シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。 作:ひきがやもとまち
秋。秋である。
世間では運動会だ体育祭だ食欲の秋だ芸術の秋だ薄着の女の子が厚着になるけどこれはこれで!と、騒がしくなる季節の到来である。
とは言えIS学園は、世界唯一のIS操縦者育成機関であり、通常の学校行事とはやや異なるタイプの催し物も企画されているので将来を考えるならそちらの方が生徒たちの注目度も高いはずだが、そこはやはり女の子。
新学期最初の学校行事である学園祭が一番気になります。
そんな中で自分たちは、出し物として何をやるのか?
毎年のように揉める恒例行事の一つだが、今年は多少事情が異なり景品が増えている。
それは、出し物の人気投票で一位を取った部活動に『世界初の男性IS操縦者織斑一夏を強制入部させる』と言うもの。
欲望が(主に性欲なんだろうなー・・・)刺激された年頃乙女の群れは各々の部活動とクラスで出し物を練り合い、意見を交換し、必勝の策を議論し合っていたわけであるが。
――肝心の、織斑一夏が所属している1年1組では意外すぎる提案が意外すぎる人物より出されて、それどころではなくなってしまっていたのだった。
「メイド喫茶はどうだ」
ざわっ!?
・・・ドイツから来た代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒからの提案を聞いた1年1組に緊張が走った!
この時のクラスメイト一同の内心を文字で表すとこうなるだろう。
“あの無愛想でバトルジャンキーのボーデヴィッヒさんが、メイド喫茶ですって!?”
――と。
一夏に負けたわけでもなく、新たなライバルを得たことで過去を乗り越え、次なる目標『ジャンヌ倒す!』を得た“だけ”のラウラ・ボーデヴィッヒは実のところ前とあまり変わっておらず、《戦って得た勝利こそが至高価値》とする伝統的ゲルマン魂を時代錯誤にも蘇らせて常日頃から静かに燃えたぎっている少女になっていたため、本来の時間軸より提案内容とのギャップが激しすぎたのである。
「客受けはいいだろう。それに、飲食店は経費の回収が行える。確か、招待券制度で外部からも入るだろう? それなら休憩所としての需要も少なからずあるはずだ」
いつもと同じ淡々とした口調でありながら、いつもの彼女とそぐわなすぎる趣旨の内容を説明して椅子に座り、意見のまとめ役をやらされている一夏が挙手を取り始める。
その様子を微笑ましそうに見つめている藍色の瞳があった。
「良かった、ラウラもきちんと学校生活が送れているみたいだね。
あんなに可愛いんだもの、学生の間ぐらい目一杯楽しんでおかなくちゃ絶対に損だよ」
母性豊かで、問題児のラウラとも比較的早期の内から仲良くやってきた彼女としては、妹に出来た日本で最初の友達とあってラウラにはかなり入れ込んでいるところがあり、学園祭の出し物を決める話し合いの場で自分から意見を言えるよになったのは素晴らしい進歩だと絶賛してたのだ。
――要するにシャルロットは、親としては子供に甘すぎるタイプだと言うこと。
ダメな子ほど可愛いと言って怒るべきところで怒ることが出来ないから、問題児に好かれるけど問題解決からは遠ざけてしまう二律背反の半端な母性の持ち主だと言うことであるだろう。
どちらにしても彼女は完璧ではなかったし、彼女自身も完璧を目指していなかった。
自分は妹と一緒に素敵な旦那様にもらってもらえて、人並みに幸せな生活が送れたら十分すぎると、恋する乙女らしい甘い夢を抱いているのが彼女な訳だけど。
そもそも実家が倒産寸前で、刑務所入りも覚悟しなければならない企業スパイもどきだった彼女には本来、人並みの幸せなど分不相応に該当しているのだが。その事に彼女が気づくことは多分ない。
人は所詮、自分の見たいものだけ見て、真実だと信じたいものを信じ込んでしまう生き物である。
「ねぇそうでしょ? ジャンヌもそう思うよね? ラウラは今みたいになれて本当に良かったって♪」
「・・・・・・・・・・・・(ダラダラダラ、くるくるくる~♪)」
「・・・おい? そこの窓の方向いて後頭部にジト汗浮かべながらペン回しする、ジャパニーズコミックみたいな誤魔化し方してる僕の妹ちゃん?
ちょっとこっち向いてお姉ちゃんの顔を正面から見てみようか~?」
――明らかに今回の件で心当たりがありまくる様子の日本の漫画オタクな妹に逃げられないよう肩をつかんで力を込めながら、静かに全力で抵抗している妹の悪足掻きと力比べをおこない続ける姉妹。家族って、以外と大変そうですな・・・・・・。
「ち、違うわよ!? バッカじゃないのアンタ! それでも私はやってない!!」
「・・・・・・なにを?」
テンパって何言ってんのか誰一人として理解不能な誤魔化し台詞を口に出す妹のアホさに頭痛を感じながらもシャルロットは、後ほど妹には今回の件でしっかりとOHANASHIを聞かせてもらおうと決意して前方に意識と視線を戻してやった。
なぜなら今はHR中。クラスの出し物を聞ける方が重要であり優先事項は上なのだから。
とは言え。
クラスの半数以上が意外さも手伝ってラウラの案に乗り気になってた時点で態勢は決していた。
決を採っての多数決という手法は、平等で公正なように見えて実は不平等きわまりないシステムだったりする。匿名性が失われる上に、誰が誰の意見に反対したかがハッキリと分かってしまう状況の中では少数派が反論するのは難しい。
民主主義とは互いの違いを尊重しあった上で意見を出し合い、相談し合いながら最終的な結論を導き出すだけの余裕がある場合に限り成立することが可能な『互い同士が抱く信頼』あってこそのシステムだから。
要するに一夏が挙手を求めた時点で、既に多数派が形成されていたラウラの案は採用が内定しており、後は流れ作業として手順をこなすだけの消化試合があるだけだったりする。
そして、至極当然の結果としてラウラの案が採用されて1年1組の出し物はメイド喫茶に決定されたわけである。
閑話休題。
それはそれとして、一夏には最近大きな悩みが生まれていた。
「はぁ・・・鈴相手に二連敗か・・・。なんでパワーアップしたのに負けるんだよ、白式ぃ~・・・」
溜息を吐きながら廊下を歩く世界初の男性操縦者織斑一夏。彼が今抱えている悩みとはズバリISのことだった。正確を期するなら白式のことについてだった。
夏の海で起きた福音戦の最中にパワーアップして新たな武装と、更なる高機動を可能にした白式だったが、根本的な欠陥である燃費の悪さは逆に悪化してしまい、最近ではパワーアップする前よりも勝率が落ちてきている状況に陥っていた。
それが、ISを通じて姉に恩返しが出来る強い男になりたいと願うようになっていた彼に悩みを抱かせていた訳なのだが。
そもそも、剣しか習ってこなかった脳筋少年が銃を撃てる機体に進化したから「射撃戦も両立させなくちゃ!」とか言いだしてる時点でおかしいのだけれども。
付け焼き刃の遠距離射撃用武装を接近白兵戦仕様の機体に持たせるとしたら牽制目的であって、当たらなくてもいいと思うのは私だけでしょうか・・・? byどっかの世界の銀以下略。
まぁ、そんなこんなで悩み多き少年が廊下を歩いていたところ。
「だーれだ?」
――突然、後ろから目を塞がれて名前当てクイズがスタートさせられた。
・・・これは今朝も体験したから相手はわかる。わかってしまう。
「更識楯無・・・生徒会長さん」
「アハッ、せいかーい♪ 覚えていてくれてお姉さん嬉しいわ、一夏くん」
陽気な声とともに目を塞いでいた腕をほどくと、前方にまわって腰の後ろで両手を組みながら前傾姿勢の上目遣いで一夏を見上げ、今回のことの発端を作った学園最強のIS操縦者は彼に対してこう告げる。
「それで今朝言ったことの決心はついたかな? 私が君を指導してあげるって話について答えをだす決心が」
「いや、だからそれはいいですって。大体、どうして指導してくれるんですか?」
「ん? それは簡単。キミが弱いからだよ」
――その一言で場の空気が変わる。
「それなりには弱くないつもりですが」
「ううん、弱いよ。無茶苦茶弱い。だから、ちょっとでもマシになるように私が鍛えてあげようという話」
「・・・じゃあ、勝負しましょう。俺が負けたら従います」
「うん、いいよ」
にこりと笑った相手の笑顔は『罠にかかった獲物を見つめる猛禽類』の其れであり。
織斑一夏は今時子供でも引っかからないような単純すぎる挑発にアッサリ乗せられ、畳道場へ自主的に赴いてしまった。
その結果。色々あってこうなりました。
「失礼しまーすって、・・・あれ?」
「え?」
「あら?」
場所は畳道場。一夏と楯無は勝負のために白胴着と紺袴姿でくんずほぐれず中。
具体的には、楯無さんの袴脱がせてパンツ丸見え状態にしちゃってます。
対する闖入者ジャンヌは、厨二バトルin和風ファンタジーな建物を見つけたので声かけてから入らせてもらった代わりに、楯無さんのパンツと、一夏の袴脱がし現行犯の決定的瞬間を目撃させられた訳であるが。
「えーと・・・(ポリポリと頬をかくジャンヌ)」
「・・・・・・(サァーっと、血の気が引いていく一夏)」
そんなこたぁ、小学校時代にスカートめくりすらやったことがないのに、高校生になったら一年目で袴脱がしを達成してしまったパンツ丸出させ犯織斑一夏少年Aには関係ない。
とにかく青ざめ、何かしら説明しないとマズいと慌てながら、ではどのように説明すれば誤解だとわかってもらえるだろうかと思い悩み、そのままの姿勢、そのままの態勢を維持したまま十秒近くの間タップリと更識会長にパンツ丸出しの恥辱を味合わせた後。
「くふ☆」
生来のイタズラ好きと空気を読めるコミュニケーションスキルとが化学反応起こした会長から、適切な反応を返されてしまった一夏はサービスシーンを提供される羽目になるのであった。
「イヤン♡ 一夏くんの、えっちぃ♪」
内股にフトモモを寄せ合わせて、右手の扇子で下着を隠す。
扇子に書かれている文字は『ぱんもろ♡』
「―――っっ!!!!!」
最悪だった。最悪のシチュエーションで最悪のポーズを取られてしまった。
これでは誤解するなという方が無茶ブリであり、そもそも何処がどう誤解なのかと言えるぐらいに自分自身の手で脱がしてしまっている。
「「「・・・・・・」」」
しばらくの間、重苦しくも微妙な空気が中を滞留し、ようやく声を発したジャンヌの声音は気まずさよりも微妙さに満ちたものだった・・・・・・。
「・・・ごめん。私、何も見てないから・・・・・・」
「え!? ちょ、ちょっと待て! ちょっとでいいから待ってくれジャンヌ! その反応は辛い! 気を遣ってくれてるのはわかるんだけど全然嬉しくないから! むしろ余計に辛いだけだから! 普通に他の奴らみたいに撃ってくれた方が気持ち的にはまだマシな気がする程に!
頼むから待ってくれジャンヌ! ジャンヌ! ジャンヌ―――――っ!!!
ジャンヌ、カームバ――――――――ック!!!!!!」
つづく
おまけ「二学期最初の実戦訓練、授業風景」
一夏「くっ・・・!」
鈴「逃がさないわよ、一夏!」
一夏「まだまだぁっ!」
鈴「無駄よ! この甲龍は燃費と安定性を第一に設計された実戦モデルなんだから!」
ジャンヌ「・・・燃費と安定性を第一に設計した『実戦』モデルのISって・・・・・・条約違反に当てはまらないのかしら・・・・・・」
ラウラ「・・・あるいはそれが原因かもしれんな。先月の福音事件でどこの国からもとやかく言われずにアメリカが堂々とシラを切り通せている現状は、皆どこの国でも同じような物を造っている証拠である可能性が無きにしも非ず」
ジャンヌ「笑えねぇー・・・。ドイツ人の冗談、マジで笑えねぇ-。笑い話にするのも怖すぎるから笑えないわー・・・」
ラウラ「ドイツ人は冗談を言わん」
ジャンヌ「嘘だっ!」