シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。 作:ひきがやもとまち
本来ならオータム戦まで書こうと思っていたのですが、いくつかアイデアが出ていて、どれ使うか決まってないので先に生徒会劇が始まるまでの前振り部分だけ出させてもらいますね。
色々あった末にやってきた学園祭当日。
IS学園1年1組の出し物は活況を呈していた。
「うそ!? 一組であの織斑君が執事の燕尾服着て接客してくれてるの!?」
「しかも勝ったら彼とのツーショット写真付きゲーム対決もやってるらしいわよ!」
「これは行かない手はないわね! ちょっと銀行いって有り金下ろしてくるわ! 100万くらいで足りるかしら!?」
『おい、やめろブルジョア。アンタは日本人版オルコットさんにでもなるつもりか?』
もともと治外法権の土地であり、優勝賞品として美味しそうなニンジンをぶら下げたのが生徒会長自身ということも重なって、いつも以上に日本国刑法と倫理観が崩壊気味になっている学園内は『売れさえすればそれでいい』とする結果オーライ、価格設定等を含めた弱肉強食の経済論理が支配する経済戦争の場と化してしまっていたりするのだが。
・・・・・・どういう訳だか1年1組クラス内の誰もがしていた『執事服一夏が目当てでやってきた客で大繁盛』という予測は大きく裏切られ、経営は混沌としたまま魔窟と化してより既に1時間半が過ぎようとしていた・・・・・・。
ダンッ!
「水だ。飲め」
「え、俺が頼んだのはコーヒーであって水じゃないような気が・・・」
「客であるなら飲むがいい。飲まないのなら帰れ。店内に金を払わない客など必要ない」
「・・・・・・お、美味しくいただかせていただきます・・・・・・(ゾクゾクゾクゥゥッ!!!)」
「ねぇねぇ、そこのカーノジョっ♪ 学祭の後とかヒマ? 俺たちと一緒にどっか遊びに行こうよ~」
「・・・はぁ? いつの時代のナンパ台詞よ、それ。超ダッサイ。一度死んで美形に生まれ変われたら考えてあげなくもないから死んできなさいよ、バ~カ。何なら手伝ってあげましょうか?」
『・・・・・・ハフゥ~~~ッン♪(バタバタバタ。次々倒れる音)」
――客を客と思っていない(断定系。思っていない『かのような』ではない)ドイツ軍のイノシシ少女と、「メイド服着て接客するならツンデレでしょ」と勘違いしている日本の漫画オタクな日本での実生活半年未満なフランスの社長令嬢によって、メイド喫茶とも、ご奉仕喫茶とも違う何か別の法律が絡んできそうな光景が教室の後ろ半分で繰り広げられまくってたお陰で活況事態は呈していたけど、多分これは・・・・・・なんか違うと思うんだ俺は。
「これって本当に、高校の学園祭でやっていい出し物なのかしらね・・・?」
「・・・大丈夫でしょ、たぶん。IS学園って治外法権だからなんとかなるわよ、きっと。多分だけど・・・」
「―――俺には何も見えないな・・・」
「オリムー、男の子なら現実から目をそらしたりしちゃダメなんだよ~? リアルとちゃんと戦わなくちゃ」
外野の方でも色々あるみたいだったが、とりあえず売り上げ自体は右肩上がりで向上して行ってるし良いとしておくべきなのだろう。多分だけれども。
*余談だが、売り上げこそ高くても二人だけで接客しているツンデレメイド喫茶はスペースが狭くて問題ないため、途中からカーテン引いて視覚的にシャットアウトしたことにより教室前半分のご奉仕喫茶も順調に利益を伸ばしていった結果、人気投票で生徒会劇と僅差になってしまって困った生徒会長が『教室前と後ろで分けたから別店舗』と言う不正をしたことにより一夏のその後が守られた事実を知る者は少ない。
所詮、一般生徒には公開されない生徒会が計算した全体の票数と売上高である。
閑話休題
「さて、と。織斑くーん。そろそろ休憩時間入ってもらってかまわないよー。こっちはしばらくの間は保たせておくから」
一夏にそう声をかけてきてくれたのはクラスメイトの一人で鷹月静寐という名の女子生徒。
テンションがおかしい女子が大半を占める1組内にあっては希少な落ち着いた感じのしっかり者で、一日だけの喫茶店運営を滞りなくおこなうため経営学の本を(古本でだけど)購入して予習復習をこなしてから今日を迎えている委員長気質な女の子である。
「え? いいのか鷹月さん? ・・・でも俺が抜けると店の売り上げが・・・」
対する一夏は『働ける限りは働くべき』とする日本人特有の社畜根性を自覚なしで発揮した一言で謝絶しようとするのだが、鷹月さんから見て今の一夏の回答は「0点」だったりするのである。
彼女は眉をひそめて、ちょっとだけ怒り顔で一夏に対して苦言を呈する。
「ダメだよ、織斑君。そういう考え方してたら、逆にみんなに負担かけるだけなんだから」
「そ、そうなのか?」
「そうだよー。一番働いてる人が休みもしないで働きっぱなしだったら、他の人たちが堂々と休みを取りたいって言い出し難くなるものなんだから。一番の働きがしらこそ、休み時間にはしっかり休んでみんなに範を示してもらわないと」
「そ、そういうものかなぁー・・・。俺が休まなくても、みんな休みたいときには勝手に休み出すと思うんだけど・・・」
普段の1組生徒たちを思い出しながら一夏が言った反論に、鷹月さんはゆっくりと、だが力強く頭を振る。
「普段の休みたいときに休める状態を前提に、休みたいけど休めないときの対応を考えちゃダメ。
普段のやり方が通用しなくなってる状態のことを非常事態って呼ぶんだから、そんな状態になってしまったときのためにも普段から何気ないところに気を配ってルールを守っておくことが大事なんだよ?」
「・・・そんなものかな~・・・」
「そんなものなんだよ。・・・受け売りだけどね?」
ペロッと舌を出してイタズラっぽく笑って見せてから鷹月さんは気分を変えるように話題を転じ、
「それにほら、織斑君一人がいなくなっただけで経営が成り立たなくなってしまうなら、それは内のクラスがダメダメだったって事の証拠なんだから、織斑君が気にかける必要なんてないことだよ。みんなでやってる事は、みんなで支えていかなきゃね」
ここまで気を遣ってもらいながら拒絶するほど意固地ではない一夏は、素直に申し出を受けることにした。
「・・・・・・わかった。そこまで言うならありがたく休憩に入らせてもらうよ。気をつかわせたみたいで、ごめんな?」
「あはははっ、いいっていいってこれくらい。――あ、そうだ。せっかくだし他の専用機乗りの子たちにも声かけてみて、一人ずつ休憩に連れて行ってもらってかまわないかな?
あの人たちも織斑君と同じで頑張り過ぎちゃう癖が付いてるみたいだから、周りが休むよう言っても聞いてくれなくて」
「わかった。それくらいならお安いご用だ」
学園祭らしい爽やかな会話。
――そして、その直後に向き合わなければならない過酷な現実。
「・・・・・・ただし、後ろの二人は例外にさせてもらうぞ? 正直、入っていきたくないからな・・・」
「・・・・・・うん。私もあそこはちょっと・・・行ってきてって言いづらいかなぁ~・・・・・・」
『OH! MY! ゴッDEATH!!』
「「うるさいバカ、死ね。殺されたいのか?」」
『ゴートゥー・ザ・ヘブン!! 我々にとってはむしろご褒美ですマイン・ヒューラーッ!』
「「よく言った、いい度胸だ。―――望み通り死ね」」
『へぶしッ♡♡♡♡』
「「・・・・・・・・・」」
一夏たちは、何も聞こえていない・・・・・・。
つづく
おまけ次回予告(みたいなアイデアの一つ)
オータム「んじゃあ、お楽しみタイムと行こうぜ。てめーのISをいただかせてもら・・・ハッ!?」
ズダダダ!!
オータム「てめぇ・・・人の仕事中にいきなり撃ってきやがるとはどういう了見だ!? このクソガキ!」
ジャンヌ「うっさいバカ! せっかく学祭中に生徒会が主催する劇サボって舞台裏で寝てるDQN厨二愉しんでたところを邪魔したお前が悪い!」
一夏「まさかの厨二設定で助けられた俺っ!?」
ジャンヌ「死んで償うか、殺されて償うかのどっちか選ばせてあげるから、三つ数えるまでに選びなさい! 1。(ドキュン!!)」
オータム「2と3は!?」
ジャンヌ「知らねぇわよそんな数字! 処刑するときに数かぞえるのは油断させる為だけでいい!」