Bloodborne×このすば!   作:メスザウルス

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アクセルの街2

「……は?」

 

 

 

 

「はぁああああ!!?」

 

意味がわからない。この馬鹿は一体何を考えているのだろうか?

先程まで勝手に文句を言いに行っていた奴が肩を組んで帰って来て、挙げ句の果てには何の相談もなく「パーティーに入れる」などとふざけた事を抜かしやがったのだ。

しかも相手は何の素性も分からない、威圧が半端ない騎士っぽい奴。

これには流石のカズマさんもお怒り爆発であった。

 

寝ている時に火のついた爆竹を口の中に放り込まれた様な感覚のカズマは、馬鹿をチョイチョイと手招きし、壁際まで追いやって、尚且つ逃げられない様にその横を壁に手を付く形で塞いでやった。いわゆる壁ドンであるが、している本人の眼光は濁っており、されている側は怯えている。そこには甘酸っぱい恋の香りなど微塵も感じない。

 

カズマは何も考えていない能無し女神を見下し、責める声色で問い詰める。

 

「おい駄女神。これはどぉいう事だ?」

 

「え、えーっと…」

 

 流石のアクア様でもカズマが怒り心頭なのを感じ取ったのか、それとも自身がいけない事をしたという自覚があるのかは知らないが、とにかく気まずそうに、手をもじもじさせながら必死で言い訳を考えていた。

 

「実はあの子…とある呪いで困ってて…」

「おん」

「それで、話を聞いてるとなんだか可哀想になっちゃって」

「へぇ」

「だから呪いを解いてあげようと思って…」

「それで?」

「パーティーに誘ったの」

「───意っ味わかんねぇよ!! それでなんでパーティーに入る事になんだ!?」

 

 全く起承転結がなっていない。

 カズマはなぜアクアがこのパーティーに入れようとしているのか聞こうとしているにも関わらず、この駄女神はその過程をすっとばし結果のみを伝えてきたのだ。

 と言うかそもそもお前の心情なんか聞いてねぇよ!何でパーティーに入れなきゃならないのか聞いているのにこの馬鹿は!!

 

 まるで言葉の通じない猿と話している気分になり、ン〜〜っ! と、もどかしそうに頭をガリガリと掻くカズマの様子を見て、ムッとしたアクアは声を張り上げる。

 

「だ、だって!!あの子にかけられた呪いは凄く強力な物で、そんな直ぐには終わらないのよ!!あの子凄く困ってたし、可哀想じゃない!!それに助けてあげたら私の信者になってくれるって言うし!!」

「知・る・か! いいか!?タダでさえうちは火の車なんだよ!!ほかのメンバー雇ってる金も!お前の信者増やしてる無駄な時間もありません!! 毎日酒飲みたきゃ、ちっとはマシなことしてみろよこの駄女神がああああ!!」

「そんなの知らないもん!!私だっていつもいつもいつもいつもカエルの囮になってあげてるじゃない!!それをなに!?ちょっとはマシなことしてみろですって!? 一体誰が支援魔法とか回復魔法をかけてあげてると思ってるのよ!少しは私の事労わって崇めてぐーたらさせなさいよ!この甲斐性なしのヒキニートぉぉお!!」

 

 カズマの罵倒に負けじとアクアも反論するが、アクアの罵倒は何だか少し違う気がする。なんと言うか子供の我儘のように聞こえてしまうのだ。そんなアクアに対しカズマは正論に正論を重ねてぶつけまくり、どんどん言い負かされて涙目になっていく女神は、ほんとうに女神と疑わしいほど幼く見える。

 ついにそんな光景が見難くなったのか、涙線から汗が吹き出しそうなアクアの肩に、ポンっ…と手を置く者がいた。

 

「死すべし」

 

────それはかの物乞い騎士。イズであった。

先ほどまで体から発していた兵士の風格を霧散させ、兜に隠れたその憐憫を含んだ視線をアクアに送ると、ポツリ、ポツリとその心情を漏らした。

 

「死すべし」

「え?『ケンカするのは止めてくれ』? でも、このままじゃイズちゃんの呪いが──」

「死すべし」

「『そんなことよりも自分のせいで貴公らの仲が分かたれるのは悲しい』って…イズちゃん……あなた…」

 

 己を顧みず、他者を気遣い、そして何より自分を擁護せんと助け船を出してくれたイズのその姿勢は、今まで雑に扱われてきた駄女神の心を感動へと塗り替えるには十分だった。

 アクアは先ほどの涙の色を違うものへと流し、一つの美しい友情的な雰囲気が周りを満たすのに、そう時間はかからなかった。

 

「え?何これ? なんでオレが悪いみたいになってんの?」

 

 まるでアクアに対して理不尽な言動をしたかのような、そんな責める視線を周りから感じるカズマは、とんでもなく自分が理不尽であると心の奥底で叫んだ。

 だってそうだろう。自分は正しいことを言ったのだ。こんな怪しいやつをパーティーに入れ、もしもこいつがまたとんでもないゲテモノであったとしたら、もう自分にはこの馬鹿どもを抑えられなくなるのは目に見えて明らか。

 それに一つ勘違いしているかもしれないが、カズマは男のパーティーメンバーは大歓迎だ。反対する気など一切ない。カズマ自身、そろそろ心置きなく話せる奴が欲しいし、何よりこいつらを引っ張って行く大変さを共有でき、なおかつ同情してくれる奴が欲しい。同性の方が話しやすいこともあるし、分かり合えることも多いだろう。

 だが───それはこいつがまともであればの話である。

先ほども話した通り、これ以上のゲテモノはいっさいノーサンキューである。

 

 

「死すべし」

「『すまなかった。私のせいで貴公達に迷惑をかけてしまった。 私はこのまま去ろう』…? そんな! !あんなに困ってたじゃない! 貴方はそのままでいいの!?」

「死すべし」

「イズちゃん…あなた……っ」

 

「おい駄女神、そのセリフさっき聞いたぞ。なに気にいってんだよ」

 

目の前で何やら感動的な何かを繰り広げているが、そんなものはどうでもいいのだ。いや、どうでもよくはないけど、とにかくそれは置いといて…

問題は、こいつがノーマルかアブノーマルかである。

 

 確かに、ダクネス、アクア、めぐみんと、全員全員が目を覆いたくなるほどのポンコツと、欠陥を抱えた者たちである。一つの方向に突出しているが、一つに突出しすぎていかんせんクセが強い。使えない場面ではとことん使えないのだ。

 そんな能力に起因しているのか、はたまた逆か。その性格と言えるものもポンコツの一途を辿りすぎ、もはや引き返せないほど重症であることも、更に問題児として助長させているのは言うまでもない。

 そんな変人の巣窟ともいえるパーティーの中心にいるのだから、一人や二人、イかれた野郎が入ってきたところでどうせ変わらないと思うかもしれないが、それは違う。

 

 この男がもし、この三女のように常軌を逸したポンコツを抱えていた場合。と言うかそもそもさっきから「死すべし」しか言ってない時点でだいたいお察しなのだが、それでも三女と比べて欠点というところがいくつかある。

 

めっちゃ言葉の端を折って話すと───顔と性別だ

 

 この三馬鹿は確かにポンコツであるが、見てくれだけはそこいらの女たちよりも上だ。一人の駄女神は試した結果どう頑張ってもヒロインに見ることはできなかったが、それでもいかれた男より120パーセントもましである。

 誰が好き好んで、厄介ごとを運ぶむさい男と共に居たいと思うのか。

 

「カズマ、最低です」

「少しだけパーティーに入れるくらい許してやったらどうだろうか。 せめて呪いが解けるまで、という期限付きでだ。」

 

 だが、そんなカズマの思考など彼女たちが知るはずもなく、めぐみんはゴミを見る視線を、ダクネスは妥協という提案をしてきた。

───なるほど、それもありかもしれない。

 ダクネスの提案は確かにこの場で最も有力な妥協点と言えるだろう。

 呪いが解ければハイおさらばという事ならば、今後こいつについて考えなくていいし、更に多少の恩を売りつけることが出来る。

 幸い、うちの駄女神は回復系の魔法についてはトップクラスで有能であり、消費する金もほぼない。

 

 むむむーっと頭を回転させているカズマは、チラリとこちらを見るアクアの表情を確認する。

 

 いかにも、私は諦めません!と言う覇気がその表情から読み取れ、そこには諦めるなどという言葉は存在しないように見える。というか実際にしないだろう。

 

 この駄女神はとても頭がかわいそうで、そして見ているこっちまで涙が出てきそうなほど頭がポンコツだ。それは雷に打たれ頭のネジが一本口から飛び出た青タヌキ以上に、どこかにネジを置いてきてしまったと思わせるほど。

 しかし、その本人の我がとてつもなく強い。まるで何もわかっていない子供のように。

 自分が決めたことは貫き通し、相手が折れるまで引くことを知らない女神様相手に、これ以上の説得を試みて、果たしてこいつがいつ折れるのか、オレには全く想像もできない。

 

 

「………はぁ。 しょうがねぇな。」

 

───だからオレは、折れることにした。

 

「────やったー!! 良かったわねイズちゃん! これであなたの呪いも解く事ができるわ!」

「…死すべし?」

「『本当にいいのか』ですって? 当たり前よ! 私は私の可愛い信者の為なら何だってやるわ!」

「……死すべし」

 

 またもや目の前で感動的な何かを始めているが、カズマが折れたのはそう大した理由じゃない。ひとえに自分の身の可愛さによる戦略的撤退と、ひとえに諦めが大きい。

 まず一つとして、先ほどまでの自身の悪者感が空間を支配していたことにより、たまたま耳にし目にしていた冒険者たちが、なかなか冷たい目でオレのことを見ていたからだ。

 その視線にしり込みし、これ以上不名誉な呼び名で呼ばれたくないカズマは、まだ何とかなる範囲のこの条件で妥協したのだ。

 

しかし、その光景はなんとも珍しい部類に入る。

 

 冒険者とは、いわゆる何でも屋であり、世間的には荒くれ家業として見られている。そしてそれはあながち間違っていることはなく、時には非常な判断を下さなければならない場合も存在するのだ。そんな中の一つが、使えない仲間とのパーティー解消などである。使えない仲間に背中を預けるなど、常に命の危険にさらされている冒険者にとっては一番にごめんこうむりたいことであろう。ゆえに、そんな者をお断りするのは冒険者にとっては当たり前の事であり、見慣れた日常の一つであるはずなのだが、いかんせんここは始まりの街アクセルであり、多くの新人が集まる場所であるとともに、なかなか人情に厚い人たちも多くいる。

 実際、カズマ自身もその恩恵を受けており、見知らぬ赤の他人のカズマにお金を恵んでくれたり、いろいろアドバイスをくれたりと、その心の広さが目に見えてわかるほど。

だが、アクセルの街以外のギルドに行ったことのないカズマが、そんなことを知るよしもない。

 

 いったん仕切りなおそうとカズマは一品料理を頼み、それに流れるように自分の酒を注文しようとした駄女神の後頭部をはたきつつ、ストンとカズマの正面に座るイズに話しかける。

 

「それで? 何の呪いにかかってるんだ? アクアが解けないくらいだから、相当なもんなんだろ?」

「死すべし」

「いや死すべしじゃなくて、一体何の呪いにかかってるんだ?」

「死すべし」

「だから! どんだけ死の宣告すんだよ!? せめて死すべし以外の言葉は喋れんのかこいつは!?」

 

うがぁあ!と頭を抱え、ついにはイズへと怒鳴り散らす。

何を聞こうが死すべし死すべし。いい加減こっちもうんざりする。

というか絶対こいつも地雷だ。オレにはわかる。もう口調からして明らかだ。

確かに声はいいよ。正直男のオレからして結構ダンディーというか、こっちを安心させてくれるような、そういうきれいな声色をしているのだが、そんな声で死の宣告など、より相まって怖く聞こえるのだ。

 

ほら見ろ!さっきからダクネスもめぐみんも何にも話さない!きっと恐怖でしり込みしているんだろうと、隣に座る二人を見ると、案の定めぐみんは胸前に杖を持ちカタカタ震えているが、ダクネスは何か期待した表情でイズを眺めている。

やはりというか、まったくぶれない様子のダクネスに少し尊敬の念を抱いてしまいそうになった自分を殴りたい。

 

「無理よカズマさん。今のイズちゃんは死すべし以外の言葉は話せないの」

 

腕を組み、なぜか得意げに青い瞳をこちらに向ける女神に、説明を求める視線を送り返すカズマ。

アクアは「しょーがないわねぇー」みたいな表情で人差し指をぴんと立てた。

 

「イズちゃんはある一定の言語しか話せない呪いにかかっているのよ」

「はぁ…?」

 

気の抜けた声が、自然と口から洩れてしまった。

それは、思ったよりもその呪いの内容が馬鹿らしいというか、大したことがなかったからだ。

アクアが解けない。それは一応は女神の、水をつかさどる神であるアクアの浄化魔法でも難しいということであり、それに比例して呪いの内容もとんでもないものだと思っていたのだが…

 

「…それが呪いか?」

「そうだけど、それだけじゃないの」

 

フルフルと首を振ったアクアは、自分が解くのに時間がかかる呪いがあることに不満を抱いているのか、それとも友人となったイズへの申し訳なさかは分からないが、なんとも言えないようす。

 

どうやら、呪いはこれだけではないらしい。

あのアクアがこんなにも気落ちしているのだ。相当なものに違いない。

 

カズマは内心踊り狂うように喜びながら、その先にある展開を想像した。

 

つまりは、ようやく何かしらのイベントキター!!というやつである。

 

ゲームのセオリーで言えば、多くのいい装備や隠しアイテムは、こういった意外な、そして少し怪しい人物からもらえるものである。きっとその呪いが解けなければ三日以内に死ぬとか、人じゃなくなるとか、何かしらの重い効果が発生するのだろう。

そしてオレはそんな窮地に陥ったこいつを救い、何かしらのアイテムだったり金だったりが貰えるかもしれない。あ、もしかしてこれは、オレに忠誠とかを誓うものかもしれない。

こいつはどこかの国の近衛騎士長とかで、その腕はすっげーものだったとか。

本当はダクネスの言った通りどこかの貴族で、すっげ―金持ちだったとか。

 

そんな妄想を脳内で広げ、キャッキャグフフしているカズマはやはり酔っているのだろう。普段の彼がしないような、楽観的な思考をしている。

だが、人は自分が酔っていることに気づかない生き物だ。それも仕方のない話だろう。

 

少し不謹慎だが、ちょこっとのドキドキと期待感を抱きながら、しかしばれないように片手で口元を抑えアクアの言葉を待った。

 

「イズちゃん、この兜が呪いによって脱げなくなっちゃったのよ」

 

「………。 へぇー…それは大変だな」

 

明らかなテンションダウンである。

期待していた物とは違い、本当にどうでもいい様な地味~な呪いであった。

先程まで脳内に浮かべていた妄想はヒビが入って砕け散り、極めて冷静になったカズマは、こちらへと食べ物を運んでくる店員を眺めた。

 

「お待たせいたしました〜」

 

頼んだ料理、カエルの唐揚げをコトリと置くと、以上でよろしいでしょうか?と笑顔で一言入れる店員。

 

「死すべし」

「わかったわ。店員さん、悪いんだけどお水もらえる?」

 

イズはアクアを介して水を頼み、かしこまりました〜とすぐに水を入れてきた店員は、一礼すると、直ぐに他の客へと注文を受けに行った。その間、イズの死の宣告を聞いても全く笑顔を絶やさなかったその姿は、まさにプロであった。

 

 

運ばれてきた料理はまさに揚げたて。

黄金色に輝く衣は、見ているだけで再び涎を分泌させる。

 

次々と各自が思い思いに唐揚げをつまんでいき、最後まで遠慮していたのか、残った唐揚げをイズが取った。

先ほどまで手に付けていた腕帯は外されており、思ったよりも細く、キレイな指が外気にさらされていた。

 

騎士は剣を振るものであり、剣を振るう手はゴツゴツしているものだと思っていたが、意外にもそうではないらしい。

 

イズは手にある唐揚げをジッ…と眺めた後、

 

「え、ちょっ…」

 

先ほど頼んだ水の中へ放り込んだ。

コレにはこの場にいる全員がイズの行動を理解し難く、呆気に取られた様子で固まってしまう。

 

カズマの動揺の声をまるで無視するように、これでもかと手に持ったフォークで混ぜ始めた。

水を吸った代わりに油を放出し、水の表面に分離した油が、見た目罰ゲームの様なドリンクと化した水は、最早もう飲めるものでは無い。

 

まだ足りぬと唐揚げを何度も刺し、刺し、潰し、潰した細かい肉片が水の中で浮く。

 

ある程度潰れ、分裂した唐揚げを見て満足したのか、己の兜の隙間の部分に指をかけると、肩を震わせながら力を入れてその隙間を広げた。

指半分ぐらいの空いた隙間に、イズは素早く先程の罰ゲームドリンクを手に取ると───

 

 

────兜の隙間に、流し込んだ。

 

 

途端、兜の中から聞こえる啜る音と、首の空いた隙間から流れる水。

 

その姿は何とも言い難いが、とにかく鬼気迫るような雰囲気を出していた。

まるで久々に今まで欲していた物にありつけたかのような、そんな必死な姿に、カズマは上を向き、目尻を抑えた。

 

そうだ、こいつ────呪いで兜が取れないんだった。

 

だから細かく唐揚げを潰していたのだ。

兜の隙間から入れれるように。

 

水を入れたのは、できるだけ腹が膨れるようにだろう。

こんな難儀なやり方でしか、食事を取ることが出来ない騎士を、かなり不憫に思う。

そして、そんな奴の目の前でむしゃむしゃと唐揚げを頬張っていた自分達は、知らない間にかなり鬼畜な事をしていたのだと理解した。

 

めぐみん達も同様に理解したのだろう。

その目は奇っ怪な生物を見る目から、憐れみを多分に含んだ瞳をし、アクアは気まずそうに油が着いた口を拭き、ダクネスは死ぬほど羨ましそうな表情でイズを眺めており、取り敢えずこの大変失礼な変態騎士の後頭部をスパコーン!とぶっ叩いたのだった。

 

 




イズが兜をつけている時の声は、男性の声に変換されています。(これも呪いの力です)
つまり、カズマのイズに対しての声の説明は、本当のイズの声ではありません。
本文に書くことは出来ませんでしたが、どうぞご容赦ください。
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