ベル君がジョーカーアンデットなのは間違っているだろうか? 作:オンドゥル
冒険者になって、大体半年くらい経っただろうか。怪しまれない様に少しずつ下の階に足を伸ばしていたにも関わらずエイナにバレて叱られたりもしたが、なんとか言い包め四階層進出の許可を得て数日。四階層にも飽きてきたベルは、エイナの言いつけを破り五階層へと足を運んだ。そこで最初に遭遇したモンスターはベルの胸を少しばかり高鳴らせた。
「ブモォォォオオオオ!!」
そのモンスターというのが、本来はもっと下の階層にいるはずのミノタウロス。なんでもない冒険者なら死の覚悟を決めなければならない相手ではあるが、ベルはむしろようやく少し骨のある奴が現れたかと口角を上げた。
「何かから逃げてきたのか。それともないとは思うが迷い込んだのか。どっちにしろウォーミングアップ位にはなるかな?」
そう言ってベルは背を向けて走り出した。当然のように逃亡したベルを追いかけるミノタウロス。少しばかり走った後、ベルの目の前に壁が現れる。行き止まりだ。血走った目で追い込んだ獲物であるベルを睨むミノタウロス。しかし、ベルはそれでも余裕の態度を崩さなかった。そもそも、ベルは本来逃げる必要なんてないのだが、誰かに見られると面倒なのであえて人が余り通らなさような場所へとミノタウロスを誘導するように逃げていたのだ。
「被害が出る前に倒させてもらうよ」
そう言って、腰にジョーカーラウザーを出現させようとして、辞めた。瞬間、常人ならば目で追うことすらできないであろう剣撃がミノタウロスを細切れにした。細切れにされた事による血のシャワーが降りかかり、真っ赤になってしまったベル。そんな彼を、こんな状況を作った元凶であるミノタウロスを細切れにした人物が話しかけてきた。
「…………大丈夫ですか?」
腰まで伸びた金髪に金色の目。そして、彼女から感じる強者の気配。彼女こそが噂に聞いた女性冒険者最強の一角と名高い【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインなのだろう。アンデッドであるベルとしては、獲物を取られた上血塗れにさせられた事に文句も出てくるが、此処で文句を言うと側から見たら冒険者初心者が上級者に文句を言ってる構図になる事は分かっていたので、それを飲み込んでベルはアイズに礼だけ言って、血に濡れた服の不快感から逃れる為に走ってダンジョンから抜け出した。
*
「あ、おかってなんでそんな血塗れなの!?」
ギルドに戻ったベルを待っていたのは、エイナの困惑の悲鳴だった。さっさと血を流したかったベルとしては此処でエイナに捕まりたくはなかったのだが、見つかってしまった以上仕方ないと腹をくくり今日の出来事を語った。
「私の言いつけを守らずに五階層に行ってミノタウロスに襲われた!?前にも行ったけど、なんで君は私の言いつけを守らないの!」
「いや、物足りなくって」
「物足りないじゃないの!何度も言うけど、冒険者は冒険しちゃダメなの!ソロの君は特にね!!ソロだとやられちゃった時に助けてくれる人もいないんだからね!?」
アンデッドであるベルは死なないし、そもそもそんじょそこらのモンスターでは相手にすらならないので平気なのだが、それを知らないエイナとしては気が気がないのだろう。自身のことを人間として心配してくれるエイナに感謝しながらも、血塗れのままエイナの説教を聞かされているベルはシャワー浴びたいなぁ等と考え始めるのだった。
「それで、換金はしていくの?」
「あ、はい」
説教を終えたエイナは、一度シャワーを浴びに行ったベルを待ちそう話しかけてきた。勿論ミノタウロスに遭遇するまでは普通に別のモンスターを狩っていた為、ベルは換金所へと歩を向けた。なんでかエイナもついてきたが、此処最近で余りにも倒して稼ぎすぎると不審がられるのを知っていた故、あえて少な目に倒していたにも関わらず、それでも多かったようで再びエイナのお叱りを受けてしまった。
*
「ただいま帰りました」
「おかえりベル君」
「あ、神様。ちょっと報告なんですけど、今日【剣姫】に助けられました」
「なんだって!?」
なんでもないことのように告げたその言葉を聞き、ヘスティアはすぐさまベルに近づき怪我はないかと身体を弄り始めた。
「ちょ、ちょっと神様!最後まで聞いてください!!助けられたと言っても結果そうなっただけで、僕は怪我してませんよ!?」
「え?……なんだそっか。余り驚かせないでくれよ」
「すいません神様」
落ち着いた様に息を吐き椅子に腰掛けたヘスティアを見て、伝え方を間違えたなと心の中で反省するベル。ヘスティアはベルを物凄く可愛がっている。それこそ溺愛していると言っても過言ではないほどに。ちょっとした怪我でも伝え方を間違えればすぐ様パニックになってしまう可能性もあるだろう。
「ベルくーん。稼いで来てくれたのはベル君だから知ってるかもしれないけど、結構潤ってるし今日はどこか食事に行かないかい?」
「そうですね。偶には良いかもしれませんね」
「よし、そうと決まれば混んでるのも嫌だしすぐ行こうか」
「元気ですね。神様」
ささっと準備をするヘスティアを見ながら、ベルはクスリと笑みを浮かべそう呟いた。