《おにいさんといっしょ》
トヴァル・ランドナーは重要な任務の真っ最中だった。
普段以上に周囲に警戒を巡らし、気も張っている。仕事でいい結果を出すには、万事に余裕を持つべし。それも十分承知の上だったが、それでも今だけは全方位に意識を向け、あらゆるアクシデントに備えなくてはならなかった。それこそ、遊撃士として培ったスキルを総動員するほどに。
「さて、と。ここから本番か」
正面に続く山道を一瞥したあと、トヴァルは背後に振り向く。
聖アストライア女学院の制服に身を包んだ少女達が二人、澄んだ瞳で自分を見返している。
そう、これが最重要任務。
目指すユミルの町は、まだ遠くにあった。
ヘイムダルが貴族連合に占拠されていく真っ只中、混乱の市中をトヴァルは走った。聖アストライア女学院の柵門を乗り越え、誰よりも早くそこに駆けつけた。
一歩遅ければアルフィンも貴族連合の手に落ちていただろう。保護という名目の下に。
そこにエリゼもいたのは僥倖だった。トヴァルは二人の手を引き、女学院から脱出する。
本来、ヘイムダルから列車でユミルまで行くには、黒竜関経由でルーレまで出て、そこからユミル方面に乗り換えなくてはならない。
だが、今それは出来ない。トヴァルがかなり早いタイミングで動いているとはいえ、この状況下なら鉄道の運行は止まっている。アルフィンが女学院、そしてバルフレイム宮にもいないとなれば、捜索の手は帝都外にも伸びる。
悠長に事を構えている時間はなかった。
そこで使ったのは導力車だった。関門が敷かれる前に街道を突破し、可能な限り遠くへ離れる。幸いにも運転のスキルはあるのだ。もっとも免許があるのかと問われれば、最上の笑顔を以って返答とするほかないが。
肝心の導力車だが、その調達には困らない。機甲兵や戦車部隊の戦闘が行われる中、乗り捨てられた車はあちこちに散在している。
悪いとは思うものの、これは緊急事態。
損害請求諸々は依頼元のオリヴァルト殿下にお願いします、などと胸中で詫びを入れながら、トヴァルは手頃な導力車の後部座席に二人を乗せたのだった。
そして今に至る。
舗装されていない道や林道も無理やり抜けて、何とかユミルの町がある山のふもとまで辿り着く。この時点で車はガタガタだ。
ケーブルカーが止まっているので、ここからは徒歩で山道を登らねばならない。この先の道案内はエリゼができるから、それはいいとして、問題がまず一つ。
「お二人とも、一応お聞きしますが、戦闘の心得は?」
エリゼが答える。
「私はシュバルツァー家の剣術を扱えますが……」
もちろん今は剣などない。次にアルフィンが言った。
「お兄様から教わったことがあるので、多少のアーツなら使えますが……」
当然、戦術オーブメントなどは持っていない。
「……わかりました。これを」
トヴァルは最後までどうするべきか悩んでいたが、結局それを渡すことにした。
「あ、これってリィンさん達が使っている――」
「ええ、確か《ARCUS》とか……」
これもオリヴァルトからの預かり物だが、誰に託すかは一任されている。この先は見通しも悪く、地形の把握もできていない。危険な魔獣もいるだろう。
不本意だが、二人の身の安全の為には、そうすることがベストだと判断せざるを得なかった。
「あまりゆっくりもしていられません。使い方は後ほどお伝えします。俺から離れず付いて来て下さい」
トヴァルを先頭に、三人は山道へと足を踏み入れた。
「――以上がリンク機能の特徴です」
道すがら、要点をまとめながら《ARCUS》の特徴を説明する。エリゼ達は興味深げにトヴァルの話を聞いていた。
「ただリンクを結ぶのは簡単なことではありません。あのⅦ組でも何人かは実習中に手こずったと聞いています。意識の波長が合わなかったり、ずれたりするとリンクブレイクと言って――」
エリゼとアルフィンが持つ、それぞれの《ARCUS》が光る。輝く粒子が一本のラインとなって、二人を繋いでいた。
「あ、できました」
「なんでしょう、不思議な感覚ですね」
口を半分開けたまま、トヴァルは固まっている。
まさか、こんなにも容易く成功させるとは。いや、考えてみれば当たり前ことなのか。Ⅶ組が《ARCUS》を持たされた時、出会ったばかりの彼らは相手のことなどまるで知らなかった。対して、この二人は最初から友人同士。気心の知れた仲である。元々の土台は出来ていたのだ。
これなら思ったほど心配をしなくていいのかもしれない。
「なんだかエリゼのことが何でも分かっちゃいそう。それこそ隅から隅まで。まあ、リィンさんのことを? そんなことを考えてるの? うふふ、エリゼったら意外と大胆なんだから」
「な、な、な、何を言ってるんですか! そんなこと考えてません。だ、だったら私だって」
「いや、心の中までは読めませんから」
やはり心配だった。
山の中腹あたりまで登ったくらいだろうか。幸い魔獣には見つからず、一度も戦闘を行わないまま、ここまで来ることができた。
付いてくる二人も最初は辺りに警戒していた様子だったが、今は幾分か落ち着いているようだ。だからと言って気を抜くわけにはいかないが。
二人の話し声が、後ろから聞こえてくる。
「姫様、その……大丈夫ですか?」
「これくらいの山登り、全然平気よ」
「いえ、そうではなくて――」
「あ、エリゼが休みたいのね。トヴァルさんにおんぶしてもらったらどうかしら? リィンさんには内緒にしておくから」
「もう、姫様!」
トヴァルも察した。エリゼの気遣いは体のことではない。ユーゲント皇帝、プリシラ皇妃、セドリック皇太子はおそらく今もバルフレイム宮にいる。家族を置き、一人帝都を離れることとなった彼女の心を慮っているのだろう。
アルフィンもエリゼの配慮には気付きながらも、心配をかけまいと笑顔で振る舞っている。
皇族とはいえ、年端もいかない少女が何と気丈なことか。
早くユミルまで辿り着いて、休息の場を用意しなくては。トヴァルがそう思った時、「ところで……」とアルフィンが話題を変えた。
「ねえ、エリゼ。トヴァルさんって恋人とかいらっしゃるのかしら?」
「またそんなことを。トヴァルさんに聞こえてしまいますよ」
聞こえている。が、あえて聞こえないふりをする。
「エリゼはどう思うの? 大人の男性の恋愛に興味はないの?」
「そ、それは」
……ちょっとありそうな感じだ。
その後、二人は勝手な想像を膨らまし始めた。ロングヘアーの清楚な感じが好みに違いないだとか。ボーイッシュで活発な感じが合うだろうとか。遊撃士だから、助けた町娘とのラブロマンスがあって然りだとか。
最初は控え目に諌めていたエリゼも、気付けば話にノリよく付き合っている。何だかんだ言っても女学生。やはりこの手の話題だと盛り上がるらしい。
「………」
経験で培ったものなのか生来のものなのか、トヴァルは対人コミュニケーションにおけるバランス感覚に長けていた。
自分が関わる内容であっても、無分別に会話に入ってはいけない場合があることを弁えていた。しかし、
「えーと、お二人とも?」
やむなく話を割る。このまま放置しておくと、どこまでも加速しそうだった。すでに自分は故郷に恋人を残してきた設定にされている。
「あ、すみません。私ったら……」と赤面するエリゼとは逆に、アルフィンはさらに踏み込んできた。
「トヴァルさんってお付き合いをされている女性はいるのですか?」
大きな瞳が輝いていた。苦笑しながら答える。
「いえ、いませんよ。遊撃士をしていると、一つの場所には留まれませんしね」
「大変なお仕事ですものね。でしたら気になっている方は?」
ぐいぐい来る。
一瞬、ある人の顔がよぎったが、それは違うと思い直した。
しかし、アルフィンはわずかに変わったトヴァルの表情の変化を見逃さなかった。
「まあ! おられるのですね! ふふ、どんな方なんでしょう」
「いやいや、そういうのではないのですが」
「では、どういうので?」
追及の手が緩まない。
上手いかわし方はと思案するトヴァルだったが、不意に肌がざわつくような感覚を覚えて、その足を止めた。
「トヴァルさん?」
「アルフィン殿下、エリゼお嬢さん。静かに」
風もないのに、周囲の茂みが不自然に揺れる。
このまま何事も起きないまま進みたかったが、そういうわけにもいかないらしい。
魔獣が来た。
敵の場所はまだ分からない。経験からくる直感だったが、おそらく魔獣は小型。そして複数だ。
傾向的に大型魔獣は単体であらわれ、力押しで襲ってくることが多いのに対し、小型魔獣は群れをなして獲物を包囲し、隙を窺って襲ってくる。
今の状況は後者だった。
同時にトヴァルは戦い方を限定された。相手が複数であっても、応戦、あるいは退避する術は心得ている。
しかし今は二人の身を守りながら戦わなくてはならない。防戦をベースにしながらも、魔獣の殲滅を目標にしなければならなかった。
「二人はご自分の身を守る事に集中して下さい。攻撃は自分が引き付け――」
「トヴァルさん、上です!」
エリゼが叫ぶ。近くの木の上から、小さな黒い影が跳躍する。ユミル地方に生息する猿型魔獣――ワラビモンチだった。狙いはトヴァルだ。
二人に意識がずれた、まさにその瞬間を突かれた。迂闊の二文字を噛みしめながら、トヴァルはスタンロッドを腰から引き抜く。
しかしわずかに相手の方が早かった。剥かれた牙が迫る。
雷閃が眼前を擦過した。
轟く光に呑まれたワラビモンチは、悲鳴をあげる間もなく力尽きる。
「で、殿下?」
アーツを駆動させたのはアルフィンだった。胸を撫でおろしながら「お怪我はありませんか?」と安堵した様子で訊いてくる。
「まだ来ます!」
鋭い声音でエリゼが言う。
木の陰、茂みの中から一斉にワラビモンチが飛び出してきた。六匹いて六方向からの襲撃。一人ではフォローしきれない。戦闘に参加はさせたくなかったが、こうなれば腹を括るしかない。
「二人はサポートを! 俺は近付いてくる奴らを片っ端から叩きます!」
『はい!』
そろった返事で応じ、リンクするアルフィンとエリゼ。トヴァルはスタンロッドを構え直した。一匹一匹はさほど脅威ではない。頭数を減らしてから、隙をみてアーツで一気に仕留めればいい。
身を屈めて迎え撃とうとした時、地面に熱が広がり、幾重もの火柱が噴出した。炎に巻かれるワラビモンチ勢。
またもアルフィンのアーツだった。
「姫様! 山中で火はダメです、木に燃え移ってしまいます」
間髪入れず、エリゼが激しい水流を放ち、魔獣ごと炎を押し流す。この時点で残りは三匹、半数にまで減っていた。
「あ、ごめんなさい。つい」
謝るアルフィンだが、早くも次のアーツの駆動準備に入っている。
ワラビモンチ達が散開した。逃げるつもりはなく、多方面からの攻撃を仕掛けようとしている。
だが、離れかけた三匹は、突如屈曲した空間に吸い寄せられるようにひと固まりにされる。
アルフィンが駆動させたダークマターの効果が切れない間に、エリゼは《ARCUS》を構え、地面にかざした。指向性を得た導力が地中を走る。直後、魔獣達の足元が勢いよく隆起し、三匹のワラビモンチはまとめて空高くに吹き飛んでいった。
戦闘終了である。
「……参ったな、こりゃあ」
リンクしていたとしても、種別に駆動時間の異なるアーツで連携を取るのは、決して簡単なことではない。それを今日初めて《ARCUS》を手にした二人が、苦もなくこなしてしまうとは。
アルフィンのアーツ駆動の速さ。エリゼの隙間を埋めるようなフォロー。
いいコンビだ。これに個々に適した武器が備われば、戦術の幅はさらに拡がるだろう。
「お兄さん、たまげたぜ」
冗談めかして両手を広げてみせたトヴァルを、エリゼ達は不思議そうに見つめた。
そして彼女達は同時に気付く。
「ト、トヴァルさん!? 火、火が!」
先程のアーツが飛び火したらしく、コートの端に小さな火種がくすぶっていた。
「おっと、心配ご無用。このコートは耐火にも優れていて――」
「動かないで下さい! 姫様!」
「ええ、エリゼ!」
光るオーブメント。大砲から撃ち出されたような二つの水塊がトヴァルを打ち据える。勢いに押されるまま、彼は背後の岩壁に激突した。
「ひ、姫様。威力が強すぎます!」
「あ、あら? でも今のはエリゼの方が強かったと思うの」
やいのやいのとかしましく言い合う少女達をかすむ視界の中に収めて、トヴァルは無理やり頬を笑みの形にする。
心配をさせまいと虚勢を張ったつもりだが、残念なことに数秒ともたなかった。
「お……お兄さん、たまげ、たぜ……」
その言葉を今一度繰り返し、ずるずるとへたり込む。
どうやらユミルまでの道のりは、思った以上に険しいらしい。
~END~
《Force majeure》
「リィン、この後一緒に釣りにでも行かないか?」
カレイジャスの甲板デッキにいたリィンに、そんな誘いをしたのはガイウスだった。
「珍しいな。ってガイウスは釣竿を持ってるのか?」
「ああ、ノルドの実家にあったものを持ってきている」
今はカレイジャスの補給や整備の為に、ルーレ空港に停泊している。時間は十分にあった。
「そうか、だったら行こうかな。俺も釣竿を準備してくるから、何なら先に行っててくれ」
「わかった。場所はスピナ間道の小川あたりでいいだろう。川岸付近で待っている」
リィンが了解を返すと、ガイウスは先に船内へと戻っていった。
何気なくその背中を見送るリィン。
ルーレでは色々な事があった。
アンゼリカとの再会。軟禁状態にあったイリーナの解放。ラインフォルト本社の奪還。ログナー公爵率いる領邦軍と、立て続けに行われた黒竜関での戦い。そして《V》――ヴァルカンの死。
考えるあまりに思い詰め、表情に余裕もなかったように思う。もしかしたらガイウスは、そんな自分を気遣ってくれたのかもしれない。
「いけないな、こんなことじゃ」
両頬を軽く自分で叩いて、「よし!」と気持ちを変えてみた。
半分は空元気だったが、一人で悩むよりはいいだろう。
リィンは止めていた足を動かした。
「あ、リィンじゃないか。今少し時間はあるか?」
釣竿を片手にルーレ市内を歩いていると、不意に声をかけられた。声の主はマキアスで、隣にはユーシスもいる。
時間、と言われるとガイウスとの約束もあるし微妙な所なのだが、まあ話くらいはとリィンは二人の用事を訊いてみることにした。
「ふん、実際に見た方が早かろう。俺も今話を聞いた所だしな」
「え」
言うが早いか、ユーシスはスタスタと先に歩き出してしまう。「お、おい、待ちたまえ」とマキアスも後を追ったので、リィンも続かざるを得なかった。
着いた先はルーレ工科大学、その門の手前である。ハーヴェスとグレゴという学院生二人がリィン達を出迎えた。
「やあ、待っていたよ」
「急な頼みで悪いね」
彼らは気安げな挨拶をよこし、「ではさっそく」とある物を取り出した。
小首をかしげてリィンはそれを見やる。
「導力車の……玩具?」
ハーヴェス達の説明を聞くに、この玩具は『導力ラジコン』というらしい。何でも導力を介した遠隔コントロールが可能で、付属のリモコンを使って無線で動かせるとのことだった。
頼みとは端的に言えば『レポートを書きたいから、その為の試運転に付き合って欲しい』である。ちなみにたまたま近くを歩いていたマキアスが最初に彼らに捕まり、まだ人手がいるからということで人員を探し回る内にユーシスを見つけ、渋る彼に何とか協力の約束を取り付けたところでリィンが通りがかった――そういう流れだそうだ。
「まあ、あまり時間もかからなそうだしな。俺も手伝うよ」
ラジコンを操作して、コースを三周程回ればいいらしいので、実際そこまで時間はかからない。五分少々のこと、そこまでガイウスを待たせることもないだろう。
リィンは釣竿ケースを脇に立てかけて、ハーヴェスからリモコンを受け取った。
レースは思いのほか白熱した。
一週目はリィン達も操作性の確認がてら、様子見の呈だったが、二周目にもなると鋭いコーナリングやコース取り、駆け引きの応酬が要所で展開されるようになった。
「邪魔だ、道を開けろ!」
「君こそ!」
二周目を過ぎたところで、ユーシスの操作するラジコンが立てかけていた釣竿ケースに接触してしまう。倒れたケースから竿や糸、釣り針が散乱してしまったが、リィンもレースに集中しており、そこに気を留める余裕はなかった。
そして三週目の終わり。際どい勝負だったが、一番にゴールしたのはマキアスだった。
「やったぞ!」
しかし気の緩みからか、彼は操作を誤った。ブレーキを押したつもりが、間違ってアクセルを押し込んでしまったのだ。途端に急加速するマキアス機。
「うわっ!?」
焦ってさらにリモコン操作を誤る。
ジグザグに走り、斜面を駆け上り、方向を変え、前輪が何かを踏んだのか、そのまま大きくバウンド。あろうことかマキアス自身に向かって、機体が跳ね上がった。
しかも最悪な事に、先ほど散乱した釣り糸と釣り針が車体に引っ掛かっている。
「うわあああ!」
「マキアス、避けろ!」
ぎらりと光る釣り針が顔面に迫る。マキアスは咄嗟にのけぞって、ギリギリでそれをかわす。
しかし、完全にはかわしきれなかった。フック型の釣り針が、狙ったかのようにマキアスの眼鏡――その蔓の部分に掛かってしまったのだ。
強奪される眼鏡。操作が利かなくなったリモコン。カラカラパリパリと、眼鏡を引きずりながら走る無慈悲なラジコン。
「あああ! 誰かあれを止めてくれえ!」
マキアスの悲痛な叫びを受けて、ユーシスとリィンは自分達が繰るラジコンの速度を上げた。
「ふん、世話の焼けるやつめ」
「ユーシス、二機で挟み込んで動きを止めよう」
直進するマキアス機。追走するユーシス機とリィン機。
同時に左右から体当たりをして抑えるつもりだったが、それは至難のタイミングである。横目で見合い、二人は《ARCUS》でリンクした。
「おお、君達……!」
マキアスの目に希望が戻る。
息を合わせるのに、これほど適した機能はない。シンクロする二機の動き。全く同じタイミングで左右に分かれ、絶妙の速度に合わせ、マキアス機の両隣で並走する。
『今だ!』
二つの意志が一つに揃い、リィン機、ユーシス機共に車間を双方から狭めた。しかし、マキアス機が急速にスピードを増し、わずかに先行する。
結果、機を逸した。
二機のプレスアタックは完璧にマキアスの眼鏡だけを捉えた。車体が両側からフレームを押し潰し、高速回転するタイヤがレンズを微塵に粉砕し、原型を留めないほどに破壊し尽くされた魂の残滓が、あまりに無惨な風体で歩道の上に飛散する。
「うあああ! 僕のっ、僕のお!」
「わ、わざとではない! ええい! 離すがいい!」
恨みを込めた瞳でユーシスの腰にしがみつくマキアス。
その折、マキアス機は壁に追突してひっくり返っていた。だが、アクシデントは継続中だ。
「ん? あ、あれ?」
今度はリィンのラジコンの操作が利かなくなったのだ。突然バックしたり、左右にぶれたり、前進したりと、その動きもかなり不規則である。
「あー、もしかして正常に導力波を受信できてないのかもね。もしくは混線してるのかもしれない」
「とりあえず回収頼むよ。レポートと一緒に試作品も提出するつもりだからさ」
ハーヴェスの言葉に、グレゴが続く。
「え、ええ!?」
そうこうしている間に、ラジコンはどんどん遠ざかっていく。当然のように、リィンはそれを追いかける羽目になった。
アリサは朝から忙しかった。
無粋にもハイデル取締役が使用していた住居スペースの掃除、片付けに追われていたのである。会長であるイリーナは諸々の業務処理や体勢立て直しの為に奔走しており、とてもそこまでは手が回らないので、自分で済ましてしまおうと思ったのだ。
シャロンも手を借してくれたので、幸い昼過ぎには一段落することができた。
そういうわけで小休止。二人して少し遅めのランチを食べに行こうという話になったのだった。
「シャロンと二人で外食っていうのも何だか久しぶりね。何食べたい?」
「ふふ、私は何でも構いませんわ。お嬢様のお好きなものを」
そんな会話を交わしながら、ビルの入口を出て数歩進んだ時、
「きゃっ! な、なに?」
足の間を何かが抜けていった。
「そこだあっ!」
同時にヘッドスライディングで飛び込んでくるリィン。ずざぁっと地面を滑り、アリサの両足をくぐる形でリィンは制止する。
「くそっ、もう少しだったのに……ん?」
「い、い、い……」
リィンの顔が上に向く。
「いやあああっ!!」
彼の視界を埋め尽くしたのは、凄まじい勢いで迫るアリサの靴の裏だった。
「ほう、これはまた面白い形をしているな」
感嘆の声を漏らしながら、RFストアの店内を見回っているのはラウラである。
洗濯機に冷蔵庫、レンジなんてものもある。全て導力を利用した生活用品だ。
「すごいな。レグラムの屋敷にも一台あれば便利だろうに」
値段を見る。桁が違う。子爵家令嬢とて、所詮は学生の身。到底手がでない代物なのは間違いない。
ため息混じりで苦笑し、次にラウラが目を留めたのは、掃除機なるものだった。説明書きを読んでみる。
「ふむ? “翠耀石を内部機構に組み込み、風の力で埃や塵を残らず吸い込みます”……か」
やってみたい。とてもやってみたい。ものすごくやってみたい。
お嬢様の好奇心が刺激されていた。
そして幸いな事に、試用台が設置されている。実際に掃除機を使ってみていいらしい。
「ど、どれどれ」
いざ使うとなると緊張してしまう。おそるおそる持ち手を掴み、スイッチを押してみた。
低く振動し、掃除機が起動する。台の上に置かれたデモ用のゴミ屑に近づけてみると、あっという間に吸い取って、説明書きの通り塵一つ残さなかった。
「お、おお……!」
感動である。これならほうき入らずではないか。その上、弱中強の力調節が出来て、しかも今は弱ではないか。
まだ二段階も力の解放を残しているとは。これは尋常ではない。
「………」
試してみたい。好奇心が止まらない。しかし弱でこの威力。強にしたらどうなってしまうのだろう。人ひとり――それこそフィーやミリアムくらいなら吸い込んでしまうのではないか?
見当違いのことに思考を巡らしながら、「うーむ」とうなっていると、買い物を終えたらしい一人の客が扉を開けて帰っていった。
ドアの隙間から、入れ違いになるようにラジコンが入ってくる。
ラジコンはゆるゆると進み、ラウラの足元近くで止まった。ラウラはそれに気付かない。
バンと扉が開き、リィンが駆け込んできた。
「確かここに入ったと思ったんだが……」
「リィンではないか。そんなに息を切らして――というかそなた、顔をどうしたのだ」
リィンの顔面には顎から額まで、くっきりと靴跡が残っていた。
しかし説明する時間はない様子で、リィンはラウラの足元のラジコンに気付くと、「……動かないでくれ」とじりじりと間合いを詰め始める。
「リ、リィン?」
異様な雰囲気を感じて足を引きかけたが、動くなと言われた以上、ラウラは律儀にもその場に踏み止まった。「はあ、はあ」と息も荒いまま身を屈め、足元に手を伸ばしてくるリィン。
「ふ、不埒な!?」
反射的に手にしたままの掃除機を突き出す。吸入口がリィンの顔に押し当たる。ズゴゴゴとけたたましい音を立てて、掃除機がリィンの顔面に吸い付いた。
「ぶあっ!? なんだこれ! ラウラ、とめっ、止めてくれ!」
「す、すまない! ええっと、スイッチを今切るから――」
押し間違える。強。ズギョオオオ!と全力フルパワーで咆哮を上げるラインフォルト社の技術の結晶。
「ぶあっ、だあっ、ぶはあっ!?」
「あ、あ、あ? なぜだ、ここを押しただけなのに? わ、私はどうすれば?」
ただただ焦るラウラ。
そして引っ張られるままに、前のめりに倒れ込むリィン。
「もう今日は許さないわよ、リィン! 覚悟……な、さい」
遅れてアリサが店内に入ってきたのは、見事にリィンがラウラを組み敷く瞬間だった。
ラウラもラウラで激昂してすぐに振り解けばいいものを、視線をそらしたまま「ふ、不埒な……」などと呟き、身じろぎもせず頬を赤く染めている。
掃除機が顔から外れ、ようやく最悪の状況を理解したリィンは「こ、これは違う……」と、額にびっしりと冷や汗を浮かべた。
凍りつく時間の中、導力波を感知して、息を吹き返したラジコンだけが店から去っていった。
中央広場にバイオリンの音色が響いている。
言わずもがなエリオットの演奏で、それを横で聞いているのはフィーとミリアムだった。
「ふうっ」
数曲引き終えたエリオットは、ようやく息をついてバイオリンを傍らに置いた。
パチパチと二人から拍手が贈られる。
「さすが、エリオットの演奏は聞いてて眠くなる」
「あはは、だよねー」
彼女達の『眠くなる』は、安らぐとか落ち着くとかの意味合いである。
ちなみにフィーとミリアムの目的は日なたぼっこらしい。二人して手頃な段差に腰掛けて、うつらうつらと舟を漕ぐ様は、陽だまりにて和む猫と言ったところだろうか。
そんな彼女達を眺めながら弾くバイオリンは、心なしか柔らかな音色だったように思う。
演奏は心を映す鏡。
とても穏やかな心地だった。
目をこすりながら、フィー達が立ち上がる。
「ん、眠気覚ましに武器の整備でも行こうかな」
「ボクはぬいぐるみを探しに行きたいんだよねー」
ミリアムの言うぬいぐるみはよく分からなかったが、冷えてきたのでどっちみち野外演奏はそろそろ切り上げ時だ。
「じゃあ、僕は先にカレイジャスに戻ろうかな」
ふと広場に目をやると、街道側に向かって疾走する何かが視界をよぎった。
「なんだろ、あれ」
目を凝らすエリオットの耳に、「道を開けてくれ!」と悲鳴にも似た声が届く。
かなりの狼狽ぶりで、乗り間違えたのだろうか、上りのエスカレータ階段を逆走しながら駆け下りてくるリィンの姿が見える。ついでにその後ろに目を吊り上げたアリサと、赤らんだ顔で襟元を正すラウラが、そろって彼を追いかける姿も。
また何かやったのだろうと直感したが、この場に留まっていたら正面衝突だ。エリオットはフィーとミリアムを庇うように飛び退く。それは丁度先ほど、リィンがラウラを組み敷いたような形だった。
リィンはアリサ達に追い回されるまま、ルーレ空港――カレイジャスの方へと逃げていった。
「なんだったんだろう。ごめん、二人とも怪我はない?」
「急だったから驚いたけど」
「うん、ボクも大丈夫」
安堵したエリオットが二人の上から退こうとした時、背後でゴトンと何かが落ちる音がした。
ころころと視界の端にリンゴが転がってきた。その体勢のまま、顔だけで振り向く。
「な、なんでここに?」
顔面蒼白になったメアリー教官が、両膝を震わしながら立ち尽くしていた。両脇に抱えた小袋から、購入したばかりであろう果物や野菜をぼろぼろとこぼしながら。
彼女もトリスタを離れ、現在はミントの生家で世話になっているのだが、エリオットにそんな事情など分からない。同様に、エリオットが市街のど真ん中でいたいけな少女二人を押し倒している理由も、メアリーには分からない。
「ルーレでも……」
その唇が小さく動いた。
「ルーレでも猛将っ!」
落ちた野菜などには構いもせず、メアリーは踵を返して走り去ってしまう。
「メ、メアリー教官、誤解です!」
伸ばした手は虚しく空を切る。
「早くどいて欲しいんだけど」
「うう、重いよ……」
自分の下でもがく二人。
ルーレの住人達の「あ、あいつ猛将らしいぞ」などと言う小声だけが、雑多の中でも妙にはっきり聞き取れる。
演奏は心を映す鏡。
今はどんな曲を弾いても、悲しみに暮れた音色にしかならなさそうだった。
カレイジャス船倉。エマはヴァリマールを見上げている。
灰の騎神。その意匠は甲冑を纏いし中世の騎士そのもの。荘厳さの中に芸術的な趣きさえあった。
「ここにいたのね。一人で何してるのよ」
いつの間にか黒猫がそばに控えている。セリーヌだった。
「ううん、少し様子を見にきただけ」
自分とて騎神と、それにまつわる歴史、事象の全てを知っているわけではない。むしろ知らない事の方が多い。いや、知らされていない事と言うべきか。
戦いを収め、平定をもたらす存在。あるいは混沌を生み出す存在。
なぜ相反する伝承が残されているのか。
誰が、何の目的で“彼ら”を作ったのか。単なる兵器としてではなく、心と意志を持たせてまで。
考えても分かる話ではない。憶測さえも立たない。
ただ唯一揺るがない事実が一つだけある。
リィンを巻き込んだのは間違いなく自分だという事だ。
最初は――いや、ずっと負い目を感じていた。だが彼はそれを責めるどころか、感謝しているとさえ言った。その言葉を聞いた時に誓ったのだ。全てを尽くして、力になろうと。
起動者の導き手としてではなく、Ⅶ組の委員長として。
「……ここは周りが金属ばかりだから冷えるわ。風邪をひく前に戻るわよ」
「心配してくれているの?」
「ち、違うわよ。私が寒いの!」
セリーヌはぷいっとそっぽを向く。付き合いも長い。これは本当に自分を案じていると分かる。多分体調ではなく、心の方を。
カンカンカン、と非常階段を忙しなく下りて来る足音が響いた。
「あら、リィンさん。どうしたんですか、そんなに慌てて」
「い、委員長か。すまない、話は後だ。ヴァリマール、ヴァリマール!」
相当切羽詰った様子で、二回も名を呼ぶ。
騎神の双眸に光が灯り、グォンと各部から駆動音がした。
『ドウシタ、リィン』
精悍な男性の声で、ヴァリマールが応じた。
「乗せてくれ、今すぐに!」
『何故ダ? 特ニ戦闘状況デハナイヨウダガ』
「緊急事態だ!」
『……承知シタ』
光に包まれたリィンは、
成り行きを呆然と見ていたエマは、近付く別の足音を聞いた。
「エマ! リィンが来なかった!?」
「まったく、あの男は……」
アリサとラウラである。
「え、えーと」
二人の様子を見るに、リィンが何かをやらかしたのは疑いようがない。しかし事情も分からないのに、彼の所在を告げていいものかどうか。そんな思案をしていたら、無意識に目線がヴァリマールを向いてしまっていた。
アリサが察する。
「分かった。あの中ね? ヴァリマール!」
名を呼ばれたヴァリマールが、再び反応する。
『ドウシタ』
「私達も中に入れて」
『質問ノ意図ガ不明』
「できるの? できないの?」
『準契約者タルソナタ達ナラ可能ダ。ダガりぃんノヨウニ、コノ体ヲ動カスコトハ――』
「構わないわ。やって。緊急事態よ」
再び発せられた緊急事態。断固たる口調だった。
『承知シタ』
光がアリサを、ラウラを、そしてエマとセリーヌを包む。
「え、ええ? 私達もですか!」
「ちょっと、待っ――」
ヴァリマールの操縦空間に収まり、リィンは深く息を吐きだした。
いい加減、自分の迂闊さに気を付けなくてはと心底思う。今回は随分と怒らせてしまったようなので、アリサ達が少し落ち着いた頃合いで謝りに行くつもりだった。
だから、これは完全に予想外である。
右隣にアリサが現れた。左隣にラウラが現れた。真正面にエマが現れた。頭の上にセリーヌが現れた。
「やっと捕まえたわよ、リィン! って何ここ、こんなに狭いの!?」
「リ、リィン、そなた少し離れるがいい!」
「わ、私この位置ですか!?」
ただでさえ一人用の空間である。そこに合計四人と一匹がぎゅうぎゅうに押し込められた形だ。
それはもう、てんやわんやである。
「ちょっと、動かないで」
「いや、だけど!」
ずるりと頭の上からセリーヌが落ちてくる。反射的にそれを支えようとするリィン。セリーヌが「ニャッ!?」と甲高い声をあげた。
「あ、あんた、どこ触ってんのよ!」
「ど、どこ触ったんだ?」
「それを私の口から言わせるつもり!?」
フシャアと鳴いて、引っかき攻撃。
「痛っ! や、やめてくれ!」
「セリーヌ、暴れないで!」
「あなたって人は猫にまで手を出して!」
「そなた、動くなと何度言えば……!」
「フシャア! フギャア!」
混沌の中、リィンは全力で声を張り上げた。
「出してくれ、ヴァリマール!」
核内部に声が響く。
『ヤハリ四人ハ容量超過ダ。排出シタイノダガ――』
「だが、何だ?」
『ツマッタ』
「な、なっ!?」
『……否。四人モ転移シタノデ、霊力ヲ想定以上ニ消費シタ。シバラクスレバ回復スルダロウ。ソレマデ待ツガイイ』
核内の光が消える。霊力回復の為の簡易休眠状態に入ったのだ。
「ま、待ってくれ、ヴァリマール。しばらくってどれくらいだ。おい、ヴァリマール!」
騎神は応えない。
視界は真っ暗。
操作を戻そうと色々手を動かしていたせいで、気付けば色々なものに触れていた気がする。
「………ねえ、リィン」
ひどく冷ややかなアリサの声。何も見えないが、これはお怒りでいらっしゃる。それも先ほどより遥かに。
「何か言う事はある?」
そう訊かれて、リィンは答えた。
「……不可抗力なんだ」
スピナ間道に夕暮れ時を告げる鳥の鳴き声が響き渡る。
「リィン、来なかったな」
ガイウスは一人で釣りに興じることになっていた。結局最後まで魚は一匹も釣れなかったが。
「仕方がない、帰るとしよう」
なんとなくは分かっている。あのリィンのこと、ここに来るまでに何か依頼でも受けたのだろう。こちらの約束も忘れていた訳ではないが、緊急度が高いものだったから、やむなくそちらを優先した――そんな所だ。
それはリィンの長所の一つだと思っている。そんな彼だからこそ、皆が慕うのだ。
「む……」
ルーレ市内へと歩を向けた時、何かがカタカタと音を立てて近付いてきた。
リィンが追っていたラジコンである。街道に出た為、導力波がだんだん届かなくなり、ここに来てその動きを完全に停止したのだ。
「導力車の……玩具、か? 動いていたようだがゼンマイ式だろうか」
しかし周りを見回してみても人影はない。何とはなしに拾い上げる。誰かの持ち物かもしれないと、とりあえず持って帰ることにした。
街道を引き返し、市内に繋がる大きなゲートをくぐる。
黒銀の鋼都が赤く染まっていた。子供達がそれぞれの家へと帰っていく。夕食の匂いが湯気と共に漂ってくる。
「絵にしたいものだ」
考えずに口から出た言葉だった。
詰まる所、人の生活、営みはノルドであってもルーレであっても、根本の部分は変わらないのではないか。この何気なく、当たり前の風景こそ、守るべきものではないか。
走る子供達が故郷の弟妹と重なり、ガイウスはそんなことを思った。
広場を抜けて、ルーレ空港へ。
ドックにカレイジャスが停泊している。
赤い船体が夕日を浴びて、さらに真紅に輝いていた。
「ん?」
後部デッキの端に誰かがいる。あのシルエットはリィンだ。
いや、いるというか……四肢を括られ、柵に張り付けにされている。遠目にも理解した。彼は何かの反省を強いられているのだと。
リィンの心中は知りようもないが、甘んじて罰を受けているところを見ると、どうやら非を認めているらしい。
「せめていい風が吹くよう祈るしかないな」
正直、まったく和む要素のない構図なのだが、不意に懐かしさが込み上げてきた。
あれは当たり前の風景――とは言えないが、かつてはあって、一度失って、そしてまた戻って来たもの。
騒がしくて、楽しくて、明るかった自分達の日常。
鮮やかに輝く日々の連なり。幾重もの未来へと繋がる虹色の軌跡。
ああ、そうだ。これこそが守るべきもの。その価値のあるもの。
いつかまた、当たり前にあった日常を当たり前に過ごせるその日まで。
自分達は、Ⅶ組は、戦い続ける。
沈みかけた太陽の下、悲哀を映すリィンの背を見上げながら、ガイウスはそう誓った。
~END~
そんなわけでやはり中編を挟んでしまいました。どうしてもⅦ組勢をフル出撃させると一話のボリュームが増えてしまい……
今回はトヴァルさん含め、二話でお送りしています。短編は短編なのでしょうが、詰め合わせにはなりませんでしたね。
ルーレの方はⅡプレイ済みの方はお気づきかと思いますが、あの辺りのイベントを全部一つの話にまとめました。猛将とかはなかったと思いますけど。
リィン視点から始まり、ガイウス視点で終わるというちょっと変わった構成でもあります。
久しぶりのⅦ組勢なので、リィンは例によって不可抗力にまみれてもらいました。
まあ、四の五の言わずに爆発せよ。
ではようやく次回がラストの後編です。
最後までお楽しみ頂ければ何よりです。