ベル君がジョーカーアンデットなのは間違っているだろうか? 作:オンドゥル
初めての【眷属】なのだから特別感を出すためにと、ヘスティアはベルと共にとある書店に来ていた。その書店の二階の書庫にて、ヘスティアはベルに【恩恵】を渡す準備を始める。
「それじゃあベル君。【恩恵】を刻むから上裸になってくれるかい?」
「ちょっと恥ずかしいですけど、そういう事なら……」
そう言いながら、ベルは上着を脱いで上裸になった。それを見たヘスティアは、なかなかの肉体をしているベルの身体に多少驚きながら、近くの椅子に座らせ、【恩恵】を刻み始める。
「よし、こんなもんかな。さてさて、【ステイタス】はっと……え?」
「ど、どうかしましたか?神様」
そう聞くベルの声に反応する事なく、ヘスティアはベルの【ステイタス】をじっと見つめていた。そこには、他の神が言っていたような【ステイタス】は微塵もなく、その悉くが文字化けを起こし全く読むことができなくなっていた。それは、彼の名乗ったベル・クラネルという名前さえも例外ではなく、唯一読めるのは《スキル》の部分のみで、そこに書かれているスキル名も驚愕のものだった。そこに書かれていたのは、
【
・様々な力を使うことができる
【
・神に嘘をついても見破られなくなる
・他のアンデットに擬態できる
・精神異常完全無効化(常時発動)
の2つだけであったが、2つ目が問題であった。ジョーカーアンデットと言うのは、神ならば誰しもが知っている【世界のリセット】を起こした原因。それがなぜ人間のベルの《スキル》にあるのかなど、疑問がいくつも湧き上がってくるが、とりあえず心配そうに自身を見てくるベルになんでもないと返し、
「えっと、ベル君。とりあえずはボクが生活してる場所に行こう。いつまでもここにいるわけにはいかないからね」
と言って、彼女の住む古い教会へと向かった。
*
その教会の中で、ヘスティアとベル君は向かい合って座っていた。ヘスティアは先程見た【ステイタス】を写した用紙を見せる。そして、ゆっくりと口を開いた。
「とりあえず、これが君の【ステイタス】だ。文字化けを起こしているのも不思議なんだけど、それよりもコッチが問題なんだ」
そう言って、ヘスティアは先程の《スキル》ジョーカーアンデットに指を向ける。それを見て、ベルは露骨に目をそらした。が、いずれ言わねばならないとはわかっていたのだ。それが思っていたより、早く来ただけで。まさか、《スキル》に反映されているとは思わなかったのだ。
「ジョーカーアンデット。
ヘスティアは、ベルがジョーカーアンデットだとは微塵も思っていないらしい。ベルもこのまま隠し通せばいいかなとも考えたが、【家族】に嘘をつき続けるのも如何なものか思い、結果全てを話すことにした。
「……わかりました。ジョーカーアンデットについて話します。まず、僕がジョーカーアンデットです」
「……え?べ、ベル君は人間だろ……?それなのになんで……ま、まさか……」
「ええ、多分神様が思ってる通りですよ。この姿は、人の始祖であるヒューマンアンデットの姿を借りてるだけで今から見せるのが僕の本当の姿です。ベル・クラネルという名前も僕を育ててくれた人がくれた名前ですしね」
そう言って、ベルはゆっくりと立ち上がり擬態をやめジョーカーアンデットに戻る。一瞬にしてジョーカーアンデットに姿を変えたベルを見て、衝撃を受けたような顔をするヘスティア。ベルの手には彼を人の姿に変えていたヒューマンアンデットが封印されているハートの2のラウズカードが握られていた。
「これで人間になっていたんですよ。神様」
そう言って、腰のジョーカーラウザーにそのカードをラウズする。
《Spirit》
ジョーカーラウザーからそんな音が響き、ジョーカーアンデットは再び人の、ベル・クラネルの姿になった。
「といっても、ジョーカーアンデットのことなんてこれくらいですよ。バトルファイトも僕が起こしたわけじゃないんです」
「え!?そうなのかい?」
「はい。統制者と言うのが始めたんです。それに、僕が持っている52枚のラウズカードの封印が解かれない限りバトルファイトは二度と起こりません」
「ラウズカード?」
「僕以外のアンデットを封印したカードです。僕にはアンデットを封印する能力があるので」
「なるほど……」
ヘスティアはそのままなにかを考え始め、少し経ち突然顔を上げた。そのまま立ち上がり、ベルの肩を掴む。
「ベル君!いいかい?このことは誰にも教えちゃダメだ。さっきも言ったが、ほとんどの神はバトルファイトはジョーカーアンデットが起こしたものだと考えているし、そうでなくともジョーカーアンデットがいる以上世界のリセットがまた起こると思ってる奴がほとんどだ。たまにそう思ってない神もいるけど、そんなのは稀だ。だから、このことは絶対に誰にも教えちゃダメだ。どうしてもの時は仕方ないけどね」
「……僕を追い出さないんですか?」
「なんでボクがベル君を追い出す必要があるのさ」
「だって、僕はジョーカーアンデットなんですよ?」
そう言うと、ヘスティアはなんだそんな事かと笑い始めた。そして、一通り笑った後、
「ベル君がジョーカーアンデットだとしても、つい先程から君はボクの【ファミリア】の一員になったんだぜ?その正体が何であれ、ボクは自分の【家族】を捨てるなんてことはしないさ」
と言った。真相を話した事により、【ファミリア】を追い出されるものだと思っていたベルもこれには驚くばかりだ。しかし、ヘスティアはだけどと話を続けた。
「君がボクの事を襲おうとしてるのなら話は別だけど、ベル君はボクを殺すのかい?」
「しませんよ。昔の僕なら問答無用で殺したかもしれませんけどね」
「フフ、だろう?なら大丈夫さ。それに、僕に最初に出来た【家族】を捨てさせないでくれよ」
少し、悲しそうな顔をしながらヘスティアは言う。ベルがいなくなった後、もしかしたらヘスティアの【ファミリア】は大きくなるかもしれないが、【家族】を捨てたと言う事実はヘスティアの心に残り続けるだろう。
「分かりました。神様、改めて自己紹介をしますね。僕は、ベル・クラネル。ジョーカーアンデットです。それでも良いなら、僕を【ファミリア】に入れてくれますか?」
「なに言ってるんだベル君。もう君はボクの【ファミリア】の一員だぜ?」
笑ってそう言うヘスティア。それを見て、この神様の【ファミリア】に入れて良かったなと思うベルであった。