異世界サバイバルに、神様なんていらない!   作:rikka

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010:個か、全か

 

 結局、スキルを決められないまま一夜を過ごす事になった。

今回は作業に妙に慣れているゲイリーがいたため、さほど時間がかからずに人数分のシェルターの確保が出来た。

 なんだろう。貴族っていうからもっと偉そうで、こういう作業とか人任せみたいなイメージがあったんだが、むしろ頼りになるお兄さん――いや、整った顔立ちとかも合わせると、近いのはこうなりたいと憧れる先輩といった感じか。

 正直、この面子の中で一番頼りになる。

 

「さて、それで明日の事だが……」

 

 夜になり、皆で火を囲みながら正直食べ飽きてきた感がある木の実と果実で腹を満たしながらの会議。

 一応リーダーということらしいので、とりあえず話を振る事にした。

 

「とりあえず、二手に分かれて活動しないか?」

「二組で探索というわけか?」

「それか、片方はこっちで作業とか」

 

 自分が次に取るスキルに関して、とりあえず明日何をするか、誰と行動するかで決めようと思う。

 一度取り逃がしたスキルがそのまま取れなくなる訳ではないという事が今回分かったので、例の魔法に関しても無理して取る必要はないと俺は考えている。

 ずっと保留したままというのももったいなさすぎるので、今は目先の行動に最も適したスキルでいいだろう。

 

「そうだな。念のために燻らせた火を持っておけば、仮に遠くに行きすぎても一泊くらいは可能だろう。……火事に気を付ける必要はあるが」

「つまり、ある程度は安心して動ける?」

「あぁ。トールの書いたメモがあれば、安全度は更に跳ねあがる」

 

 メモとは、ようするにサーチスキルを使った際に食べても問題がない植物をスケッチや押し花(正しくは押し草だが)と一緒に、詳細を書き込んだ物だ。

 なにせサーチスキルが常時発動するモノではないのだ。判明した事はその場でしっかり書き遺しておかないと、肝心な時に困ってしまう。

 

「で、班員分けだが……」

 

 単純に男組と女組でいいんじゃないか?

 

「まぁ、そうだよなぁ……」

 

 ゲイリーはなにか別の案があったのかもしれないが、そもそもゲイリーとアシュリーの二人を同じ班には出来ない。

 つい先日まで殺し合っていた二人に、いきなり仲良くしろと言ったって無理がある。

 そうなると、自分がゲイリーかアシュリーのどちらかと組む必要がある。その二択なら、同性同士の方が気が楽である。

 

「そういうことなら、アタシからは文句ないわ。出来ればトール君とじっくり話してみたかったけど、機会はいくらでもあるしね」

 

 ……そうか。今気がついたが、仮に魔法を使えるようになったとすればゲイリーとの仲は良くなるだろうが、アシュリーからは敵視される可能性もあるのか……。

 

「美人にそういう事を言われると正直嬉しいけど、まぁ……詳しい話はまた次回って事で」

「えぇ、期待させてもらうわ」

 

 今のところアシュリーからは、恐らく文化がある程度近いと思われているのか好意的な雰囲気を感じる。

 ゲイリーはもちろん、アオイと比べてもかなり気安く話しかけてくれる。――正確には言えば、アオイはなんというかアレなんだけど。

 ……あれ? やっぱり魔法って取る方がデメリット大きい?

 

「問題はそれぞれの行動か。両方探索するか、片方が違う作業を行うのか……。トール、どう思う?」

「俺としては、片方は残るべきだと考えている」

 

 両方この場を離れて、万が一両方が動けなくなるような事になると面倒だ。

 片方が異常を察知できたからこそ、ゲイリーやアシュリーと合流出来たわけだし……。

 うん、アオイだけだったら最悪どうなっていたか。

 

「なるほど。となると、残った方が何をするかだが……」

 

 シェルターの寝心地の良さを追求とか正直してみたいが、いずれ移動する拠点でそれを行う意味は薄いし……確かにどうしよう。

 気になる事ややりたい事は多々あるのだが、近いうちにここを去るとなると選択肢はかなり狭まる。

 

「ねぇ、貴族様。貴方の国って、確か貴族学校――っていうか、基礎教育課程の一環で山籠りがあったわよね?」

「ん? あぁ……。自然と触れ合う事は、魔術師には必須事項だからな」

「なら、今の状況で役に立ちそうな物の作り方は分かるでしょ? トール君と相談して、いくつか作っておいたらどう?」

 

 アシュリーの提案に、ゲイリーは考え込む。

 というか、なるほど。

 俺のイメージする貴族に比べて、なんというか泥臭いというか手作業に慣れている感があったのはそういう事か。

 こう、中性的な美系でもあるためそういう作業からは程遠いと思っていたのだが……。

 

「必要なものか。確かに……トール、どう思う?」

 

 こうやってキチンと俺に確認を取ってくれるあたり、なんというか俺をキチンとリーダーとして扱ってくれている気がしてありがた――くはないけど、気遣いは感じる。

 

「OK、それで行こう。と言っても必要なものか……」

 

 それが誰に取ってかで、モノは変わる気がする。

 次に自分達が拠点とする場所を見つけるための、探索班にとって必要――というか便利な物か、あるいはいざ移動する時に必要な物なのか。

 

(明日の朝まで、ゲイリーと話し合うべきか)

 

 本当はスキルの話をしたかったのだが、それよりも個々人の特徴というか傾向というか……そういう物の把握の方が今は大事な気がしてきている。

 どれだけ俺がスキルで出来る事が増えた所で、それが自分一人だけの状況ならともかくこうして色んな人間と共に動く以上、個々のスキルよりも連携の方が大事だと思うのは……集団主義的な日本人だからだろうか?

 あるいは――ただ単に、あの孤独をもう二度と味わいたくないだけなのだろうか。

 

 

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