いつの間にか12月。
雪国出身なのに寒さに弱い僕には、今年の冬は有難い暖冬です。
こんにちは、Mr....です。
滞っていた執筆も少しずつ進められているので、なんとか完結させたいです。
desire 7
2人が付き合い初めてから、3ヶ月が経った。
陽奈「もしもしー。猛くーーん。遅くなーーい?」
猛「すみません!はぁ!はぁ!寝坊しちゃって、急いで向かってるんで!!もうちょっと待ってて!!!」
猛は寝坊した。陽奈とのデート。約束していたランチ。陽奈はウキウキして約束の30分前から待っていたというのに、猛は30分寝坊した。おかげで、陽奈は1時間くらいも待たされるハメになり、少し苛立っていた。
ぽかぽか陽気でデートをするには絶好の天気。陽奈は少し苛立ちを抑えるために背伸びをした。
陽奈「んーー、はぁ!気持ちいい。」
陽奈は暖かい日が好きだ。花の気持ちがわかる気がするから。のびのび出来て、包まれるように暖かくて、安心する。日光過敏症っていう病気もあるけど、陽の光を浴びて安心しない人はいない。そんな温もりを感じていたら、イライラもどこかに消えてしまっていた。
陽奈が待っている場所は住んでいる家からほど近い街中の通り。人気なファストファッション店や古着屋、若者が好きそうなセレクトショップが沢山あるため、大体毎日賑やかである。少し路地に入ればオシャレなカフェやご飯屋さんもある。
猛「ひ、陽奈さーーーーん!!」
遠くの方から自分の名前を叫びながらボサボサの頭で必死走ってくる。そんな猛を見て陽奈はさらに楽しみな気持ちが大きくなって、嬉しかった。
陽奈「猛くーーーん!」
猛「はぁ、はぁ!す、すみません...めざまし掛けたんですけど、起きれなくて...」
陽奈「いいよ!それより覚えててくれたんだ!あの時無理やり引き止めて約束してもらったから猛くん忘れてるかと思って心配だった...」
猛「あ、まぁ、あの、その時はごめんなさい...この間も謝ろうと思ったんですけど…」
猛「そんなこともういいじゃん?それよりぃ、こんなにキレイなお姉さんとデートするのにその髪の毛はさすがにないんじゃなぁい?」
陽奈はオフショルダーの白いニットにベージュのタータンチェックの膝上3cmのミニスカートに薄手のタイツにブーツ、髪の毛はふわっと巻いてあり大人のお姉さん感満載なデートの装いなのに対して、猛はボサボサの髪の毛に無地の灰色Tシャツ、ライダースジャケット、ダメージジーンズに黒のスニーカー、とりあえず目につくものを選んできた感が満載だった。
陽奈「まぁ、寝坊しても、服のチョイスはさすがよねぇ、シンプルで良いと思う!!」
猛「陽奈さんと出かけるのに、変な格好出来ないじゃないですか…髪の毛はすみません...」
陽奈「んー、髪の毛がボサボサなのはね…あ、じゃあ、ここからちょっと歩くと帽子屋さんがあるの!帽子買いに行こっ!」
そう言うと陽奈は猛の手を引っ張り2人は帽子屋に向かう、シンプルな黒色のハット帽、とりあえず間に合わせだが、ボサボサよりはマシということで2人は納得した。 その後、陽奈がなんとか探しだしたご飯屋さんでランチをし、その後の予定は何も無かったので、とりあえず行くあても決めずにフラフラすることにした。
猛「陽奈さんって、結婚食べるんですね…びっくりしましたよ。」
陽奈「女子にそれ言っちゃダ〜メッ。普段は1人で食べることが多いから、あまり食べないの。でも今日は猛くんがいるから、なんか楽しくて!」
今までにも好きになって、こうして付き合ってきた人は何人かいるにはいたが、猛と一緒にいる時くらい楽しさや嬉しさがあったかと思い返しても、あまり無かった。それだけ陽奈は猛に想いをよせていた。
猛と食べるご飯は美味しい。
猛が待ち合わせに遅れてきても腹が立たない。
髪の毛がボサボサなら一緒に帽子を選んで買いたいし、行くあてがなくても隣にいてくれるだけで、陽奈は幸せを感じていた。
幸せなんてそんな小さなものの積み重ねでしかない。陽奈が感じている暖かい陽気、美味しいご飯、好きな服、彼との待ち合わせ、遅れても来てくれた彼、不器用な彼の傍にいること、彼に似合う帽子を一緒に選び、行くあてもなく歩いて、彼の笑顔、自分の笑顔。陽奈は自分の周りにあるもの全て幸せだと感じる。
猛はどうだろうか。彼はそういうもの見方を知らない、分からないように思う。どうにかして彼にも幸せになって欲しい。自分に何が出来るのか、もしかしたらその役目は自分じゃ無いかもしれない。けれど、猛と人生の中で少しでも私がいたことの何かを残せるなら、いや、残したい。この人の為に。
その後2人は歩き疲れたので、通りがかった喫茶店でお茶をして他愛もない話で笑い合い、お互いの小さな悩みを相談しあい、次はどんなデートにしようか2人で考えたり、、、その時の猛の表情がいつもに比べて楽しそうな顔をしてることに陽奈は気づいた。
陽奈「(猛くん、今日は明るい顔してる。よかった...)」
猛「あのー、陽奈さん?もしもーし、古川陽奈さーーん!」
陽奈「聞いてるよお...恥ずかしいからフルネームで呼ばないでよー。」
猛「あ、ごめん...陽奈さん?」
陽奈「猛くん、楽しそうだなーって思って」
猛「え?」
陽奈「私と付き合ってから、なんか変わった?」
猛「......。今まで、あんまりそんなこと思わなかったんです。誰かに必要とされたいとか、誰かを求めたりとか、1人でいい。自分には関わって欲しくないって思ってたから。」
陽奈「うん。どうして?」
猛「僕、わけも分からない歳の時に両親を亡くしてて、ばあちゃんに育てて貰ったんですけど、ばあちゃんも亡くなって、人並みの幸せとか、そういうの分からないんです。」
陽奈「あーー......、私謝ったほうがいい??」
猛「ううん、大丈夫。それからも色々あって、そういうのが強く思うようになってて、普通に生きて、普通に死ねればいいと思ってた。けど最近、陽奈さんと付き合ってからは、陽奈さんの気持ちとか、考えるようになった。前までは陽奈さんのことも、鬱陶しい先輩としか思ってなくて。」
陽奈「うん。それは後でお説教ね?ニコッ」
猛「あ、げっ、説教は勘弁して...陽奈さん怖いから...。でもそんなこと考えたら、なんかよくわからないけど楽しくなってて、俺でも、ちゃんと笑えるんだって。好きってこういうことなんだなって、今は思えるんです。」
陽奈「うん。良かった。」
猛「それと最近怖い夢を沢山見てるんですけど、陽奈さんといる時は見ないんです。」
陽奈「怖い夢?どんな?」
猛「知らない女が理解できない怖いことをして来るんです。自分を傷つけて喜んだりとか、名前もなのならず僕のことを好きとか言ったりとか、前々から知ってるような口ぶりで話してきたり、急に抱きしめてきたり...。」
陽奈「そう、なんだ......う〜ん、ねぇねぇ?今から私の家に来ない??」
猛「え!?急ですね…、いいんですか?」
陽奈「うん、猛くん話、もっと聞きたい。けど、ここでするような話じゃないかなぁって…」
猛「あー、そ、うですね。すみません。じゃあ甘えちゃっても、いいですか?」
陽奈「いつでもいいよって言ったよん。さ!行こっ!」
陽奈は猛のことを抱きしめたくなっていた。本当に寂しい人。誰かのことを思う事を知らなくて、他人に求めることもせずに、自分のことを考えるのもやめて、どうしてそんな孤独の中に身をおいているのに辛そうじゃないのか、陽奈は分からない。分からないけど、分からないから寄り添いたい。この人を1人にしたらダメだ。自分にそんな使命はないけれど、傍にいたい。
2人は陽奈の住むアパートに向かって歩いている。猛は女性の部屋に入るのは人生で2回目。柄にもなく緊張している。心臓が破裂しそうなくらいに緊張している。まず靴を揃えて入らないと、お邪魔しますを言わないと、座っていいよと言われるまで立ってた方がいいか、慣れないことをする前はどんな人間でも色々なことを考えて緊張するものなのだと猛は学んだ。
そんなことを考えていると、陽奈が何かを察したのか話しかけてきた。明らかにイタズラをしようとしてる子供のような笑顔だった。
陽奈「あっれー?猛くん、黙り込んじゃってどうしたのぉ??」
猛「い、いや。なんでもないですよ!!あ、今日はいい天気ですよね!」
陽奈「今更そんなことぉ?朝起きた時におもわなかったの~?」
猛「あ、朝は焦ってたんで、そんなこと思う暇はなかったというか......あ、陽奈さんの部屋って広いんですか??」
陽奈「私の部屋?そんなに広くはないかな~。友達が3人くらい泊まりに来ていっぱいになるくらい!」
猛「そ、そうなんですね!(やっべぇ、緊張して何話していいかわかんねぇ!!!)」
陽奈「ねぇ?猛くん?」
猛「は、はい!」
陽奈「緊張、してる。よねっ。」
猛「してない、ですよ?」
陽奈「僕も経験それなり、だもんね?女子の部屋に入るのくらい、まぁ、どぉってことないよねぇ??」
猛「え、えぇ!どうってことないですよ!?」
陽奈「猛くんならそうだよねぇ!こんなに可愛い、彼女、の部屋に入るのに、緊張なんかしないよねぇ〜、今までも沢山の、女子、の部屋に入ったことあるんだもんねぇ〜」
猛「.........。緊張してます。」
陽奈「うんうん。何となくそうかなーって。」
猛「経験なんて、それなりも何もないですよ。過去に彼女は1人しかいなかったので...」
陽奈「ふぅ〜ん。嘘つき。」
猛「ご、ごめんなさい。」
陽奈「経験も全然なくて、平気で嘘をついて、まぁどうせ鬱陶しい先輩だったんだし?適当にあしらってたんでしょ~?」
猛「あ〜〜、説教ですね…言わなきゃよかった…」
陽奈「そうだよ!...でも、今は緊張してくれてるんだよね。」
猛「はい、緊張してます。」
陽奈「どうして私と付き合ってくれているのかは知らないけど、鬱陶しい先輩じゃなくなって、意識してくれて、素直に謝ってくれる。」
猛「陽奈さんが、そうさせるんですよ。」
陽奈「そうなのかな...お説教じゃないよ。猛くんの緊張がほぐれるかと思って、からかっちゃった!」
猛「うわっ、ひどっ!真剣に悪いって思って反省してたのに!!」
陽奈「あはは!ごめんね!でも、もう思ってないなら、私はそれだけで十分。あ、あそこの白いアパート!私の住んでるところだよ!」
陽奈のおかげか、猛はだいぶ緊張がほぐれていた。アパートにも到着して、カギを開けて2人は中に入る。
陽奈「はぁー、良い具合に疲れた!」
猛「お、お邪魔します!!」
陽奈「ん?」
猛「え?」
陽奈「全然緊張してるじゃん......」
猛「そ、そりゃしますよ!」
陽奈「じゃあ~、ねぇ!猛くん!」
猛「はい!?」
陽奈「おかえり!」
陽奈は手を後ろで組んで、前かがみになり、上目遣いで猛に暖かい言葉をかけた。猛は屈託のない笑顔とその言葉のおかげで、人の心の暖かさを知った。歓迎の言葉でもなく、適当にもてなす言葉でもなく、ここも帰ってくる場所でいいからね、と言われているようだった。
緊張なんて忘れて、猛は陽奈の見つめていた。この3ヶ月、美夜と付き合っていた時の自分を取り戻せていると少し実感していた。人を好きになってもいいと自分を許せていた。陽奈のことが好き。それだけでも十分だったのに、と猛は心が暖かくなるのを感じていた。
陽奈は陽奈で、自分自身も寂しくなる時がある。猛のことを考えている時は尚更寂しくなって、辛くなる時もある、その人にいつでも触れられるなら、そしてその人が安心してくれるなら、ここに帰ってきてほしい。そう思っての言葉。
実は少し怖がりながら陽奈は投げかけた。届かなかったらどうしよう。鬱陶しいと思われたらどうしよう。でも猛は答える。その人がそうしてくれたように、少し動揺はしてるが、屈託のない笑顔で、その温もりに自分から手を伸ばすように。
猛「ただいま!!」