異世界サバイバルに、神様なんていらない!   作:rikka

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021:三つめ?

「ただいまー。とりあえず、探索ついでに食べられる野草を適当に集めてきたわよー」

 

 何回もこうして時計もない活動をしてきて、俺たちは全員太陽の大体の位置で、あとどれくらいで日が暮れるか大分正確に計れるようになってきていた。

 そのおかげでゲイリー達も、日が暮れるまである程度の余裕をもって探索から帰還してくれた。

 

「おー、助かる。それで、なにか新しい発見はあった?」

「んー……一応これかしら?」

 

 そう言って樹皮で作った採取箱を差し出すアシュリー。

 中には適当に折った藁が敷きつめられていて、その上には――

 

「水草?」

「湖をじーっと見てたらなんか変だと思って、少し底の方を探ってみたのよ」

「そしたらこれが生えてた?」

「えぇ……アタシ達で探索した時、湖底はほぼほぼ土と石だったわよね?」

 

 アシュリーの言うとおりである。ちょっと気分転換に顔や手、身体を洗った時についでに湖の底を――まぁ、浅い所だけだが調べていた。

 多少は水草も生えていたが、ほとんど土ばかりだった。

 

「あれぇ? さっきトールさんの傘を使って水を汲みに行った時は……覗き込んだ感じじゃあ結構水草生えてましたよォ?」

 

 今日は一日作業しっぱなしで、水汲みなんかはアオイに任せていたから気付かなかった……マジでか。……マジでかぁ。

 

「水草ってそんな繁殖するものだっけ?」

「いや、少なくとも俺達の世界ではこんなに……いや待て。アシュリー、お前達サイドならそういうのもあるんじゃないか?」

「……Aクラス以上の汚染水域に投入される、水質及び土壌改善用の遺伝子改良植物なら確かにあるわ。ただ、それでも二,三日でこんなに繁殖しないし……なにより一定レベルに浄化された水の中ではすぐに死んじゃう――つまり枯れちゃうわ。それに、万が一予定外水域に漏れた時にすぐ発見できるように色も変えてあるし……」

 

 なるほど、つまりは違うと。

 まぁ、他の世界の植物って可能性も十分あるけど……その場合、それを食べるっていうか……天敵みたいなのがいないとヤバいんじゃない?

 いや、あるいは――

 

「増えたんじゃなくて、俺たちや他の動植物みたく送られてきた奴かもしれん。それも追加で。正直、今気にしてもしょうがないと思う」

 

 というか、この可能性の方が高い気がする。

 詳しく調べたわけじゃないけど、ひょっとしたら森の木とか人知れず増え続けているんじゃないか?

 

「まぁ、周りの調査や考察も必要だってのも分かる。異変に気がつかないまま窮地に放り込まれるとか最悪どころの話じゃないからな」

 

 それこそ、もし自分があの日この森に放り込まれるって分かってたら適当なアウトドア用品と食糧、水くらいは持ってきていたわ。

 アオイと話している時に道具作製で一日費やす案も思いついたのだが、よくよく考えるとたたでさえ訳のわからん森だ。

 例えば今、唐突に肉食動物が現れたって不思議ではないのだ。

 そういう痕跡や気配はいち早く察知する必要がある。

 つまり、探索・調査グループは必須ということだ。

 ……あぁ、それにその可能性を考えると武器――というか狩猟道具も必要になってくるか。

 

 

(――え、どれから手を付ければいいんだろう?)

 

 

「とりあえず、今大事なのは野草以外の食糧の安定だと俺は思うんだが……皆はどう思う?」

 

 こう言う時はとりあえず皆の意見を聞こう。

 俺がこうしようと言って強行できるわけでもないし。

 

「私は……そうですねぇ。応急処置ですが、刀を多少は砥げる砥石の代わりになる物を探したいですぅ」

「……あぁ~~~」

 

 確かに。

 今の所はまだ何とかなっているが、刀も所々が欠け始めている。

 現状唯一しっかりした刃物なのだ。出来る限り手入れをしておきたい。

 

「トール君、君のスキルで石の判別とかは可能なのかしら?」

「……やってみないとなんとも」

 

 今までは基本的に植物に対してばかり使っていた。いや、正確には注視していなかった。

 といっても、そこらの小石などでは試した所で意味ないし……。

 探索に行った人間にそれっぽい石を持って帰ってもらうか、俺が自分で出歩くか――いや、そもそも砥石ってどんなのだ?

 包丁は握った事あっても、その手入れなんてしたことない。

 というか、手入れとかしていたのか? ウチの事だから切れなくなったらしばらくして買い変えてる気がする。

 

「ゲイリー、それにアシュリーは?」

 

 二人にも意見を聞いていると、アシュリーはともかくゲイリーは難しい顔で悩んでいた。

 

「そう……だな……。道具はともかく探索ならば下流を更に探るか、それとも数日別行動という前提で、前の拠点や周囲の罠を確認してくるかの二択……を、思いつくな。……お前は?」

「アタシは……そうね。ちょっと湖の中を探ってみたいけど……ゲイリーの挙げた二択なら下流かな」

 

 アシュリーは、そういえば前の時も下流探索に興味あったっけか。

 で、ゲイリーは場所はともかく思考としては探索寄りと。

 

(……また同じ組み合わせで行くか?)

 

 俺とアオイ。ゲイリーとアシュリー。

 ……駄目だ、後者がどうしても不安すぎる。

 人格どうこうじゃなく組み合わせ的に。

 今回は何事も無く無事に済んだようだけど、かといって同じ組み合わせを続けるのも……気が付いたらいらぬ軋轢が産まれていたとか可能な限り避けたい。

 

(……よし)

 

「今回はアオイとアシュリーが残って昨日作った罠を湖に仕掛けておいてくれ。出来る事なら、湖の探索も」

 

 女二人組みならば、水浴びや湖の底の探索もしやすいだろう。

 水草の件も気になるが、魚の件も気になる。

 

「わかりましたぁ~♪ ついでに余った時間で紐を出来るだけ作っておきますねぇ?」

 

 それな。

 

「頼むわ。めっちゃ頼むわ」

 

 一緒に作業したからな。分かってくれて本当に嬉しいわ。

 俺も作業の合間に使えそうな草とか探して持って帰るから。

 

「ゲイリーは、俺と一緒に上流の拠点に行こう。罠の様子も気になるし、ひょっとしたら人の気配が無くなって動物が近寄ってきているかもしれない」

「動物……なるほど、確かに。了解だ」

 

 どうやら、動物の事は頭から抜け落ちていたようだ。

 今まさにその動物の肉を齧っているのに。

 

(意外と抜けている所あるのか?)

 

 それか、前にアオイと上流調べた時に碌に発見がなかったから、可能性の高い魚の方に意識を全振りしていた?

 ……こっちのほうがゲイリーっぽいか。

 

「そんじゃま、例によって例のごとく行くか。今回は念入りに探索したいから、また三日ほど時間をかけようと思っている。もし、予定より……二日経っても帰ってこない場合は――」

「私とアシュリーさんで上流に探しに行けばいいんですねぇ?」

「あぁ、頼む。今回は俺も色々とスキルで色々試したい事も含めてがっつり探索したいから、ひょっとしたら森の中に――」

 

 いるかもしれない。

 そう言おうとしたその時、ブレザーの胸ポケットが震えだした。

 スマホが、震えている。

 

「……今度は早かったな」

 

 取り出したスマホには、最近もうこれがデフォじゃなかったっけ? と思える白い文字が浮かび上がっている。

 

『アップデートによる不具合の修正が完了しました。

 ・スキルシステムに項目が追加。ご確認ください』

 

 いつぞやと同じ文字列だ。

 

「あ~、皆ごめん。それじゃあ適当に夜を過ごして明日に備えようって言うつもりだったんだけど――」

 

 

 

「――会議、ちょっと延長する必要が出てきたみたい」

 

 

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