「サイテー」
「犯罪者」
俺は女子に囲まれ口々に罵られていた。俺はショックで言葉を発することも出来ず呆然としていた。どうしてこんな事になってしまったのか。
1週間前に密かに憧れていた女子から告白された俺は人生初の彼女に舞い上がっていた。しかし、その週末に彼女は大学生と思われるイケメンとデートしていたのだ。偶然にもホテルに入っていく様子を見かけてしまった俺は訳が分からないまま走りだし気が付くと我が家の玄関に立っていた。
何かの間違いであると自分に思い込ませながらの週明け、俺は強姦未遂と浮気の屑野郎となっていた。弁解の余地も与えられないまま、あらゆる人々が俺を屑とみなして疑わなかった。いや、単純に自分に矛先が向くのを恐れただけで俺を信じてくれている人もいたのかもしれない。しかし、結局責められている俺の味方をしてくれるものは誰一人としていなかったんだ。
周囲の行為はだんだんとエスカレートしていき次第に暴力を振るうものまで現れだした。
遂に倒れた俺は意識が遠のく中ではっきりと気づいてしまった。
あの女の口元に歪んだ笑みが浮かんでいる事に。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」
気がつくと妹であるひまりが目元に涙を浮かべながら必死そうに俺に抱きついていた。
(またあの夢か…)
俺が女性を信じることのできなくなった事件。当時既に両親が事故で亡くなり、親戚とは疎遠であった俺には頼れる大人は居らず、味方をしてくれるのはひまりだけだった。幸いにも親の残した保険金でお金に困ってはおらず、俺たちはあの町から遠くへとから逃げるように引っ越した。
しかし、あれ以来俺はひまりを除く女性の目に触れることすらも恐れるようになっている。
「またあの夢?」
未だに涙を浮かべ心配そうに問いかけてくるひまりの頭を撫でつつ
「大丈夫だよ。ただの夢だから。ありがとうな。こんな俺の心配をしてくれて」
「当たり前だよ。なんて言ってもお兄ちゃんの妹なんだから」
先程までの涙はどこへ行ったのか、気持ちのいい程のドヤ顔を見せつつも気持ちよさそうに目を細めるいつも通りのひまりには安心させられる。
ちらりと時計に目をやると時間はまだ真夜中。明日もまた学校がある。しかし、俺はとても眠れそうな気分では無かった。するとそのことに気が付いたのかひまりは俺を抱きしめるとあやすように撫でてきた。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんには私がついてるから。何があって私はお兄ちゃんの味方だよ」
非常に発育の良いひまりの体に包まれながら不思議なほどの安心感とともに心地の良い眠気が襲ってきた。
(今ならいい夢を見ることが出来そうだ)
そうして俺の意識は再び眠りへと落ちて行った。
この時の俺は気づくことがなかった。
ひまりの口元にあの女よりも深い笑みが張り付いている事に。
落差のあるヤンデレ好きです
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