泣き虫シンシと眼帯少女   作:ねぎた

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4.5話ほどで終わる短編ものです。
拙い文章ではありますが最後までお付き合いいただけたら幸いです。


プロローグ

最近、自分で言うのもなんだが身の回りで不幸な事ばかり起こっている気がする。

 

つい先週は下校途中に寄ったコンビニで立ち読みしていたところ、運転を誤った乗用車が店内に突っ込んできた。私は飛んできたガラスの破片で切り傷を負うだけで済んだが、もう数歩入り口の近くにいたら死んでいたところだ。

 

今週の頭には信号待ちだったところ、前を横切った猫を避けようと急にハンドルを切った大型トラックが横転し、トレーラーが信号機や電柱をなぎ倒しながら私に向かってきた。……が、動けずにいた私の数センチ前で止まり、幸い誰一人として怪我人は出なかった。

 

さらに一昨日にはいつも登下校で通る三叉路の交差点に、大型の旅客機が突っ込んできた。それは不時着した後にも二百メートル先まで被害が及び、しかしそんな大事故に関わらず死人は一人も出なかった。当日テレビではどこの局もそのニュース持ちきりだったのだ。

しかも時刻は私が寄り道をしなければ丁度通っていた時間だ。

 

私はその日、〝なんとなく〟嫌な予感がしたので、遠回りであるが別の道で帰ることにした。そのおかげで事故に巻き込まれる事は無かったが、その交差点の被害は甚大、暫くの間は通行禁止になっているようで、多くの通学通勤者には痛手となった。

 

嘘のような話に聞こえるだろうが、全て現実に起こったことなのだ。

 

それ以外にも、似たような事件事故は多数起きている。しかもそのどれもが〝私の目の前で起こっている事〟という。

 

そしてまたまさに今、私は嫌な予感がしてならない状況下にいる。

 

それは目の前にいるこの少女、真っ白なベレー帽を被ったショートヘアのこの子は、どうやら道に迷ったようで下校途中の私に道を尋ねて来た。

 

 

おかしな事に、【交差点のど真ん中に立ち止まらせて】だ。

 

 

 

私が今いるこの場所は、片道二車線のスクランブル交差点のど真ん中にいる。何故そんなところにいるかと聞かれたら、彼女が突然そこで道を尋ねて来たからだ。

少しおどおどとした様子で、私の顔色を見ながら話している。私が表情を作るのが苦手なせいで、彼女に恐怖感を与えてしまっているせいだろうか。

 

私は別に怒っているわけではない、ただ単純に不思議に思っているだけなのだ。道を訊くにしても、何故今?そしてこの交差点のど真ん中なのだろうか、と。危ないから渡り切ってからにしましょ?と促したところ、「今……今じゃないとダメっ……なんです!」と声を振り絞っていうもんだから、さっさと済ませようとしているはずなのに、数分経っても彼女は何やら地図を片手に再確認のようなものをしている。

 

ふと、信号待ちの車の方へ視線を向ける。その誰もが私たちを怪訝そうに見ている。そりゃそうだ、どんな理由があれ、交差点のど真ん中でいつまでも立ち竦んでいる人たちを見れば不思議に思う。

 

それに加えて今日は日差しが強い。いつまでもここにいるのも辛いし、汗で眼帯も蒸れる。

 

「……ふぅ」

 

小さく溜息をついて、腕時計に目をやる。私の予感が間違っていなければ、あと二分後(正確には一分と四十二秒後)に、スピード狂ばりに走ってくる複数のバイクによる暴走族がこの信号を通る。彼らは走ることと話すことに夢中になっていて、私たちの事など目に入っていない。

 

私たちがこのまま移動を開始しなければ、間違いなく事故に遭う。それだけは避けたいのに、彼女は頑なにこの場を離れようとしない。

 

となれば、やることは一つだ。

 

 

「……へっ?」

 

グイッと彼女の腕を掴み、歩道の方へと歩を進める。……が。

 

「ま、待ってください……!まだ、話は終わってません……のでっ」

 

彼女は必死に踏み止まり、私の意向に逆らおうとする。しかし、だからと言っていつまでもここにいるわけにもいかない。

 

タイムリミットは一分を切った。もうそろそろエンジンの音が聞こえてきても良い頃だ。しかし聞こえてきてからでは遅すぎる。

 

「何もここじゃなくても良いでしょ?信号も変わるし、渡ってから教えてあげるから」

 

「い、いや……!ここ、ここじゃないと、ダメなんで……す!」

 

駄々をこね始めた彼女は石のように動こうとしない。

 

「馬鹿言わないで。ここで立ち止まってると危ないのは分かるでしょう?」

 

「ば……馬鹿?や、八雲は馬鹿じゃありません……!そりゃあ……たまに、ほんとたま~~~に失敗とかしちゃいますけど、でも!それもほんとにほんとにたま~~~~~になので……!いつもはちゃんと仕事の出来る」

 

向こうから大きなエンジンが聞こえてきた。一瞬、彼らのヘルメットが眼に映る。

 

信号も変わる。

 

【もう限界だ】

 

 

「あっ!ちょ、ちょっと……!」

 

彼女の静止を聞かず、私は力尽くで彼女と歩道を目指す。文句なら向こうについてからでもいくらでも聞いてやる。いや、本来なら文句なんめ言われる筋合いなどないのだが。

 

その時だ。

 

「い、いい今から来るバイクに貴女が轢かれないと私、困るんですっ……!!」

 

 

 

 

一瞬、目の前の景色が止まったように見えた。

 

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