青星転生。~アンジェリーナは逃げ出したい~ 作:カボチャ自動販売機
原作キャラとガンガン絡ませていきたいと思っていますので、今章もよろしくお願いします。
第15話 二人の変化
日本へと亡命をして、2ヶ月が経った。
リンの手引きによって、日本へとやって来ることに成功しただけでなく、偽りの身分までも手に入れたことで、案外簡単に潜伏できている。
しかし、亡命の成功、というにはまだ一歩足りない。
ぼくは確固たる安全と平穏が欲しい。
そのためには、偽りではない正式な身分と、USNAの手出しを許さない強力な後ろ楯が必要だ。
身分と後ろ楯。
これはイコールで結ばれる。
正式な身分を与えられるような権力を持つ人間ならば、後ろ楯にもなれるのだから、つまりはぼくの目的を達成するために求められるのは、権力者とのコネクション。
しかし、それはそう簡単なことではない。
接触を誤れば、USNAにつき出されて終わりだ。
ぼくらの価値が、USNAに渡すよりも有益であると証明しなくてはならない。
そして、この価値が高すぎてもいけない。
ぼくの目的はあくまで、確固たる安全と平穏。
価値を高くし過ぎると平穏が遠ざかってしまうからだ。
このバランスが難しく、ぼくらは2ヶ月という時の中で、生活基盤を整え、ただ日常を送っていた。
日本に来て大きく変わったことと言えば、ぼくの口調だ。
今までぼくは、頭で考えるときには前世の口調そのままでいたが、話すときにはある程度女の子らしい口調になっていた。これは女の子として生まれ、育てられたことで、自然とそうなったのであるが、それが日本へとやってきた瞬間、思考の口調に変化した。
いや、正確には
日本へと亡命するにあたり、日本では基本的に日本語を使う、ということをアビーと決めていた。これは単純にその国に慣れるため、というのもあるが、一番は日本という地域の中により溶け込みやすくするためだ。その国の言語を話すことで、自身の中でその国に存在するあらゆる感覚をその国に合わせるのだ。
海外留学をしたら突然性格が明るくなったり、味や服の好みが変わったりすることがある。
これは極端な例であるが、その国の言語を操ることは、如実に自己形成へ影響を与える。
だから、日本語を使うことにしたのだが、これがぼくに思わぬ影響を与えた。
この日本語で話す、という提案をしたのはぼくで、それは、前世が日本人であるぼくは勿論、オタクであるがために無駄に天才を発揮し習得していたアビーも、日本語を使えるからこそなのだが、ぼくの日本語は前世に由来したものである、というのが、この場合影響した。
がらりと変わったぼくの口調に、アビーには「ぼくっ娘というのは今でも愛されるジャンルだが、些かキャラを盛りすぎなんじゃないか」と見当外れなことを半笑いで言われ、小一時間程、喧嘩になった。
故に、アビーには一人称こそ「ぼく」であるが、USNAでの口調を意識している。
「アビー、大切な話があります」
「なんだい、リーナ?」
毎週日曜日に放送されている女児向け魔法少女アニメシリーズを見ていたアビーが、アニメを止めて振り返る。
……ここで、アビーの服装を描写しておくと、デカデカと桃色の髪をした魔法少女がプリントされたTシャツに、ジーンズとシンプル且つオタク感溢れる格好でありながら、外国人故か、彼女の中性的な美貌故か、妙にスタイリッシュ。しかし、平日の昼間から、その服装でそのアニメを見るのは、壊滅的と言える。天才と言われた少女がこんなことになってしまい、ぼくは若干遠い目で、自分の選択が本当に正しかったのか考えさせられる。
この娘、こんなアニメとか見てないで、もっと世界のためになることが出来る娘なのだが。
果たして、これって、ぼくのせいなのだろうか。
「リーナ、そんな引きこもりの我が子を見て、昔は優秀だったのにどうしてこんなことに、と自身の教育が悪かったのかと振り返る母、のような表情を止めてくれないか」
どうやら自覚はあった様で、気まずそうにぼく言う。
そのまま現状の堕落から抜け出して欲しいところではあるが、アニメは止めたものの、手元で忙しく魔法少女のソシャゲを進めているので、とても無理そうである。
「はぁ……話が逸れるところでしたね、それで本題なのですが」
この本題というのが、アビーの堕落とも関係していることなのだ。
そして、命に関わる問題でもある。
「資金が底を尽きました」
リンから、日本へと亡命する際に活動資金を貰っていた。その額、100万円。
偽造の身分証こそ用意して貰ったものの、即座に日本円を手に入れるのは面倒であった。そもそも、USNAでもそこまで資金があったわけではない。
ぼくは安給料であったから、頑張って亡命用の資金を貯めていたものの、精々二十数万円だった。アビーはとんでもない額の給料をもらってはいたが、急に準備させたために、資金面ではほとんど用意できなかったから、ぼくらはその二十数万円で、逃亡生活をしていた。
だから、リンからポンと100万円を渡されて、ぼくは驚愕した。
100万円と言ったら大金だ。
前世でも今世でも未成年かつ、バイト代や安給料でしか賃金を得ていないぼくからすれば、見たこともない金額。
それが、リンからポンと手渡されたのである。勿論、今の時代、現金ではなくマネーカードなのだが、そこには確かに100万円の札束と同じ価値がある。
それを当たり前みたいな顔で渡すリンも、平気な顔で受けとるアビーも信じられなかった。
100万円って、そんなお小遣いみたいな感じで、貰っていいものじゃないと思うんだ。
「また、リンに貰えば良いじゃないか」
「最高にクズな提案をありがとうございます」
全くの真顔で、引きこもりのニートみたいなことを言うアビー。手元でソシャゲを続けているのもまたクズい。
が、その意見にもアビーなりの理由がある。
「リンと私たちはギブアンドテイクなんだ。資金は引き出せるだけ引き出せば良いだろう」
「ギブアンドテイクだからこそですよ。なるべく『借り』を大きくしたくありません」
リンがぼくらの亡命に手を貸したのは、何も仲良くなった友達のため、というわけではない。
リンの父は、香港系国際犯罪シンジケートに関わっているらしく、ぼくたちが今回亡命に使ったルートも、その組織が持っているものの様だ。
そして、リンは自身が狙われた際の亡命先として日本を考えているらしい。だから、ぼくらを亡命させておくことで、そうなった時の護衛や拠点確保などのため、という理由もあるのだ。
組織内で父の立場が悪くなり、自分が狙われる、という状況に陥った場合、組織外の協力者は重要だ。
ぼくらを日本に置いておくことは彼女にもメリットがある。
「大体、100万円って普通、2ヶ月で無くなるような金額じゃないんですよ」
ここで、ぼくたちがどのようにして100万円を失ったのか、振り返っていこう。
まず、ぼくたちは日本に着いてすぐ、生活の拠点となる場所として、短期賃貸マンションの部屋を借りた。
所謂、マンスリーマンションというやつだ。1ヶ月単位で部屋を借りられのである。
その上、敷金・礼金・保証金や保証人といった煩わしいものもないし、家具に加え、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの白物家電から電気釜や電子レンジなどの生活用品が一通り揃っているという至れり尽くせり。
とりあえず3ヶ月で契約し、ここで大きな出費をしたが、これは仕方ないだろう。
生活の拠点を手に入れたことで、二人でしばらくダラダラと過ごした。
そうして、日本に慣れてきたところで、ぼくらは秋葉原へと乗り出す。
夢にまで見た秋葉原。
ぼくらは、はしゃいだ。それはもう凄まじいテンションだった。何なら泣いた。号泣だった。
USNAでは手に入らないようなオタクグッズの数々を前に、やっぱり亡命は間違っていなかったのだと確信した。
が、財布が軽くなった。
そう、一番の原因はこれだ。何せ、オタクグッズに軽く50万は使っている。
その後、アビーがハマった魔法少女のソシャゲに課金したり、ぼくが集めているトレーディングカードをダース買いとかしてたら……残金が無くなっていたのである。
うん、日本という国のオタク文化が悪いんだ。
中々出ないソシャゲの期間限定キャラとか、ダース単位で買っても当たらないサインカードとか、そういうのが悪いのである。
ぼくらは適切に100万円を使っていた。
2ヶ月もったのは、むしろ偉業である。まあ、最初にこの部屋を借りたときに、電気・ガス・水道などが込みでなかったらとても無理だったが。
正直、オタクグッズ以外の生活は質素なものだった。基本、自炊だったしね。
ぼくの数少ない女子力、料理が火を吹いたね。ま、一回物理的にコンロが火を吹いてビビったのだが。まあ、美少女にドジっ娘属性は基本装備だから(震え声)
しかし、この状況、どうしたものか。
冷蔵庫に多少食材はあるものの、残っているお金は財布にある3047円。
とりあえず、部屋は3ヶ月で契約したから後1ヶ月は大丈夫だが、この金額で1ヶ月生活は絶望的である。餓死する。
「ふむ、要はお金を稼げば良い、ということだな」
「アビー、まさか何か名案が!?」
ぼくの投げ掛けに、アビーがドヤ顔で、答える。
それは驚愕を通り越して、何故か冷静になってしまうような、そんなとんでもない案だった。
「リーナが体を売れば良い」
次回、リーナ体を売る。
リーナさん、色々ピンチ。
さて、明日も0時に投稿します。