仮面ライダーヴィランズ   作:辰ノ命

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ジャスティス(正義)に名前バレてるじゃん。やべーよやべーよ…
殺さないで…やめてください…アイアンマン!

果たして彼は自分の運命に耐えることはできるでしょうか。それではどうぞご覧ください。


EP02 宿命の悲しみ

「な、なぜ…僕の名前を…」

 

「少々つけさせてもらったよ。このガジェットを使用してね」

 

正義の手には手のひらサイズほどの機械があった。どうやらこれで自分を監視していたようだ。この状況かなりまずい。

 

「どうしようっていうんですか…正義さん」

 

「ジャスティスと呼んでくれてもいいのに、まぁ君の好きなように呼びなよ…ところで、彼女さんが連れ去られたらしいね」

 

「…!?」

 

「助けに行ければ行くけど。場所がわからないからね。まぁ夕飯とか言ってるけどどうなんだろうね。もしかしてもう食われてたりして」

 

「やめてください!!」

 

軽率な発言に、睦生は正義を睨みつける。とても鋭い目に正義は思わずニヤリと笑う。

 

「…昨日始まったばかりなのに、もうあっち側の目になったな、お前」

 

「え?」

 

「だいぶ馴染んできたんじゃないの?その体。そろそろ完全にアンチバイツになったりしてな」

 

言い返そうと口を開いた時、警察がオフィス内に入り込んできた。正義は自分のことに関して何やら色々言っているが、正体やらその辺のことではないらしい。とにかく今は都合が悪いようだ。睦生は少し事情聴取されたが、特に何も聞かれなかった。とりあえず、まなの捜索はしてくれるらしい。それから僕は病院に運ばれた。親もその後駆けつけてくれた。

ん?まずくないか?病院に運ばれて検査でもされたらバレるんじゃないか…?

 

「あ、あの検査とかします?」

 

「ん?あぁ一応ね。アンチバイツと会ったんだ。もしかしたらってことも考えられるから」

 

「そうですか…」

 

「何か不安でも?」

 

「い、いえ別に。ただ気になっただけで」

 

どうしよう。バレたら殺されるのかな。それとも実験…。アンチバイツの力を手に入れてからまだ1日しか経ってないから不安で仕方ない。まだこの体についてよくわかってないし…。

 

と、そんなことはなかったので本当に安心した。特に異常は見られませんで済んだ。病院を出て親に、ちょっと気持ちが落ち着かないからそこら辺でぶらついてるよ、と言って別れる。

人がいない路地に入り、睦生はビルを這い上がる。屋上に着くと神経を集中させ、周りの音を余すことなく聞いて行く。自分でもここまで集中するのはなんだが久しぶりな気もする。ただ今はまなを助けたいという一心で耳を澄ませる。

 

「…………」

 

やはり何も聞こえない。諦めかけたその時、微かにだが聞いたことがある声が聞こえる。あのアンチバイツだ。まなの声は流石に聞こえない。だがかなり距離は離れてはいるがそこにいる。

 

「待ってて…絶対助けるから…」

 

怪人態へと変貌し、急ぎその声のする方は駆け出す。まなだけは必ず助ける。まなだけは………。

 

まなと初めて出会ったのは高校生の頃、1〜3年までずっと同じクラスだったけどただ仲がいい程度だった。同じ会社に入ってから本格的に付き合い始めたのかな。凄く優しくて、僕の事をいつでも気にかけてくれて…色んなところへ行った。思い出もたくさん作った。とても…とても楽しい時間だった。

これだけじゃない。まだまだ彼女には魅力的な部分がたくさんある。何があっても絶対に助ける。これはその為の力だ。

 

 

 

 

 

 

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まだ建設中のビルの中を慎重に忍び込む。ここから声が聞こえた。外は昼過ぎ、まだ明るいはずだがビルの中は薄暗く、妖しい光が射し込んでいる。周りに警戒しつつ、耳を澄ませる。声が聞こえ…ない?何かやっているのか?……いや違う…後ろにいる!!!

 

「オラァァァァァッ!!!」

 

「あぶっ…な!!」

 

胸から横真っ二つにされる所で、指先だけの力を使い剣を受け止めるが、もう一本の方で右腕を切られる。

 

「不意打ちへの対応は良かったが、その後がやっぱりど素人だな」

 

「ハァ…ハァ……まなは…どこだ!!」

 

「あぁ、あの女か…知りたいか?」

 

「どこだっ!!!!!!!」

 

「そう怖い顔するなよ…俺の腹の中」

 

「お前ぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!!」

 

再生し、ただひたすらに殴りまくるが、剣で塞がれる。アンチバイツは右から来たパンチを避け、すぐさま睦生の顎に蹴りをかます。体制が崩れたところを見逃さず、胸の部分を十字に切りつける。

 

「うっ…!!」

 

左腕の剣を地面に突き刺し、それを軸に一回転し、顔面に蹴りをかます。が、その瞬間アンチバイツの脚を掴み上げ、投げ飛ばすも周りの柱を利用し衝撃を和らげてしまった。

 

「はははっ女1人のためにこれか。素晴らしいな愛というのは」

 

「まなを…まなをよくも…!!」

 

「ジョーダンだジョーダン。安心しろあの女は生かしてある」

 

「……え……?」

 

「今このビルの一番高い場所に縛り付けてある。まぁ後で夕飯時に食うつもりだったけどな」

 

「…………」

 

「これで一安心だな。それがちょっとした…」

 

凄まじい速さで睦生の脚を掴み、振り回して柱に叩きつける。

 

「隙になるんだよなぁ!!!」

 

最後に地面に叩きつけ、大きな穴が開く。そこで頭を掴み睦生に乗ったまま下降する。鳴ってはいけない音がなり地面着地する。間髪入れずに動けなくなった睦生に対し、両腕、脚を切断する。

 

「あ…ぐっ……っ!!!」

 

「しばらく寝ていろ。お前と遊んでたら腹が減っちまった」

 

「まさかお前…!!」

 

「……こいつの記憶からこういうのは…早弁ってやつだな」

 

「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

 

軽々とジャンプし彼女の元へ向かって行く。早く。早く再生しなくては。早く!!

 

「くそ!!…くそ!!!!!」

 

まなの元へたどり着いたアンチバイツは、舐めるように見つめる。そしてニタリと笑い、叫びそうになるまなの口を手で覆う。

 

「騒ぐなよ女。食事中は静かなにしたいんだ…なぁ?」

 

「ん…んん…!!」

 

「それじゃ…頂くとするか」

 

頭を丸かじりできるほど大きく口を開ける。

しかしその瞬間、その口に銃弾が撃ち込まれる。たまらずアンチバイツは一段ほど置いて行く。口を抑え、周りを探っていると空から一人。仮面の男が現れた。

 

「仮面…ライダー…!!」

 

「大丈夫?もう安心だから」

 

「ジャスティスさん!!」

 

再生し終えた睦生が飛び上がってくると、目の前の光景に驚いた。

 

「正義さ…!!」

 

「おっとそこにいるのはアンチバイツ。まさか…二人も相手することになるとはね…と、言いたいけど。君はそこのアンチバイツと違うらしいね。いいよ。協力ならしてあげるよ。今は」

 

「お前…ら…!!!」

 

ジャスティスはまなを安全な場所へ運ぶと、すぐさまアンチバイツの懐へ飛び込み剣で切りつける。反応が遅れ、斬撃をもろに浴びてしまい足場から落下する。その隙を逃さず、睦生がアンチバイツの頭を掴み、全体重を乗せて地面に直撃させる。

ぐちゃりと音を立て顔が潰れる。しかしこれくらいではたかが知れている。睦生の腹部に両腕を変化させた剣で突き刺し、内臓を抉り出さんとかき回す。

 

 

「うっ…!!!??」

 

「…ゲッ…ァガ……ェ……!!!!」

 

流石にこれは今までで一番きつい。だがここで仕留めなければ…仕留めなければ……………そうだ。このアンチバイツの中にはまだ人が生きている。でも助ける隙がない…一体どうすれば………

 

【 ジャスティスラッシュ!!! 】

 

コアにその一太刀が入る。睦生は目を丸くした。

 

「驚いたか?言ったろ。今は協力してやるってな」

 

「ま、待ってください!!彼はまだ助けられたんです!!なのに…!!」

 

「黙れガキが。何ヒーローぶってんだ?俺は言ったぞ。この世は食うか食われるかだってな。お前がたらたらしてるから、今回あの女が連れ去られたんじゃねーのか?あ?」

 

「それは…」

 

「調子に乗んのも大概にしろ。お前のその力は確かに使えるかも知れないけどな。非効率的なんだよ。そのままだとお前本当に死ぬぞ?…まぁ時が来たら俺がお前を殺すけどな」

 

「…………」

 

確かにそうだ。理由はなんであれ、僕はこの人を…アンチバイツを殺そうとは思わなかった。ただ戦闘不能にできればいいと思っていた。正義さんが言っていることは正しいのかも知れない。そんなことを考えながら人間態に戻る り、前を向くと見られてはいけない人物に見られてしまった。自分の姿を。一番知って欲しくなかった人に。

 

「………まな………」

 

「ごめんね…静かになったから降りてきたの…」

 

「…まな…僕は昨日、化け物になったんだ。アンチバイツに」

 

「でも睦生でしょ。わかってる。あなたは姿が変われるようになっただけ。いつもの睦生だから」

 

「……怖くないの?人を食う化け物になっちゃったんだよ?」

 

再び怪人態に変わり、ゆっくり近づく。すると彼女はひるむ様子もなく、微笑みそっと抱きしめてくる。

 

「あなたは睦生。どんな姿になっても私はあなたを愛してるから」

 

「…ありがとう、まな。僕も愛してる」

 

人間態へ徐々に戻って行き、まなを抱きしめる。これでいい。これでいいんだ。彼女が認めてくれるなら僕は…

 

「全く君達は私がいることを忘れてないか…?……はぁ…それじゃ邪魔にならないうちに帰るよ…睦生。またどこかで」

 

ジャスティスはそう言って早々に立ち去ってしまった。空気を読んだのか。それともやはり都合が悪かったのか。いまいちまだよくわからない。

だけどようやくスッキリした。いや、家族にもなんとか正体を明かさないと。いつかね。

 

「じゃあ帰ろうか」

 

「うん……でも明日から仕事どうしよっか」

 

「今日はいいよ。まだね」

 

そうして2人でビルから抜け出そうと手を握った。

 

 

 

 

 

 

手を握った

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった

 

 

 

 

赤い液体が宙を舞う。一つを軸に地面を円状に赤く染め上げて行く。

 

 

 

 

 

「あ…あれ…?」

 

「まな…?」

 

 

 

 

 

 

「死ねえぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!」

 

あのアンチバイツは生きていた。片腕を剣に変え、まなを刺し貫き、勝ち誇ったように笑う。剣が引き抜かれ、まなの体を更に真っ赤に染め上げる。睦生は急いで傷口を抑え、荒い呼吸と心臓の鼓動で周りの音は何も聞こえない。ただ目の前の光景を理解できずにいた。理解しようとはしていたがあまりにも衝撃的、突然の出来事。

 

「あ…………あぁ…………!!」

 

今、わかる。こんな傷で生きられるはずがない。もうすぐ死んでしまうと。まなの呼吸、鼓動が徐々に弱まってきている。虚ろな目をし、睦生を見つめる。

 

「まな…!!だめだ…だめ…こんな……!!!!」

 

「…む…つき……私……もう…だ、め…みたい……」

 

「まだ!まだ治せる!大丈夫!!大丈夫だから!!!」

 

まなは静かに首を横に振る。そして優しく微笑み、睦生の頰に触れる。

 

「ごめんね………めいわ…く……かけちゃ…って………」

 

「迷惑なんてこれっぽっちも…!!」

 

「あな…たは………いき…て……おねが…い……」

 

「だめだよ…まながいなかったら…僕は…!!!」

 

「睦生…………その…ちか、らは…………人を……守れ……る……あなた…なら……できる……から…………」

 

「君を守れてない…守れて…」

 

「いいの……睦生は……こうし、て……来てくれた…から………それだけで………だから……おねが…い…みんなを…守っ…て……………大好きだよ……むつ………──────」

 

 

 

「まな…?まな…だめ…やだ…いやだ……だめだだめだだめだ…いかないで…いっちゃだめだ…!!!まな!!!まなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!」

 

 

 

睦生の腕の中で、彼女は静かに息を引き取った。彼女は二度と眼を覚ますことはない。二度と。

 

「今度はお前だ。出来損ないのアンチバイツが!!!」

 

「………………」

 

底知れぬ怒り・憎悪が込み上げてくる。拳を握る手が力を増す。限界を超えた殺意が溢れ出た時、体の中で知らぬ声が聞こえる。

 

---殺したいか?

 

「誰だ」

 

---お前の主となるはずだったアンチバイツだ

 

「それが今更なんだ」

 

---お前にもう分離させる気がないのはわかってる…だとするならもう殺すしかないもんな

 

「………………」

 

---この世は食うか食われるか…いや、違う。食われて食うんだよ。あいつが憎いよな?あいつをぶち殺したいよな?ならもうやることは一つだ

 

 

「………ってやる…………」

 

 

---あぁそうだ…食え。喰らえ

 

 

「お前を………!!!!!!喰ってやるっっっっ!!!!!!!!!!」

 

 

怪人態へと姿を変える。が、いつもと違い口元が裂け始める。今まで晒すことなかった鋭い牙が露わとなる。そして一瞬でアンチバイツの目の前に移動し、殺意に塗れた拳をぶつける。顔が歪み、大きく吹っ飛び、端の壁に激突する。

 

「かはっ…!!」

 

「……………」

 

それと同時に飛び跳ね、そのままアンチバイツに馬乗りになる。口が更に裂けていき、その顔は笑っているように見える。アンチバイツは今まで感じたことのない恐怖を覚え、何度も剣を突き刺し、必死の抵抗をして見せたが、睦生は全くひるむ様子なく睨み据え、首を掴む。

 

「い、今わかった…お前は俺たちと同じだ…いや…かなり特殊な方のな…」

 

「………………」

 

「…っ……お、お前は一体…何なんだろうな…」

 

その言葉を聞いて首を掴んだまま立ち上がり、そのまま持ち上げる。

 

僕はもう人間でもなければ、こいつらのような怪物でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は………………俺は……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 『 ヴ ァ イ ザ ー 』だ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

あれから色々あった。2ヶ月経った今も仕事に就いてない。まぁアルバイトはしている。だけどそれ以上に自分にはやらなきゃいけないことができた。

この力は自分の思っているよりも強大で恐ろしい。だからこそ、使い方を誤ってはならない。人の為に…自分の為に使っていく。

まなと約束したように…。

 

「行ってらっしゃい」

 

「あぁ、行ってくるよ」

 

「…変わったね。あんた」

 

「ん?え?……あー…まぁ人はいつかは変わるものだよ…多分」

 

「多分ってなによ。ほら、バイト遅れるよ」

 

「母さんが言ってきたから……ふっ…うん。行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

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夜の街に悲鳴声がこだまする。あの日、初めてアンチバイツにあった場所に、また出現したらしい。『ユニク・アンチバイツ』ではないらしい…。

あの腕を剣に変えるとかを、これから特殊なアンチバイツをユニク・アンチバイツと呼ぶ事を正義さんが世間に公表した。

 

「助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

「大丈夫です。私が保証します」

 

取り込まれた人の自我を出してるだけ。あの人は脅されてるだけだ。あれから自分も考え方を変えた。確かに取り込まれた人を助けられる力を持っている。だけどそれでもやらなければならない。アンチバイツはそれほど力を持っている。分離させるには相当時間がかかる。つまり能力を持っていてもほぼ無意味だ。だからやるしかない。自分は生きる為に戦う。

 

「…行こう」

 

---いい目だな

 

「そうかな」

 

---いや、言ってみたかっただけだ

 

「なんだそれ…」

 

自分の中の悪魔と共に。

ビルの上から飛び降り、膝を悪くする着地を行う。衝撃で地面にヒビが入る。

 

「……同じ種か………っ!?…ちっ。お前は例のヴァイザーか」

 

「あぁ」

 

「…俺を殺すつもりなんだろ?……逃げるつもりはない」

 

「逃げても、俺はどこまでも追いかけるけどね」

 

そう言って右手を、横に大きく払うと同時に片腕を剣に変える。

喰ったものを力に。それが自分の…アンチバイツとしての本来の力。

 

「行くぞ。アンチバイツ……お前らが一匹残らず消えるまで喰ってやる」

 

「…調子にのるなよ。劣等種がぁぁぁぁ!!!!────────」

 

 

 

───ヴァイザー。生きる為、守る為に、全てを喰らう者。




以上!!皆解散!!君もう帰っていいよ!!

戦闘シーン…いやぁきついっす

さぁ次から…やっと…ちゃんと戦いが始められるねんな
それじゃまたはいよろしくぅ!!お願いします。

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