変人と合コンと傷アリ、偶に人形   作:シアンコイン

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おっさんと任務と

 

 

「………お久しぶりです、クルーガー隊長」

 

「あぁ、その嫌そうな顔でなければ素直に挨拶できたんだがな」

 

「そりゃ無理があるでしょう、ついこの間も予想外の出来事で会っているんですから」

 

強面のおっさんことクルーガー、従軍経験ありの歴戦の猛者、現在のG&Kのトップだ。

現役を引退しても尚、そのガタイの良さと滲み出る圧には感服する。因みに俺がおっさんを隊長と言うのは俺もおっさん鍛えられた口であるから。まぁ、イヤな思い出だらけであんまり会いたくは無かったよ。

 

俺の言葉に眉を動かしたおっさんは瞳を一度閉じるとまた口を開く。

 

「ヘリアンの事は感謝している、無傷で送り届けてくれるとは思わなかったからな」

 

「心は無傷じゃないですよ?」

 

「時に辛辣だな、お前は」

 

「ぺルシカ程じゃないです」

 

肩を竦めて頭を振り、薄く笑ってこの間の出来事を思い出して何とも言えない気持ちになる、そういえば酔っていたのによく逃げ切れたな、俺。

そんな俺を置いておっさんは自分のデスクに戻ると、キーボードを叩き、巨大スクリーンに複数の戦術人形たちの画像が映し出された。

 

「現在、鉄血と我々グリフィンは膠着状態にある。重要な情報と手に入れた代わりに複数の人形たちが消息不明となった」

 

「捕虜になったか行動不能に陥ったか、何にせよ戦力が減った事には変わりありませんね」

 

「今回はこの人形達が消息を絶った地域に潜入し、それらの回収だ」

 

「……足はどうなります?」

 

クルーガーのおっさんが言ったように今回の俺の仕事は、消息を絶った人形たちの回収。一部の人形を除き、バックアップを取れる人形は本体を捨て任務を優先させる事態が増えたという。

その際に逃げ延びた人形が鉄血の目を逃れ廃墟と化した区域に潜み、作戦実行中の指揮官の人形たちが見つける事も少なくないとか。

 

しかしそんな事をしていれば当然戦力は減る、新たに人形を作り出すにもコストは馬鹿にならない。故に戦場を知っていて、身近な俺に白羽の矢が立ち人形回収の任を押し付けられた。

ぺルシカ曰く「バックアップはあくまでバックアップ、熾烈な環境で人形が得たデータは貴重なの」とのことだ。まぁアイツの事だ、自分が作り上げた人形がそのままにされるのが癪でもあるのだろう。

 

「作戦で使っている拠点までヘリで送る、日数にして三日だ。三日後の早朝を目安に帰還のヘリを送ろう」

 

「………了解です。………ピクニックで済みます?」

 

「ふぅ、済んだらお前の腕は無くならず今もそのままだ」

 

「ちょっと隊長ブラックすぎますよー」

 

カラカラと、おっさんが珍しく飛ばした冗談に自ら笑い左手を360度回転させる。そんな様子を一瞥しておっさんは懐かしそうに達観した様子で微笑んだ。

やめろ気持ち悪い(無慈悲)

 

「お前の牙はまだ折れてなかったか」

 

「代わりにお手手が吹き飛びましたよー」

 

「まったく、いつまでも軽口がぬけんな。スクラッチ」

 

「だからぺルシカリアと一緒に居られるんですよ、クルーガーのおっさん」

 

もう視線は合わせず、粗方の情報を携帯端末に移し社長室を後にする。俺の乾いた笑いとおっさんの含み笑いが重なった気がして何だか面白く感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? スクラッチさん。 お久しぶりです」

 

「久しぶりカリーナ、調子はどう?」

 

「お陰様で新しい指揮官様と一緒に頑張ってます」

 

ブロンドの髪をサイドで纏め、ヘッドセットと黒いサングラスを頭に掛けるグリフィン部隊の後方幕僚カリーナ。にこやかな笑みと人付き合いの良さはグリフィンでは知らない者が居ない程有名だ。

しかし――――

 

「珍しいですねー、スクラッチさんがグリフィンに来るなんて。そうです!! 再会を祝して何かお買いになられませんか!?」

 

お金が大好きなちょっと困った女性である、補給物資調達が主な彼女の仕事ゆえにグリフィンでは彼女を介して足りないモノを買うことが常。

今回もある程度の装備は揃ったものの道中では手に入らない物、主に弾丸や消耗品をここで分けてもらうつもりだった。因みにカリーナの愛称がカリンだったりする。

 

「勿論、.32ACP弾と12ゲージを貰えるかな」

 

「かしこまりました!! お幾つにいたしましょう」

 

「そっちに支障が無い分で良いよ。あまり使う事が無い様にするつもりだし」

 

「わかりました、それでは少々お待ちください」

 

元気に倉庫の中に消えていくカリーナの後姿を見送っていると、不意に何処からか視線を感じて振り向く

 

「「あ………」」

 

先程までの朗らかな雰囲気は何処へ行ったのだろう、一瞬にして固まる空気に半ば笑いがもれそうになるも開いていたドアから顔を覗かせていたヘリアンさんと視線が合い、言葉につまる。

何時ものクールビューティが成りを潜めて視線があちらこちらに駆け巡っている、酒に酔い潰れた姿を見せてしまった羞恥心でもあるのだろうか………

 

ぶっちゃけぺルシカのせいでもう何も思う事は無いんだが……

 

「ひ、ひさしぶりだな」

 

「うん、合コンぶりだね、ヘリアンさん」

 

ピシッ―――――

 

そんな音が聞こえそうなレベルで固まったヘリアンさんを前にして、俺は思う。

結構苦労したからこれくらい許してね、と。

 

「あ、あの時は……お世話になりました…」

 

何とか再起動して顔真っ赤にしながら頭を下げる彼女を前に、罪悪感で一杯になった自分を小心者と思いながらとりあえずこの話題をぶった切る事にする。

 

「いいのいいの、昔は俺が世話になったしアレは恩返しって事で」

 

「そ、そうか。ありがとう、スクラッチ。」

 

「いえいえ、カリーナに御用ですか?」

 

「あぁ、補給物資で少しな。君はクルーガーさんに呼ばれてか」

 

「そうです、ちょっと長くなりそうで……」

 

世間話をしながら合コンの事はお互いに触れないようにして場を濁し、数分。

倉庫の中から戻ってきたカリーナから.32ACP弾を受け取り二人に挨拶して俺はその場を後にした。

 

『合コン失敗14回目オメデトウ、パチパチパチパチ』

 

途中、ぺルシカの話題になって思い出した一言を喉元で抑え込んだまま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、闇に紛れて飛行するヘリの中で彼は手にしたベネリM4ショットガンの感触を確かめる。

外灯の無い暗闇の中、都会とは対照的に呑み込まれそうな風景に臆する事無く見やり出発前にぺルシカに言われた一言を思い出す。

 

『腕なら、いくら壊しても良いから』

 

出発前の日とは打って変わって少し暗い雰囲気を醸し出した女性に、その時はスクラッチ自身も言葉の意味を測りかねたがきっと今更になって寂しくなったんだろうと思う様にして出て来た。

研究に没頭しようが、人形の為だけに生きていくんだと豪語し、天才だと周りから囃し立てられようと根本的には一人の女性。

 

気兼ねなく話せる友達を自らの利益の為に、危険区域に踏み込ませる事が今更怖くなったんだと。

ちょっとだけ自分が居なくなるのが嫌なのだと、自意識過剰だが思う様にしたのだ。

 

操縦者から目的地まで間もなくだと連絡され、装備を確認した彼は手にしたベネリM4を持ったまま窓から地上を見る。

闇夜に慣れてきた瞳で地上を見渡すとうっすらと見えた複数の建物に目が良行く、減速を始めたヘリの中でバックパックを引き寄せ地上スレスレで静止した瞬間にドアを開きバックパックを投げ飛び降りる。

 

「―――御武運を」

 

操縦者からお決まりのセリフを聞き流し、飛び去っていくヘリを背中に灯りの着いていない拠点目がけ走り出す。

グリフィンの拠点とてすべてに警備が居るわけでもなく今回のこの拠点は無人であった。

 

いつ何時何処から攻めてくるか分からない鉄血を相手に、森の中の拠点を守り続けるなど不合理極まりない。

そも、灯りが存在しない場所で電気を点けるなど自殺行為だろう。

 

息を殺し扉の前で立ち止まり周囲を警戒、平屋であり入口は玄関と裏口のみ、一瞥した時点で戦闘痕は見受けられず窓も割れていない。

安易に考えれば侵入者が居ないようにも思えるが、偶然この場を見つけた鉄血が使用していないとも考えられない。

 

静かに扉を開き、警戒しながら拠点内に侵入したスクラッチはベネリを構え部屋を確認していく。

一番奥の部屋を残して確認し終え、ベネリを構える手に自然と力が籠る。

 

警戒しなければいけない理由があった、それは視界の端で見える机の上に置かれたグリフィン製の缶詰だ。虫も集らず匂いからして時間は経っていない。

誰かがこの拠点に潜んでいる。希望的観測ならばグリフィンに従属する戦術人形が望ましいが、隙を見せて蜂の巣にでもなればシャレにもならない。

 

だが、もしかしたら運が良いとスクラッチはほくそ笑む。

何故ならテーブルに置かれていた缶詰は一つ、そして最後に残った部屋が比較的狭い個室であるからだ。

 

戦術人形はダミーネットワークと言うシステムで、主機が最大四機の自分と同じ従機を統率し戦う事が出来る。

鉄血の戦術人形もそれは変わらない。もし相手が複数ならば部屋の死角にダミーを潜ませ攻勢に回る事も出来た。

 

それが無いのは、それほど消耗しておりダミーも無く。戦いを避けやり過ごそうとしている可能性が高いからだ。

 

意を決しドアノブを回し、僅かに開くと銃口で押す様にしてドアを開き覗き込む。

その先に見えるのは大きく空いた小さな窓と月明かりに照らされたベッド、そして小さな机と椅子。

 

足音を最小限に部屋に踏み入り、左右を見渡す、そして――――

 

「―――――ッ!!!」

 

開いたドアの影から飛び出した小さな人影が黒い棍棒のようなものを手に彼に襲いかかり。

スクラッチはソレに即座に反応しベネリの銃口が人影に突きつけられ、棍棒らしき物体が彼の頬寸前で止まる。

 

「……ふぅ、運が良いな。今日は」

 

「…人…間……?」

 

小さく息を漏らしてベネリの銃口を下げたスクラッチは嬉しそうに笑う。彼の顔を見てポカンとした金髪の少女とその手にした棍棒のような銃。

ウェルロッドMkIIを一瞥して口を開いた。

 

「こんばんわ、お嬢さん。俺はG&Kから派遣されたスクラッチだ、君たちを迎えにきたよ」

 

銃を担ぎ右手を差し出す彼の顔は子供を見つけた親の様に穏やかなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり書き始めると一定期間ブーストかかるのかな(更新スピード)
というより嬉しい感想を頂けてるのが大きい(笑顔)

だらだらと言っておきながら急にシリアスぶちかます無能采配。
自覚してるけど主人公に見せ場欲しいんです!!

唐突に出て来たベネリM4は特に深い意味はありません、ただ作者がショットガンの中で一番好きなだけです。

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