何度も言うことになると思うが、夜というのは不思議な時間である。
何かを企むのに適しているが、警備するものが少ない時間でもあるからだ。
少人数で警備する必要があるのに、なぜか監視カメラの映像を確認できる部屋よりも、実際に人を配置して警備させることを選ぶのだからなんともいえない。
そしてもちろんわざわざこんな話をするのにも理由はある。
「一刻もやつを捉えろ!今ここで『Fー43』を奪われるわけにはいかん!」
軍服のようなものを着た中年男性が叫ぶ。
彼のそばには、後部が大破した車が存在する。
何かを運んでいたが、そのタイミングで襲撃された。というのが現状であることは一目瞭然だ。
そして、彼が指差す方向には、金色のコートを着た少年がバイクに乗って逃走している。
……こう言ってはなんだが、コソコソと隠れて行動するはずの任務だと思われる中でこのファッションはなかなか常識外れだろう。普通は黒か、暗色で作られたものを使用するはずだが、少年はそのあたりの事情はなかったようだ。
「ふう、『敵が想定していない攻撃力をぶつければ簡単に崩れる』……か。ギルが言っていたがそのとおりだな。なんでこんなことを考えると強いのにあんなにデュエルが弱いのか……」
少年、レイエスはそんなことをつぶやきながらバイクの速度を上げる。
当然だが、速度制限などブッちぎっている。というかこの状況で守るやつはいない。
後部に積んだアタッシュケースをチラッと見て、また前を向いた。
「もう少しで、ギルが言っていたポイントに……!」
レイエスは驚愕する。
自分が走っているのは明らかに公道なのに、右隣に線路ができているからだ。
「リアルソリッドビジョン……まさか」
後ろを見るレイエス。
なんと後ろからは、『弾丸特急ロケット・ライナー』が文字通り走ってきていた。
「さすがにDホイールでは無理だな」
特急に追いつけるわけがない。
レイエスがよく見ると、バレット・ライナーの上には、一人の少女が乗っていた。
先程の中年男性が着ていたような軍服の女性用のものを着て、長い銀髪をなびかせている。
幼い印象があるものの、ここまでぶっ飛んだことをするのだから見た目通りの精神ではないのだろう。
「チッ」
レイエスは乗っているDホイールに、『ラーの翼神竜ー不死鳥』のカードをおいた。
カードから閃光が天に向かって放たれると、そこから爆炎を身に纏う不死鳥が出現する。
「やれっ!ゴッドフェニックス!」
レイエスが命令すると、レイエスの体からエネルギーが不死鳥に送られる。
それを受け取った不死鳥はまっすぐ、バレット・ライナーに向かって突撃した。
「やったか……あ」
盛大にフラグを立てたことに気がついたレイエス。
まさしくそのとおりで、ロケット・ライナーは直進してくる。
何やら波紋が広がっているようにも見える。
「『マグネット・フォース』か。なかなかやるな」
敵ながらあっぱれである。
「ならば、ゴッドフェニックス。次は攻撃だ」
突撃する不死鳥。
だがその瞬間、バレット・ライナーの速度が倍になった。
「速度が倍に……全体が赤くなっていることを考えると『リミッター解除』か」
さすがにこれは無理だ。
ロケット・ライナーに突撃した不死鳥が逆にはねられて消えていく。
不死鳥に押し負けないとは、なかなか精霊としても『強度』が高い。
「はっきり言って相性が悪いな」
舌打ちするレイエス。
除去が不死鳥だよりなので、効果を受け付けないのであれば攻撃するしかない。
ただし、これは対象に取れないオベリスクにも言えるが、効果を受けないというのは強化も出来ないとも取れるので、なかなか突破しにくいのだ。
少女がデュエルディスクを向けてくる。
「この状態でデュエルするつもりか?」
そういうわけではないらしい。
デュエルディスクからアンカーが射出され、Dホイールの後部に積んでいるアタッシュケースに直撃した。
レイエスが反応するより早く、アンカーが巻き取られる。
「……仕方がない」
レイエスが右手を上げると、そこにデジタルデータ式のカードが出現する。
それをケースに向かって投げて当てた。
カードはすぐにケースの中に入っていき、見えなくなる。
「あのウイルスを入れることが本来の目的だ。入れずに奪うのがもっと良かったがな」
その時、ヘルメットに通信音声が聞こえてくる。
『レイエス様!次の角を右に曲がってください!ジャミングトレーラーを用意しています!』
ギルの声だ。
「わかった。すぐに行く」
ギルは曲がり角を右に曲がった。
すると、後部が開いているトレーラーが見えた。
それに飛び込むと、自動で扉が閉まる。
そばにあったパソコンを見ると、ロケット・ライナーがなんと角を曲がってきたが、こちらのことを発見出来ていないようだ。
パソコンを操作していろいろ確認するが、このあたりはトレーラーをはじめとした重機が並ぶ場所。
似たようなトレーラーもあるので、良いカモフラージュになっている。
さらに言えば、この近辺にある監視カメラはハッキング済み。
少女がレイエスたちを見つけることはないだろう。
ジャミングしているのでばれないだろうし。
数分後、少女のデュエルディスクから通信が行ったのか、質の良い軍服のようなものを着た中年男性が出てきた。
中年男性は少女が確保していたアタッシュケースを奪うようにとると、状況も含めて、アタッシュケースを確認しているようだ。
ただし、その会話の雰囲気が良くない。
中年男性がきょろきょろとしているが、レイエスたちのトレーラーに気が付いている様子はない。
少女が何か言っているようだが、男性はほぼ無視している。
そして、何か癇に障るようなことを言ったのか、怒鳴り始めた。
そのまま、レイエスたちがいる路地に背を向ける。
「……!?」
そのまま少女も帰ると思っていたが、なんと少女は、レイエスたちがいるトレーラーにまっすぐ歩いてきた。
何か不審なものを感じたのか、それとも……。
レイエスがDホイールから降りてデュエルディスクを構えたが、その前に、男性が怒鳴ったようだ。
少女は男性についていき、二人とも見えなくなった。
レイエスは運転席に行く。
すると、若干ほっとしたような雰囲気のギルがいた。
「……ギル。見えていたか?」
「レイエス様。はい、私も見ていました。あまり良い雰囲気ではない様子でしたが……」
「まあ、俺達が気にするところではないがな」
「はい……ただ、レイエス様のDホイールのカメラで確認していましたが、なかなか天晴な少女ですね」
「ああ。実際のデュエルでは無いとはいえ、俺がおし負けるとは思わなかった」
実際のデュエルになっていればまた違う結果になったと思うが、レイエスとしてはそれ相応に驚いていた。
「昇進とはいかなくとも昇格はあるか?本来なら」
「そうですね。頭の回転は速いようですが上に立つとしては向かないでしょう。昇格はありそうです。本来ならですが」
「……フン。まあいい。最善の三番目か四番目と言ったところだが、これ以上は欲張りだということにしておこうか。帰るぞ」
「はい。レイエス様」
ギルとレイエスを乗せたトレーラーは発進した。
★
「ねえ遊月君。ちょっと相談があるんだけど……」
「なんだ?」
「ちょっと、友達に困ってる子がいて、遊月君も一緒に助けてほしいの」
「……内容によるぞ。悪いことをするわけじゃなさそうだから別にかまわない」
「なら大丈夫だよ!」
遊月は綾羽の目を見る。
目は嘘を言っていないようだ。
「……いいだろう」
「ありがとう!」
面倒な約束をしたと遊月は内心で思ったものだが、約束したからには仕方がないということにした。
そして綾羽が遊月から離れると、今度は別方向から英明がこそこそと近づいてきた。
「遊月」
「なんだ英明。そんな血の涙を流しそうな顔をして」
「当然だ。なんでお前、綾羽ちゃんとあんな楽しそうに話をしてたんだ」
「楽しそうに?」
「……いや、お前の表情は全然変わってなかったな。だが、綾羽ちゃんのあんなにもじもじした表情を俺は初めて見るぞ。はっきり言ってあれだけで――」
「それ以上言わないほうがいいと思うぞ」
「おっと、俺としたことが」
口を手で押さえる英明。
ただ、遊月は『俺としたことが』という言葉に対してすごく今更感を感じた。
「で、どういうことなんだ?」
遊月は経緯を説明した。
もちろん、綾羽にも遊月にも話せない部分は大まかに端折って、普段から見ているならわかっているだろうことは素直に言う。という感じで、言葉を選びながらである。
「なるほど」
それを聞いて、英明はうなずいた。
「理解した。そういうことなら俺は理解した」
「理解するんだな」
「いったはずだ。俺たち
「辞書を引け」
ファンクラブとしての矜持と私情がごちゃ混ぜになって変な化学反応が起きている。
人間は思ったことを口に出す場合、自分が無意識に作り出す翻訳システムに放り込んでから話すものだが、今の英明はそれがズタズタになっているようだ。
「まあ、お前の内心など私にとってはどうでもいいことだ」
「もうそれでいーや。それに、あんな乙女の顔をする綾羽ちゃんがみられるだけで俺はいいんだ」
「……」
そのファンクラブと呼ばれるものが実際に同志で集まるほどのものであることを前提にして、英明がどの立ち位置にいるのかはわからない。
のだが、もし英明のこれが当然だとするなら、もしかしたらすごい組織なのではないかと考えてしまった。
「ところで、私は思うことがある」
「なんだ?」
「ワンタールキルには二種類あるということだ」
「……ごめん、わからない」
「分けるとすれば『8000を削りきる盤面を作り上げること』と、『無限ループ』だ」
「ああ。なるほどね」
しっかりと終着点を設けることで削りきる構築なのか、ちまちまと8000を削るのか。
要するにそういうことだ。
「ただ、ライフを削りきる盤面って……『結果的にそうなった』っていう感じが強い気がする」
「まあそれもあるから、今回は無限ループのほうだが、意外とあるんだよな」
「【マテリアルワンキル】とかその筆頭だもんな。大体グスタフでブッパするんだが……なんでエリクシーラーがレベル10なんだろうな」
「知らん。ただ、それらの規制が薄いのは、単に『チェーン・マテリアル』のサーチができないということがある」
「だな。大体ループに入れそうなカードは規制される」
「あとあれだな。『六武の門』だったか?」
「あー……ていうかあれってワンキルまで行けるのか?」
「比較的簡単に行けるぞ」
「え、そうか?」
英明が首をかしげる。
「ミズホとシナイがいるだろ?」
「ああ」
「ミズホは自身以外の六武衆をリリースしてフィールドのカードを破壊。シナイはリリースされたときに、自身以外の六武をサルベージできるんだ」
「ふむふむ」
「だから、ミズホの効果でシナイをリリースして、ミズホ自身を破壊することで、墓地に行った段階で、シナイの効果が発動してミズホを回収できる」
「……」
「で、六武の門があればシナイも回収できるわけだ」
「そういや門って墓地からのサルベージもできるのか、サーチのほうしか気にしてなかった」
「そういう人たまにいるけどな。まあそれはそれとして、あとはすでにフィールドにミズホかシナイがいればこのループが開始する。出せないと意味ないからな」
「なるほど」
「で、軍大将がいれば、リンク先に六武衆が特殊召喚されるたびにカウンターをためることができて、軍大将はカウンター一個につき100上がるから、ループすればするほど攻撃力が上がっていく」
「……長くね?」
「長いぞ」
やることは簡単だ。
「私の知り合いはこれを『浮気心中ループ』って言ってたな。嫁さんに殴られてたが」
「ひでえな」
「ああ。そして、これは言い換えるなら『六武衆でカウンターが無限にある』ともいえる」
「やべえな」
何でもできると言っているのと同じである。
ちなみに、ファイアウォールが現役であれば、フウマ、キザン、ダイガスタ・エメラル、トロイメアたちと組み合わせて、『無限トリシューラ』が可能だ。
最強の守護竜……どこが守護なのだろうか。
とはいえ、ロンゴミアントとゴシップ・シャドーを並べることができるレベルと種族なので、そちらを狙うのが現実的か。
「さて、ワンターンキルの話をしていたんだったな」
「既にお腹いっぱいだ」
「なるほど、ならばこのあたりで止めておこうか」
すでにお腹一杯の様子。
遊月は頷いて、そこからは単なる雑談に入ることにした。
★
放課後に会いに行くと言っていたが、当然視線は感じる。
よく『男がするチラ見はガン見と一緒』と言われるが、それは逆でも同じのようだ。
だいたい男は鈍いので気が付かないというだけの話であって、女の方から見られていると気が付けばわかるのである。
しかし、放課後に会うということは間違いではない。
「遊月君。こっちこっち!」
大きく手を振って遊月を呼ぶ大束。
近くの喫茶店だった。
大束の隣には、中等部二年のネクタイを付けた女子生徒が座っていた。
銀髪をまっすぐおろしており、おどおどしている顔立ち。
大束ほどではないが胸は大きく、それ相応に自己主張している。
中等部二年としても身長は低い方だろう。
どうやら、『困っている子』は彼女で間違いなさそうだ。
遊月は席に座る。
「高等部一年の不死原遊月だ。相談してほしいと言われてきたんだが、君でいいのか?」
「あ。はい!私は
「香苗ちゃん。遊月君は優しいから緊張しなくて大丈夫だよ」
フォローしている大束だが、遊月から見る限り、『緊張しているのがデフォルトなのではないか』と言うのが遊月から見た江藤の印象である。
「……それで、相談したいということというのは一体何だ?」
「あ、はい。私、『デュエルガードクラスター』に所属しているんですけど……」
デュエルガードクラスター。
略称は『DGC』
基本的な部分を言うと『デュエル界における警察組織に臨時提供される人材の保持・育成を行う組織』のことである。
デュエル界における警察組織というのは言いかえるなら『セキュリティ』だ。
ただし、『セキュリティ』はそもそもデュエル界でそれぞれ独立していた警察組織を束ねたものなので、セキュリティの設立以前に存在していたDGCの業務はそう規定されている。
ちなみに、『セキュリティに臨時提供される人材』と表記しないのは、『セキュリティが警察組織ではなくなった場合に提供権利を放棄するため』である。
ちなみに、なぜ『政界』には既に『警察』が存在しているのに、『デュエル界』にそのような組織が存在するのかと言うと、一部の地域では、『政界』よりも『デュエル界』の力の方が大きくなるので、その場合に警察組織が入ることができないという状況の解決のため、デュエル界そのものが警察組織の保有権限を持っているのだ。
なお、『セキュリティ』と『DGC』の最も大きな違いを言えば、『セキュリティ』は特定の部署につけば、変わらない限りその業務に従事するのだが、DGCはあくまでも提供される人材であり、『教育が存在し続ける』というものである。
もちろん、学生向けのものと、社会人向けの施設は分けられているが、社会人になったからと言って勉強する必要がないというわけではない。それがDGCだ。
「……訓練生だよな」
「はい。まだ訓練生です」
基本的に学生の場合は、『訓練生』扱いであり、責任も権限も少なくなる。
時間がある限り、訓練施設に通っているはずだ。
ちなみに、DGCの入隊に年齢制限は存在しないので、大人でも単位が足りなければ訓練生である。
「……何かクリアできない課題があるとか?」
得に情報がない場合、遊月に思い浮かぶのはその程度である。
「実は……」
江藤がポツリポツリと話し始める。
箇条書きするとこうだ。
①:昨日の夕方から、訓練生向けに設定されている巡回コースを回っていた。
②:その時は何も起こらなかったのだが、夜になった時に爆発音が聞こえた。
③:駆けつけてみると、破損した護送車と、速度制限を守っていないDホイールを確認。
④:DGCの訓練生でも特定状況下では公道での精霊の具現化はできるので、精霊を具現化させて追った。
⑤:攻防を繰り広げたうえで、奪われたであろうアタッシュケースをとり返したが、犯人を見失った。
⑥:精霊の具現化と言う特例を行使したので、その報告書類を書いていた時、監査から呼ばれた。
⑦:アタッシュケースには既にウイルスが入っており、復旧不可能。この責任をどうとるのかと追及された。
そこまで聞いた時点で、遊月はなんとなく察した。
というより、結果が見えた。
「……で、責任が取れない場合はどうするって言ってきたんだ?」
「私が持っている精霊カードである『弾丸特急バレット・ライナー』を没収したうえで、除隊だそうです。それに加えて、罰金もかなり出ると言われました」
「なるほどねぇ……」
いくつか思うところはある。
が、遊月はチラッと大束を見る。
大束は目を逸らした。
おそらく、大束も江藤から同じ話を聞いたのだろう。
そしてその上で、その犯人の特徴で、誰なのかが分かってしまった。
大束家として動けば何となる状況かもしれない。
しかし、敵が強すぎて自分では根本的な解決ができない可能性が非常に高い。
なので、遊月を呼ぶことにした。ということだろう。
「大切なカードなんです。DGCにいられなくなってもいいです。でも、このカードだけは、本当に大切なものなんです。遊月先輩。お願いします。助けてください!」
目に涙を浮かべて頼んでくる江藤。
遊月はそれを見て溜息を吐いた。
「もともと、『助けてやってくれ』と頼まれてここに来たんだ。協力はするさ」
「ありがとうございます!」
座ったままだが、ガバッと頭を下げてくる江藤。
何かと健気な雰囲気である。
「あ、あの、遊月君。一応、香苗ちゃんの言葉に嘘はないから……」
「そこで変なフォローをするな。『取り繕わなくてもわかる』からな」
その言葉に大束はピクリと体が反応したが、そこからは何も言わなくなった。
「……で、具体的にどうするかなんだが、最善は何だと思う?」
「「え?」」
二人そろってすっとぼけたような声を出した。
「そもそもおかしい部分がいろいろあるんだよな。一応言っておくが、DGCが『不可能』って言葉を、当日に使うことはないんだぞ」
「え、そうなの?」
「そもそも『解析』に類する部署がDGCには存在しない。それがあるのは『セキュリティ』の方だ」
「要するに……」
「江藤は、精霊カードを持っていることをすでに知られているんだろう。上層部が狙ってるんじゃないか?」
「そんな……」
精霊カードが貴重。
これはまぎれもない事実である。
「ところで、江藤はここに至るまでの段階で、何かのサインとして自分の名前を書いたり、ハンコを押したりしたのか?」
「い、いえ、それはまだやってないんですけど」
「なるほど」
それならまだ何とかなる。
「遊月君。DGCの上層部は、香苗ちゃんの精霊カードを狙ってるんでしょ?最悪、除隊は無しになっても、精霊カードだけ取られちゃうんじゃ……」
「可能性は十分にある。が、実をいうとまだ時間はある。まずは乗り込んでみるか」
「「え?」」
遊月は黒い笑みを浮かべた。
「DGCの施設には、一般開放されているエリアがある。そこなら、所属していない私と大束も入ることが可能だ」
「そこまでやって大丈夫なの?」
「まあな」
遊月は不敵な……言い換えれば、頼りになりそうな笑みを浮かべて言った。
「私はね。人から何かを奪っておきながら『正義を掲げるいい人』でありたいなんて馬鹿なことをいうやつに、それがどれほど惨めなことなのかを教えに行くだけだ」
欲は少ないといえる遊月。
しかし、そんな彼にも、『面白くない』と思うことはある。それだけのことである。