シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。   作:ひきがやもとまち

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更新です。
「千冬先生フルボッコ回」もしくは「がんばれ僕らの千冬先生回!」です。
「学園バトル物に出てくる元世界最強の教師キャラの教え子が空気読めない奴だったらこうなります回」でも良いかもしれません。


第11話「境界線上に立つ遙か以前より戦闘は始まっているべきものである」

「では、現状を説明する。二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代の専用IS『シルバリオ・ゴスペル』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった。

 それでは作戦会議を始める。意見があるものは挙手するように」

「はーい、一つだけ確認いいですかセンセー」

「許可する。デュノア妹、言ってみるがいい」

「んじゃ、確認ね。――どうして日本の代表たちが出撃しないで訓練生を出させるのよ。おかしいでしょ絶対に。

 なんのために国民の血税で贅沢な暮らしさせてやってると思ってんの、お宅らの国の代表どもは。有事の際の国防力なら給料分は働けバーカ」

「・・・すまんな、デュノア妹。質問には答えてやりたいが、今は緊急事態だ。余裕がない。

 その為、この件については後日改めて詳細な事情説明をおこなう場を用意してやるから、今は目の前の事態に集中するのだ!」

『緊急事態に現場責任者が官僚的答弁で誤魔化したっ!? 本当に大丈夫なの!? この作戦!』

 

 

 

 

 ・・・そんなやり取りで始められたIS学園臨海学校組による、暴走した軍用IS対策会議。

 のっけからシリアスムードを台無しにしてくれる会話をぶちかまされて調子を崩しはしたものの、そこはそれ。

 ギャグとシリアスで減り張りを付けるのは戦う学生たちの得意分野であり、本領でもあるので千冬先生による状況説明が続けられる中で冷静さを取り戻していき、途中から真面目に正座して話に聞き入れるほど完治していた。(注:若干一名、胡坐かいて余所見しているフランス人がいるが気にするな。いつものことである)

 

 

「・・・これらの情報を整合すると、この機体は五十分後に二キロ先の空域を通過することがわかった。ISでのアプローチは一回が限界だろう」

 

 重々しい口調で告げてから弟の顔を見下ろし、真っ直ぐ見つめ。

 

「そのため機動性に優れた白式が参加するか否かで、作戦内容は大きく変わらざるをえない。

 ――とは言え、これは訓練ではなく実戦だ。もし覚悟がないなら無理強いはしない」

「・・・やります。俺が、やってみせます」

 

 尊敬する姉からの問いに、一夏は真っ直ぐ瞳を見つめ返しながら返事をして、決意の重さを言葉で示した。

 

 千冬も覚悟を見せてくれた弟の成長を嬉しく感じ、それを表に現さぬよう注意しながら作戦内容を具体的に説明しようとする。

 

「よし。それでは作戦の具体的な内容に入――――」

「とゆーかさー」

 

 テキトーに外を見ていた目線を千冬へと戻したジャンヌが、ひねくれ者らしく気になってしまった疑問を気を遣ってやることなくハッキリと口にして訊いてしまった。

 

 

 

「今の断られてた場合には、どういう作戦でいくつもりだったの? スピードと距離から見て、白式以外には一回のアプローチも無理そうだと思うんだけど?」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 場に沈黙が満ちあふれ、ジャンヌもそこまで大した問題提起をしたつもりもなくて不思議に思ったから聞いてみただけの質問の効果にバツの悪い思いを味わわされて逆恨みを抱きかけてしまうのだった。ひねくれ者は予想外の事態に意外と弱い。

 

「選択肢があるようで無い選択肢の出てくるRPGって、昔は多かったわよね・・・レ○ール城とか」

「ゴホン! ごほんごほんゴホホホン!!」

 

 織斑先生、《ごまかしの咳》連続発動! 今この場においてはコレをやるしかないので、コレをやりまくるより他に道はない。

 この状況から戦局を覆して大逆転勝利するのは、さすがの元世界最強ブリュンヒルデにも不可能だったから。

 

「あー・・・他の者も織斑と同様だ。出撃を強制はしない。自分の意思で作戦に参加するかどうかを選んで決めてくれて構わない」

 

 その言葉に不敵な笑みで返したのはセシリアと鈴。

 穏やかそうな微笑みに自信を湛えたシャルロット。

 手に入れたばかりの力を振るいたくて仕方ない箒。

 

 ここまでは期待通りの反応が返ってきたのだが・・・・・・しかし。

 

「どうした、デュノア妹にボーデヴィッヒ。お前たちは作戦に不参加を希望しているのか? 無反応では判別できないのだが?」

「いや、そう言うわけじゃないんだけどさぁ・・・」

「・・・うむ・・・」

 

 曖昧な表情で半端な答えを返すジャンヌと、何かを悩んでいるような難しい表情で唸ってみせるラウラ。

 

 二人は反対ではないものの、『どう反応を返したものかで困っている』・・・そんな風情の態度と表情を浮かべていた。

 

「・・・??? なんだ? 今の作戦に問題でもあったのか?」

「いえ、滅相もありません教官。――いえ、織斑先生。反対ではないのです。ないのですが・・・」

「ですが?」

「私たちって自己判断でIS使って、敵と戦ってもいい立場だったっけ?」

「・・・・・・」

 

 織斑千冬、憮然。・・・・・・とした表情を浮かべることで誤魔化したパート2。

 自分の教え子の中に一部だけ含まれている問題児どものせいで忘れられがちであるが(実際に千冬は今の今まで半ば以上忘れていた)

 ISは国家資産であり、使用するには国家の認証が必要であり、『戦争利用が禁止されている』人がまとって戦う機械の鎧型パワードスーツでもあるのだ。

 

 当然、操縦者個人の責任と判断で勝手に使ってよい物では断じてない(一国の軍隊に匹敵する戦力を個人の判断で振るわれたら世界が滅びかねないし)

 母国政府からの命令なしに戦闘行為をおこなって破損させてしまった場合、国が被る損害額は個人で賄えることは可能か不可能かと問われたら答えはもちろん「絶対にNO!」

 

 なにしろ世界三位のシェアを誇るデュノア社を開発費だけで傾けさせた代物である。

 程度にもよるが、仮にもしも無許可で使用して大破させてしまった時の責任が操縦者だけで済ませてもらえる保障はどこにもない。

 IS学園の特記事項も学園外はフォローしてないし、権力から介入されないことを認められてる側が、介入する権利だけ要求するのも無理がある。

 

 挙げ句、これから挑む予定の敵は『アメリカとイスラエルが極秘裏に開発した軍用IS』

 送られてきたデータによると格闘性能は未知数で、特殊スキルの有無は不明。

 相対距離の関係から偵察すら不可能な上に、アプローチ可能なのは一回こっきりで作戦を考えてる時間は検証時間込みで五十分未満。

 出撃して目指すポイントに到着するまでの時間も必要だから、実際には半分以下と見るのが安全パイだろう。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 ――今、初めて気がついた。

 戦力としての脅威度だけは高く見積もってたけど、正直ここまで洒落にならない惨状だとは思っても見なかった。

 

 これは・・・本気でヤバいかもしれないな。コイツらの判断だけで出撃決めさせるとかホントの本気で洒落にならない事態を招きかねない超非常事態になってしまいかねん・・・!!

 

 

 戦いを始める前から、勝利後のことを考えて不安がるのは他人から見ると滑稽に思えるかもしれないが、実戦とはそう言う物なんだから仕方がない。

 

 『勝ちさえすれば後はどうとでもなる』とか言ってる奴らは超楽観主義者かド素人のどちらかだし、『とにかく全力を尽くすのみ!』が許されるのは命令に従うだけでいい兵士と士官と中級指揮官クラスまでである。

 勝つための作戦を立てる側には当然のように『勝利した後』のことまで考えられた作戦を立案し、実行に移すまでに準備を整えなければいけない義務がある。

 

 準備不足を精神論で誤魔化して兵士たちを前線に送り込むのではインパール作戦だし、碌な戦略案もないままに出撃させたのではベトナム出兵だ。さすがの千冬でも嫌すぎる・・・。

 

 と言って―――

 

 

「・・・・・・(チラリ)」

「ん? どうかしたのか千冬姉?」

「どうしたのですか千冬さん・・・いえ、織斑先生。私たちはいつでも出撃する心構えは済ませてありますが?(キラキラお目々)」

 

 国から許可もらえなくても自己判断で出撃を決められるのは一夏の白式と箒の紅椿のみ。

 

 一夏の場合は短期間で急成長したし実績もあるから実力的には信用できなくもないけど、知識不足なのは否めない。まして相手は特殊『射撃型』・・・基本的バトル・スタンスのシューター・フローすら教えたことのない奴に「落としてこい」とか命令するのは無理がありすぎる。

 教えてないことを知らないのも出来ないのも仕方がないことだけど、知らないものは知らないし、知らないことは偶然でもない限り出来ないのである。

 

 そして、敵の弱点を突いて攻撃してくるのは実戦においては常道である。卑怯でも何でもない。「知らないのに勝てると思い込んで出てきた奴がマヌケ」・・・それが実戦なのだから本気でどうしようもない。

 「ルールは守るべきもの」とは思うけど、ルール破って近づいてきてる奴に対処するための作戦会議の場でそれ言ってどうすんだ?とも思いはする。

 

 

(・・・アンビバレンツ!!!)

 

 混乱のあまり、慣れない英単語を頭の中だけで叫びながら、千冬は弟たちとは別の人間――彼らと同じくらいルールを尊重しない少女(失礼)に縋るような思いで鋭く尖った視線を送り込むと・・・・・・

 

「一応言っときますけど、幾らワタシがひねくれてるからって自分の我が儘に国と会社と家族全員を巻き込める決定はできませんからね? そういうのはワタシと同名の聖女様に言ってください、KY過ぎてフランス救った救国の聖女様に。

 あの命令無視して突っ込みたがる特攻大好きなファイヤーガールなら、喜んで旗持って敵中目指して突っ込んでってくれますよきっと。シェルジュ!シェルジュ!シェルジュ!とかバカみたいに叫び声を上げながら真っ直ぐに」

 

 そりゃお前だよ!――と、大声出して罵倒したいところではあったが、そんなことやってる場合じゃどう考えたってない。

 今は考えるときではなくて・・・・・・決断すべき場面だ。

 

 

「・・・・・・わかった・・・。私も腹を決めよう。

 本音を言えば、危険極まりない実際の敵と戦う戦場に教え子たちだけを出撃させるような命令はしたくなかったが・・・・・・」

「じゃあ、一緒に出撃すればいいじゃない。元世界最強のIS操縦者なんでしょ? 楽勝なんじゃない?」

「命令したくはなかったが!!」

 

 織斑千冬の大声出して誤魔化すパート3。

 空気読まない聖女と同名のフランス人は、やっぱり空気を読んだ行動をしてくれない。

 

「事ここに至っては致し方ない・・・治外法権の地IS学園教師の権限を以て命令させてもらう。お前たちの命・・・私に預けてくれ! 頼む!! この通りだ!!」

 

 そう言って教え子に対して頭を下げる織斑先生。

 一見すると三年B組的感動的な名場面だからなのか何名かが「織斑先生・・・そこまで私たちのことを・・・っ」と感極まってるのもいるにはいたのだが。

 

 

「・・・そこまで出来るのに、自分が出撃するのだけは嫌なのね・・・・・・」

「しっ! いい加減お前は黙っていろ! 教官にだって色々と事情という物がおありなのだ!きっとな!!」

「ごほんごほんごほん!!!」

 

 空気読まないフランス人と、空気読めないドイツ人コンビの二人にはいまいち通用してくれない昭和日本のノリと勢い。

 国籍による文化の違いって難しい・・・・・・。

 

 

つづく

 

次回予告のようなオマケ

 

束「聞いて聞いて! ここは断・然! 紅椿の出番なんだよ!

 なんと紅椿には現在絶賛机上の空論中の最新装備『展開装甲』が搭載されてるから、それを調整して、ほいほいほいっと。ホラ! 完成! これでスピードはばっちり!」

 

ジ「いや、スピード上げたんだったら試運転ぐらいさせてから使わせなさいよ。調整終えたばかりの工場製品乗って戦場に行けとか、アホなんじゃないのアンタ?」

 

束「ふべっ!?」

 

ラ「確かにな・・・。どんな異常が起きるか未知数の試作機は、軍においてさえ専属のテストパイロットを乗せて幾重もの安全確認試験をおこなった後に実戦配備されるのが普通だ。

 調整を終えたばかりで満足に動くかどうかも分からない新型に乗り戦場に出るよう命じられるのは、死んでこいと言われたようなものだからな。正直、ぞっとしない」

 

束「ふぎゃあっ!?」

 

――天災MADで戦場のド素人が泣かされる頃にー・・・・・・。




「本来は私がやるべきことを任せるのは心苦しいが・・・」
「じゃあ、自分でやれば?」――子供の理屈の典型が時には正しい場合もある一例な今話の内容。
『閃光のハサウェイ』だったら「正しくとも往々にして実現不可能」とか言われるのかもしれませんけどね(苦笑)


・・・ただまぁ、やれるのにやらない事情って、やらない側の人たちが作ってる場合が多いんですよねぇ・・・。ひねくれててゴメンナサイ。
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