女神として最初に必用な事を終え、3人は宮殿、女神達の住む所に戻ってくる。
「さて後は此処での生活についてだが、そちらははるながやるんだったな?」
女神として必用なスキルの訓練をひえいが担当し、此処での過ごし方がはるなが行なうことが、こんごうから指示されていた。
「はいお任せ下さいひえいお姉さま、きりしま行きましょう、まず貴女の部屋に案内します。」
がぜんはりきった様子ではるなはきりしまの手を取り引っ張て行く。
「分かりましたから引っ張らないで下さいはるな様。」
ぴたりと止まりはるなは少し怒った表情を浮かべてきりしまを諭す。
「私の事ははるなお姉さまと呼ぶようにいった筈ですよきりしま。」
「は、はいすみませんでしたはるなお姉さま。」
「はいよろしいですよ、さあ行きましょう。」
途端に機嫌を直すはるな、会って間もないが既に仲の良い姉妹の様でひえいは苦笑する。
「はるなの奴そうとう張り切っているな・・・まあそれも仕方が無いか。」
きりしまが現れるまで女神姉妹の末っ子だったはるな、彼女は女神になる前から世話好きな性格だった。
しかし姉のこんごうやひえいは1人で何でも出来る為、世話を焼くと言う事が出来なかったのだ。
だが女神になったばかりで戸惑うきりしまが来た事でそれが叶う事になったばかりか、待望の妹(笑)も出来たのだから果然はるなが張りきる事になる。
まあ可愛い妹が増えるのはひえいにとっても悪い事だとは思っていない、その点は長女であるこんごうも同じだった。
この時点で既に3人に姉馬鹿が芽生え始めていたのだが、まだ誰もその事に気付いていなかった。
そんな姉達の愛(笑)を受けつつあるきりしまは、はるなに案内されて非常に豪勢な部屋に来ていた。
「ここがきりしま、貴女が今日から住む部屋です、掃除は終わってますし寝具も準備完了ですよ。」
満面の笑みを浮かべ部屋を見せるはるな、一方きりしまは唖然としていた。
何より広いのだ、かって自分が居た部屋よる数倍もだ、そして配置された家具もまた凄かった。
そう言った方面に疎いきりしまにさえとても高価だと分かるくらいだ。
「あ、あのこれが僕の部屋ですか?ちょっと豪華すぎでは。」
小市民なきりしまにとってはその部屋は余りにも凄すぎて落ち着かないのだ。
「女神の部屋ですからね、これくらい当たり前ですよきりしま。」
当然と言わんばかりのはるな、確かに世界を守る女神なのだから当然と言えばそうなのかもしれない。
ただ突然女神になったきりしまにそれを簡単に受け入れろというのは無理な話だった。
「部屋には一応お風呂もありますが他にもっと大きな物もあります、後で一緒に入る時に案内しますね。」
「はっ?」
既に一緒に入浴すると言う事が決まっているらしい、きりしまは断ろうとしたが。
「うふふ、きりしまの髪綺麗ですから丁寧に洗って上げますから、そして色々お話をしましょうね。」
嬉しそうに言うはるなにきりしまは何も言えなくなってしまうのだった。
(僕は男なのに良いんだろうか?)
その時を考え鬱になるきりしまだったが、更に追い討ちが来る。
「そうでしたきりしまこちらへ。」
何かを思い出したのかはるなはきりしまの手を引き部屋の奥に向かう、ちなみに2人は手を繋いだままだった。
正確にははるなが手を離そうとしないのだ、きりしまは恥かしくてしょうがない。
とは言え学院に居た頃のきりしまは周りの女の子達にこうやって手を繋がされたり、肩を寄せられたり、時には抱きしめられたりしていた、様は完全に同性扱いだったのだが。
それでも慣れるものでは無いときりしまは内心深い溜息を付くのだった。
そんなきりしまの葛藤など気付かず、上機嫌のはるなは大きな扉を開いて見せる。
「見て下さいきりしま、これが今後貴女が着る服です。」
どうやらクローゼットらしいそこには・・・明らかに女物と分かる服が数十着も入っていた。
「こちらは予備のドレス、こちらは就寝時のもの、それから・・・」
服を取り出してはきりしまに見せてくるはるなにきりしまは固まってしまう。
此処に来る前に女性服を着せられた事は多々あったが、常時着せられるというのは初めてだったからだ。
(これから大丈夫なのだろうか。)
きりしまが着た時の事を想像して歓喜に打ち震えているはるなを見てきりしまは考えるのだった。
その後、宮殿の様々設備を案内されるきりしま。
豪勢な食堂、広い風呂場などにきりしまは驚くのに疲れてしまう程だった。
「それでは夕食の時間になったら呼びますから待ってて下さいね。」
一通りの案内を終え部屋に戻ったはるながきりしまに言う。
「きりしまの歓迎会ですから楽しみしていて下さい、ひえいお姉さまも張り切っていますし、もちろん私も手伝いますからから期待してて下さい。」
驚いた事に女神達の食事を作るのは専門の料理人では無くひえいだった。
容姿に似合わずと言ったら失礼だが、ひえいは料理に関してプロも顔負けらしいとはるなは自分の事の様に自慢する。
そしての助手をはるなが担っているとの事だった。
「では後でねきりしま。」
「はい、はるなさ、お姉さま。」
またはるな様と呼びそうになり慌てて良い直すきりしま。
何しろ目の前のはるなお姉さまは笑いながらもプレッシャーを掛けて来るからだ。
そんなきりしまの返事に満足そうに頷くとはるなは部屋を出て行ったのだった。
「ふう・・・」
溜息を付くときりしまは、これがまた豪勢な、よくドラマなどに出て来る王侯貴族の部屋にありそうな、ベットにドレス姿のまま寝転がる。
何だか怒涛の一日だった、いやまだ夜にもなっていないが、きりしまと呼ばれる様になった元少年(笑)は思った。
朝、何時も通り目覚め、学院に向かい、授業を受け、そして教師に用事を頼まれ・・・
そして適性検査を受けさせられて、その結果女神と判明し、ここに連れてこられてしまった。
一生分の驚きを経験してしまった気分のきりしまだった。
そしてその驚きに劣らないほどきりしまの中で大きくなって来たのは不安だった。
突然普通の生活から別世界の生活に変わったしまった事や、女神としてやって行けるのか。
これからの事を考えるとそれがきりしまの中で大きくなって行くのを止め様が無かった。
そう言えばはるなお、お姉さま達はどうだったんだろうかときりしまは思う。
彼女達だって女神になる前はきりしま同様普通の人間だった筈だ、身近な物から突然切り離される事に不安を感じなかったのだろうかときりしまは考える。
きりしまはベットから起き上がると洗面台に行く、顔でも洗ってすっきりしようと思ったからだ。
まあ洗面台も豪華で気後れしてしまったきりしまだったが、何とか顔を洗いタオルで拭くと少しは気が晴れた感じがした。
そして顔を上げ洗面台の鏡を見る、そこに写しだされる自分のいや女神きりしまの姿。
今後は女神として生きなければならない事を改めて思うきりしまだった。
「それでは新しい女神きりしまを迎えられた事を祝して、乾杯。」
「「乾杯。」」
「か、乾杯。」
その日の夜、4人で食事するには広すぎる食堂できりしまの歓迎を兼ねた夕食が開かれていた。
事前にはるなが自慢していた通り、ひえいの作った料理は美味しかった。
「どうだきりしま、私の料理は?」
乾杯を終え食事を開始したきりしまにひえいが得意顔で聞いてくる。
「はい美味しいですひえいお姉さま、こんなの今まで食べた事ありませんよ。」
その美味しさにきりしまは感激した面持ちで答える。
「はははそうかそうか、うんどんどん食べてくれきりしま、今日はお前の歓迎なんだからな。」
美味しそうに食べるきりしまにひえいの機嫌も上々の様だ。
「むう・・・きりしま、こちらも食べて下さいね、私が作った料理も。」
きりしまがひえいの料理ばかり誉めるので、はるなが対抗する様に自分の作った料理を勧めてくる。
「あ、はいはるなお姉さま・・・これも美味しいです。」
はるなの料理を食べたきりしまは同じ様に感激した様子で答える。
「そうですか、どんどん食べて下さいね。」
きりしまの答えにはるなは嬉しそうに勧めてくる。
「・・・きりしま、こっちのもどうだ。」
「いえきりしま、こちらを。」
ひえいとはるなは自分が食べるのも忘れて、きりしまに自分の作った料理を勧めてくる。
そんなひえいとはるなの張り合いにこんごうは苦笑を浮かべつつも何も言わない。
どうやら新しい女神であり妹でもあるきりしまはたった一日で受け入れられた様だとこんごうは思った。
(これで少しでもきりしまの不安が和らいでくれれば良いのだけど。)
突然今までの生活から切り離され、未知の世界に来てしまった困惑と不安は大きい事はこんごうもかって経験している。
今日の歓迎の夕食はそんなきりしまの不安を少しでも無くしてあげると共に姉妹として受け入れる為のものとしてこんごうが計画したのだ。
どうやらそれは成功しつつ有る様でこんごうは満足気に笑い、妹達に話かける。
「ひえい、はるな、きりしま、皆聞いて欲しい事があります。」
きりしまを挟んで張り合っていたひえいとはるな、どうすれば良いか分からずおろおろしていたきりしまは姿勢を正すとこんごうに注目する。
「私達は共通の運命によって結ばれた者同志です、女神として選ばれ、その責務と義務を負うと言う。」
こんごうは妹達、ひえい、はるな、きりしまを見ながら続ける。
「何故自分が・・・この気持ちはもちろん有ると思います、私もそうでしたから。」
その美しい顔に憂いの表情を浮かべこんごうは妹達に語る。
「ですが女神となりこうやって4人が・・・姉妹と成れたのもまた運命だと私は思います。」
憂いの表情を慈愛に変えこんごうは妹達を見渡しながら言う。
「だから私はそれを大切にしたい・・・きりしま、貴女は今日から私達の妹です、大変だとは思いますが私達が居ます、何でも頼って下さい。」
こんごうの言葉にひえいとはるなも頷き、きりしまを見つめてくる。
「共通の運命で結ばれた女神姉妹としてこれからよろしくお願いしますね。」
「・・・はいこんごうお姉さま、ひえいお姉さま、はるなお姉さまもこれからお願いします。」
きりしまはそう言って頭を下げて姉達に言う。
「ああ任せろきりしま、このひえいを存分に頼りにしてくれ。」
「ええきりしま、このはるな姉として貴女を支えてあげます。」
3人の姉達の気持ちにきりしまは感動していた、突然の人生の転換に戸惑い、不安に押しつぶされそうだった自分をこんなにも思ってくれるのだと。
これなら女神として生きていけるかもしれないときりしまは希望を持てるのだった。
(ただ・・・もう完全に妹扱いなんですね。)
男としてそれだけが当人にとっては受け入れ難い事だったのだが、姉達は新しく出来た妹の事で盛り上がっており深い溜息を付くしかきりしまには出来なかった。
こうして男ながら女神となったきりしまの数奇な運命が始まったのだ。
此処に皇国と世界を守護する4人の女神姉妹が揃うことになった。
この先にどんな事が待ち受けているか、それは女神である4人姉妹にも分からない。