シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。 作:ひきがやもとまち
それは夏休みの終わりが迫った、ある日の出来事。
時間軸をやや過去へと戻した刻でのお話だ。
唐突に、ジャンヌ・デュノアの姉、シャルロット・デュノアはこう言った。
「一夏の家に行こう」
・・・その言葉を聞き、シャルロットの妹ジャンヌ・デュノアは胡乱げな瞳で姉を見つめ返すと、
「いや、そんないきなり『キョートへ行こう』みたいなノリで言われても・・・」
ヨレヨレのTシャツにハーフパンツ姿のまま、胡座をかいてテレビゲーム画面と相対しながらそう返すのだった。
その日は(その日“も”とも言える)姉と同じ部屋で日がな一日ダベりを合間合間に交えながらゲームして過ごす気満々だったジャンヌの心の鏡に織斑邸への訪問は、さほど魅力的に映っていなかったのである。
*余談だが、ジャンヌは某有名CM自体は見たことがない。ラノベやマンガでパロディされてるのを見たことあるだけである。
厨二病患者はどれほど時が移り変わろうとも、パロディネタを見てから原作を検索して人前で語りたがる生き物であることに変わりないのだから・・・。○か×か?
「どうせあと数日で学校はじまって教室で再会できるんだし、それからでも良くない? ショージキ、このクソ暑っつい中外で歩くのはシンドイんですけども~・・・」
「だ、ダメだよ! 今日は一夏が自分の家に帰省する日で、みんなの予定とかぶらないよう調整できた唯一の日で、せっかく二人きりになれるチャンスなんだから!」
「・・・・・・・・・」
いや、それって絶対他の連中も同じ事考えてるから唯一になっちゃったパターンじゃないの?とは、思ったけど言わないジャンヌは空気の読める女を自称しているKYイノシシ少女である。知らぬは本人ばかりなのは人類皆同じ事。
やはり人類皆愚民(しつこい)
「つか、二人っきりって私は?」
「え? 妹とお姉ちゃんは二人で一つの幸せを分かち合うものでしょ?」
「・・・・・・」
果たしてこれを言われて断れるひねくれ妹と言うのは実在するのだろうか?
「・・・ま、いいけどね別に。ちょうどゲーム終わったばかりで暇だったし・・・」
そう言って立ち上がったジャンヌは部屋を出立しようとして、「ちょっと待ってジャンヌ!」姉から呼び止められて不機嫌そうな顔で振り返る。
「アアン? まだ何かご用がおありなのかしら? お姉様――――」
「・・・その格好のまま部屋の外に出て行く気なの・・・? ヒラヒラしてなくても色々と見えちゃってるんだけど・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
不愉快そうに黙り込んでそっぽを向いて、赤く染まった頬を姉の視線から見えないようにしてから着替え始める妹と、それ以上の追撃はしようとせず横を向いて自分の出発準備を最終確認するシャルロット。
今日もデュノア姉妹は仲良しシスターである♪
――んで、そんな感じで一夏の家を訪れた二人は織斑邸の前に立っていた。
・・・・・・十分以上前からずぅ~~~~っと棒立ちになったままで・・・・・・
「――ねぇ、私たちって何しにここへ来たんだっけ? 遊びに来たんじゃなかったの?」
「う゛」
怖姉、反論できず。
色々と計画立ててた臨んでおいて、いざ本番を前にすると途端に勇気がしぼんで頭がパニック状態になり、適切な回答を頭の中のライブラリーから探し出そうとして小人たちが右往左往したあげく、なんかよくわかんない答えを引っ張り出してくるのが彼女たちIS学園国家代表候補生の思考パターンである。
ピンチのときこそ精神論が重要になるスポーツの世界で(ISは世界最高戦力だけど戦争利用は禁止されてる絶対矛盾)机上の計画しかたてられない上に、自分の思い通りに展開していかないと冷静さが保てなくなるとかどうなのよ?と思わなくもないのだが。
彼女たちを代表候補に選出したのは政府側の人間であり、専用機を与える決定を下したのも上役たちであって、彼女たち自身がどんなに望んでも上がNOと言えばそれまでなのが代表ではなく候補なのだと言う事情を鑑みるなら、必ずしも彼女たちだけが悪いとも言えない。
どんなに予想外の結果が出ようとも責任は、責任をとりたがらない責任者がとるべきものであって、任された側の現場が一方的に悪いと思い込むのは間違いである。
現代日本の刑法だと命令したものより実行犯の方が罪が重いとされているが、IS学園は治外法権の地なんだし無視して正しい組織の在り方貫いちゃっても良いのではないだろうか?
だが、しかし。
彼女たちは日本人じゃなくてフランス人だぜフッフ~♪ そして、ここはIS学園内じゃなくて日本国本土にある普通の中古物件だぜヒャッハー♪
「わ、わかったよ・・・じゃあ押すね! インターホンを! ・・・えっと確か挨拶は、本日はお日柄も良くて・・・じゃなじゃなくて! 『来ちゃった♪』で!」
「・・・・・・・・・」
ああー・・・、こりゃダメだわ確実に絶対に全壁に。ジャンヌはそう結論づけて割り切った。
姉に限った事ではないのだが、どうにも代表候補の女どもは勇気の出しどころを間違えてるとしか思えない奴らが多いというのが彼女の見解だ。
攻めるべきときに、運がこちらに向いているときに戦いを回避しようとした人間には必ずと言っていいほど悪運が訪れる。天運は、運気を手放した人間に容赦してくれることは決してない。
偶然のチャンスと、必然のポイントとを見分けられるのが突撃厨の絶対条件だと考えてるジャンヌから見た姉たちの態度は半端にしか映ってなかったが、だからと言って自分がいらぬお節介を焼こうとも思わないのもまたジャンヌ・デュノアと言う少女の特徴である。
自らの行動に責任を負えるのも、負わされるのも自分一人だけだ。
どれほど綺麗事を並べ立てたところで痛みを分かち合うことは出来ないし、負担も肩代わりしてやることなど出来はしない。
せいぜい肩を貸してやり歩きやすくしてやるぐらいが関の山だと考えている彼女にとって、恋愛問題は立派に一対一での決闘だったから当事者以外が余計な差しで口を挟む気はなかったのである。
(フッ・・・こういう時に人は生まれながらにして孤独な獣なんだと再認識させられるから嫌なんだけどね・・・。ああ、人って罪深い生き物だわ・・・(ゾクゾク))
恋の悩みで迷ってる姉を見ながら厨二妄想に耽れるシスコン妹というあたり、ジャンヌもまた一夏とはまったく別の意味で超レアなIS操縦者なのかもしれない。
人は誰しも世界に一つだけのオンリー1で、ロンリー1な生き物でもある。○か×か?
「あれ、シャルとジャンヌか? どうした」
「ふえっ!?」「ふわっ!?」
いきなり後ろから声をかけられて狼狽120パーセントの二人が振り向いた先にいたのは、ホームセンターから帰ってきて買い物袋を下げてる織斑一夏。ある意味では待ち人来る。・・・一番きて欲しくないタイミングでだったけど、これも一応はKYの内に入るのだろうか? ○かバ・・・面倒くさいからもういいや。
「あ、あっ、あのっ! ほ、本日はお日柄も良くっ! じゃなくて!」
「?」
「私の後ろをとるとは中々やるわねオリムライチカ! それでこそ私のライバルだわ!」
「・・・なんで自分ちに帰ってきたらクラスメイトから、いきなりライバル認定されてなきゃいけないんだよ・・・。つか初めて聞かされたぞ、その設定・・・」
「設定言うなし!」
それぞれ違う理由でパニックになりながらも、何かいい言葉はないかと探してから言った結果がこれなのだが。
シャルロットはまだしもジャンヌの方は完全にアウトである。恋愛とは全然関係のない方向にボールがワープしていった結果として場外アウトである。
つか、一夏じゃないけどコイツは何を言いたかったんだ? ごまかし目的だったなら、ある意味で大成功なんだけどな・・・脳の心配され始めちゃってるから・・・。
「え、えっと、ええっと・・・」
あまりにも残念すぎる妹の口直しをするため、というのは言い過ぎだが一夏は、まだ言葉の言い途中だったシャルロットへと視線を移して言葉を待ち、
「き・・・」
「き?」
「来ちゃった♪」
えへ、とカワイイ笑みを添えて言ってきた一言に理由不明なれど救われた思いを抱かされ、我知らず自分自身も笑顔になる一夏は二人を家の中に招き入れた。
・・・このときの彼の行動理由が、妹の厨二発言直後だったせいで地獄にマリアだったからという真実は歴史の闇に葬り去るべきだろう。世の中には明かされずに終わった方が人々を救う真実もある。○かバ―――(もういいわい)
「そっか。じゃあ、上がっていけよ。あんまり盛大なもてなしはできないけどな」
「う、うんっ? 上がっていいの!?」
「そりゃいいだろ。追い返す理由もないし。――あ、これから予定があったか?」
「う、ううんっ! ない! 全然ッ! まったく、微塵もないよ!」
突然の予定なしアピールに押され、一夏は若干たじろぎ、ジャンヌは姉と友人の醜態を前にして冷静さを取り戻す。
他人の振り見て我が振り直せ。人は他人のことなら、よく見える生き物である。
「な、ない・・・です」
「って言うか、人んち訪ねてきといて家入るか誘われてから『あ、ゴメ~ン。これから友達と遊ぶ予定あるからまた今度ね~』とか言ってくる女子がいたら、そいつは絶対アンタのこと大嫌いだと思うわよ?」
「そ、そうなのか? ・・・そうかもしれないなー、考えてみると・・・。
まあ、いいや。入れよ。今、鍵開けるから」
「う、うん。お邪魔しま~す・・・」
こうして織斑家へと招かれた二人。
その後の展開はお察しの通り、お約束展開になるのだけれど、それはそれでまた日常系として世界に一つだけしかない彼ら彼女らにとってのオンリー1な夏の思い出の1ページになってくれたことだろう。
「ほい、麦茶。今朝作ったヤツだからちょっと薄いかもしれないけど、そこはまあ許してくれ」
「う、うんっ。ありがとうっ」
「あ、私ソレ嫌い。なんか飲んでみたら苦かったから、コーラの方がいいわ。カロリーオフじゃないヤツね。ないならそこの自販機にあったし、お金出すから買ってきて。はい百円」
「お前は姉を見習って少しくらいは気遣い覚えろよ!?」
「さっそくセシリアが買ってきてくれたケーキを食べるとするか。せっかくだし、ちょっとずつ交換しようぜ。セシリアとシャルも、どうせなら三つとも食べれた方が嬉しいだろ?」
「えっ? そ、それは、その・・・」
「た、食べさせ合いっこ・・・みたいな?」
「おう」
「「・・・・・・っ!!」」
「日本の食卓マナーだと最悪に近い食べ方なんだけどね、ソレって・・・ごめんなさい。次から空気読むよう努力します・・・(ガクブル)」
「ん? また誰か来たのかな? ちょっと出てくる」
「・・・?(もう五人集まってるのに・・・? 僕、ジャンヌ、セシリア、鈴、箒ちゃん・・・それ以外だと彼女も一応入ってはいるけれど・・・)」
「・・・(オリムラの家に来る理由はないわよね特に、あいつの場合には。なんたってイチカと、ほぼの何の接点もないし)」
「はーい、今出ま・・・お? ラウラじゃないか。どうしたんだ?」
「うむ。この家からジャンヌの匂いが感じられた気がしたのでな」
「なんでよ!? 犬畜生かアンタは!!」
「それで、この後どうしたもんかな。うちはあんまりみんなであそべるものとかないぞ」
「・・・なに? アンタも学校だと一人ぼっちで『俺以外はみんなガキだぜ』とか思ってたクチ?」
「お前と同類扱いするんじゃねー! 俺のは本当に周りがガキだっただけだ!」
「どう違うのよ!? 同じじゃないの!!」
「まーまー、こうなることを見越したあたしが用意してきてあげたから、レトロゲームで遊びましょ」
「おー。そういや鈴はこういうの好きだったな」
「そりゃそうよ、勝てるもん」
「・・・なに? アンタも勝負挑んで勝ったら上から目線で自慢して、負けたら言い訳するか逆ギレするかでウザったいからボッチにされたクチ?」
「アンタと一緒にしないでくれるかしら!? あたしはただ勝負は勝たなきゃ意味なくて悔しいだけだから、勝つまで根に持つ民族ってだけよ!」
「だからどう違うのよソレ!? むしろ一番性質悪いタイプってだけじゃないの!?」
「じゃ、全員でやれそうなやつから行くか。まずはこれだな」
「ほう、我がドイツのゲームだな。名前は確か―――」
「ストップ! それは不味いわ! そのゲームだけは辞めましょう!」
「ど、どうしたんだよジャンヌ? 『バルバロッサ』で一人負けしたトラウマでもあるのかよ?」
「アンタたちと一緒にしないでくれるかしら!? 私はただ名前が不吉だからやりたくないだけよ! 『バルバロッサ作戦』なんてフランス人にとっては鬼門中の鬼門でしょっ!?」
「・・・我々ドイツ人にとっても、良いものではないのだがな・・・」
「ま、まぁまぁ二人とも。お互いに苦手を克服し合うのが『みんな仲良く手を取り合って』の基本なんだし、一回ぐらいは・・・ね?」
「「むぅ・・・」」
「そ、それじゃあスタートね。えっと、一、二、三、と」
「あ、宝石を得ましたわ」
「私は・・・質問マスか。よし、ではジャンヌの粘土に質問するぞ。・・・それは本当に何を作ったのか解らなくする意図はこめてあるのだろうな? 見たまんまな気がするのだが・・・」
「あるわよ? もちろん。この程度の造形はストフェスだと素人レベルでしょ?」
『『『ホントの素人にとっては完璧すぎてんの(だ)よ! 作り直せ!!!』』』
「なんでよ!? 造形どうこうより、どう質問するかの方が大事なゲームだったんじゃないの!?」
「・・・・・・はぁ~・・・(こめかみを押さえる苦労性の姉シャルロット)」
――こんな日がずっと続くといいなと不可能を承知で願いたくなる学生時代は幸せです♪
つづく