邂逅 -ワールドトリガー-   作:ぱぷりかーしゅ

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A級9位 平 火乃音(たいら かのん)の物語。おまけ話3つ目。
パーフェクトオールラウンダーを目指すオリ主が狙撃の練習を始めるお話。
雨取千佳と夏目出穂がでてきます。


狙撃のススメ

 ボーダーには大まかにわけて三種のポジションが存在する。攻撃手、銃手、狙撃手がそれだ。

 すべてのポジションを極めたパーフェクト・オールラウンダーはボーダー広しといえども玉狛の木崎レイジのみである。

「その歴史を塗り替えてやろうってのがあたしの目論見なわけよ」

 狙撃銃イーグレットを磨きながら、(たいら)火乃音(かのん)はにやりと笑った。

「は、はぁ」「そ、そうなんですね」

 夏目出穂と雨取千佳が相槌をうつ。

 A級からC級まで、狙撃を学ぶ隊員全員が使う射撃訓練場、その一角での会話である。

「千佳坊──あ、千佳坊って呼ばせてもらうわ、千佳坊のお師匠さんがレイジさんって聞いてさ。ひとまず弟子に宣戦布告しとこうと思って!」

「レイジサン本人には言わないんスか?」

 出穂の至極当然なツッコミに火乃音は、

「会おうと思って3回玉狛に行ったら3回とも留守だった」と、遠い目で答えた。

「うわ」

「先に連絡いれときゃーよかったなーって3回目で気づいたんだけどさ。まあ千佳坊に伝えてもらえばいっかとおもって」

「気づくの遅っ!」

「わ、わたしでよければお伝えしときます」

 おずおずと申し出ると、火乃音はぱっと目を輝かせ、千佳の丸くて形のいい頭を愛おしげに撫でた。

「サンキュな〜! なーんていい子なんでしょ! 二人にはあとでジュース奢ったげる♡」

「そういや、平さんていくつなんすか?」

 背丈は千佳と同じくらい、歳も同じかやや下に見える。だとすれば自分たちとは違う学校に通っているのだろうか。

 火乃音はスコープを覗き込みながら屈託なく答えた。

「十五だよ」

「15っ!?」

 おもわず声が出た。まさか歳上とは──! 見れば千佳も目を見開いていた。やはり歳下だと思っていたらしい。

 火乃音はにやーっと笑みを深めて振り向いた。

「いやーもっと年上だと思った? よく言われるんだよねーその歳に見えないって」

 

(いや、ソレ明らかに逆の意味で言われてる……)

 

 口に出す勇気はないので内心での指摘に留めつつ、出穂もアイビスの手入れを始めた。

 トリオンで造られた銃は発現するたびに整備された状態で現れるため、銃身を磨く必要などはないのだが、千佳の師匠レイジ曰く、「自分の使う道具を毎日手入れしてこそプロ」らしい。

 構造を頭の中に叩き込む訓練にもなるそうだ。

 火乃音は二人がアイビスを磨くのを見て、へえ、と感嘆した。

「狙撃手はどの銃も使えるようにする人が殆どだけど、だいたいみんなイーグレットから始めるんだよ。アイビスで練習すんのは珍しいな」

 出穂は「ああ」と破顔した。

「アタシは完璧に千佳の影響っすよ。入隊式のアイビス大砲が忘れらんなくて」

「はぅ」

 千佳が恥ずかしそうに身もだえる。本人にとっては触れてほしくない過去のようだ。

 ちなみに、そのとき空いた穴はすでに塞がれ、跡形もない。

「なるほどね〜。……よし決めた! あたしもアイビスからやる!」

 イーグレットを仕舞い、アイビスを発現させる。ちょうどそのとき、訓練開始のベルが鳴った。

 これから十五分間、等間隔で出てくる的に当て続ける。減点方式で、外した分だけ点数が下がる仕組みだ。三人は横並びで位置についた。

 監督官の荒船が合図する。

「用意……はじめ!」

 訓練場に、大小様々の発射音が響き渡った。

 

 

 ──15分後。

 三人の成績が表示された。

 雨取千佳──41位/128人中

 夏目出穂──119位/128人中

 平火乃音──128位/128人中

 

 火乃音はぶっちぎりでビリだった。

「ひっく!! いやアタシが言えた義理じゃないけど!!!!」

 出穂が叫ぶ。火乃音は床にぺったりと横たわり、ナメクジのようにうじうじと蠢いていた。

「むずかしいよーあたんないよー掠りもしないよー」

「ま、まだ今日は初回ですから……」

 千佳が控えめにフォローする。

「レイジさんが言ってました。狙撃手は練習した分だけ上手くなるって」

「ほんとぉー?」

 ぶーたれた火乃音がうごうごと寝返りを打つ。A級隊員というより人型のUMAみたいだな、と出穂は思った。

「ほんとです! だから一緒に頑張りましょう」

 千佳がぐっと手を握る。その言葉に励まされて、火乃音はナメクジモードから、なんとか再び銃をとるヒトモードにまで立ち直った。

「練習する……千佳坊、なっつん、付き合ってくれる……?」

「はい!」「いっすよー」

 答えながら出穂は考える。後で、かのんさんと呼んでもいいか聞いてみよう、と。

 なんとなく、先輩とは呼びたくない出穂だった。

 

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