青星転生。~アンジェリーナは逃げ出したい~ 作:カボチャ自動販売機
そんな作品です。
第1話 プロローグ
上から降ってきた植木鉢に、頭をカチ割られたという何ともあっけない死の記憶こそあるものの、神様的な存在に会った記憶もないことだし、この場合、転生、というよりは憑依と言うのだろうか。
ぼくは、気がつくと女の子として生まれ直していた。
それもただの女の子ではない。
アンジェリーナ・クドウ・シールズ。
ぼくが愛読していた『魔法科高校の劣等生』というライトノベルにおいて、ゲストヒロイン的な存在として登場する、作中でも1.2を争う美少女であり、国内では最強の魔法師というぶっ飛びキャラ。
そのポンコツっぷり故に、作中ではその凄さが薄れてしまっていたが、こうして文字にしてみると、とんでもないキャラであることが分かる。
16歳にして日本の何十倍もでかい国で最強で、四葉がその総力を結集して完成させた司波深雪と同等の容姿を持つ。
ちょっと詰め込み過ぎなくらいに、チートなキャラである。
そんなアンジェリーナ・クドウ・シールズに転生もとい憑依して早12年。
12歳になったぼくは、軍人となった。
女の子になってるし、ここラノベの世界だし、そもそも転生したこと自体謎であるし、考えるべきことはたくさんあったが、時間が過ぎれば慣れるものだし、解決できないことは投げ捨てる。
女の子になったことで、変わったことは多々あったが、それも生活していれば慣れる。
この世界には『魔法』という現代ではあり得なかった事象が存在する。その存在によって分岐したのがこの世界であり、物語の要、それを操る者『魔法師』のいる世界だ。とはいえ、ファンタジー世界ではなく、近未来だ。
ラノベの世界とはいえ、基本は現代と変わらない。
少し家電が便利になって、交通が変わって、現金を使わなくなって、と変化していることは多いが、ファンタジー世界のように、魔法道具が主流で、馬車や竜で移動して、金貨や銀貨を使う――というわけではないのだ。ただ技術が進歩し、社会情勢が変わっただけ。驚きはあったが簡単に慣れた。むしろ、現代より便利になっただけだ。
最後まで頭を悩ませたのは、何故ラノベの世界に転生・憑依、なんてことが起きたのかということなのだが、これは数年考えた末に考えることを止めた。
答えなんて出ない問題であるし、それが分かったところでどうこうなるわけでもない。
今の状況を認め、過去を捨て、新しい人生を謳歌する。そう決めたのだ。
決めたのだが、世界がぼくにそれを許さなかった。
自分で言うのも何なのだが、作中、これでもかとその美しさを褒めちぎられているメインヒロインにして、主人公の妹、『司波深雪』と同等の美少女と言われていただけあって、ぼくの容姿はずば抜けている。
このアンジェリーナ・クドウ・シールズには、歌がプロ並みに上手いという設定もあるため、この容姿と歌で世界的大スターになれるのではないだろうか、と考えたものだが、そんなにイージーには進まなかったのだ。
ぼくの祖父は日本人であり、あの九島烈の弟だ。まだ国際結婚ウェルカムの時代であったとはいえ、元は他国の魔法師。そんな魔法師の血筋とあってシールズ家は肩身が狭い。
魔法師として使えることが分かると、ぼくは殆ど抵抗することすら許されず、半強制的に軍に入隊させられた。原作通りの軍人ルート突入である。
未成年にも容赦ない国の対応に涙が出てくる。
そして始まる軍人生活。
毎日毎日地獄のような訓練に、厳しい規則。
女にも全く容赦しないどころが、下手に容姿が良いだけにセクハラ、パワハラの連続。
軍のご飯は美味しくないし、休みは殆どなく、給料は雀の涙。
おまけに、ぼくの大好きなサブカルチャー、アニメ・漫画・ゲームなんかは、殆ど見れない・買えない・出来ない、だ。
三ヶ月もしないうちにぼくは決意した。
――こんな国、絶対亡命してやる!!
そうしてぼくの、亡命計画が始まる。
第2話も同時投稿していますので、よろしければ続けて読んでいただけると嬉しいです。