異世界サバイバルに、神様なんていらない!   作:rikka

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009:セカンドスキルはちょっと保留

 一夜を過ごし、四人でとりあえず元の拠点まで戻って来た。

 もういっその事下流だった仮拠点をそのまま使ってもいいんじゃないかと思ったが、一応折り畳み傘などと使えそうな荷物がまだあったし、アオイも一度戻りたいと言っていた。

 この二人をそのままにしておいたら、そのまま殺し合いに発展しかねないので同行してもらい、一度情報の交換も含めて体勢を立て直す事にした。

 

「ひょっとしたら荒れてるかもしれないと思ったけど……ほぼそのままか」

 

 一見大きな木の葉の山に見えるシェルター、薪を保管する小さなシェルター、石で囲んだ焚き木の跡、水を沸騰させるのに使った丸太を削った物。

 

 これが、今現在の俺たちの拠点の様子だ。

 

「なるほど、落ち着いて森を歩いてみると……トール達の言うとおり、この森からは動物の気配がしないな。……植生の違和感も強くなるばかりだ」

 

 おそらく、この四人のなかで最も森に詳しいだろうゲイリーの言葉に、アシュリーも続く。

 

「そうね。アタシも森歩きなんて、実質訓練以来だけど……なんていうか歩きやすかったわね、この森」

 

 え、マジですか。俺にはそれでもかなり辛かったんですけどここあれですか、難易度低い森だったんですか。

 

「あのぉ~……私もちょっと気になる事があったんですけどぉ」

 

 向こう側から再び燻らせたまま運んだ火種を使い、火を起こし直す作業をしていたアオイがそっと挙手する。

 

「アシュリーさんを川から引き上げた所っていうのが、いわゆるカーブした部分だったんですけどぉ……なぜか川底がほぼ平らだったんですよねぇ」

 

 ……それなんか変なのか?

 

 思わず聞き返しそうになったが、残りの二人は顔をしかめている。

 

「変……だな……」

「そうね」

 

 変なのかそうなのか。

 完全に置いてけぼりなのはさすがに嫌だったので尋ねてみると、ゲイリーが肩をすくめて答える。

 

「普通川っていうのはな、曲がりくねる度に曲がる方向は浅く、反対側は深くなっていくのが普通なんだ」

「ここの川、急流ってわけじゃないけど遅いわけでもないから、それなりに深くなるはずなんだけどね」

 

 ゲイリーの説明にアシュリーが補足を付け足し、アオイがアホ毛とともにコクコクと頷く。

 

(あぁ……そういや小学校ん頃の理科でそんな授業あったっけ)

 

 今更ながらに思い出し、頭を掻く。

 やっぱり、自分は基本不真面目な学生なんだなぁ、と再認識。

 いやまぁ、小学校の時なんざ正直何やってたか微妙にうろ覚えだ。

 昼休みの鬼ごっこに全力出してた事と、棒登りに失敗して骨折った事はすんげー覚えてるけど……。

 

「つまり、どういうことなのさ?」

「分かりませぇん……ただ、森と同じ感じです」

「森と?」

「造り物っぽいんです」

 

 アオイの断言に、他の二人も同意のようだ。

 

「土と石で川の形を適当に作って水を引いたばかり……そんな感じだ」

「そうね。大げさな庭って印象。造園したてのね」

 

 庭。庭か。

 

「つまり、分からないままか」

「そもそも、君やそこの奴隷管理官、そして俺たち。明らかに違う――世界? の人間が一堂に介している時点で深く考えるのは無駄だろう」

 

 それはそうだけど気になるじゃん!

 

「ま、まぁ……そうだよな。それじゃあ、これからどうするかって話なんだが」

 

 とりあえず人数は増えた。つまりは労働の手が増えたということだ。食い扶持も増えた。

 となると、本格的に食糧の問題が出てくるわけだ。

 肉や魚が食える気配がないのは相変わらず。

 つまりは、今まで通り野草などで腹を満たす必要があるが……。

 

(ここらへんの果実は大分食べちゃったんだよなぁ)

 

 水の煮沸が出来るようになって、食べられる野草は増えた。スープというかお茶のようにして飲む事で栄養はかなり摂取出来るだろう。

 だが相変わらず、タンパク質と塩分に関しては先行きが見えない。

 

「トール。君はどう考えているんだ?」

「俺?」

「あぁ」

「……俺としては、むしろゲイリー達がどう思うか教えて欲しいんだけど」

「こういうのは、リーダー格が最初にどうしたいかを伝えておいた方が円滑に進むものさ」

 

 …………。

 

 ――え、俺リーダーなの!? いつのまに!?

 

「そうね。能力的にはそこの貴族が一番適正かもしれないけど、そうなればこんな状況だろうと、アタシとソイツの敵対は避けられない。同じ理由でアタシも却下」

 

 ま、まぁ確かに二人のどちらかがトップになると、残った方がハブられる形になりかねないというのは分かるけど……

 

「そもそもリーダーって必要なのか?」

「まとめ役は必要だ。意見がバラバラになった時に上位というか、自分達がこの人を立てると決めた人間がいないと不和などによる分裂の可能性が高まってしまう」

 

 ゲイリーはそう断言すると、俺とアオイを交互に見る。

 

「そうそう。で、そうなると残るのはトール君とアオイちゃんの二人なんだけど……」

 

 二人は胡乱な眼をアオイに向けていた。

 アオイは首をかしげて、「どうしたんですかぁ~?」と聞いている。

 あぁ、うん。二人の言いたい事はよく分かる。

 

「リーダーという柄ではないけど、一応俺の考えを言っておくよ」

 

 とりあえず、リーダーというより調整役と考えた方がいいだろう。

 ある意味リーダーよりも難しい気がするが、少なくとも今ここにいる三人は協力的だ。

 この三人となら――まぁ不安要素はそこらかしこにあるが――やっていけるだろう。

 

「俺は、移動が必要になると思っている。食糧面でも、もうちょっと豊富な所を見つけないと不味い」

 

 特に栄養面的な意味で。

 

「移動に関しては俺も同じ事を思っていた。問題はどこに向かうかだが……」

「移動自体はアタシも賛成だけど、急ぐ必要はあるのかしら? とりあえずは探索に一票」

 

 まぁ、やはりそうなるよな。

 やみくもに移動したって、ここみたいに拓けた安全な場所が簡単に見つかるかどうかだし。

 

「本格的に移動するかどうかは別としてぇ、下流をもっと探索してみたいとは思いますねぇ」

 

 アオイも探索に一票か。

 まぁ、意見としては俺に一番近い。

 川を下っていけば、あるいは海に付くかもしれない。

 海ならあるいは魚とかがいるかもしれないし、塩に関しても上手くいけば取れるかもしれない。

 

「とりあえず、今日は寝床の用意だけでもしておこう。具体的にどこをどう探索していくかはその後話し合いで決める。それでどうかな?」

「異議なし」

「同じくね」

 

 そうと決まれば話は早い、さっさと枝を集めてこないと――あれ? またスマホが震えてやがる。

 

 ポケットからスマホを取り出して覗くと、白い文字がじわっと浮かび上がり――

 

 

『アップデートによる不具合の修正が完了しました。

 ・スキルシステムに項目が追加。ご確認ください』

 

 ……『不具合』という言葉に非常に不吉な物を感じる。

 いや、修正されたのならいいのか?

 考えていても仕方ない、とりあえずいつも通りに確認して見ると……おぉ、スキルをまた一つ選べるようだ。

 

『・健脚/移動する際に蓄積する疲労を軽減できます』

 

『・毒耐性/ある程度の毒を除外できます』

 

 ここまでは以前と同じだ。自分があの時選ばなかった二つがそのまま残っている。

 で、追加枠だが――

 

『・野草知識/野草に関しての知識がインストール可能です』

 

『・道具作製/初歩的な作りたい物に関して、何をどう組み合わせれば完成するのかがインストール可能です』

 

『・気配遮断/視界に一度確認した対象の5メートル以内に入るまで気付かれないように出来ます』

 

 うん、ここまではいい。

 一部なんか気になるワードがあるが、まぁまだ理解できる。

 で、その後だが――

 

 

 

 あの、気のせいですかね?

 

 魔法って書かれている気がするんですけど……。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 枝を拾い集める作業をしながら、先ほどスマホに映っていた文字を何度も思い返していた。

 

 魔法。魔法である。

 サーチスキルが本当に使えるようになった事から、まぁ一応はスキルという物を信用はしているものの……魔法?

 

(いやまぁ、ゲイリーっていう実例があるから別におかしくはない……のか?)

 

 ゲイリーが『今は魔法が使えない』と言っていたのも気になる。

 

(そもそも、他にも取るのに便利な物増えてたしなぁ)

 

 魔法というスキルは少々変わっていた。魔法スキルという文字の後にかっこ書きで、恐らくは魔法の種類を示す漢字一文字が書かれていた。(炎)とか(土)とかそんな感じだ。

 そしてその後に注意書きで、『※一つしか選べません』と書かれている訳だ。

 しかも、他にもいくつか取れるスキルが増えているため、現在新スキル取得は保留中というわけだ。

 

 正直、他のスキルもすごく魅力的だ。

 例えばこれ、『野草知識』とか。

 目先の事を考えるとこれは非常に欲しい。

 サーチスキルだけでは、一回調べればほぼ一日再使用は出来なくなる。

 

 説明文を見る限り、恐らく知識が丸ごと手に入るのだろう。

 それがどういう事なのか深く考えるのは怖いが、あえて無視する。

 

(魔法……魔法なぁ……)

 

 説明に関しても、魔法が使えるようになりますというだけで、具体的にどういう事が出来るのか一切不明だ。

 色んな意味で魅力的というかロマンをくすぐる言葉ではあるが、今この状況でロマンなんざ言ってみれば糞喰らえである。

 必要なのは理屈……ちょっと違う。……合理性か。

 

(さぁて……何を選ぶべきかね)

 

 

 

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