虹の軌跡   作:テッチー

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クッキングフェスティバル(後編)

 少し時はさかのぼる。

 A、Bブロックの準決勝が終わって、小休止の時間のこと。

「少し遅れてしまったな」

 正門を小走りで抜けて、本校舎へと向かうのはナイトハルトだった。

 今日はヴァンダイクとの打ち合わせを予定していたのだが、ガレリア要塞で事務仕事に追われていて、出立時間に間に合わなかったのだ。

 ヴァンダイクもそんな軍務事情は理解しており、別に遅れても構わないというスタンスだったが、しかしその配慮においそれと甘んじられるナイトハルトでもない。

 分刻みで動くことが当たり前の職業軍人。加えて面談相手は名誉元帥。

 顔には出さないものの、彼はやはり焦っていた。

「導力通信がもっと普及していればいいのだが」

 そうすれば事前連絡を入れられ、最低限の礼節くらいは守ることができるのに。

 ぼやきながら、歩を早める。

「ん?」

 グラウンド側から大勢の声が聞こえてきた。

「自由行動日のはずだが、課外活動でもしているのだろうか」

 それは良いことだと思う。かつて自分がこの学院に通っていた時よりも部活数は増え――よく分からない部活も増えたが――生徒達の活気も溢れている。

 別に昔は元気がなかったというわけではない。十年程前はこの学院もありきたりの士官学院としての様相が強かった。要は軍隊色である。廊下は走らない。教室内でもみだりに騒がない。教官は上官として接する。居眠りなどもってのほかだ。

 そんな雰囲気だったから、今のような和気藹々という感じは、そこまで前面には出ていなかった。

「今の校風も嫌いではないが、もう少し引き締まってもいいとは思うな」

 もっともサラのような人物が普通に教官を務めているので、規律第一、常在戦場の心持ちで平素を過ごせと言っても、今一つ説得力に欠けるわけだが。

 いつの間にか立ち止まり、そんな事を考えていると、グラウンド側から二人の女子生徒が走ってくる。

「誰かいればいいけどねー」

「もう、走り疲れたわよお」

 一人はⅦ組で、もう一人は体育大会で面倒を見ている貴族組にいたから、それぞれの顔と名前を覚えていた。ミリアムとマルガリータである。

「審判が足りないってどういうことよお」

「みんな保健室に行っちゃったんだってさー」

 だから代わりを探すとか、手頃でちょうどいいのはいないかとか。

 会話の全てを理解することは出来なかったが、とりあえず自分に関係無いことのようだ。思考を当初の目的へと戻し、本校舎の扉に手をかける。

「あらあ、ナイトハルト教官じゃない」

 凄まじい声量に、びりっびりっ、と空気が震えた。

 ごきげんようと、いかにも貴族子女らしい挨拶を向けてきたのもつかの間、マルガリータは無遠慮にずしずし近付いてくる。

 がしっと万力のような握力で、ナイトハルトの片腕を掴み上げると「お願いがありますのお」と、彼女は猫なで声を発してみせた。

 鼓膜が激しく打ち震え、わんわんと頭蓋に反響する。猫の甘声などではなく、もはや虎の咆哮だった。

 反対側の腕をミリアムが掴む。

「じゃあ、ボク達に付いて来てね」

「ま、待て、お前達。説明を――」

 有無を言う暇もない。ナイトハルトはずるずるとグラウンドへと引きずられていく。

 相変わらず状況は飲み込めない。しかし自分は“何かの代わり”で、そして“手頃でちょうどいいの”だということだけは分かった。

 

 

 

「どうする?」

 リィン達は青チームである。適当な食材を並べた調理台を見下ろし、リィンはクロウに問う。

「ああ、そうだな」

 腕を組んで、考え込むクロウ。

「こういうお題の時は、多少強引でも審判を納得させればいい。印象付けるパフォーマンスとかも有効だな」

「えーと。つまり、どういうことなんだ?」

「細かいことは考えず、いつも通りにやればいい。題については俺が口先でそれらしいことを言って押し通してやるぜ」

「何というか、説得力があるな」

「だろ?」と笑んでみせ、クロウは反対側の赤チームに視線を移した。

 こちらと同じように、アリサとフェリスが食材を手に取りながら、打ち合わせをしているところである。

「問題はあっちだ」

 親指でクイっと指し示し、げんなりとした表情を浮かべた。

「この料理テーマの場合、向こうが何作ってくるかは大体想像が付くだろ。頭をひねった挙句、必ずそういう発想に行き着くはずだ」

「ああ、そうだよな。そっちの対策も考えないと」

 クロウの意見にはリィンも同意である。

 厄介なことに決勝の料理テーマは、食材ではなかったのだ。

「あいつら絶対やらかしてくるぜ。何てったってお題は『炎』だからな」

 

 

「炎って何ですの? そんな食材ありませんわ」

 案の定フェリスは唇を尖らしていた。彼女にとっては理解に苦しむ、理不尽な要求である。

「これは食材のことじゃないわ。要するに審査員に炎と納得してもらえる料理を作ればいいのよ」

 そうは言っても簡単な事ではない。イメージなのか、視覚的なのか、味覚的なのか。美味いのは当然として、料理一つで、そのテーマを伝えなくてはならないのだ。

「では例えばですけど、ケーキを作って炎の形にこしらえれば、それはテーマとして成立するわけですわね」

「うーん、難しいわね」

 こちらがそのつもりでも、審判が炎と認識しなければならない。相手が受け取る印象、心象を想像する感性も要求されるのだ。

「火、赤い、焼く……」

「明るい、揺れる、燃える、熱い……」

 とりあえず炎から連想される語彙を並べ立てていく。

 やがて、ありとあらゆる単語の果てに、彼女達はその言葉へと辿り着いてしまった。

『……辛い?』

 

 

 

 コンロから炎が上がり、鉄鍋の中で米が躍る。

 歓声が沸くと、クロウは得意気に手首のスナップを利かせてみせた。

「リィン、付け合わせのスープは五分以内にいけるか?」

「クロウのペースに合わせる。気にせず作ってくれ」

「おうよ!」

 威勢よく返して、鉄鍋に溶き卵を投入する。黄金色の輝きが全体に広がり、さらにテンポよくクロウは鍋を振った。

 いわゆる焼き飯である。様々な具材と一緒に米を炒めるという、シンプルながら奥の深い一品だ。これも東方がルーツの料理だが、その真髄はまさに炎にある。高温で一気に水分を飛ばし、米の一粒一粒に熱を均等に回すことで、仕上がりがパラパラの絶品焼き飯へと変わるのだ。

「ほい、ほいっと」

 鉄鍋はかなりの重さだが、苦を見せることなく、クロウはひたすら米を炒め続ける。焦げ付かさない一線を見極めることが重要だ。

 クロウは味や見た目に“炎”を求めてはいなかった。見せる――否、魅せるのはその調理工程。米が炎をくぐる様である。これを見て、炎と無関係とは言わせない。条件はすでにクリアしていた。万が一、テーマに付いて言及してきても、得意の口八丁で丸め込めばいい話である。

「うし、出来たぜ!」

「スープも完成だ」

 皿に装い、これで準備は整った。さっそくそれを審判席に運ぼうとするリィン。だがクロウは「待て」と短く制した。

「持って行かないのか? 早くしないと冷めてしまうぞ」

「リィン。今までの試合の勝利傾向を思い返してみろ」

「傾向……?」

 そう言われて、順々に出てきた料理と試合結果を頭の中に浮かべてみる。

 焦げ付いたハンバーグ。焦げ付いたステーキ。ワサビマスタードケーキ。マルガリータパフェ。猛将オムライスのハイヤー添え。錬金茶碗蒸し。ポトフ。散弾式野菜炒め。カルボナーラ。ザリーガパスタ。イールのかば焼き。焼きオオザンショ。

 中にはまともな料理もあったが、総じて酷い。

 勝利の傾向ということは、法則的なものだろうかと思案するリィンだが、今一つピンと来なかった。

 首をひねるリィンに、クロウは言う。

「じゃあヒントだ。全てじゃねえが、料理を先に出した方と後に出した方ではどっちが勝ち数が多い?」

「それは……後の方だったと思うが」

 確かにそうだった。それはなぜかと思い出してみると、

「あ!」

 答えは明白だ。

 当然だがスムーズに作れた方が先に料理を出し、手間取る方が遅れて出す。得てして最初に出す方が、上手く作れた通常の料理。後に出す方が、アクシデントの果てに生まれた珍妙料理。あるいは攻撃料理。

「そういうことか」

「おう、分かったか」

 どんなに美味しい料理を出しても、後に続く危険物体が審判員をことごとく葬り去るから、まずまともな判定にならない。つまり、先出しの方が不利という流れが、攻撃料理の介在という特異な条件下で成立してしまっているのだ。

「ちょっと待ってくれ。先に変な料理を出したとしても、審判はどの道倒れていた。結果は同じじゃないのか?」

「その可能性はあるが、正気の残ってる審判だっていただろ。制限時間を目いっぱい使って、審判が落ち着いた頃合に料理を後出しして、そいつらに判定を仰ぐやり方だってあったはずだ」

「じゃあ、この決勝は――」

 言いよどんだリィンの言葉を、クロウが継いだ。

「多少冷めたって味では負けねえ自信がある。審判が全滅しない可能性に賭けて、あえて後攻に回るぜ。分かってるな。俺達は絶対に勝たなくちゃならねえんだ」

 見れば、アリサ達もようやく動き出したところだった。鍋に得体の知れない赤いものをドボドボと投入している。リィンは息を呑み、想いを託すかのように、視線を出来上がったばかりの焼き飯に注いだ。

「そうだな、俺達は勝たないといけないんだ」

 ぐっと喉を押し詰まらせ、リィンは固く拳を握りしめた。

 

 

 青チームの目論見通り、料理完成が遅れながらも、先に皿を審判席に運んだのはアリサ達だった。

 湯気が立つ底の深い器を、それぞれ審判達の前に並べていく。

「これは……なんだ?」

 主審席に腰を据えるナイトハルトは、そうとしか問えなかった。

 ぐらぐらと煮えたぎる血のように赤い液体。ごつごつとした岩のような野菜の塊。ぼこんぼこんと弾ける特大の気泡。立ち上る異常な熱気のせいなのか、この料理の周りだけ空間が歪んでいる気さえする。

 耐え切れず仰け反ったナイトハルトに、フェリスが料理名を告げた。

「トマトスープ改ですわ」

「トマト……? 改?」

 改はいらない。なぜ普通のトマトスープにとどめておかなかった。どうして余計な改良をしてしまったのだ。

 この赤色はトマトということだろうか。明らかにそれだけではない気がするが。

「テーマは炎だったな。この色が火を表しているということか?」

「確かにそれもありますけど」とアリサが答えかけたが「それは食べてみてのお楽しみですわ」とフェリスが意味ありげに続く言葉を隠した。

「……うむ」

 もう大体わかる。

 ちらりと左隣のサラを見てみた。頬をひくつかせ、「あ、あんた達」とこめかみに指を当てている。

 次に右隣のハインリッヒを見てみた。「むう……」と難しい顔を浮かべているが、圧倒されているからか、意外にも苦言を呈したりはしていない。

「とりあえず、食べるとしましょう」

 改めて両隣に言って、スプーンを手に取った時、微風がそよいだ。横合いから吹き抜けてきたそれは、ごわごわと料理から立ち上る湯気を、風下側のサラへとまとめて運んでいく。

「んっ!?」

 苦しげな声が一瞬だけ聞こえて、スプーンが卓上に落ちる乾いた音が響く。だらりと力なく腕を垂らした後、一切の言葉を発することなく、それきりサラは動かなくなった。

「ふん、たかが料理一つで情けない」

 反対側でハインリッヒが鼻を鳴らす。声音には焦りや虚勢が見え隠れしていたが、そこは教頭としての矜恃なのか、その心情を露骨に顔に出すことはしなかった。

「……しかしこれは」

 食べてもいいのだろうか。そんな問いかけをしようとしたその時。

 

 シュボッ

 

 そんな音がした。

「何だね。今の音は?」

「ハ、ハインリッヒ教頭!?」

 その異常事態に、ナイトハルトも思わず声を上ずらせた。

 顔の外へと跳ねるようなハインリッヒのちょび髭。その両突端に火が付いていた。熱気に晒されて引火したそれは、まるで爆弾の導火線を伝うように、顔側に向かって髭を焼き進んでいく。

「な、なに!? だ、誰か火を消せ」

「失礼!」

 ナイトハルトは手元のグラスを取って、中身の水を今にも燃えかかりそうな顔面にぶちまけた。バシャン!と景気良く水が弾け、何とか鎮火には成功する。

 しかしハインリッヒの重力に逆らう鋭角な二本髭は、今や完全にその張りを失って、縮れ、くたびれ、弱々しくしなびれていた。

「が……かっ、むはっ!」

 至近距離で炎に炙られたハインリッヒは、まともに熱気を吸い込んで激しくむせ混む。髭を失ったショックもあるのだろう。胸を押さえ、喉をかきむしり、くぐもった嗚咽を何度も上げ、最後には白目をむいてテーブルから崩れ落ちてしまった。

「な、なんと……」

 二の句が継げない。

 こんなにも凶悪なトマトスープが存在していいのか。交戦規程(ROE)でも制限がかかりそうな、非人道殺傷兵器ではないか。サラとハインリッヒはすでに力尽きているが、そもそもこの二人はまだ料理を食べてすらいないのだ。

「……くっ」

 しかしナイトハルトは逃げなかった。責任感と実直さが服を着て歩くような男である。愚にもつかない些細な案件であっても、軍務である以上手を抜いたことは一度もない。その積み重ねと判断、処理能力が評価され、二十九歳という若さで少佐への昇進を果たしたのだ。

「頂こう」

 スープをすくう。赤くたぎる様は、まさに溶岩。

 気付けば指先が震えていた。尋常ではない汗が吹き出していた。本能が逃げろと叫んでいた。

 しかし鋼鉄の意思で、生理反応を抑え込む。帝国軍最強と謳われる第四機甲師団、そのエース。他人の評価などさして気には留めないが、自分のせいで隊そのものの評価を下げるようなことはあってはならない。

 故に、後退の二文字などない。どこにもありはしないのだ。

「ふん!」

 意を決し、口中にスプーンを押し入れる。その心境を例えるなら、敵軍に追い詰められた挙句、爆弾を腹に巻いて特攻する兵士のそれであった。

 トマトの味はやはりしない。酸味もない。あるのは喉を杭で打たれたような、荒れ狂う辛味だけ。その辛味はすぐに痛みへと変わり、耐え難い苦しみを運んできた。

「か……かはっ」

 次第に辛みと痛みの境界が融合し始める。思考と視界が定まらなくなって、現と幻の狭間を意識が彷徨いだした。立っているのか、座っているのか、あるいはすでに倒れているのかも判然としない。

 ただ熱かった。体内の水分が残らず蒸発するような、逃げ場のない灼熱感が己の全てを焼いていた。

「ここは私が……食い止める……全員撤退せよ。繰り返す、全員――」

 幻視の中で何を見ているのか、うわごとのように呟きながら、ナイトハルトは卓上に突っ伏した。

 

 

「……審判全滅したんだが」

 呆然と審判席を眺め、リィンは無感情に言う。料理が運ばれてからおよそ二分足らずの出来事であった。

「まさかここまでとはな。あいつら半端ねえ……」

 微動だにしない審判を一瞥し、クロウも力なくぼやく。

 リィン達は視線を審判席のトマトスープ改へと移した。

『……ん?』

 同時に気付く。そこでは異変が起きていた。

「お、おいおい。何だありゃあ」

 三つ並んだスープ皿から立ち昇る湯気。その揺らめく白い蒸気が、赤く染まっていたのだ。

「う? 体がっ!?」

 ずんと重くなる。いや違う。重くなったのは空気。肌にひりつくような、そして粘つくような、呼吸さえも億劫になるような、不快な空気が辺りに充満している。

 赤い蒸気は大きく渦を描きながら瞬く間に拡がっていき、やがてその範囲は学院全体を覆う程になっていた。

 観客席からもざわめきが起こり「なんか苦しい……」や「空が、赤い?」とか「何だか喉が渇いたな」など、戸惑いの声が次第に増えていく。

「えっ、うわああ!?」

 それは悲鳴と共に訪れた。

「お、俺の体がっ、消えていく!?」

 先頭観客席に座る一人――カスパルだった。滞留する赤い蒸気の塊に触れた次の瞬間、彼の体は薄れ、消失し始める。すでにカスパルの後ろの席の学生まで、透けて目視できるほどになっていた。

「い、嫌だ……助けて、クレイン先ぱ――」

 悲痛な救いの声を搾り切る前に、彼は消えた。

「こ、これは」

 目を見開き、リィンはわなわなと拳を、肩を、足を、やがて全身を震わした。

 これは上位三属性が働いた時にのみ発生する状態異常――消滅。

 特異な空間でしか起こりえないはずなのになぜ。しかしすぐにその答えに思い至る。その理由をリィンはすでに知っていた。九月に起きた調理室での惨劇、あの時も上位三属性が働いている。

 それはなぜだったか。

「まずいぞ、クロウ!」

「ああ、いつの間にか条件がそろってやがる」

 バリエーション豊富な破壊料理の数々が、苦しみと悲しみを生み出し、負の力場を構築していく。そして膨れ上がったマイナスフィールドの中心に無垢なる魂――オオザンショを贄をとして捧げることによって、煉獄と現世を隔てる不可視の境界線がかき消されるのだ。

 さらに今回は、料理によって生み出された被害者の数が前回とは桁違いの数である。ならばこの場における異常や異変も、前回とは比較にならない程大きいのでは――

「逃げろーっ!!」

 うすら寒い想像が確信となり、リィンは声を張り上げた。絶叫と悲鳴が重なり、蜘蛛の子を散らすようにギャラリー達は一斉に逃げていく。

「クロウ、俺達も退避するぞ……クロウ!?」

 しかし、クロウだけは逆方向、異常の発生源である審判席へと、じりじりと歩を進めていた。皿に盛られた焼き飯をその手に持ったまま。

「これをテーブルに届けなきゃならねえ」

「そんなのはもういい! 逃げるんだ」

「だめだ。ここで出さなければ一品目提出後の十分超過で、ルール上俺達が負けちまう。だが今の内に皿をテーブルに乗せていれば最悪引き分けには持ち込める。まだ判定は出てねえからな」

「待て、待ってくれ!」

 トマトスープ改、いや、煉獄スープから噴き出る赤煙はさらに勢いを増し、とても生身で近づけるような状態ではなかった。すぐに退避しなければ、こちらも危ない。

 それでもクロウは前に進む。

 その体が薄れ始めていた。

「クロウ、だめだ! 戻ってきてくれ!」

「もう少しなんだ。あと少しで、こいつをテーブルに置ける」

 三人の教官達も、すでに消滅している。誰もいない審査台に一歩ずつ、一歩ずつ近づいていった。その度に消えかかるクロウの体。もうテーブルは目の前だった。皿を持つ手を、ゆっくりと伸ばす。

「へへ、うまそうだろ?」

 にっと笑い、焼き飯を卓上に置こうとした瞬間、ついに彼の全ては消えた。

 皿は辛うじて台の端に乗った。しかし吹き荒れる赤い蒸気に押し出され、全ての望みを託した焼き飯は、残らず地面にこぼれ落ちてしまう。

「クロウ、クロウ! うああああ!」

 悲痛な叫びをあげるリィン。すでに彼の体も薄れ始めていた。

 

 

 被害は拡大を続ける。逃げ惑う学生達。屋内に避難しようとする者。仰いで赤い煙を晴らそうとする者。穴を掘って地中に退避しようとする者。全てに絶望して立ちすくみ、己が消える時をただ待つだけの者もいた。

「紙とペンを、せめて遺書を……」

「ああ。母さん、父さん……会いたいよ」

「み、水をくれえ……水を……」

 死屍累々。阿鼻叫喚。赤い霧に呑み込まれていくトールズ士官学院。

「アラン、私達もうここで……」

「大丈夫だ」

 グラウンドの木陰で座り込み、アランはブリジットの手を握りしめた。その手も透けてきている。

「……こんなことになるなら言っとけばよかったな」

「何を?」

 小声で呟いた声だったが、聞き留めたブリジットが問い返した。

「あ、いや、別に」

「聞かせて」

 真っ直ぐに目を向けるブリジット。アランもその瞳を見つめる。

 何度も息を吸って、観念したように息を吐き、そして彼は静かに口を開いた。

「一度しか言わないからな。……俺、子供の時からずっとお前のことが――」

 風が吹き、木々がざわめく。一枚の葉が舞い落ちた時、もうそこに二人の姿はなかった。 

 

 消える。消える。消えていく。想いも夢も諸共に。

 元はただの料理コンテストのはずなのに、どうしてこんなことになったのか。消え入りそうな自身の手を見つめるリィンは、手越しの景色に視線を巡らした。

「……?」

 一つ、異様があった。

 審査テーブルが無くなっている。いや、あるにはあるが、それをテーブルと捉えることができない。空間が歪んで見えるのは、認識を司る幻属性も働いているせいか。

 突然、景色が大きく揺らいだ。

 屈曲する視界の中に、何かとてつもなく巨大な扉が顕現されていく。身の丈五倍はありそうな黒い門。禍々しい紋様が描かれた両開きの扉。

「こ、これは……煉獄の扉?」

 日曜学校に通っていた頃、教典の挿絵で見たことがあった。

 

 ――クク……ハハハ

 

 閉まっている門の向こう側から、底冷えするような笑い声が響いた。

 ゴゴンと重い音を立てる扉が、ぎしりぎしりと軋む。罪と業を鍵として、煉獄の門がゆっくりと開いていった。

 動けないリィンだったが、確かに見た。徐々に開きゆく門の中心に、誰かが立っているのを。

「人、なのか?」

 魔導杖にも似た杖を片手に仰ぎ、酷薄な笑みを浮かべる白衣をまとったその男。教壇に立つのが似合いそうな白皙な風貌。眼鏡の奥に見える怜悧な瞳。そこに人間の温かさは感じられなかった、冷徹で暗い闇を湛えた、ただ人の形をした何か。

 その男の後ろにはおびただしい数の魔物が控えていた。唸りを上げ、扉が全開になる時を待っている。

 あれが解き放たれたら、学院は終わる。だが間もなく自分も消える。もう何も出来ない。

「やめろ……やめてくれええ!!」

 扉が開き切る瞬間だった。

 金色に輝く一条の光が眼前を擦過した。拡散しながら縦貫する閃光は、赤い霧をことごとく晴らしていき、学院をあるべき景色の中へと引き戻していく。

 気付けば煉獄の門は消え、逆に消えていた人達は再び姿を見せていた。

「も、戻った。今の光は一体?」

 光が伸びてきた方向に視線を向ける。

 フードを被ったあの黒づくめ達がグラウンドに立っていた。その手には一つの皿。そこに乗っていたのは、金色の光を放つオムレツだった。

 いつの間にか消滅し、いつの間にか帰還していた調理部部長のニコラスが言った。

「あの人達が救ってくれたのか。やっぱり頼んでおいて正解だった……」

 言い切って、そして気を失う。

 すたすたと乱れなく歩いてくる二人。どこか見覚えのある歩き方だった。

 今の今まで何が起こっていたのか、よく分かっていないらしいアリサとフェリスの前までくると、二人はそのフードをばさりと脱ぎ捨てる。そして楚々とした佇まいを変えることなく、一言こう告げた。

「そこまでです、お嬢様方」

 ラインフォルト家とフロラルド家の使用人――シャロンとサリファである。

 

 

 チーム名『S/Sメイダーズ』。

 もちろん二つのSはシャロンとサリファを意味している。

 彼女達がトーナメント優勝者に立ちはだかる、調理部が用意した最後の刺客だった。

 身内の登場に納得していなさそうなアリサとフェリスに、それぞれのメイドさん達は言う。

「うふふ、アリサお嬢様。決勝まで勝ち進むなんて、ずいぶんとお料理が上達しましたこと」

「フェリスお嬢様。危うくフロラルド家の存続が危ぶまれる事態に陥るところでした」

 確実に含みのある声音。一枚裏のありそうな穏やかな笑み。物言いたげな視線が各々のお嬢様達を射抜く。

「な、なによ。何が言いたいわけ?」

「サリファもですわ。私何も聞いておりませんでしたけど」

 負けじと睨み返すアリサ達。

「さあ、予定通りエキシビジョンマッチを始めましょうか」

「遠慮の一切は無用にございます」

「上等よ!」

「ですわ!」

 対峙する四人。そこへ遠慮がちにトワが近付いてくる。

「えーと、皆さん? 盛り上がってるところ申し訳ないんですけど、審判できる人がもういなくなっちゃったので、勝負とかはもう無理じゃないかなーなんて?」

「あら、そんなことありまんせんわ」

 にこりと笑んで、シャロンは言った。

「私達の前にいらっしゃるではありませんか」

 

 

 少しして、泣きそうな顔で審判席に収まるトワの姿があった。

 両足は震え、逃げ出したい衝動に駆られていたが、生徒会長を務める彼女の責任感はそれを許さなかった。倒れる直前のナイトハルトと同じ心境である。

「うう……」

 力なく目を伏せると、今までの人生が高速でスライドされていく。これが走馬灯。生き残るための情報検索反応。しかし十八年という人生を振り返ってみても、この状況から脱する術は見つからなかった。

 コトン、と何かが置かれた音で再び目を開ける。

 卓上にグラスが二つ並べられていた。

「……あ、もう出来たんだ」

 トワがエキシビジョンマッチのお題としてオーダーしたのは『ドリンク』だった。これなら余計な調理をしなくて済むし、試食に比べて試飲の方がダメージは少ない気がしたからだ。

 片方のグラスを見る。

 澄んだ黄色をしたミックスジュース。パイン、レモン、オレンジ、隠し味にはハチミツ。甘く香しい匂いが鼻先をかすめ、思わず頬が緩んでしまった。

 もう片方のグラスを見る。

 淀んだ赤色をした謎の混濁液体物。もう何が混ざっているかもわからない。隠し味が隠れておらず、全ての食材が激し過ぎる主張をしている。苦く焦げ付いた臭いが鼻先をかすめ、思わず頬が引きつってしまった。

 どっちがどっちのドリンクを作ったのか、聞かなくても分かる。

 シャロンが言った。

「日々お疲れでしょうから、優しい甘さでお体を休めて下さいませ」

 青チーム『S/Sメイダーズ』の“癒しのフルーツジュース”である。

 アリサが言った。

「日々お疲れでしょうから、色んな栄養を取って体調を崩さないようにして下さいね」

 赤チーム『特攻お嬢様』の“元気の出る野菜ジュース”である。

「う、うん。二チームともありがとう」

 トマトや赤ピーマンをジューサーにかけているのは見えたから、野菜ジュースが赤いのは分かる。しかしこれを飲むことで、逆に体調を崩してしまいそうなのは気のせいか。

 トワは先にフルーツジュースの入ったグラスを手に取った。本来ならどうみても苦そうな野菜ジュースを先に飲み、口直しに後でフルーツジュースという流れの方が良かったのだが、いきなり赤い方を飲むには心の準備が出来ていなかった。

「ん……」

 コクリコクリと口中に運ぶ。爽やかなレモンとオレンジの酸味が拡がり、パインとハチミツの上品な甘さが一体となって、乾いた喉を潤していく。口当たりも柔らかく、溜まった疲労と緊張が溶けて流れていくようだった。

「お、おいしー!」

 思わず声に出た。嬉々とした様子も見せず、シャロン達は丁寧に頭を下げる。

 そして、次である。

 野菜ジュースとやらが入ったグラスを手に取った。少しだけ嗅いでみる。

「ん!?」

 とりあえず分かるだけの野菜は、トマト、赤ピーマン、赤カブ、赤キャベツ、ニンジン、他にもたくさん入っているようだったが、一瞬で判明できたのはそれだけだった。どうやら赤い野菜類で統一してきたらしい。正直、このくらいなら問題ない。特有の苦みはあるだろうが、一般の野菜ジュースと内容的に大差がないからだ。

 おそらく問題があるとすれば、繋ぎに使っている調味料だ。鼻を突くようなすえた臭い。元気が出るというコンセプトからか、多分酢を入れている。あと、こう、何かの出汁も入っている気がした。

「じゃ、じゃあ。こっちも頂くね?」

 一口。一口でいいのだ。舐める程度でも判定は下せる。

 グラスを傾け、ほんの少量、舌の上に赤い液体を乗せた。ごく微量の一口である。しかしそれは甘すぎる判断だったと、すぐに後悔することとなった。

 小さな体を電流が駆け抜ける。意志とは関係なく背が仰け反り、指先が痺れだした。

「ひゃあ!?」

 苦い、苦い、苦い。多種多様な苦味が口の中で踊り回る。靴の裏に苦味を塗りたくって、舌の上で激しいステップを踏まれている心地だった。衝撃があごにまで伝わってくる。

 その上、辛い。さっきは分からなかったが、赤い野菜ということでトウガラシも入れてきていたのだ。

 このチームはどうしてここまで辛み成分を執拗に投入してくるのか。もしかしてデトックス効果を狙っているのだろうか。発汗作用も度が過ぎたら脱水症状を引き起こすと言うのに。

 意識を失う前に、ボタンを押さなくては。悩むまでもない。押すのはシャロン達、青い方のボタンだ。

「は、判定……え?」

 しかしおかしい。どちらのボタンも赤色だ。いや、視界の全てが赤く染まっている。このままではどちらが青いボタンかが分からない。右か、左か。どっちだ。

「ん、んー……」

 確か右。右だった気がする。トワは朦朧とする意識の中で、手を右側のボタンへと伸ばす。そこに手を触れ、押し込もうとした瞬間、

「違う! そっちじゃありません、トワ会長!」

 リィンの焦った声が耳に届き、瀬戸際で手の動きを止めた。しかし、それ以上は体がいう事を聞かなくなった。力が抜け落ち、肘が卓上に付く。重力に引かれるまま、手がボタンを押さえようとする。せめてボタン上から手をずらさねばと思った矢先、指先が痙攣したように震え出した。

 カカッ、カカカッと、望まぬ赤いボタンを指が何度も連打しながら、トワの意識は遠退いていく。

「あら」

「まあ……」

 シャロンとサリファが困ったように首を傾げ、

「勝ったの?」

「ふふん、当然ですわ」

 アリサとフェリスが勝利を手にした。

「ああ……」

 離れた所で顛末を見守っていたリィンが膝を付く。

 長きに渡る死闘を制した『特攻お嬢様』には、三々五々に残っていた数少ないギャラリー達から、乾いた拍手がまばらに贈られるのだった。

 

 

 

 ――後日談――

 

 それから数日後のこと。

 保健室送りにされた大勢の人たちは無事回復し、野戦病院と化していた保健室もすっかり日常の様相を取り戻していた。

「優勝しちゃいましたわね」

「ええ」

 騒動の中で完全に忘れ去られていたが、優勝者には学生食堂の無料券――その三か月分が送られる。金銭面では困ることがまずないアリサとフェリスだが、せっかくもらったものだしと、食堂まで足を運ぶことにしたのだった。

「料理って難しいですけど、楽しいですわ」

「そうね。私も本格的にシャロンに教わってみようかしら」

 男子たちにとっては幸いな事だったが、クロウが懸念していた厨房を女子達が占拠するという事態にはならなかった。もっともラウラだけは今まで通り料理作りに勤しみ、厨房に入り浸っているが。

「……うん、私だって……」

 アリサは思案顔でグラスのストローを口にする。頼んだのはオレンジジュースだ。それを眺めながら、フェリスが言った。

「でも作った後は食べてもらわないといけませんわ」

「それは問題ないわよ」

 アリサは試食相手の顔を思い浮かべた。

 頼めばそれくらいは引き受けてくれるはずだ。というかラウラの試食相手は務めているのだ。自分の頼みを受けない道理はない。

 もしラウラのだけで、自分のは受けてくれなかったら……などと小さな不安はよぎったが、それはさすがにないだろうと思い直し、アリサはもう一度オレンジジュースを喉に通した。

「誰かあてがありますの?」

「まあ、一応ね」

「あら」

 ふーん、と適当な相槌を打って、フェリスはその顔を注視する。

「それはアリサの料理を食べてくれる人? それとも食べて欲しい人? どっちですの?」

 思わずオレンジジュースを吹き出しそうになる。微妙なニュアンスの言葉だ。

「な、何を言っているのよ! ただ時間がありそうだし、そういう協力してくれそうだし、色々と感想も言ってくれそうだし。だから――」

「だから?」

 アリサは赤くなった顔をうつむけた。少しの沈黙の後で、

「……食べて欲しい人……だと思うわ」

 

 

 

 ~FIN~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――おまけ――

 

「昼食を一つ頼む」

 ガレリア要塞、その食堂。

 雑多な喧騒が溢れかえる中、ナイトハルトは厳かな声音で告げた。まるで墓前に立った時のように、粛々とした態度である。

 程なく、受け取り口からトレイが手渡された。士官であっても、基本的には一般兵士と同じメニューを食べる。一応栄養士が献立を考えるから、必要な栄養素が不足するということはないが、今日も変わり映えないのないラインナップだった。

 席に関しては士官用がある。何人もが肩を並べる長テーブルではなく、数人で囲むような丸テーブルだ。

 いつもの場所に赴き、卓上にトレイを置いた。

「ふう、頂こうか」

 椅子に腰を預け、フォークを手に取った。

 塩辛いコンビーフ。味気のないコッペパン。根菜と豆類のスープ。あとはサラダと小鉢が数品目。

 決してうまくはない。飯がまずい軍隊は強いという俗説があるが、軍事国家であるエレボニアでもさすがにそれは俗説止まりと分かっている。

 味の改善は出来そうなものだが、なぜそれを積極的に実施しないのか、実はナイトハルトにもわからなかった。意外と根深い軍の伝統がそうさせるのか、あるいは質素倹約で己を律するという考えに基づくものなのか。

 考えても答えが出るわけではないが、しかし確実な事は一つ。結局のところ、この飯はまずいということだ。

「うむ」

 コンビーフを口に入れる。辛い。スープをすくう。これは薄い。コッペパンをかじる。カスカスで口中の水分が奪われる。

「相変わらずだな」

 まずい。まずいのに――。 

 どうしてこんなに安心するのだろう。じんと胸と目頭が熱くなり、生きているという実感が湧いてくる。

 食べられる料理というのが、これほどありがたいものだとは思わなかった。

 小鉢を手に取った時、

「これはないよな。ったく厨房は手抜いてるんじゃないか」

「はは、まったく。非番日の外食が待ち遠しいよ」

 そんな声が聞こえてきた。見慣れない顔が二つ。所属は分からないが、少なくとも第四機甲師団ではない。トレイを返却口に戻そうとしているが、何気なく見てみるとコンビーフもパンも半分以上残っているし、スープに至ってはほぼ手つかずだった。

 聞いていれば、献立に関する不平不満を垂れ流している。

「待て、貴様ら」

 気付いた時には立ち上がり、そう言っていた。

「え、あ! ナ、ナイトハルト少佐!?」

 その二人は即座に踵を合わせ、トレイは手にしたまま直立不動の姿勢を取る。ナイトハルトの只ならぬ雰囲気を感じ取ったのか、肩もぎこちなく強張っていた。

「貴様ら新兵か? いや、そんなことはどうでもいい」

 鋭い視線がトレイを射抜き「なぜ、そんなにも飯を残す。体調不良か?」と険しく問いただすと、「も、申し訳ありません」と二人は蒼白になった顔で謝罪を述べた。

「残すな! 全部食え! トレイを空にするまでそれを返却することは許さん!」

「イ、イエス・サー!」

 鬼気迫る怒声が飛び、騒がしかった食堂は一瞬で静かになった。

 食事を残そうとしていた他の者も、一心不乱に残りを口へとかきこんでいる。

 かちゃかちゃと食器の音しかしない食堂で、ナイトハルトは強く軍靴の踵を打ち鳴らした。

「伝達事項! 全員傾聴!!」

 その場の全員の姿勢がビシリと伸びる。

「今後一切の食事残しは認めん。これを破った場合、この私が直々に厳罰を下す。分かったか!」

『イエス・サー!』

「食事とはありがたいものなのだ。以後、感謝の気持ちを持って、これを食せ!」

『イエス・サー!!』

 この日以降、ガレリア要塞では食事の時間になる度に、食堂の片隅で常に目を光らせるナイトハルトの姿があったという。 

 

 

 

 ~END~

 

 

 

 




後編もお付き合い頂きありがとうございます。

詳しくはないのですが、軍用食品とかって国によってはえげつない味みたいですね。日本のは美味しいらしいですが。というか、そんなのどこで手に入るんだろう。

本作品ではオオザンショを贄にすることで、煉獄への扉が開きます。
図式ではこうですね。

①失敗料理を量産する。②それを誰かに食べさせる。③苦しみと悲しみがその場に蓄積される。④オオザンショを生贄にする。⑤蓄積度合に応じて煉獄へ繋がる

こんな感じです。④が重要なのです、④が。

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