他の作品でも書いていますが寛大なお慈悲をお願いします(笑)。
大海原を1隻の貨物船が航行していた。
それは何処でも見ることのできる、標準的な船だった。多少くたびれている所を除けば別段変わった船では無い。
ただし、乗っている連中はどう見ても普通には見えなかった。
全員、厳つい顔つきをしており、中にはあちこち傷だらけの者もいる。目つきもお世辞にもいいとは言えない連中ばかりである。どう見てもまともな船員達には見えない。
一番異様なのは、全員なんらかの武器を携帯していることだろう。それも雑多である。
まるで海賊と言われても違和感が無い。いや、そのものずばり、彼らは海賊である。
航行中の船に強行接舷し、乗員を皆殺しにするか売り飛ばす。
もちろん積み荷も船体も闇ルートで売りさばく。そうして莫大な金を手にいれる。
海の無法者。船員達や船主達からは忌み嫌われる船乗り達。それが海賊である。
船のブリッジ。
そこに一層凶悪な雰囲気をまとった男がいた。
顔には傷痕が多くあり、様々な修羅場を潜って来た人間だと一目で分かるほどだ。周りにいる男達もそれに負けず劣らずだが。
顔中傷だらけの男。海賊のボスはブリッジにいる部下に向かって訊く。
「あと、どのくらいで着く?」
その声は一仕事終わってか満足気であり、舌なめずりをしている。
手に入るだろう金とそれをどう使ってやろうか。彼の頭には今それしか無い。
「6時間くらいですぜ、すでにブローカーには話がついていやす。あとは、引き渡すだけですぜ。」
訊かれた部下の男が答える。こちらもこの後の事を考えているのか、にやついている。
「そうか。まあ今回はわりかしうまくいったな。忌々しい女神連中も出し抜けたしな。」
ボスはそう言って笑う。釣られて他の海賊達も笑う。
が、直後に引きつった男の声がブリッジに響いた。
「ボス、レーダーに反応ですぜ。後方から何かが急速に近づいてきやがる。」
ブリッジに緊張が走る。何人かが、確認の為に双眼鏡を持って外に飛び出ていく。
「落ち着け。何が接近してくるんだ?」
ボスが怒鳴る。
レーダーを見ていた男がスクリーンを見ながら怒鳴り返す。
「船みてだがスピードが早すぎる、何なんだこりゃあ!?」
「 畜生、どこのどいつだ!」
ボスは、傷のある顔を凄ませながら外を見る。
外では、部下達が双眼鏡を片手に周囲を探している。すでに銃を振り回している者もいた。
やがて貨物船の後方に4隻の船らしきものが現れた。それを見た男が絶叫する。
「女神・・・女神どもの大戦艦だ。」
ブリッジに驚愕が走る。リーダーも顔を引きつらせながら怒鳴る。
「ばかな!! 何であいつらが、ここに・・・・。そんなのあってたまるか。」
すでに大半の海賊は浮き足立っていた。船の中は、怒鳴りあい右往左往する海賊で溢れる。
『こちらは守護女神こんごうです。航行中のコバヤシ丸に告げます、直ちに停船しなさい。』
先頭を行く古の戦いで使われたと言われる、金剛型戦艦を模した女神達の大戦艦が航行中のコバヤシ丸にスピーカーを通じて停船命令を発する。
『貴船に捜索依頼が出ています、確認を行うので停船し、乗組員は全員甲板に集合しなさい。』
命令を繰り返す女性、いや女神の声がスピーカーから鳴り響く。
『繰り返します、直ちに停船しなさい、停船しない場合は、実力を持って停船させます。』
「くそったれ! 」
「やれるもんならやってみろ。」
海賊達が怒鳴り返す。
ついには海賊の一人が、携帯式のロケットランチャーを持ち出し先頭を行く大戦艦に向ける。
「バカヤロ! 何しやがる。」
リーダーが慌てて止めようとするが、逆上した海賊は構わず発射する。
だがしょせん携帯式、大戦艦に届く事無く海面へ突っ込み爆発する。
「馬鹿が!」
リーダーが唸る。これでは自分達が後ろめたいことがあることを白状しているようなものだ。
海賊達は喚声を上げているが、リーダーは苦虫を噛みしめたような顔をした。
これで女神達は本気で攻撃してくるだろと確信して。
「どうやら停船するつもりは無い様ですね。」
金剛型大戦艦の艦橋上部に立つ青と白のドレスを着た神秘的な美しさを持つ女性が呟く。
その身体の回りに様々な情報を表示す画像を多数浮かべながら。
『こんごうお姉さま。』
空中に女性の顔が写しだされる、ショートカットのこちらは凛々しい容姿を持つ女性だ。
「ひえい、見ていた通りです、連中にはこちらに従う意思は無い様です。」
『どうやらその様ですね・・・まあ仕方がありませんね、ご指示を・・・』
ひえいと呼ばれた凛々しい女性は肩を竦めると指示を仰いでくる。
「砲撃し連中の足を止めます、そして乗り込み制圧します。」
こんごうお姉さまと呼ばれた女性は優雅な笑みを浮かべ指示してくる。
『では足を止めるのは私が、制圧の方ははるなと・・・きりしまでと言うところですか?』
ひえいはこんごうの指示にそう答えてくる。
「それで構わないでしょう、まあきりしまの訓練に最適でしょう・・・はるなが張り切り過ぎないか心配ですが。」
そう言ってこんごうは苦笑する。
『そうですね、姉として良いところを見せようとはるなは思うでしょうから。』
同じ様に苦笑しながらひえいは答える。
「・・・そう言いながらひえい、貴女もきりしまに姉として良いところを見せたいのでしょう?」
『それは否定出来ませんね、妹の前で無様な姿など見せられませんよこんごうお姉さま。』
こんごうの指摘にひえいは微笑み返しながら肯定してくる。
『でもそれはこんごうお姉さまも同様でしょう。』
「確かに否定出来ませんね私も・・・可愛い妹ですから、もちろんひえいやはるなに対してもですが。」
2人は微笑みながら頷き合う。
「それでは始めましょう。」
『はいこんごうお姉さま。』
「女神どもの様子は!?」
ボスがいらいらした様子で怒鳴る。
「何もありませんぜ、びびったじゃないんスか?」
男は気楽に答える。しかし、ボスは青筋を立てて男を叱りつける。
「馬鹿野郎! 連中がそれくらいでびびるか。」
ボスはイライラとブリッジ内を歩き回る。何とかしなければと考えるが、すでに正体がばれている以上、追撃が止むとは思えない。
ボスが行動を決めかねているうちに、凄まじい衝撃がブリッジを襲う。
その衝撃はブリッジのガラスを弾き飛ばし、破片が海賊達を襲う。
「うお~?!」
悲鳴を上げ逃げ惑う海賊達。辛うじてボスはその直撃を避けられたが、余りのショックにすぐさま反応できない。
「ボ、ボスあいつらが撃ってきやがった!」
ブリッジに飛び込んできた部下が喚く。
ボスは慌てふためく部下達を押しのけ、ブリッジの外に出て後方を見る。
大戦艦の一隻がその砲塔をこちらに向けている、そして発砲。
再度衝撃がコバヤシ丸を襲う。
「くそお・・・どうすれば良いんだ?」
だが海賊達にもう残された対抗策は無い、ボスを絶望感が襲う。
「ボス、機関室に浸水!!」
「上甲板に火災発生!」
「火を消せ! 手の空いてる奴は機関室へ行け!」
ブリッジ内はパニック状態になる、誰もが右往左往している中、甲板上でも騒ぎが起きていた。
『コバヤシ丸の足を止めた、はるな、きりしま頼むぞ。』
金剛型大戦艦の4番艦、女神4姉妹の末っ子であるきりしまは姉であるひえいの言葉に頷く。
美しい銀髪をサイドテールに纏めた、美しいと言うより可愛い女性、いや少女だった。
「分かりましたひえいお姉さま。」
『お任せ下さいひえいお姉さま、きりしま行きましょう。』
ひえいの空中映像の横に、絹の様な美しい黒髪を持つ清楚な女性、はるなの映像が写り呼びかけてくる。
「はい、はるなお姉さま。」
『「バトル・ドレス展開!」』
はるなときりしまがそう叫ぶと、2人の着ていたこんごうと同じデザインのドレスが光り輝く。
そしてきりしまは白いボディスーツ姿に変わり、背中に銀色に輝く翼が展開、手には大型のライフルが握られる。
はるなもこちらも白いボディスーツ姿に銀色に輝く翼に変わり、手には大振りの剣が握られている。
『2人共無理をしない様に。』
空中に写しだされたひえいがはるなときりしまに注意を促がす。
『「はい。」』
返事をしたはるなときりしまはそれぞれの名を付けられた大戦艦から空へ飛び出しコバヤシ丸へ向かう。
「おい、あれは?」
「まさか・・・」
コバヤシ丸の甲板上の男達は、こちらに向かって飛んで来る影を見つけ騒ぎ出す。
「め、女神だ!?」
「くっそう!」
気付いた男達の中でライフルを持つ者達が女神達を狙うが・・・
「がっは・・・」
「うおお!?」
次の瞬間持っていたライフルを吹き飛ばされる男達。
よく見れば女神の1人が持っていた大型ライフルを飛びながらこちらに向けている。
「馬鹿な・・・」
女神は飛行しながら男達の銃だけを狙ってきたのだ、それだけ射撃能力が高い事を示している。
「流石ですねきりしま。」
それを身近で見たはるながきりしまを誉めてくる。
「え、いや・・・そのありがとうございます。」
誉められたきりしまは頬を染めつつ答える。
「きりしまにそこまでしてもらったのですから・・・このはるな、姉として答えてみせましょう。」
急加速を掛けてはるなは甲板上で唖然としていた男達の中に降り立つと剣を振る。
「げぇぇ!?」
「ぐはっ!!」
たちまち切り倒されていく男達、しかし切られたわりには出血も無く、体に傷らしいものも無い。
理由ははるなの振るう剣を見れば分かる、剣先は帯電した様に光っている。
はるなの剣は高圧電気によるスタン効果で相手を無効化しているのだ、もちろん剣の重さも加わっているが。
その時、上の階層にいた数人の男達がはるなを狙う、彼女は周りの者達との戦いでそれに気付かない。
だがそんな男達も先程の様に銃を吹き飛ばされてしまう、もちろんきりしまの射撃だ。
接近戦ではるなの剣技に敵わず、だからと言って離れた位置からと思っても、きりしまの射撃に阻止される、何十人も居る男達はたった2人の女神の前に手足も出せない状態だった。
やがて甲板上いた男達全員を制圧した2人は頷き合うとブリッジへ向かう。
「くそ・・・おい、どうなっているんだ?」
ボスが部下に聞く、相変わらずブリッジは右往左往する男達で混乱状態だった。
「浸水は止まりましたが、機関室は使用不能状態の為、航行不能です。」
「くっ・・・女神の大戦艦どもはどうした。」
外で見張りに就いていた男にボスが問い掛ける。
「距離を保ったままで4隻とも近付いてこねえ、砲撃も止まっていますぜ。」
ボスがその男の隣に行き、4隻の大戦艦を見る、確かに近付こうとせず、その場に佇んでいる。
「ボス!女神が乗り込んで、ぐわぁぁ!?」
報告に来た男は全てを言う前に突き飛ばされ床に叩きつけられる。
「て、てめえは!?」
そこに立つ白のボディスーツを着た女性達、いや女神達にボスは引きつった声を上げる。
「他の者達は全て無力化しました、大人しく捕縛されて下さい。」
剣を持った女神が剣先を男達に向けながら警告する。
「くう・・・」
ボスは悔しさに顔を歪めて唸る、ブリッジに居る男達も同じ様な表情を浮べている。
そんな中、はるなの後ろに立って居たきりしまは男が1人妙な動きをしているのが気になった。
他の男達の影に隠れ少しづつはるなに近付く、手に何か持ちながら。
きりしまはそれが大型の拳銃であり、至近距離からはるなを狙っている事に気付く。
「死ねええこの女神が!!」
「危ないはるなお姉さま。」
男が叫んで銃を向け引き金を引いた瞬間、きりしまははるなを突き飛ばす。
「きりしま!?」
突き飛ばされると同時に銃声が響き慌てて振向いたはるなは、わき腹を押さえながら膝を付くきりしまを見る。
女神達が着るボディスーツは通常の弾丸や刃物では傷つけられない。
まあ手足など露出も多いがその部分にも加護が働いている。
だがそのボディスーツや加護も衝撃までは完全に防げない、ましてこれだけの至近距離では。
「だ、大丈夫ですはるなお姉さま・・・」
痛みでその可愛い顔を歪めさせながらもきりしまは健気に答える。
はるなは痛みだけで傷が付かなかった事に安堵しつつ怒りが吹き上がってくるのを抑えられなかった。
「よくも・・・よくも・・・きりしまを・・・」
最愛の妹であるきりしまを身代わりにしてしまい、自分への不甲斐なさにはるなは・・・切れた。
「貴様!!」
銃を撃った男をはるなは剣でブリッジの壁に叩きつける、一切の手加減などせずに。
「ぐええ!」
叩きつけられた男はそのまま床に落下すると白目をむいて動かなくなる、そしてその矛先は他の男達にも向けられる。
「きりしまを・・・傷つけたお前達に罰を下します。」
なまじ清楚な美人なだけにその迫力は屈強な男達を怯えさせるには十分だった。
「ま、まて俺達は何も・・・」
ボスにしてみればこれはあの男が勝手にやった事で自分は関係無いと思ったのだが、そんな事はるなにしてみればどうでもいい話だ、彼らは妹を傷つけた者の仲間に代わりは無いのだから。
その後はるなの一方的な殺戮が展開された。
「は、はるなお姉さま止めて下さい、連中はもう抵抗する意思はありませんから。」
きりしまは必死にはるなを止め様とするが、今の彼女はそんな妹の声さえ聞こえていなかった。
「ひえいお姉さま、はるなお姉さまが。」
自分では止め様が無い為きりしまはもう1人の姉であるひえいを呼び出す。」
『きりしま、はるなに何かあったのか?』
突然のきりしまからの連絡にひえいは慌てた様に空中映像を開き答えてくる。
「それが・・・」
きりしまは経緯を説明する。
『・・・きりしまを・・・傷つけただと。』
「いえ、痛みはありますがボディスーツのお陰で傷は・・・」
『こいつら・・・船ごと沈めてやろうか。』
「ひえいお姉さま!?」
ひえいから帰って来た底冷えのする声にきりしまは慌てる。
『妹を、きりしまを傷つけられたんだから当然だ。』
(いえひえいお姉さま僕は『妹』ではないんですけど・・・)
いや女神とさえ言えないだろう、きりしまはこんな容姿だが実は・・・男性なのだから。
ある事情で女神になってしまったのだが、上の3人の姉達は最早それを忘れており、扱いは完全に妹だった。
そして時にこんな風に暴走してしまうのだ。
ちなみにこんごうが状況に気付き2人を止めてくれるまでこの騒ぎは続いた。
まあひえいとはるなを止めてくれたこんごうもまた怒りを隠そうともしなかったのは言うまでもない。
4女神の末っ子であるきりしまは姉である3人からとても愛されているのだった、それはもう痛すぎるくらいに。
これはそんな女神達4人姉妹(?)の物語り。
この作品、最初はアルペジオのメンタルモデルの様な女神を登場させ金剛型戦艦で戦わせる話だったのですが、それだけではつまらないのでネプテューヌに登場したプロセッサユニットみたいに変身させて女神自信も戦うという話にしたものです。
続くかは・・・微妙ですね、多分不定期更新になるでしょう。
それでは。