異世界サバイバルに、神様なんていらない!   作:rikka

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029:肉は寝かせた方が美味い

「よくやったお前達、褒美として一番美味そうな所を優先的に選ぶ権利をくれてやろう」

「やたーっ!」

「いや、そもそも罠を仕掛けたのは君で……いや、君がそれで良いと言うのならばありがたく受け取っておくが……」

 

 ええからええから、取っとけ取っとけ。

 というか仕留めたのは君達だし、血抜きしたとはいえ中々重そうな野豚運んだのも君達だし、加えて解体したのも君達だし。

 しかも、川原でアシュリーのナイフを発見するという大手柄まで挙げてるんだから俺から文句はない。

 アシュリーもナイフが戻ったのが嬉しかったのか、発見したというゲイリーに礼を言っていた。

 敵に対して礼を言うのが不服だったのか、笑顔ではなく……こう、なんというかニヤニヤした感じだったけど、まぁお礼を言ってゲイリーも戸惑いながら受け取ったから良しとしよう。

 これで少しは互いの関係のしこりが取れるといいんだけど……。

 

「とりあえず解体した奴は……ナイフのおかげもあって簡単に細かいサイコロ状に切れたし、多少の血と骨もある。野草とかと一緒に煮込んでシチューにしないか?」

「いいですねぇ♪ 多少の臭さも、草と一緒に煮込めば取れるでしょうし」

「貴女達が豚相手に格闘していた頃に、こっちも食べられる物は確保しておいたわ。それに、沸騰させるための器を予備を一個作ってあるし、万が一汚れてしまっても問題ないでしょう」

 

 俺とアシュリーが朝に魚籠の確認していた時、ついでにパッと見でタマネギを凄く小さくしたような変わった野草があったので調べてみたら、どうやら本当に臭み取りなどに使えそうな野草だったので切り取って来ていた。

 早速役に立つ場面が来るとは思わなかったが……悪くない。

 

「よし、それじゃあ飯の準備しようぜ! 今回の肉は鹿より臭いが強いし、もうちょい俺は野草を集めてくる」

 

 ともあれせっかくの肉だ。

 ここで食事を少しでも豪華にして士気を上げておこう。

 アシュリーと今後の事を色々話していたらむしろ俺がブルーになってきたし。うん、むしろ俺がテンション上げたい。

 デザート用に果実――イチゴみたいな感じの奴があったはず――を摘んできて、あと前に食べた時に美味しくて目星を付けておいた野草を引っ張ってこよう。 

 

「む……なら俺も念のために同行しよう。仕留めた野豚は中々に攻撃的だった。そういう類の獣に遭遇したら危険だ」

「ありがとう、ゲイリー。頼りにさせてもらうよ」

 

 帰ってきてアオイがアシュリーのナイフを借りて野豚――俺から見りゃ小さい猪だが――の解体作業をしている間、ゲイリーは鋭い石を使って出来るだけ真っ直ぐで長い枝の先端を尖らせ、そして少しだけ焼いて固くしていた。

 見ての通りの槍である。

 おそらく狩猟に必要だと思ったのだろう。

 ごめん、ホントごめんゲイリー。

 もっと早くに俺が提案するなり、夜の間にスキルも駆使して数本作っておくべきだった。

 

 興奮して暴れ回っていた野豚に止めを刺したのはゲイリーと聞いているし、ちょっと疲れているように見える。

 せっかくだから、今日は肉たらふく食ってゆっくりしてほしい。

 明日も比較的楽な湖側の作業に回すからさ。

 

「それじゃあ、アタシは近くの魚籠だけ確認してくるわ。多分成果はないでしょうけど、一応ね?」

「料理は私に任せてください! 山育ちは伊達じゃないですから!」

 

 ……うん、まぁ、お前の料理の腕は信じてるよ。

 けどさ、お前はうかつ――ではないけどこう、軽いというかなんというか……。

 

「味見の時には十分注意するようにな? ここで腹壊しても地獄を見るだけだからな?」

 

 俺とゲイリーで隙を見てこっちでも二人がかりでトイレは作ってある。

 鼻が敏感な獣は排泄物の臭いに寄ってくるというからシェルターからはちょっと離れた所にちょうどいい段差があったので、そこにいわゆる洋式形態のトイレを作っておいた。

 腰をかけた時に尻の辺りだろう所にやや大きめに穴を掘って、出来るだけ真っ直ぐな木を上から綺麗に二つになる様に切って作った二枚の板……板? まぁそれを便座というか座る所にするためにこう、ほどよい間隔を開けて敷いて……はい、トイレです。

 キチンと周囲には壁を設置しました。

 前にゲイリーやアシュリーを助けた時に作った壁と同じく枝を積み重ねて、ついでに隙間は泥と石で埋めていたので覗き見られることはありません。ハイ。

 トイレットペーパー? ティッシュはとっくに使いきってんよ! 代用品は念のために軽く茹でて殺菌済みの葉っぱだよこんちくしょう!

 

「大丈夫ですよぉ♪ 仮に病気にかかってもかからなくても死ぬ時は死にますぅ♪」

「いや……分かってるよな? 分かってるよな!? 俺の言ってる意味分かってるよな!?」

「大丈夫ですってぇ。信じてくださいよぉ♪」

 

 いや信じるけどさ!

 というか自分から病気にかかりに行く馬鹿がいるとは思わんけどさ!

 ホント頼むぞ! 衛生面がガチで生死を分ける状況だかんな!?

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「えー、それでは皆さん。今日も一日お疲れ様でした!」

 

 一つの煮沸用の流木器ではスープを、もう一つではお茶を、そして焚火では軽く茹でた一部内臓や肉を枝に刺した物が遠火でじっくり焼かれている。

 内臓に関してはアオイとゲイリーの物だ。サーチでも美味いと書かれていたし、実際さきほど味見という事でアオイから一欠けら食べさせてもらったが美味かった。

 

 なお、食いきれない肉は焚火の上に吊るされた即席の網の上で、一切れずつ燻製にされている状態である。

 

 

「乾杯!」

 

 人数分揃ったマグカップを掲げると、他の三人も『乾杯!』と掲げてくれる。

 カップというより、今日はこれが匙代わりなのだが。

 これで直接スープやお茶を掬って、肉や大きめの野草は箸やフォーク代わりの削った枝で突き刺したり掬ったりして食べている。

 ……匙とかお玉とかも作ってみるか。アオイもアク取りで苦労したって言ってたし。

 実際、食器関連を増やすのは悪い事じゃあるまい。

 

「お肉はキチンと火は通ってますかぁ? 一口程に切り分けているので通りやすいと思いますけどぉ」

「おぉ、ベストベスト! 骨と野草のダシが上手く乗ってて美味いわこれ!」

 

 骨を出汁にすると聞いた時は、匂いの強烈さがあったから大丈夫なのかとちょっと不安だった。

 だがアオイが大丈夫と言った通り、骨を軽く焼いてから出汁にしたら生臭さはほとんど消えていた。

 ……考えてみると、俺以外は料理できるんだよな。

 俺も家で台所に立つ事はあったし包丁を握ることだって何度もあるが、魚を捌いたり解体する事はさすがにない。

 加えて塩も胡椒も醤油も無い状態では、正直八方ふさがりである。

 

(……マジで料理スキルみたいなの生えないかな)

 

 ある意味でスキルに慣れてきたのか、今になって魔法を取るという選択肢もあるなと思い始めてきたが、やはり同時に取りたい者は多くある。

 罠の確認という日課が増えた今では『健脚』スキルは結構魅力的だし、『野草知識』を試しに取るのも悪くない。

 

「とりあえず、ここでやろうと思えば安定した生活が可能だと言う事が分かった」

 

 俺の言葉にそれぞれがそれぞれの言葉で肯定する。

 実際、獣がいてその肉を食えて、野草も果実もある程度は取れる。

 後は魚が取れれば完璧だ。

 

「で、だ。しばらくは罠の確認や追加なんかを主として、拠点の強化に努めようと思う。周辺の探索はもちろん皆どう?」

 

 とりあえずシェルターの改築のそうだし、そのための資材や建材集め。

 向こう側の拠点に作ってた作業場も建てたいし、雨が降った時のために今の焚火場の上にはある程度広い屋根を作っておきたい。

 正直、よっぽどの事がない限りこの拠点は捨てられない。

 環境としては最高だし、今現在危険だと思う事は予想を超える増水と野生動物くらいだ。

 

「私は問題ありません♪ せっかくなので狩猟等に備えて色々用意したいと思いますぅ」

 

 アオイは真っ先に賛成の意を示す。

 実際、かなり立派なナイフが回収できたとは言え刀も十分戦力になる。

 作業的な意味で。

 となると、トドメを刺すのも含めて狩りを行う狩猟道具は確かに揃えておきたい。消耗速そうだし。

 ゲイリーも既に作っている所を見ると、必要頻度高そうだし。

 

「俺は……そうだな、異議なし。少なくともしばらくは気候も安定しそうだし、先の事に備えて色々用意しておいた方がよさそうだ」

「用意ねぇ。何を用意するつもりなのかしら?」

「まだ深く考えていないが……食糧や資材・建材の貯蓄方法をなにか用意したいと思っている」

 

 あぁ……。うん、確かに。どうにかしたいよねそれも。

 痛むのが早い肉は燻製にして長持ちさせるようにしているけど、それでも三日も持てば良い方だ。

 ゲイリー曰く、塩などでしっかり水分を抜けばかなり変わるらしいが……。

 

「アシュリーは?」

「そうねぇ……確かにあんまり動くのもアレだけど……ねぇ、アタシも好きに動いていいんでしょう?」

「? あぁ、別に構わないけど?」

「なら、アタシは出来るだけ探索に動く事にするわ。あぁ、だから例のノートまた貸してちょうだい? それっぽい野草や虫のサンプルも持ってくるけど、キチンと食べ物も持って帰るから」

 

 むしろお願いしたいくらいなんですけど。

 

「頼む、アシュリー。出来るだけ道具も揃えるから、無理しない程度に色々と調べて欲しい」

 

 工作員というだけあって、一応はサバイバルの訓練を受けている彼女は探索要員としては適役だろう。

 ゲイリーも同じ理由で適任なんだが、今回は拠点仕事の方に興味があるようだし、俺も休ませようとしていた所だったからちょうどいい。

 代わりにアシュリーに少し負担がかかるが……。

 

「えぇ、任せてちょうだい。きっと君の役に立って見せるわ」

 

 そう言って舌をチロリと出して見せるアシュリーはどこか色っぽくて、ちょっとドキッとした。

 

 いやホント、こうした強制サバイバル生活に放り込まれて唯一よかった事があるとすれば、周りの人間に恵まれたことだよなぁ。マジで。

 

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