Cannon†Girls   作:黒鉄大和

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最終話 キャノンガールズ

 真昼間から酒を飲む者で溢れている大衆酒場。今日も多くのハンターが集まって一般人が汗水垂らしながら働いている中自由気ままなハンター生活の醍醐味を堪能している。

 そんなハンター達を相手にするギルド嬢達は忙しそうにひしめき合う人やテーブルの間を華麗に擦り抜けながら仕事に従事している。尻に手を伸ばす者があれば眩しいくらいの営業スマイルで制裁という名の強烈無比な一撃をぶち込む事は忘れない。

 ギルド嬢長、ドンドルマのギルド嬢全てを統括する主任(チーフ)の任を受けているライザもまたいつものようにカウンターで書類の整理をしながら時々ギルド嬢達に指示を飛ばしている。

 それはいつもと変わらない日常の光景であった。平和そのものと言ってもいいほど、ここでは在り来たりな光景なのだ。

 ライザは書類に目を落とし、その書面を流すように読み込む。すると、そんな彼女の視界の端に手が置かれた。顔を上げると、そこにはよく見知った顔がある。

「あら、お帰りなさい」

「ただいま」

「お久しぶりです、ライザさん」

 カウンターの前に立っていたのは二人の少女であった。一方は桃色のツインテールを靡かせて自信に満ち溢れた瞳と表情をした少女。纏うのはダイミョウザザミと呼ばれる盾蟹の甲殻を使った桃色の防具、ザザミシリーズ。女性に人気のデザインでありながら、その防御力の高さから特に駆け出しを少し過ぎた頃の女性ハンターに愛用される代表的な防具だ。

 エリーゼ・フォートレス。十六歳になったばかりの若いハンターでルーククラスに位置づけられるガンランス使いだ。背に背負った近衛隊正式銃槍は今日も勇ましげに輝いている。

 そんなエリーゼの隣で微笑むのは紺色のセミロングに同色のクリッとした瞳が愛らしい小動物のような少女。彼女もまた防具を纏っている。以前使っていた父親が整えてくれたレザーライトシリーズをついに脱ぎ、現在は以前まで使っていたレザーライトより貴重な鉱石を多様に使った防御力の高いハイメタシリーズを纏っている。比較的初心者用の防具であるが、相変わらず彼女の場合は鎧玉をありったけ付けまくっているのでその防御力は初心者用と侮る事はできない。ただしチャームポイントでもあったブカブカのヘルメット、レザーライトヘルムだけはしっくり来るという事で今も被ってはいるが。

 レン・リフレイン。十四歳というエリーゼよりもさらに若いという幼い少女で、とても外見だけではハンターには見えないが、これでも点を射抜くような見事な精密射撃と機関銃のような連射力を駆使したガンナーなのに接近戦を得意とした超攻撃型のガンナーであり、その実力は将来を期待させる片鱗が見え隠れしているルーククラスのハンターだ。

 背に背負われたのは異国の技術が詰められたライトボウガン、ティーガー。先日中央工城がこの武器を正式採用し、正式名称はレックスタンクとなったが、今でもレンは苦楽を共にして来たこの相棒の事をティーガーと呼んでいる。そもそも正式採用はされたものの、この武器には謎が多過ぎて現在もギルドはこの武器についての詳しい事は公表していないが。

 ライザは久しぶりに帰って来た二人の元気な顔を見て頬を緩ませた。

「お帰り、任務ご苦労様でした」

「ほんと、マジ疲れたわよ。でもまぁ、あたし達の実力ならあれくらいどうって事ないわよ」

「本当は二人して何度も死に掛けるような死闘でしたけどね。これでも結構ボロボロですよ?」

「ちょっとレンッ! せっかくかっこ良く決めたのに何ぶっちゃけてんのあんたッ!」

 平然と本当の事をぶっちゃけるレンにエリーゼが顔を真っ赤にして怒鳴る。そんな二人のいつも通りな姿を見てほっとしつつも、二人の最近の目覚しい成長っぷりには驚かされる。

「でもまぁ、外見的な面ではかなり嫌な戦いだったけどね」

「あははは、やっぱりフルフルってハンターからは人気ないわね。でも意外とフルフルって愛好者が多いのよね」

「モンスター自体の外見はともかく、女性用の防具は着心地がいいとかオシャレとかで人気ですよね」

「包帯を巻いた姿のどこがオシャレなんだか」

 エリーゼは意味わかんないと言いたげに肩をすくませる。彼女の場合、外見も大切だがやっぱり今でも効率重視の思考を持っているので、自分のバトルスタイルに合った防具として防御力の高いザザミシリーズを選んだ程だ。フルフルの防具なんて、それこそ彼女のスタイルには合わないだろう。

「でもフルフルは大変だったでしょ。他のモンスターと違ってクセの多い相手だし」

「そりゃ大変だったわよ。ほんと、何度奴の電気ブレスで死に掛けた事か――でもまぁ、レンと一緒だったからね」

「そうですね。苦しい戦いでしたけど――エリーゼさんと一緒でしたから」

 そう言って、二人は互いの姿を見合って微笑んだ。そんな周りが見ていても妬いてしまいたくなるほど仲のいい二人を見て、ライザはちょっと羨ましくもあるが微笑ましげに見詰める。

 一時はそれこそ絆が断ち切れるのではないかと心配する程二人の関係に亀裂が入った事もあったが、あれから数ヶ月。二人の絆は以前よりもさらに強化され、今ではハンターとしての実力もそれなりのものになってきた。まだまだドンドルマには掃いて捨てる程いる程度のレベルではあるが、それでも二人の実力がある程度の地位を得たのは確かな事だ。

 キャノンガールズ。それが彼女達二人の二つ名であった。二つ名とはギルド公認の称号とは違い、自分で名乗ったり周りからそう言われたりする俗称の事。二人の場合はライザが初めて二人の事を《キャノンガールズ》と言い始め、二人の酒場での有名度(特にレンの屈託のない笑顔が多くの男女問わないハンター達の人気を集めていた)もあって今ではすっかり定着した呼び名だ。

 実力もそれなりにある為、今まで何度か別のハンター達が彼女達をチームに招き入れようとしたが、結局二人は一貫してコンビを貫いている。実に彼女達らしい。

「ほんと、妬いちゃうくらい仲がいいわね」

「えへへ」

「べ、別にそんなに仲がいい訳じゃないわよ。レンも何喜んでるのよッ」

 仲がいいと言われて素直に喜ぶレンと素直に喜べずに顔を真っ赤にして怒鳴るエリーゼ。ほんと、今更だがここまで対極な二人がよくもまぁ親友や姉妹のような強固な関係になれたものだと、ライザは内心感心していた。

 そんなライザの内心など露知らず、散々レンの頬を引っ張ったエリーゼは疲れたようにため息を吐く。

「まったく――っていうかライザッ! 狩場にはフルフルしかいないって言ってたじゃないッ! 何でドスファンゴがいたのよッ! 話が違うじゃないッ!」

 思い出したようにブチギレるエリーゼの激しい言葉の嵐に、ライザは「いひぃ~ッ!」と悲鳴を上げる。

「ほ、ほんっとにごめんッ! フルフル以外の目撃情報がなかったからてっきりフルフル単独だと思って……」

「ちょっとマジでしっかりしなさいよッ! あんた、あたし達を殺す気なのッ!?」

「ほんっとおおおぉぉぉにごめんなさいッ! 差額分はちゃんと上乗せしておくから許してッ!」

「当然じゃない。それと慰謝料と違約金も上乗せしてよね」

「そ、それはマジで勘弁してッ! これ以上の上乗せはできないのよッ!」

「はぁッ!? 偽の情報であたし達を騙しておいて慰謝料や違約金も払えないって訳ギルドはッ!? 皆さん聞いてくださいッ! ギルドは契約違反の違約金も慰謝料も払わない最低の組織で~すッ!」

「ノオオオォォォッ! こんな公共の往来でなんて事を叫ぶのかしらこの子はッ! ギルドに対する不信感をみんなが抱いちゃったらどうするのよッ! 下手したらあたしの首が飛ぶのよッ!?」

「だったら出すもんさっさと出しなさいよッ!」

「そんな殺生なあああぁぁぁッ!」

「……エリーゼさん、それじゃまるで借金を取り立てにきたヤクザみたいですよ?」

 正当な理由とはいえキレながら涙目になる女性に金を要求するその様子は、エリーゼのかわいらしい外見を差し引いても限りなく取り立て屋に近い。レンは苦笑しながら興奮する相棒を落ち着かせつつ、ライザに話しかける。

「正規依頼金の額と今回の報酬の差額分で結構です。その代わり、昼食をおごっていただけませんか?」

「ちょ、ちょっとレンッ! 何勝手な事言って――」

「了解でありますッ!」

「ちょっと待ちなさいってばッ!」

 まだ納得がいかないエリーゼを華麗にスルーしつつ、レンとライザの交渉は成立した。もう何ヶ月も一緒にいるだけあって、レンはすっかりエリーゼの扱い方を熟知していた。これくらいの譲歩ならば、エリーゼも最終的には納得するとわかっているのだ。ただし――

「このバカレンッ! せっかく金をふんだくれると思ったのに勝手な事してッ!」

「ひ、ひらいれすえりーへはんッ!」

 結局頬を引っ張られるという痛い目を見るのは、レンの役目であった。ある意味、体を張った譲歩と言ってもいい。

 エリーゼは散々レンのマシュマロのように柔らかい頬を引っ張り回した後、「仕方ないわね……」とものすごく不満そうではあったが何とか納得はしてくれた。それを聞いてレンはほっと胸を撫で下ろす。両頬を犠牲にしただけの事はあった。

 引っ張られまくって赤くなりヒリヒリと痛む両頬を押さえながら、レンはエリーゼと共に適当な席に腰掛けた。すぐさま水を持ったライザがやって来る。

「何でもおごってあげるけど、あんまり高いのはダメよ? 私一応役職上はこの街の公務員なんだから。決して高い給料じゃないの。むしろ安い?」

「知らないわよそんな事。それじゃこのシモフリトマトソースパスタ、ロイヤル粉チーズのせでも――」

「あかんッ! それはナイトクラス上位のメニューよッ!?」

「あんたの権限ならこれくらい簡単でしょ? あたしはこれに決定ッ!」

「ノオオオォォォッ! そ、それ普通のビショップクラスの料理の二倍近い値段するのに……ッ!」

「何でもおごるって言ったのはあんたでしょ? 別にキングクラスやエンペラークラスの料理を頼んでる訳じゃないんだし。あんたもこれくらいの譲歩はしなさいよ」

「うぐぐぐ……ッ」

 最初にミスをしたのがギルド側だけあって、一応譲歩された身であるギルド嬢のライザとしてはそう言われると返す言葉もない。財布を取り出して中のお金の残量を確認し、がっくりと肩を落とす。

「うぅ、まだ給料日前なのに……わかったわよッ! おごってやりますともッ!」

 もはやヤケクソ状態。歓喜するエリーゼに対しライザは今にも泣き逃げしそうな勢い。そんなライザを見てレンと周りにいた後輩のギルド嬢達が不憫そうに彼女を見詰めていた。

「じゃ、じゃあ私はいつものをお願いします」

 エリーゼがずいぶんと豪華な料理を注文したのに対し、レンは《いつもの》を注文した。彼女の言ういつものとは、もちろん卵掛けご飯セットである。

「え? いいのレンちゃん?」

 てっきりエリーゼくらいの出費を覚悟していたライザは驚いたようにレンを見る。

「はい。エリーゼさんの無謀な注文で発生した金額を考えると、これくらいにしておかないとライザさんの懐が壊滅的打撃を受けますから」

「無謀ってあんた……」

 レンの容赦のない物言いにエリーゼは若干こめかみをピクピクさせる。そんなエリーゼの視線にレンは苦笑を浮かべた。その時、突然ガバッとライザが抱きついてきた。

「ふにゃッ!?」

「あぁんもうレンちゃんってほんとエンジェルちゃんッ! 何て健気で友達想いの優しい子なのかしらッ! かわい過ぎてお持ち帰りしちゃいたいよぉッ! どこぞの桃髪ツインテール強欲娘とは大違いッ!」

 レンのかわいらしい謙虚な態度にライザはもう大感動してもがくレンをギュッと抱き締めてモフモフする。ライザの自身やエリーゼとは比べ物にならない程大きな二つのマシュマロに顔を埋める形のレンは顔を真っ赤にして必死に脱出を試みるが、柔らかいやら気持ちいやらいい香りがするやらで完全にテンパっていた。

 そんな二人の様子を見詰めつつ、イライラのボルテージが最高潮に達したエリーゼは再びメニューを手に取った。

「すみませぇん、この豪華絢爛絶品黄金魚堪能コースを――」

「ふッざけんじゃねえ゛ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 刹那、エリーゼに向かってライザはハンターもビックリな驚くべき運動神経で跳躍。錐揉(きりも)み回転しながら猛烈な跳び蹴りを炸裂させたのであった。

 

「は~いお待ちどうさま~ッ」

 右手にシモフリトマトパスタ、ロイヤル粉チーズのせを、左手に卵かけご飯セットを持ったライザが屈託のない笑みを浮かべながら現れた。レンは「待ってましたですッ」と目をキラキラさせてお箸を構えている。一方その隣にいるエリーゼはブスッとした表情。右頬にはタオルに包まれた氷結晶と水を入れた袋を当てている。

「……人の顔に跳び蹴りを入れておいてずいぶんとご機嫌な笑顔ね」

「あ、あれはあなたが無茶苦茶な事を言うから、動揺しちゃって……」

「あんたは動揺すると人間離れした動きで容赦なく跳び蹴りする訳ッ!?」

 叫んだせいで頬が痛み、エリーゼは「いたたた……ッ」と腫れている頬に氷袋の入ったタオルを当てる。その姿を見ていると悪い事したなぁと思いつつも、調子に乗ったエリーゼが悪いのだとポジティブに考えるライザ。ここら辺の心の切り替え方のうまさが彼女の底抜けの明るさの根源なのかもしれない。ちなみにレンはおろおろとしているが。

「悪かったって思ってるわよ。だから、食後のデザートもおごってあげるからさ」

「あんた、何でもかんでも食べ物で許されると思ったら大違いよ?」

「あら、せっかく炎熟マンゴープリンをおごってあげようと思ったのに……」

「良し許すッ!」

「……案外簡単に許されちゃったわね」

 あっという間に前言撤回したエリーゼに苦笑しつつも、内心では許してもらえてほっとしたライザ。ちょっと懐は痛くて寒いが、まぁこれくらいの出費で仲直りできるなら安いもの――なのかな?

 炎熟マンゴープリンとはランチ時に限定二〇個で発売されるがわずか五分で売り切りれてしまう超人気絶品デザートである。基本的に女の子は甘いものが好きであり、エリーゼもその例外ではない。そりゃ許してしまうのもうなずける。ちなみに、その炎熟マンゴープリンを厨房で作っているのがライザだというのは酒場勤務のギルド嬢のみが知っている極秘事項だ。

「レンちゃんも食べるでしょ?」

 早速卵をお好みの回転数と回転速度で箸でかき混ぜていたレンはライザの問い掛けに対し「ふぇ?」と間抜けな声を上げた。その瞬間、ライザの胸キュンッとなる。

「あぁんもうッ。レンちゃんって何でこんなにかわいいのかしらぁッ」

「ライザさん、あまりそういう事を大声で言わないでください。恥ずかしいですぅ……ッ」

「恥ずかしがるレンちゃんもかわいいわぁ~」

 恥ずかしそうに顔を真っ赤にするレンを見て、ライザはほぉとため息を漏らしながらうっとりとした視線でレンを見詰める。そんな二人のやり取りを見て呆れつつも平和だなぁとエリーゼは苦笑した。

 何はともあれ昼食タイム。エリーゼはパスタを、レンは卵かけご飯を、ライザはサンドイッチセットを前にして手を合わせていただきま――

「ちょっと待ちなさいよッ! 何あんた普通に食事しようとしてんのよッ!」

 いつの間にかレンの横に座って平然とサンドイッチを食べようとしているライザにエリーゼが間髪入れずにツッコミを入れる。するとライザはきょとんとした表情になった後「大丈夫よ。本気で忙しくない限りあたしがいなくても大丈夫だし」と笑い飛ばす。

「あんた、本当にここで一番偉い人なの? いっつもあたし達と遊んでるけど」

「失礼ね。ちゃんとチーフとして皆がやらないような書類作成とか今月の勤務目標を掲示したりとか、お客様への接客七大用語復唱の先導とかしてるのよ? ぶっちゃけ、あの子達は給仕とか厨房みたいな仕事はうまいけど、あたしの本業はカウンターでのハンターの応対だからね。これだけはまだ安心して後を任せられるような子がいないし。みんな若いから強面(こわおもて)な人を前にすると怯えちゃうのよねぇ~」

 本業ではないと言ったが、ライザは厨房ではコック数人分の働きを、ホールでは他のギルド嬢よりもすばやくテーブルの間を駆け抜け、突発的なアクシデントにもすぐさま対応できるだけのスキルを持っている。ぶっちゃけ、他のギルド嬢よりも全てがスバ抜けているのだ。さらに彼女のすごい所は強面な人を相手にしても得意の営業スマイルで全くもって問題なく接しられる所にある。「強面な人ほど実は優しい人よ」というのはライザの名言の一つだ。

「そんな事よりもさっさと食べちゃいましょうよ」

「仕方ないわね……」

「ライザさんとご飯ですぅ~」

 諦めるエリーゼと大歓迎するレン。ライザは逸早く「いっただきまぁすッ」とサンドイッチを頬張り、二人もそれに続くように食べ始める。まずエリーゼはパスタを一口食べる。

「あ、これマジでうまいッ」

「でしょぉ~? 値段は高いけど、やっぱり厳選した素材だけあっておいしいのよねぇ~」

 エリーゼは満足そうにパスタを食べ進める。それを見てライザは嬉しそうに笑みを浮かべる。その隣ではレンがおいしそうに、そして幸せそうに卵かけご飯を頬張っている。

「幸せですぅ~♪」

「卵かけご飯如きで何て幸せそうな笑みを浮かべているのよこの子は……」

「庶民的でレンちゃんらしくていいじゃない」

 そんな会話をしながら三人は楽しい食事を続ける。レンはいつも通りのドジっぷりを披露して防具にご飯を零したり口の周りをベトベトにさせたりを繰り返し、そのたびにエリーゼが「まったく、しょうがないわね」とレン用に常に数枚持参しているハンカチでそれを拭ってやる。二人のコンビネーションはこんな所でもピッタリだ。

 何とか昼食を食べ終えた三人。すぐさまライザが厨房に行って食後のデザートとして炎熟マンゴープリンを持って帰って来た。

「はい。お楽しみの炎熟マンゴープリンよ」

 ライザはちゃっかり自分の分を確保しつつ、残る二つをそれぞエリーゼとレンに手渡す。カップに入ったきれいな黄色とオレンジ色の間くらいの美しい色をしたプリン。そこからはマンゴーの香りがこれでもかというくらいに放たれている。

「うっわ、マジでおいしそ~うッ!」

「チッチッチ、違うわよエリーゼ。おいしそうじゃなくて、本当においしいのよこの子は」

「わぁ~、本当にいただいてもよろしいんですか?」

「もっちろん。さぁ、早速食べましょう」

 三人は一斉にスプーンをプリンに突き刺す。その瞬間、二人はまるでほとんど力を入れなくてもスッとスプーンが入るプリンの柔らかさに驚かされる。すくい取ると、スプーンの上でまるで光り輝く宝石のような果実たっぷりのプリンがプルプルと震える。柔らか過ぎず、でも固過ぎない絶妙な加減でしっかりとした弾力もあるようだ。

 そして、二人はごくりと唾を呑んでから同時にプリンを口の中に含んだ。その瞬間、口の中全体にマンゴーの香りと味がブワッと広がった。とても甘くて、でも砂糖を目一杯ぶち込んだような嫌な甘さではない自然な甘味。触感も絶妙で、それはまさに二人が今まで食べて来たプリンの中で群を抜いたぶっちぎりのおいしさであった。

「ちょ、マジマジマシッ!? めっちゃうまいんだけどぉッ!?」

「口の中でとけるですぅ~♪」

「でしょぉ~? 発売後わずか五分で売れる理由がわかるでしょ?」

 炎熟マンゴープリンの発案者であるライザは二人の絶賛の言葉にニヤニヤが止まらない。この味に辿りつくまでに原材料である炎熟マンゴー、それも自分の舌を納得させるだけのものを発見するのに奔走し、さらにその味を最大限に引き立てる調理方法や工夫など何度も挫折し、様々な苦労の末にやっと完成させた最高の一品。苦労したのだから完成したプリンを誉められれば嬉しさが止まらないのは当然の事。特に、友人に誉めてもらえるのは本当に嬉しい。彼女達がそれを作ったのが自分と知らないのもネックだ。そうなれば完全にお世辞抜きの誉め言葉となる。

 二人は口の中に広がるマンゴーの味や香りに頬を赤らめながら幸せそうな笑みを浮かべて食べ進める。ライザはそんな二人の笑顔を見て自身もまた幸せそうな笑みを浮かべる。

「すっごくおいしいですぅ~」

「そう? じゃあ私の分も食べる?」

 幸せそうにプリンを食べるレンに、ライザは自身のまだ手をつけていないプリンを差し出す。するとレンは「そ、そんな大それた事……ッ」とあわあわと慌て出す。そんなレンを見てライザはくすくすと笑う。

「いいのよ。あたしはこれを作った側の人間よ? 何度も何度も試作品の試食を繰り返してたから。いくらおいしくてもそれだけ食べると、ね? だから遠慮しないで食べてよ。その方がこの子も、この子を作った人も喜ぶわ」

「そ、そうですか? じゃあお言葉に甘えさせていただきます」

 おずおずと受け取りながらも、レンの頬は完全に緩みっぱなしだ。キラキラと輝く瞳はしっかりとプリンを捉えて離さない。大喜びするレンを見て、ライザもまた嬉しそうに笑みを浮かべる。

「あ、ありがとうございますですッ!」

「いいわよ別に。気にしないで食べちゃいなさい」

「えへへ、でもちょっとだけおすそ分けですッ」

 そう言ってレンはスプーンの上に一口分の炎熟マンゴープリンを載せてライザの方へと差し出した。驚くライザに向かってレンは「あーんです」と屈託のない笑みを浮かべながらスプーンを近づけて来る。ライザはその意図を理解するとおかしそうに笑い、それから「あーん」と口を開ける。次の瞬間、レンの差し出したプリンをライザが食べた。そんな美少女と美女の仲睦まじい姿に数人の野郎どもが昇天したのと同時に、エリーゼののこめかみがビキッと嫌な音を立てた。

「ちょっとあんた達何してんのよッ!」

 すぐさまエリーゼが噛み付いた。レンは「ふえ? わ、私また何か変な事を……?」と困惑する。一方のライザはプリンを呑み込むと「あははは、レンちゃんにあーんされちゃった♪ ごめんねエリーゼ」と笑いながらエリーゼに謝る。

「はぁッ!? 何あたしに謝ってんのよッ! 意味わかんないッ!」

 ライザに見事先手を打たれる形となった為、エリーゼは言いたい事が山ほどあるのに悔しげな表情を浮かべながらそれらの言葉を呑み込んだ。素直じゃない彼女の性格を熟知したライザの見事な作戦勝ちだ。

 一人納得できずにぶすッとしているエリーゼを置いて、レンは幸せそうにライザからもらったプリンを食べている。そんなレンを見て隣に座るライザも幸せそうな笑みを浮かべている。

 そんな二人の様子を面白げなさそうに見詰めていたエリーゼは、ライザからもらったプリンを幸せそうに食べているレンを見てふと自分の食べかけのプリンに目を落とす。

「れ、レン。何だったらあたしの分も食べる?」

「ふえッ!? ど、どうしてですか?」

 突然のエリーゼからの問い掛けに対し、レンは驚いたように目を丸くする。何しろ、エリーゼは大の甘い物好きなのだ。暇な休日にはケーキやパフェなどデザート巡りをする程。その彼女が絶品の炎熟マンゴープリンを自ら差し出してきたのだ。レンが驚くのも当然の反応だ。

「べ、別に深い意味はないわよ。ただあんたがバカ面しながらパクパクパクパク食べ進めてるから、まるであたしが常日頃まともな食事をさせてないみたいに見えるのが嫌なだけよ」

「す、すみません……」

 しゅんと落ち込んでしまうレンを見て、内心では「な、何でそこで落ち込むのよッ!? 意味わかんないッ!」と絶叫しつつもそれを決して表情には出さないエリーゼ。

「と、とにかくあたしの分も食べなさい」

「で、でもエリーゼさんは甘いものが大好きなんじゃ……」

「いいから食べなさいって言ってるのッ! これは命令でYesかハイしか認めませんッ!」

「は、はいぃッ!」

エリーゼが顔を真っ赤にさせてそう怒鳴ると、レンは慌ててプリンを受け取った。内心は疑問符だらけだが、とりあえずおいしいプリンをあともう少し堪能できるという事実には変わりなく、実はちょっと嬉しかったり。

「あ、ありがとうございますです」

「ふ、フンッ。さっさと食べなさいよね」

 レンからのお礼の言葉に対し、エリーゼは頬を赤らめながらプイッとそっぽを向く。それは当然彼女なりの照れ隠しである。そんなエリーゼを見てくすくすと笑うレンと、苦笑するライザ。

「な、何よ」

「別にぃ~」

 ニヤニヤと笑うライザを見てエリーゼは何か言いたそうだったが、言ったら負けだと感じているのだろう。何も言わずにキッと睨み付けるだけに止(とど)まった。

 一方のレンは嬉しそうにプリンを食べ進める。結局、二個半くらのプリンを独り占めできる事となりすっごくご機嫌だ。だが、そんな彼女に対しエリーゼは何やら落ち着きがない。何度も何度もレンの方を見ては何かを言い出そうと口を開きかけ、でも結局閉じてしまって頬を赤らめながらもじもじする。そんな事をしばし繰り返した後、

「あ、あのさレン」

「ふぁい?」

「そ、その。あ、あたしにも……そのぉ……ライザみたいに……あのぉ……あぁもういいわよッ! レンのバァカバァカッ!」

「えええぇぇぇッ!?」

 突然の理不尽な罵声の嵐に、レンは目をぱちくりさせる。エリーゼはフンッと鼻息を漏らしてプイッとそっぽを向いてしまう。レンは何でエリーゼが不機嫌になったのかわからず、おろおろとライザの方を見て助けを求める。すると、エリーゼの想っている事をちゃんと理解していたライザがくすくすと笑いながらレンにそっと耳打ちする。

「あ、あのエリーゼさん」

 ライザからアドバイスを受けたレンは不機嫌なエリーゼに向かって勇気を出して声を掛ける。

「な、何よ」

「そ、そのぉ……あ、あーん」

 レンは頬をほんのりと赤らめながらおずおずとスプーンにプリンを載せて差し出す。その瞬間、エリーゼは驚きのあまりガタンッと椅子ごと後ろに転倒した。

「え、エリーゼさんッ!?」

「あらあらぁ~」

 腰を強打して「いたたたぁ……」と押さえながらエリーゼは立ち上がると、周りの視線が自分に集中している事に気づき顔を真っ赤にする。そしてすぐさま威嚇とばかりに辺りに眼を飛ばす。ギャラリーはすぐに視線を逸らした。何という結束力であろうか。

「だ、大丈夫ですか?」

「へ、平気よこれくらい……」

 エリーゼは椅子を直して再び座り直す。その頬はさっきまでとは違った赤みを帯びていた。

「い、いきなりあんたが訳のわからない事をするから驚いて転んじゃったでしょ」

「うぅ、ご、ごめんなさいですぅ……」

 しょんぼりと落ち込み、レンは差し出していたスプーンを引っ込めた。その瞬間、エリーゼもまたレンと同じような表情になる。

 二人の間に、何とも言えない複雑な空気が流れる。そんな噛み合わない二人の様子を見てライザは小さく苦笑を浮かべるとそっと助け舟を出す。

「はい、レンちゃんあーん」

 素早くレンの手からプリンを手にしたライザはスッとプリンを載せてスプーンを差し出す。レンはつい条件反射的に口を開いてしまい、ライザのスプーンを無防備にも受け入れてあーん成立。すぐさまエリーゼが何か言う前に先手を打つ。

「ほら、次はレンちゃんがエリーゼにする番よ」

「「ふえッ!?」」

 二人は一斉に顔を真っ赤にしてライザの方へと振り返る。ライザは二人の視線に対しにこやかな笑みを浮かべて対峙する。レンちゃんにそっと「ほら、エリーゼが待ってるわよ」と背中を押してやる。

 レンは「うぅ、わかりましたぁ」と小さく答えた。さっきのだってかなり勇気を出してがんばったのに、それをまたもう一度やらなければならない。レンの勇気預金の残高は決して多い訳ではないのに。というか、ああいう行為は無意識にやると何の影響もないのに、意識的にやるとすごく恥ずかしいのだ。

「え、エリーゼさん。あ、あーんですぅ」

「はぁッ!? な、何であたしが……ッ」

「まぁまぁ、ここは場の流れに乗って潔く、ね?」

 顔を真っ赤にして「い、嫌よッ! そんな恥ずかしい事ッ! あたしに社会的に死ねって言うのッ!?」と激しく抵抗するが、その目はしっかりとレンの持つスプーンをガン見している事に気づくべきだろう。

「ほらほら、このままじゃレンちゃんが笑い者よ? ここはお姉ちゃんらしく妹のピンチを救わないと」

「あんたが窮地(きゅうち)に追い込んだんでしょッ!?」

 エリーゼはそうツッコミを入れると、ふと恥ずかしくて涙目になっているレンを見てため息を零す。これではまるで自分が悪者みたいではないか。

「わかったわよ……」

 口調こそ納得いっていない感じだが、その実は狂喜乱舞しているに違いない。ライザはそんな彼女の内心を想像して苦笑を漏らす。

「ほんと、世話の掛かる子ね……」

 そんなライザのつぶやきも知らず、エリーゼは「し、仕方なくなんだからね。さ、さっさとしなさいよバカ」と恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらレンの方に向き直る。

「で、では失礼します」

 レンもまた恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらプルプルとスプーンを震わせながらエリーゼに近づける。エリーゼはゆっくりと口を開く。

「あ、あーんです……」

「あ、あーんぅ……」

 レンの差し出したスプーンを、エリーゼがそっと口に含む。その瞬間、ほんわかした空気が辺りに流れた。ライザや他のハンターやギルド嬢達も頬を赤らめつつそんな二人のかわいらしい姿を見守る。その目はまるでかわいらしい娘や妹を見詰める柔らかなものだ。

 スプーンを引っこ抜くと、レンは「ど、どうですか?」と緊張した様子でエリーゼに問いかける。ここでエリーゼに「おいしい」とでも言ってもらえればレンもまた大喜びするだろう。だが、エリーゼはその予想の遥か上を見事にぶっ飛んだ。

 エリーゼは何も言わず、ずっと無言だった――なぜなら、あまりの嬉しさのあまり気を失っていたからだ。それに気づいたレンは大慌て。ライザはそんな友人二人を見て「ほんと、妬いちゃうくらい仲がいいのね」と嬉しそうにつぶやいた。

 

 どこまでも澄んだ青空が広がる広大な天空の下、柔らかな春の日差しが静かに大地を照らす。その温かさと光は命を与え、今日も緑が輝き、花が美しく咲き誇る。

 アルコリス地方丘陵地帯。ドンドルマから西へ竜車で数日。シルクォーレの森とシルトン丘陵からなるこの地方は《温厚な心》という意味を持つアルコリスと名づけられている。名の由来の通り、ここはとても穏やかで草食竜が平和に暮らしており、のどかな時間が流れている。

 ハンターからは森丘と呼ばれる初心者から上級者まで様々なハンターが訪れる狩場。

 目で見る限り、ここにはいつもの平和な光景が広がっている。だが、狩場を包む空気はその異変を漂わせていた。

 エリア1。いつもなら水辺に生える豊富な草を求めて野性のアプトノスが数匹食事をしているはずの場所に、彼らの姿はなかった。

 そんなエリア1へと踏み入る者がいた。ザザミシリーズに近衛隊正式銃槍を背負った少女――エリーゼ・フォートレスとハイメタシリーズにレザーライトヘルムを被り、背にはレックスタンクを背負った少女――レン・リフレイン。

 今ドンドルマでちょっとだけ有名人であり、ガンランスと攻撃型ライトボウガンというすさまじい火力から《キャノンガールズ》と呼ばれているコンビである。

「まずはエリア4へ行きましょう。あそこは巣からも近いからよく途中休憩地点として奴が降り立つ事も多いからね」

「そうですね」

 エリーゼは地図を確認しながら奴が現れるであろう地点を予想する。と言っても、だいたいの目星はついていた。何せ、この狩場は彼女達にとっては庭みたいなものだ。今まで一体何十回とこの場所を訪れた事か。

「それじゃ、準備はいい?」

「大丈夫ですッ」

「回復薬は?」

「回復薬及び回復薬グレートそれぞれ十本ずつ持ってます。応急薬も解毒薬もバッチリです」

「携帯食料」

「バッチリです。こんがり肉もあります」

「弾丸は?」

「使用可能弾種全てフルで準備済みです」

「トラップ」

「閃光玉、シビレ罠、落とし穴、トラップツールにゲネポスの麻痺牙もバッチリです」

「準備は良さそうね」

「はいッ。もしもの時の為の秘薬も二人分持って来ましたッ!」

「そう。じゃあハンカチは持ってるかしら?」

「狩りで使わないとは思いますが、バッチリ持って来ましたッ」

 メモを書いてドンドルマを発つ前日にチェックを入れながらしっかりと確認しているので忘れ物はないという自信は満々であった。ちゃんと持って来た事を誉めてほしくてうずうずとするレン。そんな彼女を見てエリーゼはそっと微笑み、

「――とりあえず、そのハンカチで口の周りを拭きなさい。拠点(ベースキャンプ)で食べたこんがり肉の脂が付いたままよ」

「ふえぇッ!?」

 エリーゼの指摘にレンは顔を真っ赤にするとくるりとエリーゼの方に背を向けて急いで道具袋(ポーチ)からハンカチを出してグシグシと口の周りを拭く。そんな慌てるレンの背中を見て呆れつつも、やっぱり変わらないなぁとちょっぴり安心するエリーゼ。

「お、お見苦しい所をお見せしました」

「慣れてるわよ」

「うぅ……」

 エリーゼのさりげない言葉に返す言葉もない事がものすごく恥ずかしい。レンはちょっぴり涙目になりながら恥ずかしくて顔を上げる事ができない。そんなレンを一瞥し、エリーゼは大きなため息を漏らすと彼女の手からハンカチを奪い取る。

「ったく、ちゃんと拭けてないじゃない」

「え? ほんとむぐぅッ!?」

 慌てるレンの口にハンカチを押し付け、エリーゼはまだ拭き取れていない油をグシグシと拭き取る。レンは恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら自分でできると言うが、エリーゼは聞く耳を持たずグシグシと拭きまくる。

「ったく、あんたってほんとダメダメよね」

「か、返す言葉もありましぇん……」

 ようやく拭き終えたエリーゼは呆れたようにそう言うが、その表情はどこか嬉しそう。一方のレンは毎回毎回迷惑掛けてばっかりな自分が不甲斐なくて落ち込んでしまう。そんなレンの姿を見て、エリーゼは苦笑しながらポンとレザーライトヘルムの上に手を置いた。

「あんたのドジは今に始まった事じゃないでしょ? あたしもすっかり慣れたわよ」

 エリーゼの容赦のない言葉にレンは情けなさ過ぎて泣きそうになる。そんなレンを見て、エリーゼはそっと微笑んだ。

「でも、あたしはあんたを選んだ。あんたもあたしを選んだ。それでいいじゃない」

「エリーゼさん……」

 顔を上げたレンの瞳に溜まった涙をエリーゼはそっとハンカチで拭い取り、それを彼女の道具袋(ポーチ)の中に戻す。

「それじゃ、そろそろ行くわよ。いつまでもこんな所で突っ立ってられる程、あたし達は暇じゃないからね」

「は、はいですッ」

 歩き出すエリーゼの後を、レンが嬉しそうに満面の笑みを浮かべながらついて来る。まるで飼い主にデレデレに懐いている子犬のようだ。

「エリーゼさん――私、エリーゼさんの事が大好きですッ!」

「……その言葉、そっくりあたしもあんたに返すわよ、レン」

 エリーゼは振り返り、笑顔で駆け寄って来る妹(レン)を見詰める。

 この子となら、きっと自分は一人じゃ行けない所まで突き進める。そんな予感がした――ううん、そんな確信があった。レンと一緒なら、きっとどこまでも。

 レンもまた、自分に向かって微笑んでくれる姉(エリーゼ)と一緒なら、どれだけ高く険しい壁も乗り越えられる予感が――違う、そんな確信があった。

 

 姉(エリーゼ)と一緒なら――

 

 妹(レン)と一緒なら――

 

 ――きっと、どこまでも……――

 

 怪鳥イャンクック、青怪鳥イャンクック亜種。それが今回の二人の狩猟対象であった。本格的な同時討伐はこれが初めてだが、二人とも特筆した不安などはなかった――相棒と一緒なら、絶対に勝てる。そんな強い想いがあるからだ。

 二人はゆっくりと肩を並べながら歩き出す。

 そんな二人を応援するように、太陽は今日も二人の事を優しく照らし続ける。

 明日も、明後日も、これからずっと、きっと、いつまでも……

 

 ――二人の物語は、まだ始まったばかりなのだから……――




《レン・リフレイン》
 身長 148センチ
 年齢 14歳
 髪・瞳 きれいな紺色のセミロングに同色の瞳
 武器 ライトボウガン《レックスタンク》
 防具《レザーライトシリーズ》→《レザーライトヘルム+ハイメタシリーズ》
 スキル《レザーライトシリーズ》採取+2(採取珠)、調合成功率+15%(博士珠×3)、投擲技術UP
     《レザーライトヘルム+ハイメタシリーズ》体力+20、砲術師、ぶれ幅DOWN(点射珠×5)
一応設定上はキャノンガールズの主人公の少女。ココル村という大陸の片隅にある小さな辺境の村出身で、ハンターとしての師匠である父親が怪我でハンターを引退したのを機に、一家を支える身として故郷に仕送りをする為にドンドルマへとやって来た。彼女を一言で表すとものすごいドジッ子。何もない平坦な場所で転んだり、料理を食べれば口の周りを汚すし、狩場によく忘れ物をするという何をやらせてもドジる生粋のドジの天才。性格はとても恥ずかしがり屋で怖がりで泣き虫で甘えん坊という子供丸出し。初めて自分に接してくれたライザを友人に、窮地に陥った自分を助けれくれたエリーゼを姉と想って接している。いつもエリーゼの後ろをちょこちょこと付いて回る子犬のような子。ものすごく頼りない子だが、戦闘になるとものすごい実力を発揮する。攻撃型のガンナーで、後方からの支援射撃ではなく常に剣士さながらの近距離で銃弾を乱射する戦い方を好む。これは彼女が元々ソロハンターだった事が原因。猛烈な集中砲火を浴びせたり、点を射抜くような見事な射撃技術を持っていたり、ガンナーとしては実はものすごい天才。憧れのガンナーはフィーリア。目標はエリーゼのような威風堂々としたハンター。好きな食べ物は卵かけご飯。今もなお好評修行中。

《エリーゼ・フォートレス》
 身長 158センチ
 年齢 16歳
 髪・瞳 美しく煌く桃色のツインテールに空のような青色の瞳
 武器 ガンランス《討伐隊正式銃槍》→《近衛隊正式銃槍》
 防具《イーオスシリーズ》→《レッドピアス+クックシリーズ》→《ザザミSシリーズ》
 スキル《イーオスシリーズ》毒無効、体力+10
     《レッドピアス+クックシリーズ》火耐性+5、攻撃力UP【中】(攻撃珠×6)、体力+10
     《ザザミシリーズ》防御+20、投擲技術UP、砲術王(大砲珠×8)
キャノンガールズのもう一人の主人公(正確にはレンがメイン主人公で、エリーゼはサブ主人公)の少女。ハンターに憧れてドンドルマのハンター養成訓練学校に入学。常にトップクラスの成績を叩き出し、ソロでずっと技術科目をこなし、最終学年では生徒会会長にも就任した天才――というよりは、人の何倍も努力して今の実力を見につけた努力の天才だ。彼女を一言で表すとものすごいツンデレ。誉められると必ず素直じゃない言葉でなぜか反撃し、絶対に自分のやりたい事を自分からは言い出さないし、好きって言えずにどうしても嫌いと言ってしまう生粋のツンデレ娘。プライドが高く自分の考えを否定されたりバカにされるのが大嫌いで負けず嫌いで口が悪い。でも本当はとても心優しくて本人は否定しているが面倒見がいい。バトルスタイルは豪快でガンランスの強力な盾を駆使して常に肉薄。砲撃と突きを繰り返しつつ相手を翻弄し、強力な竜撃砲を叩き込む。冷静沈着な戦略家であるが、戦い方は結構無茶をするタイプ。数年前に妹を病気で亡くしており、レンの事を本当の妹のように思いかわいがっている。レンに近づく男がいれば容赦なく竜撃砲でぶっ飛ばすと心に決めている妹バカ。実は恋狩の主人公のクリュウとは同い年だが学年が一つ下の後輩に当たる。生徒会総務部部長時代は彼やその周りの生徒が暴走するたびにその鎮圧などに借り出されていた為、あまり快くは思ってはいない。



という訳で、今回にてキャノンガールズは最終回。ついに完結しました。
この物語の為に作り出した新キャラクターのレンとエリーゼ。恋狩とは違う描き方や艦魂時代から続く僕の作風などを一部変えた今回の作品は、色々と苦労しましたがやっと完結できました。
これも全て、応援してくださった皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
レンとエリーゼの物語はまだまだ続いていきます。
ちなみに、このキャノンガールズ最終回の部分は時系列的には恋狩よりも先です。何せ恋狩はまだようやく冬から春へ季節が変わり出した頃に対し、こちらは完全に春真っ盛りですから。
時系列的にはルフィールが卒業した頃くらいですかね。
ぶっちゃけ前話よりも数ヶ月過ぎてます。やっぱり始まりの季節は春ですからね。区切りがいいのです。
それでは最後に改めまして、今までキャノンガールズの応援ありがとうございました。これからは再び恋狩の方で応援よろしくお願いします。
それではまた~。

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