私を魔王軍参謀と知ってのことか 〜訳あり魔族は幼女を拾って養育するようです〜   作:サンボ

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視点が変わる上、時間も前後しますのでご注意ください。


お兄ちゃん(キノミ視点)

 カタンって音がして、起きた。

 窓の所には黒い鳥がいて、夜みたいな真っ黒な体に、ぎらぎらしてる目がちょっぴり怖かったの。

 だからお布団をいっぱいに被って見つからないようにした。食べられちゃったら、どうしよう。

 

「お疲れ様です」

 

 スビーお兄ちゃんの声がして、少しほっとした。何だか鳥さんとお話しているみたい。

 それと、鳥さんが持ってきた手紙からお父さんの匂い、お父さんの声がした。

 

 キノミには色んな声が聞こえるからすぐにきのこだって見分けられるんだもんね。えっへん。

 けど、お兄ちゃんにも聞こえてたみたいだから、キノミが凄いわけじゃないかも? わからないなぁ。

 

『君のことだからきっとこの手紙を見つけ出してくれたことだろう』

 

 手紙からお父さんの声がしてきたの。お兄ちゃんにお話してるのかな。ちょっとだけ、お布団のあいだから顔を出してみた。

 まだ怖いのがいないかちょっと心配だったけど、お兄ちゃんが笑ってたから大丈夫。

 

「ええ。ご丁寧にも私が指南した通りの場所に置いていましたからね」

 

『そう。スブュイが教えてくれたことを実践させてもらったんだ』

 

「おや、私が何を考えているのかお見通しと……」

 

『君は僕に考えが見通せていると、今思っているだろうね。だが僕のは所詮真似事で、こういった駆け引きは君の方が何倍も長けている。悪魔族の中でもその能力は随一だと、誰もが思っているし』

 

 お父さんは楽しそうにお兄ちゃんとお話。少しだけ寂しそうだったけど、そっか、キノミはお父さんとお別れしたけど、お父さんもお兄ちゃんとお別れしたんだ。

 キノミはお兄ちゃんと離れたくないなぁ……

 

『そして君は今も僕の言葉を否定しているに違いない。この際だから言っておこう。僕は君の唯一の欠点を知っているんだ』

 

 お父さんはびしっと指を差してお兄ちゃんにぐぐっと近づいたの。

 

『君は自己評価が恐ろしく低い』

 

 お兄ちゃんの眉が動いて、いやそうな顔をしたけど、じこひょーか? が低いとだめなのかな。

 

『スブュイの言わんとしていることは分かるよ。だけど、君は君が思っている以上に力がある。だからこそ僕は君にキノミを託したんだ』

 

「勝手なことを……」

 

『……君が譲らない限り、論争にすらならないか。僕にも時間があまりない。ならここはこうしよう、僕を友人として信頼を寄せてくれるのならば、どうか願いを聞き入れてほしい』

 

 お父さんはまっすぐお兄ちゃんを見てた。

 

『キノミを、君のそばから離れさせないでくれ。スブュイなら娘を守りきれる、いや、君にしか出来ないんだ。僕は自信を持ってそう言い切る』

 

 お父さんが離れないようにお願いしてくれたみたい。キノミ、お兄ちゃんとずっと一緒にいられるのかな?

 

『友の最後の頼みとして、受け取ってはくれないだろうか』

 

「……その言い方はずるいですよ」

 

『それから、娘を守り切れなかった不甲斐ない父親の、我儘を許してほしい』

 

 お兄ちゃんはふぅって息をふいてからお手紙をたたんだ。

 

「分かりました。キノミは、私のこの命に代えても守り抜きましょう」

 

 あと、お兄ちゃんはたたんだお手紙の裏を見て笑ったの。

 

『君なら引き受けてくれると思ったよ。ありがとう』

 

 それを読んで、お兄ちゃんの目にきらりって光るのがあった気がした。

 

「隠すのが下手すぎるんですよ。最初に見つけてしまったじゃないですか……!」

 

 お兄ちゃん、笑いながらなみだを流してる。キノミがふいてあげたいけど、おとこのなみだはじゃましちゃだめってお父さんが言ってたから、静かにしておくの。

 

「ご冥福をお祈りします、メシウルム」

 

 静かにしてたらねむくなっちゃって……ふあぁ……お兄ちゃんの声って何だか安心するし、キノミもお返しにお兄ちゃんを安心させてあげたいけど。

 そうだ、スビーお兄ちゃんは小さいのが好きなんだっけ。ならキノミがもっと小さくなればいいのかな。でもどうしたらいいのかわからないし、あしたお姉ちゃんに聞こうね。

 

 

 

「……はっ!」

「よく眠れましたか? キノミ」

 

 眩しいなって目を覚ましたらお兄ちゃんが笑ってキノミを見ていた。

 

「あのね、キノミ、小さくなる方法を知りたいかなって」

「……いえ、キノミがこれ以上小さくなることは難しいと思いますよ」

「そっか……」

 

 どうしよう。お兄ちゃんでもわからないんだって。

 

「それよりお腹は空いていませんか? 朝食を摂りに食堂へ行きましょう」

「うん!」

 

 お腹と相談して、今はご飯を食べることにしたの。

 

 

 大変、嵐の人たちが先についていた。

 

「来ちゃった」

「あの、軽く遊びに来るような感覚で訪問されると困るのですが」

 

 お兄ちゃんが困ってる。こうなったらキノミが嵐の人たちを追い出すの!

 

「あの、お料理作るから、それで帰って?」

「あなたはあの時の女の子? 料理ね……そうね、私達が満足したら望みのとおりにしてあげてもいいわ」

 

 嵐のまじゅつしさんに、約束してもらったからキノミ気合いっぱい入れて頑張るぞ。えいえい。

 

「どうして招かれてもいない来客が偉そうにしているのでしょうか……。ところでキノミ、本当に作るのですか?」

「うん! 声を聞いてお料理するから!」

 

 キノミはお料理するところに行ってさっそくはじめるよ。来るときにお兄ちゃんが色んな人にお辞儀してたから、キノミも真似しておこう。

 

 おいしくしてねって、みんなが言うからキノミ、うでによりをかけてつくるの。

 

 

……

 

 

「失敗しちゃった」

「……食材が、泣いていますね」

 

 頑張ったけど、まっくろになった。お兄ちゃんはそれを見て少し残念そう。

 

「キノミは料理の経験はあったのですか?」

「ううん。はじめて」

「道理で……」

 

 そのあと、お兄ちゃんがとっても美味しく作り直してくれて、満足した嵐の人たちも帰っていったの。

 

「今日はキノミのおかげで新しい発見がありました。食材の声を聞くとは、重要なものですね」

「失敗だったけど」

 

 お料理はだめだったけど、お兄ちゃんはほめてくれた。お兄ちゃんの手って大きいしあったかいなぁ。

 

「そうですね。次はもう少し慎重にいきましょうか。私も手伝いますので」

「分かった! えへへ、お兄ちゃんがいっしょなら安心だね」

 

 でもちょっと怖いからしばらくおあずけすることにしたの。お兄ちゃんと一緒にしたいことは、お料理だけじゃないから。




手紙とキノミの語りのミスマッチ感。
だが後悔はしていない。
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