどういうことなの?一体、何者なの?」

「私が何者か……ねぇ」

 

 遊月は少し考えた後、こう続けた。

 

「あえて言えば、私はただの生きぞこないだ」

「え、そ、それってどういう――」

 

 その時、黒いリムジンが通りかかって、大束のそばで急停止した。

 そして、運転席からスーツとサングラス装備の黒服が出て来る。

 

「綾羽様。家にお戻りの時間です。訓練開始まで時間がありませんよ」

「えっ……」

 

 大束はデュエルディスクを確認すると、驚いたような表情になった。

 

「速く車に乗ってください」

「……はい」

 

 大束は遊月の方をチラッと見る。

 それをみて、黒服が遊月の方を見る。

 

「君は一体何だ?綾羽様はこれから重要な訓練の時間だ。邪魔をするなら――」

「別に邪魔なんてしないさ」

 

 遊月はためらいなく背を向けた。

 

「別に私は、君の質問に答えようとは思っていない。それと……まずは一度、自分で考えた方がいい。私のコレはそういうものだ」

「……」

 

 大束は納得いかないようだ。

 

「綾羽様」

「……わかっています」

 

 大束はリムジンに乗りこむ。

 黒服も運転席に座って、すぐに発信した。

 

「……」

 

 遊月はデュエルディスクを見る。

 そこには『17:48』と表示されていた。

 

「……門限速いな。とにかく今は、あのバカをどうにかするとしよう」

 

 英明を叩き起こすべく、遊月は歩き始めた。

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