アルロンドが国を倒すため軍隊を作り上げようとしていることはもちろん貴族の間にも瞬く間に広がった。その話を聞きつけ、いち早く駆け付けた人物がいた。それはもちろん、彼の親友であり敵でもあるレオポンドであった。
「貴様、何を考えているつもりだ!!!」
レオポンドはアルロンドに怒鳴りつけた。
「自分は国を守るために戦っている」
やじ馬の住民が集まる中、レオポンドはアルロンドに剣を向けた。
「お前、それが貴族のやることか。貴族の支配をなくすということは貴族のプライドを捨て、国を守ること、国を治めることを住民にやらせることになる。そんなことで国を守れると思えるのか!」
するとアルロンドも剣を抜き、
「貴族なんて、家系だけによって生まれるものだ。そんなものに価値など無い」
レオポンドに剣を振り下ろした。するとレオポンドはそれをはじき返し、
「貴様、貴族にほこりを感じないのというのか」
「当たり前だ!」
二人の戦いは激しくなる一方であった。すると群がっている平民のほうからある声が聞こえた。
「アルロンド、俺も参戦したい。俺もこの国を変えたいんだ」
彼は、アルロンドが交渉した人物のひとりであった。
「おっ、俺も、できることなら力になりたい」
次々に平民からアルロンドに協力したいという声が上がってくる。そう、アルロンドの絶え間ない努力によって、住民からの信頼関係の構築に成功していたのだ。
そしてアルロンドは、レオポンドに言った。
「貴様が、貴族による国の支配を継続させたいというのならば自分たちと戦うことだ。自分たちは必ずこの国を変える」
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アルロンドは、平民を主体とした軍隊を作り上げることに成功し、貴族たちの軍に匹敵するほどの力をつけることができた。そして、貴族対平民の戦いが始まった。
高価な武器を用いた貴族の軍隊に平民たちの軍隊は圧倒された。
「人数は、こちらの軍隊のほうが圧倒的です。国を変えるために皆さん、結束しましょう!」
アルロンドは軍隊の指揮をとっている。
今まで貴族に不満を持っていた平民たちは貴族たちに多大なる恨みを持っていた。それを原動力に彼らは一つに団結し、貴族と戦いに挑んだ。
最初は平民たちの軍隊を倒し続けていた貴族たちの軍隊であったが、しだいに平民たちの軍隊が勢力を巻き返し、平民たちが勝利することができた。
しかし、勝利することができたのであるがその代償はやはり大きなものであった。建物という建物がすべて破壊され、田畑は荒れ果てたものになってしまった。そんな状況になってしまったこの国であるが平民たちはアルロンドに言った、
「あなたのおかげで私たちの生活に希望を持つことができました。ぜひ、この国の王になっていただきたい」
「それはできません。この国には身分などもう存在しないのです。誰もが平等です。国を治めるリーダーは多数決により決めるのです」
多数決で決めるリーダーの決め方はヴァウマン氏に後日送られてきた手紙から知ったことであった。貴族をなくしたとしても、平民が主体となって国を治めるという文化がなく、結局元のような状態に戻るということが頻発するということが書かれていた。そのことを踏まえアルロンドには、国を治める方法を平民、いや、住民たちに教えることをした。
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国を変えるための作業をある程度終えたのち、彼は一人の女性に会いに行った。それはもちろん彼の恋人「エリス」である。
「エリス、会いたかった」
「どうしてアルがこの国を変えたいと思ったの?」
「そんなの言うまでもないだろう」
アルロンドはエリスの頬に手を触れながら、
「君を守りたかったからだ。僕は言っただろう。君を守ると」
「アル……」
エリスは涙を流した。
「エリス涙を見せないでくれよ」
「アル!」
「どうしたんだ」
エリスは泣き出したい気持ちを押し殺しながら彼の名前を言った。
「わたしね、実はこの国を変えさせるという使命をもってこの世界に来たの」
「どういうこと?」
「わたしは、あなたにこの国を変えてほしいと願ったからあなたのところへ来たの」
アルロンドはエリスに何のことを言われているのかさっぱりわからなかった。
「あの手紙も、あなたとの出会いも全部私が仕組んだものなの」
「嘘だろ」
「私は、この国の未来から来たのです。今までだましていてごめんなさい」
「冗談はよせって」
「私はもう元の時代に戻らなくてはならないの。あなたのこの努力は未来までずっと残っているわ」
「そんな、エリス!この時代で僕と一緒に暮らしたいとは思わないのか?」
「アルと一緒にいたいと思うわ。でも私はもう未来に帰らないといけないのです」
エリスの瞳にはアルロンドの姿が映っている。
「さようなら」
「エリス!」
アルロンドはエリスを引き留めようと、エリスに抱き着いた。
しかし、数秒後にエリスの姿はそこから消え失せてしまった。
「エリスー!」
泣き叫ぶアルロンド。しかし、エリスがこの地に戻ることは二度となかった。
最終話まで読んでいただきありがとうございました。
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