シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。   作:ひきがやもとまち

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更新です。いくつか同時進行で書いてたら一番最初に出来ましたので先に出しておきたいと思います。勢いだけの主人公は書いてて楽ですね。
全開は言霊風に理屈が強くなりすぎましたし、出来れば勢いある話に戻したかったのも関係してたのかもしれません。


第14話「君の名前を言ってみろ(小物感)」

「む。来たか…」

「げ!? …ら、ラウラ……」

 

 箒を仇討ちメンバーに加えてドナドナしながら浜辺へとやってきたジャンヌは、思わぬ人物が待ち構えていたことで思わず美少女がしてはいけない表情と声で鼻白まされていた。

 

 ――ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 ドイツの代表候補生にして、ジャンヌのファーストキスを力尽くで強奪した少女である。

 女として一生涯残るであろうトラウマの主であり、万が一セカンドキスまで奪われた場合には立ち直れる自信は皆無な相手……要するに『命令がない限りは近寄りたくもない少女』が待っていたわけだから……。

 

 

「…な、なんの用よ? 私たち今からやることがあるんだけど…」

 

 若干以上、腰が引けた状態で問いただす声にも力は無いが虚勢だけは張るのをやめないジャンヌは、負けたことを認めるのが嫌いな思春期。箒や鈴となにも変わらない。

 人類皆愚民、六十億総愚民。しょせん世の中そんなもの。

 

「貴様も凰から誘いを受けて乗ったのだろう? ならば私と同じだ。気にするな。

 ――もっとも私は軍人がもつ特権行使しまくって軍用の偵察衛星で敵の所在を確認済みなのだがな~?」

「ぐ…」

 

 ジャンヌ沈黙。あるいは撃沈。

 ぶっちゃけ、再出撃と再戦は決意したものの索敵に関しては超大雑把にしか考えてなかったイノシシ思考の彼女は鈴からオズオズとした口調で誘いを受けるとアッサリ自分の案を放棄して乗ってきたのだから言い返すことなど出来るはずもない。

 

 

 ……まぁ、自分の計画だと突然の奇襲で慌てて片付けただけの新型装備の中にレーダー類も混ざってるだろうからソレを使おう。

 

 

「片っ端から使っていけば数打ちゃ当たるわよ、きっと」

「軍事機密の塊ばっかなんですけども!?」

「命令違反して軍事機密を個人的復讐戦に使おうってんだから今更よ!!」

 

 

 ……こんな案とも言えない案だったわけだから捨てるのは当然ではあったのだけれども。

 

 それでも言い返さずにはいられないプライドの高さを持つジャンヌは、ISヒロインの一員です。

 

「え、越権行為じゃないの? それって……」

 

 はい、ジャンヌ。お前が言うな。

 

「フ。何を今更……軍人が命令違反と条約違反をすると決めたのだぞ? 越権行為ぐらいは些事だろう?」

「う、ぐ……」

 

 はい、ラウラ。お前の言うとおり。だからもう少しだけでいいから自重しろ?

 

 ――実際問題、この中で一番命令違反を犯したらマズイのはラウラである。

 なにしろドイツ正規軍の少佐であり、専用機《シュヴァルツェア・レーゲン》は現在イギリス・イタリアとコンペしている次期主力機候補のレーゲン型に属する機体であり、落とそうとしている敵は暴走したとは言えアメリカ軍の軍用機でもある。

 

 アメリカもドイツも『軍事転用が可能になったISの取引などを規制することを定めたIS条約』の加盟国であり、今次作戦を命じてきたのIS委員会は『国家が保有するISの動向を監視するために設けられた国際機関』である。

 

 そしてIS条約は『白騎士事件で国家が保有する軍事力もISの前では無力になることが分かった世界の混乱を収めるため』に結ばれている……。

 

 

 ……これって見逃したらヤバいことになるのではないだろうか?

 

「ここから三十キロ離れた沖合上空に目標を確認した。ステルスモードで待機中だ。光学迷彩は持っていないようだから目視できる。つまりは、お前でも討てるということだ(ニヤリ)」

「ぐ。ぬぬぬぅぅぅ……」

 

 ライバルをやり込めたことでご満悦なラウラだが、実際にこれからやろうとしていることは『第二次白騎士事件』に成りかねない大惨事にまで発展する可能性は微塵も考慮してないところから見て間違いなく同類である。

 

 個人的動機で世界を揺るがす天災じゃない篠ノ之束モドキになりつつあるドイツ人少女は、その自覚もないまま世界を破滅へ向けて突き進んでしまうのか…!?

 

 

「そ、それにしても目視可能な三十キロ先で待機中の敵発見かぁ~。

 ――そんな間近で見えてるのに何も言ってこないなんて、絶対やる気無いわよね織斑センコー様は?」

「……言うな。教官への尊敬は揺らぎようもないが、最近だとお前のせいで言葉の端々に疑いの目を向けてしまう回数が増えてきているのだから……」

 

 ジャンヌ反撃。一矢報いることに成功したが、IS条約を持ち出した方が効果的だったので賢くはない。やはり人類皆愚民、まちがいない。

 

 …つか、織斑先生は割と本気で何やってんだ? 状況に変化あったら伝えると明言してたような気がするのは気のせいなのか? 彼女の主観だと敵発見は状況変化に属さないのか?

 

 もしかして発見自体は当初からしてたから、攻撃してこない限り状況が変化した訳じゃない。

 「今は攻撃してきてないんだし、このまま何も起きないで済む可能性も~」とかの日本人的考え方に基づく迎撃作戦指揮だったのか? IS条約以前に国際法で領海十二海里に無断侵入してきた兵器を攻撃するのは国家の主権を守るためには必要不可欠なんだけど……。

 

 

「ま、とりあえず征くわよ。ニホンジンの大好きな復讐をしに! 仇討ちに! 復讐戦に!」

「うむ。このまえ映画館で私も見た『四十七士』と言う奴だな。感情任せにツッコんでいって処罰されたイノシシ上司の復讐をするため、職を失った敗残兵の寄せ集めが自暴自棄の末に夜襲を掛けて、敵であれば全て皆殺しにする見当違いな復讐の快楽に酔う……まさに今の私たちには相応しい例えだな」

『……』

 

 二人以外、全員イヤそうな顔して無反応。

 セシリアは騎士道物語大好きなイギリス貴族だし、鈴は主への忠誠示して無謀な特攻絶賛な三国志の国出身だし、箒に至っては時代劇大好き人間だ。今の話で愉快になれる道理がない。

 

 唯一の庶民出身者で、大人たちと権力者の都合によって振り回されかけた経験のあるシャルロットだけが

 

「なんだかな~。まぁ、ジャンヌらしいと言えばらしいのかも」

 

 と、苦笑だけで済ませてしまえる出生の事情を背負っている。

 人は生まれた国と家に生涯縛られざるを得ない生き物なのかもしれなかった……。

 

 

「では、出撃する前に作戦を説明する! 総員傾注! アハトゥング!!!」

『応っ!!』

 

 こうして、それぞれが己の新装備の性能と特徴を伝え合った上で立案された『第二次銀の福音戦』が開始されたのである。

 

 

 

 ―――が、しかし。

 

 

「………――っ?」

 

 ズドゥンッ!!!

 

「初弾命中。続けて砲撃をおこなう!」

 

 ラウラの新装備『八十口径レールガン《ブリッツ》』で不意打ちすることから始まった第二次福音戦で特筆すべき事柄は、意外なほど多くはない。

 

 

 そも不意打ちとは騙し討ちのことであり、敵が奇襲を想定して備えていない限りはほぼ確実に先手を取れる戦法であり、戦いは機先を制した側が有利なのが当然であり、機先を制された側が態勢を整えるため序盤は劣勢を強いられるのもまた当たり前のことでしかない。

 

 正面から挑んでも勝ち目のない敵よりも弱い者たちが用いるのが奇策であり、不意打ちであり、夜陰に紛れて接近してからの夜襲であり奇襲である以上は、戦闘開始直後に鈴たちがひたすら攻めるのも、銀の福音がひたすら退き一方的に押されまくって見えるのも戦術的に見たら双方共に妥当な戦術である。珍しがる要素は何も無い。

 

「うらぁぁぁっ!!!」

『敵機Bを認識。排除行動を開始す――』

「うおりゃぁぁぁぁっ!!!!」

 

 暴走してるが故に戦術コンピューターによる的確な判断を下して行動する銀の福音と、損害無視して前へ前へのジャンヌとの相性は最悪すぎるので、銀の福音がしたたかに損害を被らされたのも実力や性能とは次元の異なる理由によるものであろう。

 

 

 とは言え。

 もともと策を弄するとは、実力で及ばぬ者たちが狡知により実力差を誤魔化そうとしているだけであって、弱者の側の小細工でしかない。

 敵討ちに燃える心で普段よりも勢いはあるが、所詮それは怒りによってアドレナリンが大量に分泌されたことによる精神的暴走状態であるに過ぎない。

 そんなものを頼りにした勢い任せの突撃を敢行したところで限界点に達するまでの時間が早くなるだけで終わるのが軍事上の常識である。

 

 また、これも忘れられがちであるが今回の奇襲作戦に参加したメンバーの内、実戦経験があるのは新兵+一回だけ敗北記録のある箒ただ一人しかおらず、残りは全員訓練は受けたが実戦は初めてという新米士官ばかりであり試合とは異なる実戦の経験値は0の初心者に過ぎない。

 

 逆に福音の方は国家代表の操縦者が昏睡状態にあるとはいえ、彼女自身も実戦は経験しておらず、戦術コンピューターに人の心も経験則も関係ない。的確に戦況を分析しながら戦うだけの戦闘機械である。

 

 

 ――要するに、この作戦の流れを無駄な説明文なしで簡潔に詩的表現するのであれば。

 

 

『猛虎が、経験の浅い恐いもの知らずな猟犬の群れにみさかいなく食いつかれて辟易している』

 

『猛虎が態勢を整え直して反撃に移ったから、たちまち全滅させられかかってしまった』

 

 

 ――以上で終わる。これだとつまらないから、長ったらしい文章で表現しただけの作戦。

 それがこの、『第二次銀の福音戦失敗』までの経緯だった……。

 

 

 

「クソがっ! 押し切れなかったか!」

 

 ジャンヌが口汚く罵る声が夜の海に響き渡った。

 彼女の機体シュバリエ・ノワールは、攻撃特化で防御無視の突貫タイプであり強襲型だ。押してる分には強いが、押し切れずに耐え凌がれると途端に弱味を晒してしまう致命的欠点がある。

 

 まして、他の機体は特殊武装が多く不意打ちに適したものばかりで地力に乏しい。

 実力差で及ばないからこそ知恵を出し合い、ビックリドッキリギミック武装を惜しげも無く投入して相手を驚かせてイニシアチブを取り、思う存分暴れ回っていられる間までは良かったが、ネタが尽きて手の内が晒されてしまった詐欺師の群れが一騎当千の軍人に(多対一を想定した軍用機という意味)勝てるわけがない。

 

「くっ…! こうなってしまっては、やむを得ん!!」

「なんですの!? ボーデヴィッヒさん! なにか策がありますの!? でしたら早く教えてくださいませ! もうこの際なんでもいいですから!!」

 

 策で勝とうとせざるを得なかった弱者の側に策が敗れたときの備えなどあるはずもなく、あるのであれば策などに頼る必要も無く、必勝だと信じて挑んだ作戦が上手くいかなくなってしまった彼女たちは藁にも縋る思いで仲間内では一番強い軍人のラウラに頼るしかない。

 

「全機で自爆特攻する! 一人残らず全滅しても迎撃作戦を命じられた側だから敵さえ落とせば敗けにはならん! 一人残らず無駄死にで終わるよりかは多少マシな結果だ!」

「それって作戦じゃなくて、カミカゼ特攻隊って申しませんですこと!?」

「日本の海でアメリカ軍機におこなうのだから相応しいだろう!? 篠ノ之の好みにも合うことだしな!」

「いや、合わないぞボーデヴィッヒ!? 全く以て合ってない!!

 私は勝つための力が欲しいと思っただけであって、勝利のためなら全てを犠牲に捧げさせるような大日本帝国的やり方は私の趣味に合わん! 私は侍であって帝国軍人などでは断じてない!」

「大日本帝国はドイツ帝国の同胞で、武士の世を終わらせた明治政府の後継国家で、勝ちこそ全ての手段を選ばぬ戦い方こそゲネラール・サイゴーやアトミラール・サカモトだったと士官学校の戦史で教え込まれているのだが!?」

「嘘ぉぉぉぉぉぉっ!?」

「うん、みんな。もう少し真面目に戦おうか? ピンチだからって現実逃避しちゃダメだよ?(にっこり)」

『ご、ごめんなさい…』

 

 最恐姉の威圧により戦線崩壊だけは防いでいるが、状況が改善する予兆は何一つ訪れない。 しいて言えば援軍による来援が数少ない形勢逆転できる可能性の目なのに、三十キロ先のIS学園宿泊施設から教師部隊が助けに来てくれる様子は欠片も見いだせないままなのだ。

 

 命令違反を犯しておいて何を今更と思うものもいるであろうが、そもそも彼女たちの命令無視による独断専行と日本の防衛とは別物として捉えるべきなのが迎撃作戦という実戦である。

 命令違反者を処罰するのはIS学園教師である織斑先生の義務だが、銀の福音への対処を命じられた迎撃作戦の責任者もまた彼女の務めなのである。

 

 加重責務で給料分以上の仕事をやらされている、政府は労働法を守れ!と言うなら今次作戦を命令してきたIS委員会に異議申し立てするのが筋であり、教師とは生徒に範を示すため率先してルールを守らなければならない役職でもある。

 あと、IS学園は公の国家権力が介入できない治外法権の地なので、日本政府に何言っても無駄かもしれない。都合良くも悪くもなる治外法権という言葉は便利で不便だな。

 

 

 …まぁ、なんにせよ彼女たちを命令違反の自己責任で見捨てることと、目の前で起きてる戦闘で落とせそうになってる敵機に総攻撃をおこなわせないことは完全に別次元の課題なので援軍が来ない理由は正直よく分からない。

 分からないが、来援される気配はなく敗色は濃厚。これが今起きている現実の全てである。

 実戦においては、現実の結果こそ全て。敗けは敗け、可能性は可能性。

 成功率1パーセント未満の作戦だろうと成功したら喝采浴びるし、9割方勝ちを収めた戦いで最後の1戦だけ不意打ちされ負けてしまったら無能者。――それが実戦なんだから、本当にもうどうしようもなかったりする……。

 

 

 そんなピンチの中で“ほぼ”全員が同時に心から叫んだ名前は一つだけ。

 

 

 

 

“一夏!!!!”

 

 

 

 

「おう。待たせたな、みんな。俺の仲間は、誰一人としてやらせねえ!」

 

 

 

 

 ―――こうして訪れる救いの手ならぬ、救いの翼…。

 なぜか復活した一夏と白式の戦線復帰により形勢は逆転。

 

 傷ついた福音と、身体に痛みがあるだけでエネルギーは満タン近くまで回復していた白式+一人も欠けてない最新鋭の第三世代乗り五人。

 

 途中で銀の福音がセカンドシフトする予想外の展開がありはしたものの、一夏も同じくフォームシフトしたのでプラスマイナスで考えた場合には足し引き0だ。戦力比的には、なんも変わってない。

 

 そのまま順当通りに数で押し、戦いを優位に進めていき、敵が退こうと背中を見せたらスピードでは互角の白式で襲いかかって、『逃げようとする敵を背中からぶった切る』侍として恥でしかない止めの刺し方をしようとする一夏の補助を箒が『絢爛舞踏』でエネルギー回復して支援する反則行為までおこなったことで終結した。

 

 

 結果的にこの戦いは、実戦未経験な訓練生たち+実績あるけど新人1人+味方殺しの新兵1人という酷すぎる構成のIS学園奇襲組が、実戦を想定して開発された軍用IS相手に一人の欠員も出すことなく勝利を収めて帰還するという、相対的に見たら破格の圧倒的勝利により幕を閉じた。

 

 

 一夏が復活した理由は不明であり、奇跡が起きずに復活できず死んでいた可能性もあるのだけれど、所詮『現実に起きなかった可能性の話』でしかない。

 実戦において、結果こそ全てだ。

 

 一人も欠けることなく勝利した。これだけが唯一無二の事実であり現実であり結果なのが実戦だ。起きるかもしれなかった事態とは、実際にその場で敵と戦う兵士たちにとって『タラレバ話』のひとつでしかなく、終わってから思い出話に花を添えるぐらいの価値しかない。

 そういうものだ。実戦なんて。

 試合と違って夢など微塵も抱くべきではないし、浪漫もない。

 夢が壊されるだけの場所、夢が壊されて現実の苦い吐息に嫌気がさして辞めたくなる場所。

 それが実戦の戦場だ。それが実戦の戦場であるべきなのだ。

 ―――こんなものが試合より優れているだなどと、戯けたことを抜かすアホウが生まれないためにも、戦場と戦争は酷いぐらいで丁度いい……。

 

 

 

 …ちなみにだが、

 

「作戦完了――と言いたいところだが、お前たちは独自行動により重大な違反を犯した。帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意してやるから、そのつもりでいろ」

「……はい」

 

 酷い戦場から帰ってきた戦士たちの帰還は、それはそれは冷たいものだった。当たり前の話だけれど。

 結果論が通用するのは戦場だからだ。日常とは違う酷い場所と状況で、勝った側の理屈が罷り通ってしまうような非日常の場だからこそ必要悪が存在し、最終的な勝利のためなら刻に是とされ命令違反までもが賞賛される事例も起こりうる。

 

 だが、いや、だからこそ非日常が終わって日常へと帰ってきた戦士たちには正当な処罰とルールに基づく正しい対応が必要不可欠となる。

 日常に戦場を持ち込んではならず、平和に戦争を持ち込ませるのは絶対に避けさせなければならない。

 「自分の方が正しいのだから」と命令を無視して敵を討ちに征く行為を褒めでもしたら模倣犯が激増して酷すぎる事態を招きかねん。敵襲のもたらす被害より、もっと性質の悪い結果をもたらしかねないので織斑先生の言うことがこの時ばかりは非常に正しい。

 

 

 …いや、むしろ、ちょっと処罰が軽すぎませんかね先生?

 軍事機密勝手に持ち出した上に条約違反(ISの無断使用。軍事機密は国法)を犯して、危うく外交問題に発展しかけてたかも知れないトンデモ作戦だったのですが……byどっかの平行世界の以下略。

 

 

 ――そんな風に変なところでだけ身内贔屓を発揮する関羽と言うより信長みたいな織斑先生の粋な計らいによって、学生レベルの処罰に落ち着いた幸運をいただけた主人公たち一同であったが。

 

 

 どこにでも罰当たりというのは居る者なのである。

 

 

「ほ、箒…? そ、その格好は…(ドキドキ)」

「あ、あんまり、見ないで欲しい……。お、落ち着かないから…」

「す、すまん(セ、セクシー…)」

 

 自分が死んでたかも知れない可能性を「なんか治ってたし、いいんじゃないか?」で済ませてしまって夜の海を泳いで遊んでた世界唯一の男性IS操縦者は昼間は拝めなかった幼馴染みが持つ巨乳とビキニ姿とツンデレ美少女のデレ顔という三点セットを思う存分貪り尽くし、あまつさえ向こうから来たときには気づきもしない鈍感さを水平線の彼方へと放り投げ、自分からキスを迫ろうとする男らしい自分勝手さを発揮しようとまでした妥当な罰が下される。

 

 

「うふふふ……ブルー・ティアーズ…」

「よし、殺そう」

「一夏、なにしてるのかな…?」

「ぬあああっ!? ご、誤解だぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 どこがどう誤解なのか分からないが、とにもかくにも夏の夜に天然ジゴロで無自覚な女好きが悲鳴を上げて鳴く頃に―――――。

 

 

 

 

 

 

 時を同じくして少し離れた月明かりの下、二人の美女が対峙していた。

 

「ねえ、ちーちゃん。今の世界は楽しい?」

「そこそこにな」

「そうなんだ」

 

 言葉を交わし、そして沈黙。

 一人は楽しそうな笑顔の下にナニカを隠しながら。

 もう一人は存在そのものが秘密の集積体である事実を内包しながら。

 

 そして岬に風が吹き上げ、何かをつぶやき束は消える。

 千冬は息を吐き出して、後頭部を押し付けるように木に寄りかかり、空を見上げた。

 

 満月の綺麗な夜だった。

 月のウサギが故郷のいるべき場所へと帰って行くには相応しい夜ではないのかと、柄にもない妄想を掻き立てられてしまう程度には綺麗で綺麗で儚い満月の夜だった。

 

 

「ふ。私も年を取ったと言うことかな――――」

 

『うぉぉぉぉぉっ!? 静まりなさい私のノワール! 怒りを静めるのよ! まだ早い! まだ早いわ! あなたの憎しみの炎が世界全てを焼き尽くす約束の日に至るにはまだ条件が満たされていない! 早すぎるのよ! 

 理性を浄化する月の伝説になぞらえて、憎しみよ怒りよ月へと還れ! ゴッド・フェンリルーーーーーーっっ!!!!!』

 

「ぎゃーーーーーーっ!? なんで空飛んでる束さんが背後から突然の奇襲をーっ!?

 探知不能なはずなのにーっ!?」

 

 

 

「……………え?」

 

 

 箒の悩みを聞いてインスピレーションが湧き、夜中の満月を利用して呪文詠唱の練習していたジャンヌに撃ち落されて月に帰れなかったウサギを見るのであった。

 

 注:夜に満月の中に入るのはやめましょう。狙ってなくても的にされてしまいます。

 

つづく

 

 

おまけ:「一夏が復活したときのラウラちゃん」

 

「……(警戒中。だって本物は旅館で意識不明だし、素直に復活喜べるほど親密度高くないし。ぶっちゃけ話したこと自体あんまり無いし)」

 

 今作だとヒロインとしてはアウトオブ眼中なラウラちゃんでありましたとさ。

 

 

福音戦についての個人的感想:

 「兵は詭道なり」と言うけれど、数を集めるのが大前提の戦で5倍の数を擁してながら詭道を使わざるを得なくなってる時点で敗けだと私は思う。

 一応は第三世代同士なわけですからねぇ…。

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