異世界サバイバルに、神様なんていらない!   作:rikka

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047:人と人

 シェルターというか、今回は簡単な風避けと炎の熱だけで一夜を過ごした。

 テッサやヴィレッタに言わせれば、これもキチンとしたシェルターという物らしいが……。

 そして食事時には、さっそく手に入れたスキレットや空き缶が役にたった。

 空き缶と、前に作ったペットボトルのろ過装置でできるだけ綺麗にした水をスキレットで煮沸。そこに干し肉と野草を加えて簡単なスープにして、いただきます。

 そうして、とりあえず例の遺骨を埋めてやろうと洞窟に戻り――。

 

「……ここだよな?」

「ここッスね」

 

 昨日と同じ、地形の切れ目のようにみえる洞窟。

 その中に入り、辺りを見回す。見回すが――

 

「消えてるッスねぇ。……遺体」

 

 服や持ち物を剥ぎ取った後、個々人にキチンと分けて埋葬する準備を整えていた白骨死体が全て消えていた。

 

「というか、洞窟もちょっとおかしいッスよ。もうちょっと奥行きあったッすよね? 昨日、ボクらがバックパックを発見したのて物影だったッスもん」

「それに、壁に所々ついていた戦闘痕らしき傷も消えている」

「…………」

 

 なんとなく、今着ている服に手を当てる。

 間違いなく、昨日白骨死体から剥ぎ取ったYシャツだ。

 

「周辺で変わった所がないか、様子を見てくる。二人は一度、この洞窟を調べてくれないか?」

 

 ヴィレッタがそう言って外に出て、周囲の警戒をしている間に俺たちはまず荷物の確認から始めた。

 

 手に入れたばかりのバックパック――これは確かにある――を背中から下ろして昨日手に入れた物を確認する。

 テッサも同様だ。

 

 衣類にマグカップやスキレット、歯ブラシ、竹のザル、ロープの束……ある。全部ある。

 

「なんで遺体だけ……」

 

 唐突に、スマホが震えだした。

 驚いたのか、テッサが咄嗟に周囲を警戒し始める。

 

「あぁ、大丈夫大丈夫。こっちだ」

 

 震えているスマホを振って見せても、笑顔にこそなれど周囲への警戒をテッサは怠らない。

 

「スキル、またなにか習得したッスか?」

「それならまだいいけど……」

 

 

 

――不具合の修正が完了致しました。

 

 

 

 そらきた。訳の分からんアナウンスだ。

 

「……どうなってるんだこれ」

「不具合ってのは白骨死体……つまりスキル持ちの遺体のことなんスかね?」

「さぁ……」

 

 思い出したのは、ついこの間の事。

 アオイが返り討ちにした元上司とかいう奴の死体だ。

 さすがに半年も立っちゃあいないが、あの死体は確かに残っていた。

 

「というか、それなら洞窟に残ってた傷痕まで消えてるのはどういうことなんかね」

「……争いの痕跡が不具合……ってのはどうッスか?」

「…………ふむ」

 

 それならアオイが斬り殺したあの男はどうなるんだって話になってくるが、あれを争いではなく犯罪だと――べつに法なんてものはないが――スキルやらを与えてくるどっかの誰かが判断したとすれば、あるいは。

 

「まぁ、目の前で起こって、しかも触れる事も見る事も出来なくなった事に拘っても時間の無駄か」

「ん~~~。トール君は、自分に変な力を与えているナニカが気にならないッスか?」

「ならんわけがなかろうに」

「ッスよね」

 

 いやもう、出来るだけ前向きに考えてはいるけど、いきなり人の頭に機械ブチ込んだり眼か脳弄ってくれちゃってたりするクソヤロー、いや、その前にこの世界に誘拐したかもしれない『ナニカ』が存在するならドロップキックかました後にさらに二,三発ぶん殴っても許されると思う。

 

「ただ、いま大事なのは『知る』ことよりも『安定』させることだと思ってる」

「安定……人間関係とかッスか」

「おう、お前らが引っかき回してくれたおかげでそれも割とシャレにならんくらいウェイト占めてるが」

「ワリッス!」

 

 ホントに悪いと思ってんのかコンニャロウ。

 とりあえず、日光が差し込む範囲の洞窟の壁を、二人で色々と調べる事にする。

 やっぱり、ただの岩壁になっている。

 引っかいた痕など全くない。

 

「まぁ、そういうのも含めてさ。飯だったり寝る事だったり安全性だったり」

「でも、そういうのがある程度充実しちゃったらボク達、変な動きを見せるかもしれないッスよ?」

 

 おぉう、まだそういう動きがあるのかね。

 ……ひょっとして、こっそりリークしてくれた?

 

「もうさせねぇよ。起こったとしても、なんとかしてまた止めるさ」

「またトール君ボロボロになるッスよ」

「……なるだろうなぁ」

 

 今度似たような事になったら、俺の動きも多分対策されるだろうし。

 どうにかして喧嘩――や、喧嘩っていうにはある意味スケールデカいけど――になったら、どうやって止めよう。

 テッサが俺に協力してくれるなら、アシュリー達の裏をかけると思うけど。

 

「それでも、また止めるッスか?」

「止める」

「正直、先日の件は隊長とボクら追放した方が丸く収まってたッスよ。あるいは毒殺とか」

「物騒だなお前さん。でも……あぁ、かもな」

「でも、それをしないんスか」

「しない」

 

 というか、それが出来る性格ならとっくにしとるわ。

 

(多分、自分の悪い所なんだろうなぁ)

 

 ゲイリーを助けようとしたのも、アシュリー達と敵対しようとしないのも、単純に自分がそうしたいからしてるわけで……。

 この森に来る前から薄々分かっていたけど、自分って奴はどうしようもない奴らしい。

 

「駄目なんだよ、そういうの。俺の中でもうアシュリーは身内で……アオイもゲイリーも」

「そしてアシュリー隊長はトール君を裏切ったッス」

「それだけだ」

「……それだけッスか?」

「あぁ、それだけ」

 

 ゲイリーに刃物突きつけたのはちょっとやりすぎな気もするが……今回はとりあえず許してやろう。

 互いに兵士というか軍人というか敵というか……まぁ、そこは分かってるから。

 

「ゲイリーを裏切った事にゃ物申したいが……人は人を裏切るモンだからなぁ」

「なら、トール君も裏切った事があるッスか?」

「ある。あった。……やっちまった」

 

 些細な喧嘩といえば喧嘩だけど、それでも昔からの友達を相手に無様晒したのは俺な訳で……。

 

「それから俺は、少なくとも本当に親しい奴は裏切りたくねぇって思ってるし、そう行動する事に決めてるけど、だからお前も俺を絶対に裏切るなっていうのはなんか違うと思うんだよ」

「……信じた相手が、とんでもない悪党かもしれないッスよ?」

「や、信じたのは俺だし」

 

 というか、アオイとか割りと最初っから悪党というか……裏方っぽい雰囲気は出してたし、それでも身内だと思っているのは俺なわけで。

 つまり――

 

「そもそもさ、俺が勝手に身内と思ってる奴らが俺を裏切ったり傷つけたからって、俺がそいつを見捨てたり裏切る理由にはならないんじゃないかって思うんだよ」

 

 うん、これだ。

 なんだろう。ほんのちょっとだけ、自分の中で整理された気がする。

 大本にあるのはきっと、もっとみっともなくてどうしようないプライドとか虚栄心とかそういうスンゲー見たくねぇ気持ち悪いものなんだろうけど……。

 でも、そう思っているのは本当……だと信じたいなぁ、せめて。

 

「だから、うん。裏切ったからってちょいちょい見捨てたら割に合わねぇだろ」

 

 正直、今後もそういう事はあるだろうけど……うん、やっぱり俺から裏切る理由にはならねぇよなぁ。

 

「……………トール君」

「ん?」

「なんであのクレイジーサイコリッパーが、トール君にめちゃくちゃ心を開いているのかずっと不思議だったッスけど、今、少しだけ分かった気がするッスよ」

 

 クレイジーサイコリッパー。

 クレイジーサイコリッパー。

 

 ……アオイかぁ。

 

「あいつ、あれが素じゃないの?」

「ほぼ素を出しているからこそトール君がすごいというかなんというか……いやはや、でもちょっと見えてきたッスよ」

「何が?」

「アオイさんがトール君をどう思っているかッス」

「……あいつ、俺の事どう思ってるの?」

 

 俺の考え察してぶった斬ってくれるあたり、互いに意志疎通というかある程度の理解はある……いや、向こうが俺を一方的に察しているだけって可能性も十分にあるが。

 

「ん? 超簡単ッスよ。トール君の一言で、迷わずトール君ぶった斬るあたり狂信に近い忠誠を持ってるッスけど――」

 

 

 

 

「――ヒーローなんスよ。きっと、アオイという女から見たトール君は」

 

 

 

 

 俺からもっとも遠くね?? そのイメージ。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「どうだ、何か新しい発見はあったか?」

「皆無。荷物が消えてなくて良かった~ってだけか」

「ボクも同じッスねぇ。特に目新しい発見はないッス」

 

 一応前に引っかいたような傷があった場所や、バックパック等が転がっていた奥の方を念入りに調べてみたが特に異変なし。

 土埃を吹き飛ばしたりしてみたが、前にあった痕跡が完全に消えていた。

 ひょっとしたら、奥の方に行けるんじゃないかと辺りの空気の流れなんかも気にしつつあーでもないこーでもないと調べたがやっぱ駄目だった。

 無駄撃ちになるかもと思いつつサーチも使用してみたが、やっぱり無駄撃ちだった。

 壁などに集中しても、岩に関しての情報しか出てこない。

 

「外はどうだった?」

「異常なしだ。あるいは植生などが変わっているかもしれないと、昨日のデータと照らし合わせてみたが、これといって異変はなかった」

「動物の気配とかも?」

「……少しだけ。近くに、木の実が齧られた痕跡があった。食べ口から見て、恐らく鳥類だろう」

 

 鳥か。

 そういや最近、チラホラと見るようになってたっけ。

 

「今度、鳥用の罠とかも作ってみるか」

 

 鶏肉そういえば全然食べてなかったな。

 こっちに来る前は、よく学校帰りにコンビニのホットスナックでから揚げとかフライドチキンとか買って帰ってたのに。

 あぁ、なんか脂っこいもの食いたくなってきた。

 それと胡椒が効いた奴。

 

「まぁ、これ以上考えても仕方ない。荷物を整理して出発しよう」

 

 今回、俺たち以外の人間の死体があったと言う事。そしてそれらが消えるという現象を目撃しただけでも探索成果としては十分だ。

 回収した荷物も含めればなおさら。

 

「初日でこんだけ成果あったんだ、今日はもっと良い事があるか、下でじっくり休めるかの二択だろうさ」

 

 正直、もう戻ってもいいんじゃないかとも思った。

 けど、一応二日と予定したし、もっと下流で更に発見があるかもしれない。

 あるいは、早く発見しないと白骨死体同様消えてしまう可能性がある。

 

(キチンと作られた道具は正直ありがたいしなぁ)

 

 バックパックに詰まってた薪は、多分しっかりしたナタの様な大きめの刃物で割られた物だ。

 もし、その道具がどこかに残っているのならば回収したい。

 テッサやヴィレッタのサバイバルパックやナイフのおかげで色々充実して来たけど、それもあくまで必要最低限の物。

 確実に生活を安定させるというには全然足りない。

 

 例えば布。例えば針。例えば医薬品。例えば金属製品。

 

「というわけで、早速出発しないか?」

 

 出来る事ならもうちょっと下に行って、次の拠点になりそうな場所をいくつか目安を付けておきたい。

 

「異議なしッス!」

「了解した」

 

 さて、次は何が見つかるかなぁ。

 

 

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