聖王武闘伝Lヴィヴィオ   作:花水姫

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 小学4年生となったお祝いに家族から暖かいプレゼントを貰った高町ヴィヴィオ。

 そんな彼女と出会うのは陰を背負った強き少女。

 ヴィヴィオの避けられぬ宿命が、運命の出会いを導く。


 聖王武闘伝Lヴィヴィオ第2話『碧銀の覇王』


 ──リリカルファイト、レディゴー!





第2話『碧銀の覇王』

 

「やっほー、ノーヴェー、みんなー」

 

 進級祝いをした日の翌々日、ヴィヴィオはノーヴェから紹介したい人がいると言われ、放課後に(レヴィ)(シュテル)の職場である喫茶店『ダークマテリアルズ』にやってきていた。

 

 そこにはノーヴェの姉妹の大部分と、姉妹の一人であるスバル・ナカジマと縁の深いティアナ・ランスターまでもが揃っており、喫茶店の一角を占有していた。

 

「おう。ヴィヴィオ悪いなわざわざ」

「ううん。ところで紹介したい人って?」

「つい最近別口で格闘技をやってる奴と知り合ってな。ヴィヴィオと同年代だし、一緒にどうかなーって思ってな」

「へー」

 

 とりあえず席に座りノーヴェの話を聞くヴィヴィオ達。

 

 そんな新しく来店した3人に隙をみてこの店の看板娘であるウェイターが話しかけてくる。

 

「いらっしゃい、ヴィヴィオ。それにコロナとリオも良く来たね。ご注文は?」

「えー、パパ奢ってよー」

 

 ウェイターの仕事をするレヴィにヴィヴィオは膨れながら文句を言う。

 

「おいおい、レヴィさん達も仕事なんだから無茶言うなって、あたしが奢ってやるからなんか軽く頼め」

 

 その文句を目の前で聞いていたノーヴェは、ヴィヴィオに呆れながら言うと、ヴィヴィオ達は目を光らせメニューを眺める。

 

「わたしはアイスミルクティーを」

「わたしはオレンジジュースで」

「じゃぁ私は苺ミルク!」

「はいはい。お任せあれ」

 

 コロナ、リオ、ヴィヴィオの注文を聞くとレヴィは去っていく。

 

 

 そうして、注文した品が三人の目の前に並び喉を潤した所で、ヴィヴィオが苺ミルクを飲みながら話の続きを求める。

 

「それで? 紹介したい人ってどんな人なの?」

「あーそうだなぁ。流派は古代ベルカ式の古流武術」

「ほうほう」

「おまえ等と同じ学校の中等部の先輩で、あーお前と同じ虹彩異色(オッドアイ)の持ち主だな」

「へえ」

 

 ノーヴェがオッドアイ、と言ったところで何を感じ取ったのかヴィヴィオの返答のトーンが極わずかだが変わる。

 

「虹彩異色だと目立ちそうだけど、コロナは心当たりある?」

「ううん。中等部だと校舎も違うしわからないかな」

 

 そんなヴィヴィオの微妙な変化に気付かず、コロナとリオは今日これから来る人物の心当たりを探っていた。

 

 そんな感じでヴィヴィオ達は件の人物がやってくるまで談笑に花を咲かせていた。

 

 

「すまん、メールだ。お」

 

 談笑に花を咲かせていると、ノーヴェの端末へと連絡が届く。

 その内容を見てノーヴェは笑みを浮かべるとヴィヴィオに向き直る。

 

「紹介したい奴から。側に来てるからそろそろ着くってよ」

「ほんと!」

 

 ノーヴェの言葉にヴィヴィオは喜び勇んで立ち上がる。

 

「落ち着けって、まだ連絡が──」

「すみません。お待たせしました」

 

 連絡が来ただけ。そう言おうとしたノーヴェの言葉を遮るように凛とした声が届く。

 

「おぉ、アインハルト。時間ぴったしだから気にすんな」

 

 ノーヴェの言葉に軽く会釈をするのはSt.ヒルデ魔法学院中等部の制服に身を包んだ少女。

 

 髪型は綺麗な碧銀の長髪を二つに結んだツインテール。

 紺と青の虹彩異色な瞳は宝石のような輝きを携えつつも、それを収める目は緊張か元々なのか目つきが鋭く、怜悧な印象を与える。

 

 そんな少女。アインハルトにノーヴェはヴィヴィオを示しながら声をかける。

 

「アインハルト、コイツが前に話したお前に紹介したい奴」

 

 ノーヴェがそう言うとヴィヴィオはアインハルトの目の前まで歩みより、朗らかな笑みを浮かべる。

 

「はじめまして! 父やノーヴェからストライクアーツを学んでます、高町ヴィヴィオです! 厳密な流派は実家に伝わる魔法戦技ですかね」

 

 そう言いながらアインハルトの目の前へ右手を差し出すヴィヴィオ。

 

 アインハルトも手を差し出しつつ、それに応える。

 

「ベルカ古流武術、アインハルト・ストラトスです」

 

 そう言ってアインハルトが、ヴィヴィオの手を握る。

 

「!」

「へぇ」

 

 握手をした瞬間、アインハルトはその目を見開き、ヴィヴィオは無意識のうちに感嘆の声を上げる。

 

──オリヴィエ同様、華奢な体つきかと思いきや、掌に伝わる堅い感触。これはクラウスの記憶に覚えがある、()()()()。高町ヴィヴィオさんと言いましたか、

 

──可憐な見た目に反して節くれだった手の骨格と指から伝わる骨の強度、これはおじさんの知り合いと同じ、()()()()()()()()()()。アインハルトさんだっけ、

 

 

──この年齢(とし)で、どれほどの鍛錬をっ!

 

 

 アインハルトとヴィヴィオ。

 

 お互いがお互いの掌を合わせただけで、そこに詰まっている時間の片鱗に触れ、お互いに驚愕する。

 

「──」

 

 そして、ヴィヴィオが天真爛漫な笑みのまま少し、ほんの少しだけ握手する手に力を込める。

 

「っ!」

 

 それに反応し、反射的に力を強めるアインハルト。

 

──力比べ? 誘われている? それにしては、込められた力が弱すぎる。

 

 ヴィヴィオの行動にそう邪推するアインハルト。

 

 ──一瞬で反応してきた。反射神経は一級品。制服だから肩や胸はわからないけど、二の腕と前腕の筋肉も質がいい。生まれつきかな? いや、生まれつきと鍛錬の賜物、その両方か。

 

 一方のヴィヴィオはアインハルトが反応したその一瞬で、アインハルトの分析を始めていた。

 

 そんな端から見たらただ握手を続けているだけにしか見えないが、水面下では駆け引きを始めた2人にノーヴェが声をかける。

 

「おいお前等、いつまで手を繋ぎ合ってんだ。そろそろ行くぞ」

「あ、うん! ごめんなさいアインハルトさん」

「いえ、こちらこそ呆けてしまい申し訳ありません」

 

 ノーヴェの言葉に正気を取り戻した()()()()()()2人はお互いの手を解放し離れる。

 

 2人が離れるとノーヴェを先頭に、集まった面々はスポーツコートへ向けて歩き始める。

 

 

──高町ヴィヴィオ、オリヴィエの複製体(クローン)……。底知れない物を感じますね。

 

 

──アインハルト・ストラトス……()()()()()ね。()()()()()()()人なんだろうな。

 

 

 歩いてる間、ヴィヴィオもアインハルトもお互いを意識しつつ、その間に決して言葉は無かった。

 

 

 

 ────

 

 

─区民センター内 スポーツコート。

 

 

 そこには運動着に着替え、サポーターを装着したヴィヴィオとアインハルトが対峙していた。

 

 お互いが構えると、アインハルトは身体保護のために魔法を発動する。

 

 

 アインハルトの立ち姿、発動した魔法を見てヴィヴィオの背筋に寒気とも感じられる震えが走る

 

 

──魔力の質も相当だ。くっそ、()()()()な。

 

 

 そんな思いを隠すように、ヴィヴィオも身体保護目的の魔法を発動させる。

 

──教科書通りの素直な構え。実家の魔法戦技が何かはわかりませんが、ノーヴェさんの言うとおり、この子が覇王(わたし)の拳を受け止めてくれると?

 

 その姿を見てアインハルトは悲嘆にも似た疑問を浮かべる。

 

 

「それじゃあスパーリング4分一本勝負。バインドと射砲撃は無しの一本勝負」

 

 

 ノーヴェの言葉に合わせヴィヴィオもアインハルトも腰を落とす。

 

 いつでも打てるように、何が来ても対応できるように。

 

 

「はじめ!」

 

 

 その声と共にノーヴェの手が振り下ろされる。

 

 

 それと同時にヴィヴィオがステップを踏み、一息で踏み込み右の直突きを放つ。

 

 

 それを難なく受け止めるアインハルト。

 

 そんな事は予想できていたのか、左、右、左、ハイキックと怒涛の連撃を加えるヴィヴィオ。

 

 

 ヴィヴィオのその動きを見て、戦っている姿を始めてみる観客は感嘆の声を漏らす。

 

 

 そんな観客の事など気にもとめず、アインハルトは思考していた。

 

 

──素直な技。私に拳がクリーンヒットしていないというのに楽しそうな表情。きっとまっすぐな心を持って、楽しく技を磨いている。私とは違う。

 

 

 悲願があった。

 

 

 生まれた頃より魂に焼き付けられた悲願が。

 

 

 技を磨いた。記憶と、何より魂が求める物のために。

 

 

 強さを求めた。それが先祖代々受け継がれた、自分に()()()()()()()()()()願いだから。

 

 

──私は強くなりたい。けど決してそれは、明るい想いではない。

 

 アインハルトの目の前の少女は、真っ直ぐに、自分へ向かってくる。教科書通りの綺麗な技を放つ。

 

──強くなることを、楽しいと思ったこともない。

 

 常に一人で、誰にも理解されず、魂が求めるままに技を磨いてきたから。

 

 

──この子は、私とは違う。

 

 

 自分(アインハルト)の暗く、重い気持ちをぶつけて良い相手でも、受け止められる相手でもない。

 

 

 そう思ったから、胸を締め付ける悲しみのままに放たれるアッパーを屈んで回避する。そのまま強い踏み込みと共に掌底を胸に押し当て、突き飛ばす。

 

 自分から突き放すように。

 

 自分に触れさせないように。

 

 

 掌底の威力に押され吹き飛ぶヴィヴィオ。

 

 

 アインハルトは手加減したし、オットーとディード(ヴィヴィオの護衛役)に受け止められたため、怪我の心配は無いだろう。

 

 

 そんな吹き飛ばされたヴィヴィオは、笑っていた。

 

──強い!

 

 ヴィヴィオの周りには強い人は沢山いた。

 

 師匠である(レヴィ)

 

 戦闘を生業とする(なのはやフェイト)は勿論、そうではない(シュテル)も、ヴィヴィオとは比べものにならない実力者だった。

 

 なのはの実家に帰れば剣士として完成された伯母や祖父などもいるが、それらは全て()()()()()()()()()()()の人ばかり。

 

 年期が違う。年齢が違う。

 

 そんな人達に負けてもヴィヴィオは悔しくはない。なぜなら当たり前なのだから。

 

 そんな人達に憧れることはあっても、()()()()()()()()()

 

 強さの次元が違うのだ。

 

 いつかは勝ちたいと思う。

 同じ次元に至り、勝利を手に入れたいと。

 

 しかしそれは今じゃない。今はできない。

 

 逆立ちしようが天地が逆転しようが次元の法則が乱れようが、勝てないものは勝てないのだから。

 

 だからヴィヴィオはこれまでの人生で、強くなりたいとは思っていても勝ちたいと思ったことは無かった。

 

 今日出会ったのも、勝てない相手。

 

 しかも同年代で、今のヴィヴィオより()()()()強い相手。

 

 

 

──勝ちたい!

 

 

 だからヴィヴィオは強く思った。勝ちたい、と。

 

 今はまだ勝てない確率の方が圧倒的に高い。それでも運が良ければ何かがあれば勝てるかもしれない。そんな絶妙な差。高すぎる壁ではなく、少し高いハードル。

 

──超えたい!

 

 そのハードルを、アインハルトを超えたい。凌駕したい。

 

 

──勝ちたい。

 

 

 ヴィヴィオの胸の中でくすぶっていた火が、燃え上がった瞬間だった。

 

 

 だから笑った。

 

 好敵手に出会えたから笑った。

 

 超えるべき、越えることのできる目標を見つけたから笑った。

 

 

 

 嬉しさのあまり、笑っていた。

 

 

 

 ───その笑みを見て、アインハルトは背を向けた。

 

 

「え」

「──お手合わせ、ありがとございました」

 

 一方的に言い放つと、そのまま更衣室へ向けて歩き出すアインハルト。

 

「あ、あの!」

 

 そんなアインハルトを呼び止めるヴィヴィオ。

 

「私、なにか失礼を?」

「いえ」

「それじゃ、私弱すぎました!?」

「そんな事は。

 

──()()()()()()()()()であれば──

 

 十分かと」

 

 呼び止めようとするヴィヴィオと、突き放そうとするアインハルト。

 

 拒絶されたヴィヴィオの胸中には悔しさが溢れていた。

 

──やっと暖まってきたのに! これからなのに!

 

 だからその悔しさのまま、アインハルトを引き留めるよう、懸命に声をかける。

 

「あの! 今のスパーが不真面目だと感じたのなら謝ります! 今度は本気でやりますから、今日じゃなくても後日でも良いんです!」

 

 必死に声をかけるヴィヴィオに対し、アインハルトも思うことがあるのか、今日の件をセッティングしたノーヴェへと視線を向ける。

 

「あー、じゃあさ、一週間後またやらないか? 今度はスパーとかじゃなくて本気の、練習試合って形でさ。どうかな、アインハルト」

「私は──」

 

 ノーヴェに問いかけられたアインハルトは反射的に断ろうとした。

 ()()()()()に割く時間など無いのだから。

 

 それでも、

 

──今日あの子は一度も剣を使わなかった。それどころか技と言える物も。まだ、奥がある。という事でしょうか。

 

 別にスパーリングを切り上げたのは、ヴィヴィオが不真面目だとか、本気を出さないのが気にくわないとか、そういう理由ではないため、気にはしていない。

 

──ただ、あの子の拳から伝わる技を競うという精神が、私とは生きている世界が違うと、そう感じさせただけ。

 

 

 それでも、ヴィヴィオが持つ()()に、惹かれている自分が居ることも、確かだった。

 

「わかりました。一週間後、もう一度だけでしたら」

 

 だから、そう答えた。胸のざわめきを解消するために。自分の未練を断ち切るために。

 

「っ! ありがとうございます!」

 

 アインハルトの返答を聞き、ヴィヴィオは喜び頭を下げる。

 

 本日のスパーリングはそれでお開きとなった。

 

 

────

 

 

「──と、言うことがあったの」

 

 

 家に帰ったヴィヴィオは、夕食と夜の訓練を終わらせた後、浴室で父親に今日の顛末を語っていた。

 

「そっか、だから今日は何か悩んでる感じだったんだね」

 

 夕食や訓練中など、どこか身の入らないヴィヴィオの様子を不思議に感じたのか、浴槽に浸かると今日あった事を聞いてきたレヴィに対して、ヴィヴィオは事細かに話した。

 

「あのね、パパ」

「うん」

 

 そんな理解を示してくれた父だから、自分(ヴィヴィオ)を心配して武術を教えてくれている師匠だから、ヴィヴィオは我が儘を言うことにした。

 

「一週間後の練習試合、御神の『技』を使いたい。他流試合はまだ禁止されてるのもわかってる。それでも私は今の私の全部でアインハルトさんに挑みたい、ぶつかりたい」

 

 そんな愛しい一人娘の我が儘を聞いて、レヴィはしばし考え口を開く。

 

「……わかった。良いよ」

「ほんと!?」

 

 レヴィの返答に喜ぶヴィヴィオに、レヴィは「ただし」といって言葉を続ける。

 

「武器はダメ。コールブランドも真剣も、木刀もダメ。使うなら手刀まで。これが守れるなら、剣技を使っても良いよ」

「わかった! 守る!」

 

 本来であれば後数年は他流試合が禁止されていたヴィヴィオだったが、条件付きとは言えそれが解禁されたのだ。喜びもひとしおであろう。

 

「よーし! 高町ヴィヴィオ、頑張りますよー!」

 

 喜びのあまり浴槽から勢いよく立ち上がり叫ぶヴィヴィオ。

 

 そんなヴィヴィオを師てあり父であるレヴィは、暖かく見つめていた。

 

 

 





 やっぱりViVidはヴィヴィオとアインハルトの物語ですので、一巻終了まではコンスタントにアップしていこうかと思います。

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