異世界サバイバルに、神様なんていらない!   作:rikka

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041:やだこのスキル、怪しすぎ?

 

 おおおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉおおぉ…………死ぬかと思った。

 いや死ぬつもりだったんだけど……堪えるなぁ。

 とりあえず傷は治ったけど、血とか水分が足りないのか? 

 なんか無性に水が飲みたい。

 

「大丈夫ですかぁ?」

「あぁ、なんとか……とりあえず水飲みたいな」

 

 今度水筒作るか。

 実は、水筒の作り方というのは前にもスキルは調べたのだが、一番丈夫そうな奴は、必要な材料に大きめの動物の胃袋や膀胱が必要ってなってたからついつい躊躇っていたが……今度獲物が引っかかったら作ってみるか。

 

「? んお?」

 

 そんな事を考えていたら、首筋に冷たい物を感じた。遅れて熱い物を。

 

 

――あぁ、アオイか。

 

 

 気が付いたら、刀の刃が首に添えられていた。

 というか、ちょっと斬れてる。

 

 ……さっき取ったスキル、すぐに使えるかなぁ。

 

「おやおやぁ? どういうつもりなんですかぁ?」

 

 俺からは見えないが、どうやら三人の内の誰かが――っていうか、視界の隅っこにアシュリーと金髪の子は映ってるから、残るあの冷たい感じの美人さんか。

 

 うん、まぁ、口約束だもんなぁ。俺の死が遠ざかった瞬間にアオイを排除しようとするのは……まぁ、こう言っちゃなんだけど普通だ。

 

「人質役もつらいなぁ……」

 

 思った事がつい口を付いて出ると、後ろから聞き慣れない声がする。

 

「貴様は――なんとも思わんのかっ!?」

「……んん?」

 

 何をだよ。

 

「この女に全てを預けると言うのか?! 容易く自分を斬り、刺し、抉った女を!」

 

 いや、それ望んだの俺やし。

 

「正直に応えるが……疑う理由が一つもない」

 

 恐れる理由ならちょいちょいあるがな!

 

 さて、さすがに中途半端に首を斬るのはごめんで、かと言っていざというときにはスパッとされなきゃだめなのでなるだけ首を動かさないえ横目で見ると、やはり藍色ポニーテールがこっちを睨んでいる。

 やっぱり、あのナイフ持っているか。

 となるとあの金髪の子も持ってるだろうし、無事に終わればナイフ二本追加か。いろいろ出来る事が広がりそう。

 

「――今、首に刃を当てられていてもか」

 

 だって警告の方はとっくに終わってるし。

 

「次は痛くない様に斬ってくれるだろうし……まぁ……いいかなぁ……なんて」

 

 多分、アオイの腕ならやってくれるだろう。

 あの切れ味のいいナイフも持っているし。

 

 ……心臓ぶち抜かれたら痛みを感じる前に死ねるよな?

 

「貴様達は……いや、貴様は……」

 

 ん?

 

「トール=タケウチ!」

 

 トオルです。

 いや、今更だけどさ。

 フルネームなのにトールと呼ばれるとすんげぇ違和感ある。

 

「お前は一体……一体なんなんだ?!!」

 

 だから……。

 現在絶賛遭難中のただの男子高校生です。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「本当に良かったのか、トール?」

 

 今、拠点にいるのはゲイリーとアオイ、そして俺だけだ。

 アシュリーは面倒起こした罰として新人二人を連れて食糧を取りに行かせている。

 

「むしろ、ゲイリーこそすまんかった。勝手にアシュリー達をこのまま置いておく事にして」

 

 アオイは特に異論なくニッコニコと笑っているが、ゲイリーに至ってはつい先ほどまで殺されかかっていたわけだからなぁ。

 死ぬなら死のうと決めてた俺よりも状況は酷かったハズだ。

 

「いや。……俺はただただ足手まといになっただけだ。思う所がないわけではないが……君の意見に従うさ。あぁ、大丈夫だ。もう、君の足は引っ張らない」

 

 いや、あの、そこまで深刻そうな顔しなくても嫌な事は嫌と言ってくれた方が――

 本当に大丈夫か?

 いやまぁ、まだあの三人が仲間になるかはまだ分からんけど。

 

「俺が言っているのは、あの三人をまとめて食糧取りに行かせた事なんだが」

「新入りは場所知っとかないと不便だろうし……それに、一応考える時間は必要だろう」

「……わざとか」

「まぁ、一応」

 

 アシュリー達三人も、今後どうするか敵対ルートも含めて考える時間が必要だろう。逃げるのなら、そのための時間も含めて。

 ……出来れば仲良くやっていきたいんだけどなぁ。

 

 まぁ、もうしばらく待とう。帰ってこなかったら、念のため俺たち三人で飯取りに行って――

 

 あいつら、逃げるのは構わんが食糧根こそぎ持っていったりしないよな?

 さすがにそんな事しやがったら全力で追跡してやるわ。

 捕獲してエロいおしおき待ったなしだかんなこの野郎!

 

 ……くすぐりとか。

 

「まぁ、多分帰ってくるだろうなぁ」

「ですねぇ。あの人達が自分達の世界に帰るには、なんだかんだでトールさんが必要になりそうですし」

「……実際の所どうなのかねぇ、スキルってそういう方向に役に立つのか?」

「私は間違っていないと思いますよぉ? だって、この世界に来て変異が起こったのはトールさんだけですし」

 

 そこはまぁ、確かに。

 スキルのおかげでどうにか生き延びれているけど、おかげで厄介な状態にもいるというこの現状。

 泣ける。

 

「そうだ。トール」

「ん?」

「頭は大丈夫か?」

 

 …………。

 喧嘩売ってんのかコルァ?!

 

「奴らの機械が、頭の中に植え付けられているのだろう? 違和感とかないのか?」

「あ、あぁ。そっちの事か」

 

 機械――サブブレインとかいう物があるらしい右側のこめかみをトントンと叩いてみるが、特に違和感はない。

 

「特になんともないな。まぁ、正直入っている物が何かは分かっているんだから、そこまで恐れる事はねぇかなってのが俺の意見なんだけど」

 

 強がりでもなんでもなくマジである。

 そう、むしろ今怖いのは――

 

「ぶっちゃけ、コイツに比べたら全然アリだよ」

 

 そうして俺はゲイリーの目の前にスマホを突きつける。

 つい先ほど俺の危機を救ってくれたが、通常時ならば恐らく絶対に取らなかっただろう、魔法以上に恐ろしい想像をさせるスキル。

 

 

――自己再生。

 

 

 それが、俺の体に新しく追加された特性である。

 経験等がスキルを構築していくのではないという俺とアオイの雑談がてらの検証を裏付ける事になったのは喜ばしいが……。

 

 ねえ、これ本当に大丈夫なん?

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「場所を教えると言っても……ボク達、とっくに隊長経由で知っているんスけどねぇ」

 

 もう完全に暗くなった夜の森――それほど木々の茂りは濃くないので、林と呼ぶべきだろうか。

 月明かり以外には何もない道中を、松明一つ点けずに三人の女が歩いている。

 

「隊長。あの男、本当に民間人なのですか?」

「……そのハズよ。えぇ、そのハズなんだけど……」

 

 表情が明るいのは一人だけ。金髪の少女――テッサだけだ。

 残る二人――アシュリーとヴィレッタは、顔を曇らせながら先頭を行くテッサの後をトボトボとついていっている。

 

「あれは学生の持つ精神性とは余りにかけ離れています。……狂人の一言で片づけられるものでもありません」

「分かってるわよ、そんなの」

 

 当たり前の事を何度も繰り返すヴィレッタに、アシュリーはやはり同じように繰り返していた。

 

「……浅はか、か」

 

 アシュリーは、これまで共に生活をしていた女が、見たことのない冷たい声で告げた言葉を自分の口で繰り返す。

 

「確かに……見ていなかったのかもね。色々」

 

 アシュリーは、籠に回収したばかりの干し魚を揺らしながらため息を吐く。

 

「あれだけの事があったのに、一応逃げる時間をくれる辺り普通じゃないわよね」

「いや、初めからどう考えても普通じゃないッスよあの人。見てるだけでも分かるじゃないですか」

 

 一方、ずっと上機嫌なテッサは鼻歌交じりで、干し肉や野草が入った籠を大事に抱えたままスキップしている。

 

「そういえば、テッサ。お前は最初からあの男を狂人と見ていたな」

 

 以前刃物を向けられた時の経験を思い出したヴィレッタが呟く。

 

「お前から見て『トール』という存在はどういう男なんだ?」

「ん~~? 分かんないッスかぁ? ヒントはゴロゴロあったと思うんスけどねぇ」

 

 まるで芝居かダンスでもしているかの様に華麗にクルッとターンして二人の方に向き直ったテッサは、ニッコニコ笑ったまま――

 

 

「あの人、自分以外の人なんてどうでもいいんスよ。あるいは、滅茶苦茶自分が第一なんですよ」

 

 そう言うのだった。

 

「……貴族様を助ける事が、トール君にとって大事だったって事?」

「いやぁ、そういうレベルじゃなくてぇ」

 

 再びクルリと回転して、ゆらめく焚火がチラチラと見える拠点の方へとテッサは顔を向ける。

 

「隊長達じゃあ理解できないでしょうけど、そういう事でもないんスよ。きっと。アオイって人ならもうちょっと分かっていると思うッスけど……」

 

 とても楽しそうに。

 あるいは、幸せそうに。

 鼻歌交じりに少女は口を開く。

 

 

「いやぁ……楽しくなりそうッス!」

 

 

 

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